異世界イッセー   作:規律式足

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 ちなみにグランバハマル時代のイッセーはメイベルに告白してません(周囲にはモロバレ)。
 異世界おじさんに勝ったら告白というルールに自分で課した結果、挫折してしまいました。
 撒き餌(好意アピール)で寄りつつあった後に放置(挫折)された魚(メイベル)の心境やいかに。



第二十三話 修行その弐

 

 修行二日目。

 泊まる部屋は木場と同じで昨夜は寝るまで新選組の話題で盛り上がった。なんでも木場の剣の師匠は四大魔王サーゼクス様の騎士である沖田総司らしい。個人的には人間界に伝わる彼の生涯が好きだったから複雑な気分になるが、実際の幕末を知る人物とこれから会う機会があるかもしれないと思うと楽しみになる。

 なお木場に三段突きは出来るのかと聞いたら、自分には出来ないとのこと。形としては真似できても必殺技には至ってないそうだ。

 同じ型でも自分なりのアレンジを加えてこそ極めたことになる、ということなんだろう。

 女性陣は女性陣で二階で盛り上がっているようだ。普段できないことで少しはリアス部長がリラックスできると良いのだが。

 

 そして二日目の午前中には座学。

 敵対関係にある他勢力の幹部名など悪魔として知っていて当たり前のことを学ぶ。

 座学についてなんだが、記載されてる人達と教材を用意してくれた部長には失礼だけど、ゲームとか漫画の設定集みたいであっさりと覚える事ができた。これはサブカルチャーに慣れ親しんだ現代っ子だからこそなんだろうな。

 続いてアーシアから悪魔祓いについて教わる。聖女として所属していただけあって詳しいからだ。

 いや教会は情報管理大丈夫なのか?アーシアみたいに追放された者が他勢力に流れたらそれだけで機密がだだ漏れになるんだが。

 

「コホン。では僭越ながら私、アーシア・アルジェントが悪魔祓いの基本をお教えします」

 

 知っているからといって必ず人に教えられるわけではない。それができるアーシアという人材を容易く手放す教会の歪さに疑問を抱く。

 異端者を裁く、が基本だから仕方ないのか?

 それにしてもあまりにも惜しい存在だろうに。

 アーシアが所属していた宗派に存在した二種類の悪魔祓いについて説明される。

 表・神父が聖書・聖水で払うタイプ。

 裏・天使の光の力を借り受けあらゆる装備で武装した戦士。

 だがこれはあくまでアーシアの知る悪魔祓いであり、俺のような神器あるいは神滅具を宿した悪魔祓いも存在するかもしれない。

 その後は、聖水と聖書についてだ。

 聖水は悪魔という種族にとっては触れたら爛れる硫酸のような液体で、聖書は読んでも聞いてもダメージを受ける。

 聖水の作り方まで他勢力に広まるのは教会は良いのか?これは下手したら資金源だろうに。

 アーシアは聖水に触れられなくなったこと、聖書を読めなくなったこと、祈るとダメージを受けることにショックを受けていた。

 俺はあまり実感がなかったが悪魔に転化することは大変なんだな。

 悪魔化を超人になって寿命が延びる認識で済むのも現代っ子ならではなんだろうか。あっさり一人でグランバハマルに順応してた陽介さんといいサブカルチャーによる教育は凄まじいな。

 

『いやゲームで世界が滅びる設定が多いから、現実でもそんなもん認識な陽介は頭おかしいからな』

 

 何なんだろうなあの人。

 そして俺はそろそろ皆にグランバハマルについて伝えようか悩んでいる。けど伝える必要性と意味があんまり無いのがなあ。精霊魔法は教えても使えるかわからないし、俺の記憶も七割はバイオレンスでスプラッタな胸糞グロファンタジーだ。

 今のところまだ俺の実力も精霊魔法も気にしてないから聞かれるまで黙っているか。あんまり話したいこととかないし。

 

『最悪俺が教えたで誤魔化せるからな』

 

 赤龍帝は伊達ではない。

 伝えるにしても普通ではあり得ない力を使った時か。一体いつになるやら。

 

 

 それから数日間で変わったことはない。

 木場や小猫ちゃんと組手をして、朱乃さんに魔力操作を学び、部長と体力作りをする。

 学校へ通って悪魔契約をこなす合間のトレーニングなんかより遥かに効率が良かった。

 大分悪魔の身体に馴染んだ。

 これなら禁手の赤龍帝の鎧も万全に使えるだろう。フェニックスであるお師匠と戦うには炎に焼かれない対策は必須だからだ。俺は魔炎に焼かれながらも平然と戦うどっかの誰かさんとは違うのだ。

 

『耐火の呪符なら残っているだろ?』

 

