異世界イッセー   作:規律式足

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 前回のあらすじ

「俺が、俺こそが、ハーレム王だっ!!」

「なんだってーっ?!」

「「「殺殺殺」」」

「「『帰りたい』」」



第二十一話 レーティングゲーム

 

 オカルト研究部に現れた純血の上級悪魔ライザー・フェニックス。

 彼は我が主リアス・グレモリーの婚約者であり、その関係を進めるために本日は訪れたのだという。

 現在聖書の勢力、三すくみの勢力と呼ばれる神話は緩やかに衰退をしている。千年以上も前の先の大戦により多くの犠牲がでて、さらにそれ以降の小競り合いにより戦力の要である存在が減り続けているのだ。

『七十二柱』と称された別格の悪魔一族すらももはや半数も残っておらず、純血悪魔の血統保全は悪魔社会の重要な課題となっているのだ。

 それは貴族制であるが故の貴種という価値を守るためであり、さらに『七十二柱』と呼ばれる血統に伝わる固有能力を失わないためでもある。

 その一族を象徴する固有能力を失うことは悪魔達においてあまりに耐え難いことなのだ。

 

 つまりこれドライグのせいじゃね?

 

『知らんな』

 

 先の大戦。

 三すくみ勢力の大戦争を台無しにして神器に封じられた赤龍帝はそっぽを向きながらそう言った。

 

 

 

 そしてオカルト研究部。

 ライザー様のハーレム王宣言。

 俺・兵藤一誠は目指すべき頂に座す彼に憧れの目を向けている。

 

「ライザー様」

 

「ふ、違うだろ兵藤一誠。俺がお前の先を征く存在であるなら呼び方はそうじゃない」

 

「はい、師匠!!」

 

「ああ、そのとおりだ我が弟子よ!!」

 

 俺の夢であるハーレム王の成り方を教えてくれる人なんて今まで居なかった。けど今日からは違う、ライザー様・師匠が俺を教え導いてくれるのだ。

 

「それで何をしにきたのかしら?」

 

 だがそんな微笑ましい師弟のやり取りは、怒りで全身から魔力を溢れさせた我が主の、ドスの効いた声により中断された。

 かつてないくらい怖いです部長。いや後ろにいる朱乃さんの笑顔と涙目のアーシアもだけど。

 

「ん?弟子にハーレム王の何たるかを教授しにだけど、って分かった分かったそんなに睨むな」

 

 俺に教えることを優先しようとした師匠だけど部長の睨みにより引き下がってしまう、残念だ。

 

「本題は四大魔王でありお前の兄であるサーゼクス様の女王・グレイフィア様から切り出してもらう筈だったが用事があるようでまだ到着されてないんだよな。時間に厳しいあの方らしくないが」

 

「お義姉さまが?確かに珍しいわね」

 

 四大魔王の女王、先日の強い気配の方だろうか。しかしこの街で用事とは一体?

 

「遅れまして申し訳ありません」

 

 するとタイミングよく銀色の髪をした見知らぬ女性が現れた。何故かメイド服で。

 しかし気配からして紛れもない強者。戦うとなるとマジでやらないと不味いな。

 

『先の大戦に居た上級悪魔の当主格より上といった所か。四大魔王に匹敵する実力者だな』

 

 ドライグが言うからには悪魔として最強の一人なのか。悪魔の駒によりその実力はさらに向上しているのだろう。

 

「まあ俺は気にしてないが、どのような用事だったんでしょうか?」

 

「グレモリー家の従者でもある貴女がこの街でどんな用事があるのかしら」

 

 上級悪魔お二方の疑問に、グレイフィア様はただ一言だけ答えた。

 

「ミルたんです」

 

 あ、はい。

 なるほど四大魔王の女王としてそっちに挨拶しに行ったのか。最近のこの街の治安の良さはあの魔法少女によるものだしね。

 

「「???」」

 

 何度か説明したけど実物を見ないとミルたんの凄まじさは伝わらないか。

 何度もお世話になっているし人格的に良い人なんだけど、それでも関わらない方が良い存在だからなあ。

 

「それではリアス・グレモリー様とライザー・フェニックス様の正式な婚約についてのお話です」

 

 グレイフィア様が到着したことでようやく今回の本題がはじまった。

 

 まあ一言でぶっちゃけると、部長の婚約を前倒しにして早く子供を作れ、という話でした。

 グレモリー家には部長と兄のサーゼクス様が後継者として存在するが、サーゼクス様が四大魔王となったことでグレモリー当主を継ぐことは不可能となったらしい。なので婿養子としてライザー様を迎え入れたいのだとか。

 フェニックス家はライザー様の兄君と妹君がいるから婿養子に行く余裕があるのだそうだ。

 だがその決定に反発しているのが部長で、嫌われてるのは承知してるけどこんな美人が嫁なら良いかとノリ気なのがライザー様だ。スケベ心に正直過ぎるぜお師匠さま。

 

「以前にも言ったはずよ!私は貴方と結婚なんかしないわ!」

 

「初対面時から言われているな、何がそんなに気にいらないんだ?キミのとこの御家事情は切羽詰まっていると思うが」

 

「その初対面時に俺のハーレムメンバーだと眷属を見せつけてきたからでしょうがっ!

