「秋名山」対決を制したのはトヨタかジーリーか? 豆腐の崩れ方に疑義アリ!
パワートレインの制御は優秀!
また、プリフェイスも星越Lもスポーツ車種ではないため、サーキットで試乗したところで何を伝えたいのかという疑問も生じた。 一方でパワートレインの制御は優秀で、ストレスなくモーターとエンジンを切り替えてくれる。加速力もトルク320Nmのモーターのおかげで納得の行く仕上がりだ。 2日目は舞台を群馬県の名峰・榛名山へと舞台を移し、プリフェイスLはカムリとの「峠」対決に挑んだ。また、星越LはCR-Vとの燃費対決のため、東名高速道路から首都高速神奈川7号横浜北西線・横浜北線、湾岸線、そして東京湾アクアラインを走破する企画を実施した。 この2つの企画は「30秒※車」がその様子を生配信、総視聴者数5万人を超えるほどの注目を浴びたとのこと。筆者含む日本側メディア数人はプリフェイスLとカムリの対決を見届けるべく榛名山まで同行したのだが、直前になって生配信に出演することを告げられたり、「試乗」と「同乗」を勘違いされて危うく試乗の機会がなくなりそうになったりと、かなりヒヤヒヤした場面もあった。 プリフェイスLは峠という激しい環境でも変わらずに、そのパワートレイン制御の優秀さを見せてくれた。乗り味に関しては柔らかすぎていまひとつとも個人的には感じたのだが、逆に言えばフランス車のようにしなやかさとも形容できる。こればかりは個人の好みだが、別にプリフェイスLが悪いというわけではなく、峠においてロールは多めだったものの、それなりにハードな走行に応えてくれた印象だ。
中国でも大人気の「頭文字D」にちなんで秋名山対決
「30秒※車」が企画した「峠・対決」はただ単に榛名山の峠を走るだけでは終わらなかった。 中国でも人気な「頭文字D」要素を盛り込むべく、カムリとプリフェイスL両方の車内にコップ1杯の水、そしてトランクには豆腐を重ね、どちらがよりこぼさないか・崩さないかという「コント番組」のような対決も実施。この状態で峠を攻めるわけでもなく、ただ安全に時速30キロメートル前後で峠を下るだけだったのだが、生配信のコメントを見る限りはかなりの盛り上がりを見せていたようだ。 ちなみにトランクの豆腐はカムリの方が「不自然に」崩されたようにも見えたが、そこはあえて私は何も言及しなかった。 ジーリーは今回2車種を日本に持ち込んだが、別に日本での乗用車販売計画があるわけではない。ただ単にコンテンツ作りの一環であり、また宣伝の一端を担っているにしか過ぎないのだ。 それでも中国国内からの反応は「日本で売っていない中国車をわざわざ日本に持ち込んだ」事実だけでも話題性に富むし、その目的がライバルである日本車2台との対決も含むとなれば、中国国内の消費者は必然的にジーリーを応援したくなるもの。その対決相手がたとえ、2017年に登場して今はモデルチェンジによって旧型モデルと化したカムリとCR-Vであっても、表面上はジーリーの2車種が勝利しているように見えればジーリー側も消費者側も自尊心を十分に保てるのだ。 中国メーカーのマーケティングにおけるダイナミックさには毎回驚かされる、そう感じた今回の試乗企画であった。 (※はりっしんべんに董)
加藤博人(執筆/撮影)