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2024 年 6 月 21 日
研究費不正事案の調査結果の概要について
1. 経緯・概要
2022 年 11 月 22 日、早稲田大学(以下「本学」という。)監査室から本学学術研究倫理委員
会事務局に対し、内部監査の結果、研究費の取扱いに係る不正行為の疑いがあるとの通報があ
った。
本学学術研究倫理委員会は、同月 25 日に実施した予備調査結果を踏まえ、同年 12 月 20 日
に調査委員会の設置及び本調査の実施を決定した。
2.調査
2-1.調査体制
学術研究倫理委員会は、以下の体制による調査委員会を設置し、調査を実施した。
調査委員 4 名(学内委員 2 名、学外委員 2 名)
氏名 所属・資格
委員長 片岡 孝夫 早稲田大学商学学術院・教授
委員 榊原 豊 早稲田大学理工学術院・教授
委員 加藤 恒也 鎧橋総合法律事務所・弁護士
委員 伊藤 雅大 瓜生・糸賀法律事務所・弁護士(2023 年 8 月
31 日付で委員を退任)
委員 梅澤 慶太 瓜生・糸賀法律事務所・弁護士(2023 年 9 月
1 日付で委員に就任)
基盤研究(B)」(配分機関:日本学術振興会)
【別紙】
2-2.調査内容
(1)調査期間
2023 年 2 月 17 日から 2024 年 2 月 22 日
(2)調査対象
①調査対象者
氏名:大門 毅
所属:本学国際学術院
職名:教授
②調査対象の研究費・対象経費
ア 本件出張①について
2021 年度~2022 年度「科学研究費助成事業
における旅費
2024 年 6 月 21 日
研究費不正事案の調査結果の概要について
1. 経緯・概要
2022 年 11 月 22 日、早稲田大学(以下「本学」という。)監査室から本学学術研究倫理委員
会事務局に対し、内部監査の結果、研究費の取扱いに係る不正行為の疑いがあるとの通報があ
った。
本学学術研究倫理委員会は、同月 25 日に実施した予備調査結果を踏まえ、同年 12 月 20 日
に調査委員会の設置及び本調査の実施を決定した。
2.調査
2-1.調査体制
学術研究倫理委員会は、以下の体制による調査委員会を設置し、調査を実施した。
調査委員 4 名(学内委員 2 名、学外委員 2 名)
氏名 所属・資格
委員長 片岡 孝夫 早稲田大学商学学術院・教授
委員 榊原 豊 早稲田大学理工学術院・教授
委員 加藤 恒也 鎧橋総合法律事務所・弁護士
委員 伊藤 雅大 瓜生・糸賀法律事務所・弁護士(2023 年 8 月
31 日付で委員を退任)
委員 梅澤 慶太 瓜生・糸賀法律事務所・弁護士(2023 年 9 月
1 日付で委員に就任)
基盤研究(B)」(配分機関:日本学術振興会)
【別紙】
2-2.調査内容
(1)調査期間
2023 年 2 月 17 日から 2024 年 2 月 22 日
(2)調査対象
①調査対象者
氏名:大門 毅
所属:本学国際学術院
職名:教授
②調査対象の研究費・対象経費
ア 本件出張①について
2021 年度~2022 年度「科学研究費助成事業
における旅費
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イ 本件出張②について
研究費名称:学会出張補助費、個人研究費(学内経費として位置付けられる経費)
(3)調査方法・手順
①書面調査
通報者から提出された資料および大学が保管している資料(証憑書類その他)の調査
②聞き取り調査
ア 本件出張①
大門教授、および関係者に対する聞き取り調査
イ 本件出張②
大門教授、および関係者に対する書面での聞き取り調査
③フォレンジック調査
大門教授および関係者のメールデータの調査
3.調査結果
(1)不正等の種別
(本件出張①、②いずれも)出張旅費の不正取得
(2)不正等に関与した研究者
氏名:大門 毅
所属:本学国際学術院
職名:教授
(3)不正等の具体的な内容
①背景
不正を行った背景については、後記「4.発生の要因および再発防止策」の「(1)発生要因」
のとおりである。
②手法
ア 本件出張①
本学の教員等が国内及び海外出張を行うために出張旅費の支給を受けようとする場合、本学
における出張システムを通じて、事前に出張申請を行い、事後に出張報告を行うこととなって
いたところ、実際には予定していない国内出張の用務を記載するなどして虚偽の出張申請を行
い、本件出張①の後、当該用務を行った旨の虚偽の出張報告を行い、本件出張①に係る出張旅
費(宿泊費 13 万円及び日当 2 万 7500 円)を不正取得した。
イ 本件出張②
海外での学会出席及び発表を用務として出張申請を行い、海外へ渡航したが、実際には出張
申請に係る学会出席及び発表を行っていなかった。それにもかかわらず、上記学会への出席及
イ 本件出張②について
研究費名称:学会出張補助費、個人研究費(学内経費として位置付けられる経費)
(3)調査方法・手順
①書面調査
通報者から提出された資料および大学が保管している資料(証憑書類その他)の調査
②聞き取り調査
ア 本件出張①
大門教授、および関係者に対する聞き取り調査
イ 本件出張②
大門教授、および関係者に対する書面での聞き取り調査
③フォレンジック調査
大門教授および関係者のメールデータの調査
3.調査結果
(1)不正等の種別
(本件出張①、②いずれも)出張旅費の不正取得
(2)不正等に関与した研究者
氏名:大門 毅
所属:本学国際学術院
職名:教授
(3)不正等の具体的な内容
①背景
不正を行った背景については、後記「4.発生の要因および再発防止策」の「(1)発生要因」