 ドライグの言う通り収納魔法には山程保管してある。けど補充の利かない消耗品を使う気にはならないのだ。特に今回はゲームでダメージを受け過ぎたら別空間に転移されるらしいし。

 

『そう言って使用されずにアイテム欄に残るラ〇トエ〇クサー』

 

 ゲームなんてそんなもんだ。

 実戦では惜しまないから良いだろうが。

 それに使用して勝っても不正扱いされかねないくらいのメタアイテムだからな。

 ゲームだから何でもあり、何をしても良いということはない。

 むしろゲームだからこそルールを守り、他者に与える印象を考えなければいけないのだ。

 それを今頃一番痛感しているのはきっとお師匠だろうな。

 ここ数日で俺は気づいた、あるいはお師匠も今頃気づいているかもしれない盤外からの一手。

 婚約破棄をレーティングゲームで決めるという提案。

 今回のレーティングゲームは一見ライザー・フェニックスが有利なように見えていて、実は受けた時点で彼は半ば詰んでいる。勝ち筋はある、だが打てる手は限定され、赤龍帝を打倒しうる実力か戦力が彼には求められてしまっているのだ。

 そしてそれは赤龍帝が俺という史上最強の赤龍帝だからで無くても、赤龍帝の籠手に宿る赤い龍と対話できる赤龍帝なら十分なのだ。

 レーティングゲームを両家に提案したのはリアス部長の兄である四大魔王のサーゼクス・ルシファー様だという。

 知略までも優れているとはなんとも恐ろしく、妹思いな方だ。

 

 

 別荘での夜。

 喉が渇いた俺はキッチンへと向かった。水を一杯飲み干していると、

 

「あら、起きたの?」

 

 リビングから部長の声がした。どうやら彼女も夜更しのようだ。

 軽く挨拶をしてからテーブルを挟んで部長の対面の席に座る。

 赤いネグリジェ姿の部長は紅の髪を一本に束ねてメガネをかけていた。

 ちなみに視力に問題はないらしい、考え事をしている時にかけると頭が回る気分になるらしい。

 しかしネグリジェ姿か、よく似合うのだが身体が反応して困るな。下手したら今日はここで寝る(気絶)ことになるかもしれない。

 テーブルの上にはレーティングゲームの資料、寝室ではできない勉強をここでしていたのだろう。

 

「正直、こんなものを読んでいても気休めにしかならないのよね」

 

 ため息まじりに彼女は言う。

 それはそうだろう。

 調べた限りのライザー・フェニックスの強さとは指揮の巧みさではなく、フェニックスという種族特性によるものだ。無論戦術書にも意味はある、フィールドに展開された彼の眷属を少数の仲間で効率良く討つには戦略は欠かせないからだ。

 

「フェニックスは再生能力に優れ、炎の扱いに長けた悪魔。戦う相手としてあまりに強すぎる」

 

 聖獣と人々に崇められていたフェニックス、それと同じ名を持つ悪魔フェニックス。区別するためフェネクスと呼ばれたりするがその能力に差は殆どない。

 もっとも悪魔であるフェニックスには他の悪魔と同様に聖なる力や天使の光は弱点となっているが。

 

「レーティングゲームが悪魔の中で流行るようになって一番台頭したのがフェニックス家だった。眷属を戦わせる遊戯だけど主である王も参加する。そこで不死身の優位が発揮されたのね」

 

 それはゲームだからこそだろう。

 敵対している天使と堕天使は聖なる光を振るう、戦場では悪魔フェニックスの不死身は絶対の力ではなかったのだ。

 だがレーティングゲームでは別だ。

 悪魔同士かつ貴族間の遊戯に聖なる力を宿すものを使用するわけがない。

 

「フェニックスを倒せないこともないのよ。圧倒的な力で押し通すか、何度も叩き潰して精神を潰す。そうすれば再生も止まり、相手は倒れるわ」

 

 なんだいつものか。

 陽介さん相手に散々やったなあ。

 

『思い出すな相棒!古傷が開く!』

 

 あの人って殴っても斬っても叩いても焼いても凍らせても感電させても、いくらやっても立ち上がって俺達を返り討ちにしてきたなあ。

 

『なんなのあの生き物』

 

 フェニックスの特徴を聞いて俺とドライグは陽介さんのヤバさをより実感したのだった。

 

「わがままなのは、分かっているのよ」

 

 ポツリとリアス部長が呟いた。

 

「悪魔における貴族であるグレモリーの一族の娘として散々利益を甘受してきて、自分の為すべき役割を拒否したわがままな娘である自覚はあるの」

 

 そこには感情が零れていた。

 後悔とも弱音とも言える感情が。

 

「ライザーが悪い男ではない、ということは先日のことで理解したわ。私が知ろうとしなかった彼の良さがあることも。案外夫婦になったら悪い関係にはならないんじゃないかと、そう思った」