 そもそも当初の話では、私が人間の大学を出るまでは自由にさせてくれるはずだったわ!」

 

 何をやらかしてんですかお師匠。

 顔合わせのつもりだったんだろうなあ。

 しかし悪魔の寿命は一万年あるのだから確かに早急過ぎるとは思うけど。

 

「いや、それはだな、君の幼馴染のソーナ嬢がチェス勝負で婚約破棄をしてな。シトリー家はほら、姉君がアレ過ぎるから、さらに妹君もやらかしたからかなりヤバい状況らしい。それを見てグレモリー当主が焦ったんじゃないか?うちもそうなるのではないかと」

 

 むしろグレモリー家よりシトリー家の方が断絶危機みたいですね(シトリーの姉はサーゼクス様と同じ四大魔王で同世代の上に未婚、性格も問題ある方らしい)。

 

「ソーナアアア!!」

 

 婚約破棄も早い者勝ち。

 けど幼馴染のやらかしによりリアス部長が窮地に陥ったのも事実だ。

 

「あーそれで、そうならないための最後の話し合いの場が今なんだが」

 

「そんな最後の話し合いの場で私の可愛い眷属と随分イチャついてくれたわねえ」

 

 気不味そうなライザー様と涙目で睨みつけるリアス部長。というか気にするとこがそこですか部長。

 

「これで決着がつかない場合を皆様方も予測し最終手段を取り入れることにしました」

 

 最終手段?

 

「お嬢様、ご自分の意志を押し通すのでしたら、ライザー様と『レーティングゲーム』にて決着をつけるのはいかがでしょうか?」

 

「それってソーナがチェスで婚約破棄したからその対策よね?」

 

「ソンナコトハアリマセン」

 

 部長の指摘にグレイフィア様は目を逸らしながらカタコトで答える。

 あの、ライザー様ってレーティングゲームの負け無しプレイヤーだとご本人から聞いたばかりなんですが(敗北記録もあるが、接待が理由)。

 

「ご存知の通り、公式の『レーティングゲーム』は成熟した悪魔しか参加できません。しかし非公式の純血悪魔同士のゲームならば認められています」

 

「身内同士、御家絡みのいがみ合いならね。つまり、お父様方は私が拒否した時の事を考えて、ゲームの勝敗で納得させようというのね。私の夢がレーティングゲームのタイトルを取ることだからと」

 

 部長の夢の一つが、レーティングゲームで結果を出すこと。だからこそ部長はレーティングゲームを拒否することができない。

 悪魔らしく貴族らしい攻め方だな。

 

「ではお嬢様はゲームも拒否すると?」

 

「いえこんな好機はないわ。このレーティングゲームで決着をつけましょう。どうせいずれ戦う相手ですもの」

 

 挑戦的な部長の物言いにお師匠は口元をにやけさせる。お師匠もレーティングゲームが好きだし、明らかに自分が有利だからなあ。

 

『赤龍帝が計算に入ってないがな』

 

 それはまあ。

 こっちでの戦歴って微妙だし。

 

「俺もそれで構わない」

 

「承知いたしました。お二人のご意思は私グレイフィアが確認させていただきました。ご両家の立会人として私がゲームの指揮を執らせてもらいます、よろしいですね?」

 

「ええ」

 

「ああ」

 

 ここにレーティングゲームは決定した。

 婚約を賭けての決闘。

 とりあえず全力で臨まないと。

 

「そうだリアス、俺の眷属を紹介しよう」

 

「ハンデのつもり?結構よ」

 

「いやいや、俺達が夫婦になるのだから眷属同士も身内になる。顔合わせは必要だろう」

 

「既に勝った気でいるのが不快だわ」

 

 ライザー様は指をパチンと鳴らすと部室の魔法陣が光りだす。フェニックスの紋様が展開し次々と人影が出現していく。

 今まで待機していたのかな?お疲れ様です。

 現れたのは十五名、妹である一人を除いてライザー様のハーレムメンバーだ。

 騎士、魔導師、チャイナドレス、ケモミミ、双子、ロリ、ナイスバディ、着物を着た大和撫子、ドレスを着た西欧のお姫様、剣を背負うワイルド系、踊り子、半分の仮面をつけた人。

