マブチモーターのHPを閲覧するとモーターの性能表があります。マブチモーターは、業界標準(de facto standard)です。

 マブチモーターFA130-2270(標準仕様)の性能表を理解することは、モーターのトルク測定を理解する近道です。
      表1 
FA130-2270(標準仕様)性能表
210608-3














 
 元の性能表は横の表です。紙面の都合上縦の表にしています。少し違和感がありますが、
ご理解の程お願いいたします。また、英語で表示されています。

電圧   :VOLTAGE

動作範囲:OPERATING RANGE

公称電圧:NOMINAL VOLTAGE

無負荷 :NO LOAD

最高効率時:AT MAXIMUM EFFICIENCY

ストール:STALL

 公称電圧、無負荷、最高効率時及びストールについて説明します。 

(1)公称電圧(NOMINAL VOLTAGE)
 ア 公称電圧は、モーターの最高効率の電圧です。

 イ 動作範囲の電圧とは違います。

 ウ 他の諸元(仕様)の測定に使用される電圧です。

(2)無負荷:NO LOAD
 ア 負荷を接続していない状態で回転させる。
 イ 測定項目は回転数と電流になります。(特に、無負荷時の回転数と電流を無負荷回転数、無負荷電流と呼ばれています。)
 ウ 公称電圧で測定する。
 エ 無負荷時の回転数は最大となり、電流は最小となり、トルクは発生しません。(ゼロ)(図2参照)

(3)最高効率時:(AT MAXIMUM EFFICIENCY)

 モーターは、電力を動力(電気的エネルギーを機械的エネルギー)に変換する装置です。
モーターの効率と損失







  図1 モーターの入力と出力(エネルギーの流れ)(出典:日本電産((株)HP)

  図1のエネルギーの流れは、左側が電気的入力、右側が機械的出力を表しています。エネルギー変換の過程で、入力の一部は動力とならずに、熱になってしまいます。それを損失と呼びます。入力(電力)、出力(動力)及び損失との間には、次の関係があります。

入力電力 = 機械出力 + 損失(単位:W)

入力電力=電圧(V)×電流(A)

機械出力=回転速度(rad/s)×トルク(回転力)(Nm)

(rad:ラジアン、Nm:ニュートンメートル)

モーターの効率(efficiency)は、入力電力に対する機械出力の比を百分率(%)で表したものです。

モーター効率=(出力÷入力)×100(%)

モーターの入力電力、機械出力、効率は測定データに基づき、算出されます。
 ①電圧(公称電圧)を一定にして、無負荷の状態から負荷トルクを少しづつ上げていくと最後はモータの回転が停止(ストール)します。
 ②無負荷と停止(ストール)の間の回転数、電流及びトルクを測定します。
 ③出力と効率は電圧、電流、回転数及びトルクの測定データから計算します。
 ④Y軸に回転数、出力、電流及び効率をとり、X軸にトルクをとりグラフ化する。

モータ特性4









図2モーター特性曲線(T-N特性、T-I特性、出力特性、効率特性のグラフ)(出典:インターネット)

⑤効率の最高点をグラフ上で見ることができます。

⑥最高効率時の回転数、出力、電流,、効率及びトルクが分かります。

モーターは、最高効率以下で使用(設計)されます。最高効率を超えると過負荷になり効率が落ちます。また、ザックリと次に記述するストールトルクの最大30%で使用(設計)するとも言われています。
  モーターを最高効率で回転させ、歯車を使用して必要な回転数、トルクにして使用されています。

(4) ストール:STALL

 ストールとは、負荷が過大となり、モーターの回転が停止した状態です。モーターロック、停動及び拘束とも言われています。一般的にはタービンストール、エンジンストールという言葉で使用されています。エンストは、エンジンストールの和製英語です。

 ア 回転は停止していますので、トルクと電流を測定します。(特に、ストール時のトルクをストールトルク、電流をストール電流、拘束電流又は起動電流とも呼ばれています。)

 イ トルクの国際単位(SI単位)は、Nm(ニュートンメーター)です。

 ウ Kgf・cmも併記されています。(f:force(力))

 エ ストール時にトルクと電流は最大となります。(図2参照)


 まとめ
 表1の性能表と図2特性曲線をイメージしながら、モーターを回転させる。

①最初は無負荷で回転させる。ウィーンと勢いよく回転します。

②指でモーターのシャフトを軽く摘まみ、少しづつ力を加えていきます。指に段々と大きな力を感じ、回転数が落ちていくのが分かります。

③最後はシャフトの回転が止まり、最大の力を感じます。

④指をシャフトから外せば、再び勢いよく回転します。

①~④のことから表1の数字と図2の曲線の見方を理解することができると思います。

 モータートルク測定実験装置の製作に当たっては、ポンチ絵、
①~④のこと、表1及び図2を総合して、設計・製作を行いました。

 序論の部分を修正しました。(2021.10..09)

 
AuthorTakakura