 

 まさか俺が死にかけることで師匠は部長にそんな印象を与えることになるとは。

 

『第一印象はずっと引きずるよな。俺も白いのを気に入らないままだし』

 

 あんな騒動おこすくらい見た時から気に食わなかったのかよ。

 

「でも、私は私個人として見て欲しい。見てくれる人と結ばれたい。ライザーは良い男かも知れないけど、私を『グレモリー』で『ハーレムの一人』として見る。それがどうしても耐えられないの」

 

 それは否定できないな。

 ハーレム王ではあるがゆえに、その二つを除いて部長を見ることはないだろう。

 

「勝手でわがままよね私。

 グレモリーであることを誇りにしながら、ただのリアスとして愛して欲しいなんて。そんな小さな夢を叶えたいと望んで、眷属の皆を巻き込んでいるなんて」

 

 涙を流しながら目の前の女の子は言う。

 彼女は今苦しんでいる。自分が悪いのだと責めている。自分が夢を諦めて我慢すれば良いのだと無理やり呑みこもうとして、それが辛くて泣いている。

 ライザー・フェニックスが悪人ならば、グランバハマルの貴族のような唾棄すべき下郎ならこうも思い詰めなかったろう。だが彼は自分のハーレムを大事にできる人格者で、おそらくリアス・グレモリーの知る凡百の悪魔たちよりも善良なのだろう。

 そしてリアス・グレモリーもまた善良だ。

 自分の感情と利益だけを考える我儘を擬人化したような連中とは違い、自分の行いが周囲に迷惑をかけていると思い悩み苦しんでいる。

 

「自分を自分として見て欲しいことを悪いなんて思いませんよ。俺はかつてそうしてくれた人に救われて惚れたことがあります。そうされる事がどれだけ嬉しいのかよく分かっています。だから部長の願いに納得できますし、悪いことだなんて思いません」

 

 だから俺は言葉を紡ぐ。

 少しでもこの優しい女の子が元気になってくれればと願って。

 

「好きな人と結ばれたいと思うことだってそうです。確かに師匠はハーレムを維持できる凄い人で良い人です。でも良い人だから必ず好きになるわけじゃない結婚したくなるわけじゃない。俺もダメ人間極めてた人を好きになりましたから」

 

「イッセー」

 

「わがまま?良いじゃないですか。俺も貴方の兵士です、わがままくらいいくらでも言ってください。貴女が望めば神でも堕天使総督でも討ってみせます」

 

「わ、私は」

 

「それに勧誘の時に、赤龍帝じゃない兵藤一誠が眷属に欲しいと言われて嬉しかったんですよ」

 

 わがままだ。

 でも良いじゃないか。

 自分を見て欲しい。

 それはそうだろう。

 貴女が俺にしてくれたことはとても嬉しかったことなんだ。

 

「それに、女の子のわがままを叶えるのは男の度量ってやつですよ」

 

 俺は自分の思いを笑顔で言った。

 

 リアス・グレモリーは俯いていた。

 熱を持つ真っ赤になってしまった顔を目の前の少年に見せないために、いや自身が彼の顔を直視できないからと。

 

「それともう一つ。まだお会いしたことが無いので決めつけになりますが、貴女のご両親に悪く思う必要も無いと思います」

 

「え?でもお父様達は」

 

「悪魔の未来のため純血の悪魔を相手として選んだ。でも彼らが望んでいるのは純血の悪魔という個体ではなく、生まれた子供を囲む家族の姿だと思いますよ」

 

 これは予想に過ぎないが、しかしリアスという少女の性格からして現グレモリー当主が利益だけを考える人物とは思えない。

 何せ相手として選んだのが、あのライザー・フェニックスなのだから。

 

「そうね、そうよね。お父様達だもの」

 

 家族のわだかまりもマシになったかな。すれ違ってケンカ別れとか悲しいからな。

 何故か一家離散は駄目だ、という強い気持ちが働くんだよな。

 なんでだろう?

 

「ありがとうイッセー。

 これからも貴方にわがまま言うから覚悟しといてね」

 

「はい!」

 

 目元はまだ赤いけど、いつもの笑顔になった彼女が嬉しくて俺は力強く頷いた。

 リビングから寝室に戻り就寝した。残りの日々をより有意義に使うと心に決めて。

 

 

 

 二人が去ったリビング。

 その物陰に一人の少女がいた。

 少女と呼ぶには些か発育が良いが。

 彼女は聞いてしまった。

 恩人にして親友の苦悩と。

 それを受け止めた気になる男の子の話を。

 

「羨ましいな」

 