 さすがお師匠。

 様々のタイプの女性を揃えた見事なハーレムですね。あまりの衝撃に震えます。

 

「女性が増えたことで顔色が悪くなっているよ」

 

「生まれたての子鹿みたいに震えてますね」

 

 木場と小猫ちゃんの俺を心配する声。

 でもまだだ、まだ耐えられる。

 

「どうだ我が弟子。これが俺のハーレムだ!!お前が目指す到達点だ!!」

 

 だってお師匠が自身のハーレムを誇らしげに自慢されるのだもの。ここで倒れるのは失礼の極み。

 

『気遣いで無理するヤツだな』

 

「顔合わせじゃなくて、イッセーに見せたいだけよねライザー?どこまで私の眷属を気に入ったのよ」

 

 一人一人を俺に紹介するライザー様とそんなライザー様を睨みつけるリアス部長、そして身体が反応して死にそうな俺。

 

「よし、ゲームは十日後にするか。それぐらいあれば当主の方々も都合がつくからな。それまでは修行に時間を当てると良い」

 

 なんとか美女美女美幼女集団の紹介は耐えきった、あと少しだきっと。

 

「ええそれでいいわ」

 

 修行か。

 グレモリー眷属の仲間達の戦闘スタイルも全員分は知らないから都合が良いな。

 

「そうだ、最後に我が弟子に特別サービスしてやるか!!」

 

「へ?」

 

 するとお師匠が良いことを思いついた表情で告げる。

 

「兵藤一誠、一足早く自分の夢を体験しておけ」

 

 それは言うなれば、

 善意十割の死刑宣告だった。

 

 いつもより機嫌の良い主の命令に従い、ライザー・フェニックス眷属達は妹様を除いた全員で、俺にハグをしてきたのだ。

 

「あ」

 

「「「「「あ」」」」」

 

『あ』

 

「?」

 

 全身を様々な感触(鎧は痛いです)、と匂いに包まれたと感じたその瞬間。

 兵藤一誠の心臓は停止した。

 

『あ、相棒ーーー!!』

 

「イッセー!!」

 

「イッセーさんが昨日に続いて今日も!!」

 

「昨日も死んだんだね彼」

 

「あまりにも儚い」

 

「昨日はリアスが原因かしら(ゴゴゴ)」

 

「我が弟子に何があったんだオイ!!」

 

「ライザー、この子はね!!女の裸を見たら泡を吹いて倒れるくらいの女性恐怖症なのよ!!」

 

「ハーレム王が夢だと言ったのにか?!」

 

「魂は求めても身体が拒否するのよ」

 

「その思い、立派だぜ我が弟子よ」

 

「「「言っとる場合かっ!!」」」

 

「「ライザー様ー?!悪魔の駒が胸からニョキニョキでてきてますーっ!!」」

 

「押さえつけるんだ!!」

 

「手緩いです。フンッ」

 

「戦車のパワーで無理やり叩き込むのはどうなのさ小猫ちゃん」

 

「イッセーさん今治療を!!」

 

「ユーベルーナ!!レイヴェル!!手持ちのフェニックスの涙を全てブッかけろ!!」

 

『ミルたんを呼ぶべきか、呼んだらきそうだし』

 

「イッセー!!死なないで!!」

 

「今代の赤龍帝はずいぶんと変わった存在ですね」

 

 こうしてリアス・グレモリーとライザー・フェニックスによる婚約の話し合いはレーティングゲームで決着をつけるという形で終わった。

 なお最後の珍騒動により、グレモリー眷属とライザー眷属が親しくなったのは完全に余談である。

 

 あと兵藤一誠はかろうじて生存し、今後兵藤家にライザー・フェニックスのポケットマネーでフェニックスの涙が定期的に届けられるようになったそうだ。

 





 補足・説明

 婚約を急かされたのは幼馴染のソーナさんが原因の一つ、原作だとどちらが先かは微妙だがこの作品ではソーナさんがやらかした。御家断絶はシトリー家の方が心配。あと跡取りの不審死事件が発生している為という真剣な理由もある。

 シトリー姉
 現四大魔王にして自称魔王少女にして自称アイドルであり妹とのレズもばっちこいなシスコン。
 ご両親は泣いている。

 四大魔王
 サーゼクス以外は未婚。
 男二人は恋愛に興味無し。
 魔王少女は相手がいない。

 イッセーによる名称ブレは彼の気分とノリです。

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