4度目の『ガンスターヒーローズ』移植。いま明かされるあのころ
――せっかくなのでお聞きしたいのですが、エムツーさん的には4度目の『ガンスターヒーローズ』移植になるんですよね。
奥成 まずはオリジナルのメガドライブ版をゲームギア版に移植したところからですよね。
堀井 前世代のハードへの移植なので、メモリからなにからスペックがぜんぜん足りませんでした。
奥成 セガとの初仕事なんですよね?
堀井 会社を設立してから3、4年後かな。メガドライブの『ガントレット』(※エムツーとして初めて制作を手掛けたテンゲン発売のタイトル)が完成したあとにセガの方とお会いして「なんか作ってみたいのある?」と聞かれたんです。そのときは『エドワードランディ』(※“冒険百連発”のキャッチフレーズで知られるデータイースト社のアクションゲーム)とか言ってたんですが、いくつか候補があった中のひとつが『ガンスターヒーローズ』でした。


奥成 『ガントレット』が完成したので、会社をたたんで大学生に戻ろうかな、みたいな(笑)。
堀井 そんな気もあったんですけど、おもしろい話がつぎからつぎへ舞い込んでくるようになったので、ありがたいことに現在まで会社が続いています。
――話を戻すと、ハードスペックが足りないなか、よくあれだけ高い移植度になりましたね。シューティング面こそなかったりしましたが。
堀井 じつはシューティング面のマップは完成していたんですよ。でも、使用するのが4MBのROMだと後から知らされて、それだと入りきらないことが開発をけっこう進めてから判明したんです。
――えっ!? では、作ったけれど泣く泣く削ったパターンなんですか!
堀井 そうなんです。4面も同様に作っていたんですが、その当時はみんな素人なので工数計算とかもわからずにひどい目にあいました(苦笑)。でも逆に、マスターシステムやゲームギアのゲームは山盛り見ていたので、技術的な勘所はわかっていたので、「ここまで作りこめば誰もついてこれないだろう!」という自信はありました。
――当時はゲームギアというマイナーハードでの展開でしたが、その後にプレイステーション2版『SEGA AGES ガンスターヒーローズ ~トレジャーボックス~』に隠し収録されているのをプレイして、驚いた記憶があります。
奥成 『ガントレット』もそうですけど、ゲームギア版も長いこと作っていたんですよね。『ダイナマイトヘッディー』のゲームギア版が出たあとだから1995年?
堀井 そうですね。本当は1994年内に終わらせたかったのですがどうにも終わらずに、開発機材一式といっしょにバンに乗せられて、そのままウィークリーマンションで缶詰にされていました(苦笑)。
――いまでは考えられないですが、当時のゲーム開発シーンの様子が伺えるいいエピソードです。
堀井 そのつぎは、かなり間が空いてプレイステーション2の移植になります。ここまでハード性能があると、FM音源が重たいくらいで、ゲーム本編の移植には問題はない。そのつぎがWiiのバーチャルコンソール版で、いわゆる世間的に“完全移植”と呼ばれているのはこのへんです。そして、ようやく+αができるようになったのが3DS版、ということです。
――エムツーの歴史とともにあるタイトルといってもいいほどですね。
堀井 そうかもしれません。会社とハード性能の向上によって「ここまでできた!」を振り返ることができる、いい指標かもしれませんね。
奥成 『ガンスターヒーローズ』のソースデータを20年見てますからね。
堀井 いや、それがゲームギアのときは見せてもらえなかったんですよ。
――目コピーですか! それもまたすごい。
堀井 でも、ソースをもらったところでゲームギアじゃ動かせないですけどね(笑)。トレジャーさんには開発終盤のROMを送ってチェックしてもらうのを2度ほどやったのかな。まだまだ手を入れたかった部分はあるんですけどね。
――3DS版のように、新たなものを付け加えられるようになったのは、ハードウェアのスペックの向上があったからなのか、それとも作り手としての蓄積が増したからなのでしょうか。
堀井 両方があってのものですね。プレイステーション2になるまでは完全移植をしようと思ってもハードの制約でなかなかできなかったですし、何かを足そうという発想もゲームがこれだけ世にあふれている“飽食の時代”になったからこそ、ただの移植では物足りないということで+αを用意したわけですから。
奥成 3DSもすでに発売から4年経過していますしね。
オリジナルの背景グラフィック担当者からのお墨付きをゲット!
――これも余談ですが、当時トレジャーで『ガンスターヒーローズ』の背景グラフィックを担当された井内ひろし氏は、現在エムツー所属です。できれば今回のインタビューにもご出席いただきたかったのですが。
堀井 いまは自分のプロジェクトで手一杯なんです。一途にコツコツとひたすら集中しています。なので無理でしたね。
――新作作りに集中されているのでしたら、それは幸いです。ご本人がこの場にいないのでわからないのですが、背景担当とはいっても、おそらくゲームの中身についてもいろいろとアイデアを出していたんでしょうね。
堀井 だと思います。が、今回の『3D ガンスターヒーローズ』については、ほぼ傍観者だったと思います。前述した立体視専任のプログラマーが8割方完成したところで井内のところに持っていって「この戦艦の羽根はどっちを向いているんだ?」といった聞き取りをしていました。もちろん描いた本人なので正解は知っているんですけど「このゲームは立体視のおもしろさを見せることに意義があるので、僕の意図よりも見ごたえがあることを優先したほうがいいのでは」というやり取りをしていたのは、すごく興味深かったですね。そもそも容量がなくてできなかったみたいな部分もいっぱいあるらしいんです。
――20年前のこととはいえ、当時のことは覚えているものなんですね。
堀井 そりゃ、青春の1ページでしょうからね。ですので、疑問になったところはすべて聞けたということですね。しゃちほこばって監修というと、本人が気恥ずかしがりそうですが(笑)。
奥成 背景の立体視についてはお墨付きをもらったと。
――そういった歴史も詰まった一作であるということですね。では最後に、リリースを心待ちにしているユーザーさんにメッセージをお願いします。
堀井 今回の『3D ガンスターヒーローズ』は、かなりやり尽くしました。いまはすでに、つぎの『3D ソニック・ザ・ヘッジホッグ2』で、皆さんをビックリさせられるかというプレッシャーで、すでにドキドキしています。
奥成 とにかく立体視に驚いて下さい! 『3D ソニック・ザ・ヘッジホッグ2』はまだまだ絶賛開発中ですが、さらに手を入れていきます!
――当時のユーザーの感覚からすると、一般性は『ソニック2』、熱量は『ガンスター』が優っています。ですので、リリース順が逆でもよかったのではないのかなという個人的な思いがあります。
堀井 その感覚は、わかります。
奥成 でもいいんです。はやく遊べたほうが。
――とはいえ『ソニック2』も上下2画面分割や擬似3Dなスペシャルステージと、“技術のメガドライブ”を体現したタイトルのひとつでもあるわけで、リリースを楽しみにしています。本日はありがとうございました。