 そんな本音が溢れてしまう。  

 彼にあんな風に言って貰えた親友が羨ましかった。

 だが同時に思う。

 親友が苦しもうと自分の都合で力を使おうとしない自分に、彼は同じことを言ってくれるのだろうかと。

 あんなに苦しむ親友のために、自分はこの力を本当に使えないのかと。

 母を守れなかった父の力だと疎んだ。

 自分に辛いことしか与えない血だから嫌悪した。

 気になる男の子に嫌われるかもしれないからと隠した。

 でも、

 そんな想いより優先すべきことはある。

 少女はそう決意し、少しだけ一歩進んだ。

 

 

 

 それから数日後リアス・グレモリー眷属による山籠り合宿は終了した。

 決意を込めて、ライザー・フェニックス一党と相対する。

 

 

 

 冥界フェニックス領。

 ライザー・フェニックス邸宅。

 

「嵌められたか」

 

 人間界でのリアス・グレモリーとの会談から数日。ライザー・フェニックスは自身のおかれている状況を正確に理解した。

 理解した上で思う。

 おのれシスコンめと。

 自身も妹レイヴェルのためなら同じことをするだろうから不快には思わないが。策に嵌められた事実そのものが面白くない。

 

「ユーベルーナ。至急、歴代赤龍帝と赤龍帝の籠手について情報を集めてくれ」

 

「はい?いえ承知しました」

 

 もっとも付き合いが長くもはや妻も同然の女王に指示をだす。疑問をもったようだがいつものように速やかに動いてくれた。

 

「竜殺し、は基本的に聖剣の類だから無理だな。魔剣にしても時間が足りないか」

 

 赤龍帝打倒のための手札。

 しかしそんなものは容易く手に入るものではない。いや仮に手に入っても使用はできない。

 このレーティングゲームはそういったモノだからだ。 

 

「お兄様はそんなにあの赤龍帝が気に入りましたの」

 

 理解できないとばかりに妹にして僧侶であるレイヴェルが言う。

 先日の会談で気に入ったから対策をするのだと思われたようだ。

 

「気に入りはしたさ。だが必要だから備えているだけだ」

 

「お兄様はご友人が居られませんからね」

 

「ウグ」

 

 否定はできない。

 フェニックスであるというだけで妬んできた連中との付き合いをさけ、さらに絡んできた連中を返り討ちにしているうちに同世代同性での付き合いが極端になくなってしまったのだ。

 眷属にしてハーレムメンバーを構うことを優先してきたことも要因の一つである。

 だが仕方ないだろう。

 フェニックスでイケメンだからと妬み僻み嫌う連中やフェニックスの利益目当てですり寄る連中と関わるより、自分で見初めた女の子達とイチャイチャする方が楽しいのだから。

 

「まあ良いですわ。でもリアス様とその眷属達に対策なんていりますの?どんな手段でやっても勝てますわよ?」

 

「違うなレイヴェル。どんな手段なんて許されない。俺は正攻法しかとれないよ」

 

 ライザーの言葉がレイヴェルは理解できなかった。

 

「それはどういう?」

 

「このレーティングゲームがどういったモノか考えれば理解できるさ」

 

 そうライザー・フェニックスは、このレーティングゲームでただ勝てば良いのではない。

 手段を選んだ上で、必ず赤龍帝を打倒しなければいけないのだ。

 

「我が弟子が、眷属の皆に劣る実力なら問題ない。だがそうでなければ、危ういか」

 

 かといって兵藤一誠の体質を利用した戦法は使えない。そんなやり方は許されない。

 

「クソ、サーゼクス様め。勝っても負けても本人に文句を言ってやる」

 

 レーティングゲームは貴族の遊戯である。  

 そして貴族とは体面こそが重要なのだ。

 故に手段は選ばないといけない。

 ましてや今回のレーティングゲームの先を考えればライザー・フェニックスがどうしなければいけないのか。

 

 現時点でライザー・フェニックスと兵藤一誠(オマケでドライグ)だけが理解していた。

 

 

 なお謀ったと認識されるサーゼクス・ルシファーは実はそこまで考えて無かったりする。

 彼の妻がグレイフィア・ルキフグスの時点でその理由はお察し。

 




 
 補足・説明。
 
 兵藤一誠とライザー・フェニックスが気づいたことは大したことではありません。次話にやります。
 
 レーティングゲームについて。
 作者は貴族の遊戯であることを重視してます。ただどうしてもソーナの夢のアンチになるので本編ではスルーします。

 リアスについて
 オリ設定、独自解釈です。
 なお冷静になったらイッセーの初恋相手を問い詰めます。

 朱乃について
 彼女最大のアンチポイントはここかなと。次話で原作とは違う展開になります。

 現在のシトリー眷属
 グレモリー眷属の悪魔契約を代行してるため悲鳴を上げております。漫画家が締め切りでヤバいです、あとミルたん。

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