のとおりである。
②手法
ア 本件出張①
本学の教員等が国内及び海外出張を行うために出張旅費の支給を受けようとする場合、本学
における出張システムを通じて、事前に出張申請を行い、事後に出張報告を行うこととなって
いたところ、実際には予定していない国内出張の用務を記載するなどして虚偽の出張申請を行
い、本件出張①の後、当該用務を行った旨の虚偽の出張報告を行い、本件出張①に係る出張旅
費(宿泊費 13 万円及び日当 2 万 7500 円)を不正取得した。
イ 本件出張②
海外での学会出席及び発表を用務として出張申請を行い、海外へ渡航したが、実際には出張
申請に係る学会出席及び発表を行っていなかった。それにもかかわらず、上記学会への出席及
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び発表を行った旨の虚偽の出張報告を行い、本件出張②に係る出張旅費(交通費 5 万 3850 円、
宿泊費 3 万 7600 円、日当1万 8600 円)を不正取得した。
③不正等に支出された競争的研究費等の額およびその使途
資金の種別 不正使用額 不正が行われた年度 不正に関与した研究者数
①科学研究費助成事業(※1) 157,500 円 2021 年度 1 人
②学内予算(※2) 110,050 円 2019 年度 1 人
計 267,550 円 1人(実人数)(※3)
(※1)①科学研究費助成事業は本件出張①による支出
(※2)②学内予算は本件出張②による支出
(※3)実人数は公的研究費に係る不正に関与した人数
④私的流用の有無
ア 本件出張①
本調査委員会は、各種調査の結果、本件出張①の期間中、本件出張①と直接関連性を
有する研究目的の活動が行われていなかったとの認定を行った。
また、不正に支出された競争的研究費等である合計 15 万 7500 円は、本学から大門教
授の給与受取口座に振り込まれているところ、同口座は、その出入金の状況から、他の
収入に係る入金が混じり、私的な支出なども繰り返し行われており、大門教授の日常生
活に使用されている口座であると認められた。同口座内の他の資金と混和し、私的な支
出の対象となったと判断せざるを得ない以上、私的流用があったものと判断した。
イ 本件出張②
大門教授が学会出席及び発表を行う目的のために海外へ渡航した後、何らかの事情に
より学会を欠席することとなった可能性は排斥できないため、本件出張②に係る交通費、
宿泊費及び日当については私的流用があったとまでは認められないものと判断した。
⑤結論と判断理由
本調査委員会において検討した書面調査、関係者及び大門教授に対するヒアリング調査並び
にフォレンジック調査等、調査全体の結果を総合的に判断し、本件出張①及び本件出張②につ
いて大門教授による不正行為(出張旅費の不正取得)があったものと認定した。
4.発生の要因および再発防止策
(1)発生要因
大門教授は、本学が定めるコンプライアンス教育を 2020 年度に、研究倫理教育を 2019 年
度に受講済みであり、また、2021 年度には誓約書(本学が公的研究費の運営・管理に関わる
教職員に提出を求めているもの)を提出しており、公的研究費に関する不正防止の重要性につ
いては十分認識していたと言わざるを得ない。そうであるにもかかわらず、本件において、大
門教授は、虚偽であることを認識しながら、思いとどまることなく、あえて虚偽の出張申請及
び発表を行った旨の虚偽の出張報告を行い、本件出張②に係る出張旅費(交通費 5 万 3850 円、
宿泊費 3 万 7600 円、日当1万 8600 円)を不正取得した。
③不正等に支出された競争的研究費等の額およびその使途
資金の種別 不正使用額 不正が行われた年度 不正に関与した研究者数
①科学研究費助成事業(※1) 157,500 円 2021 年度 1 人
②学内予算(※2) 110,050 円 2019 年度 1 人
計 267,550 円 1人(実人数)(※3)
(※1)①科学研究費助成事業は本件出張①による支出
(※2)②学内予算は本件出張②による支出
(※3)実人数は公的研究費に係る不正に関与した人数
④私的流用の有無
ア 本件出張①
本調査委員会は、各種調査の結果、本件出張①の期間中、本件出張①と直接関連性を
有する研究目的の活動が行われていなかったとの認定を行った。
また、不正に支出された競争的研究費等である合計 15 万 7500 円は、本学から大門教
授の給与受取口座に振り込まれているところ、同口座は、その出入金の状況から、他の
収入に係る入金が混じり、私的な支出なども繰り返し行われており、大門教授の日常生
活に使用されている口座であると認められた。同口座内の他の資金と混和し、私的な支
出の対象となったと判断せざるを得ない以上、私的流用があったものと判断した。
イ 本件出張②
大門教授が学会出席及び発表を行う目的のために海外へ渡航した後、何らかの事情に
より学会を欠席することとなった可能性は排斥できないため、本件出張②に係る交通費、
宿泊費及び日当については私的流用があったとまでは認められないものと判断した。
⑤結論と判断理由
本調査委員会において検討した書面調査、関係者及び大門教授に対するヒアリング調査並び
にフォレンジック調査等、調査全体の結果を総合的に判断し、本件出張①及び本件出張②につ
いて大門教授による不正行為(出張旅費の不正取得)があったものと認定した。
4.発生の要因および再発防止策
(1)発生要因
大門教授は、本学が定めるコンプライアンス教育を 2020 年度に、研究倫理教育を 2019 年
度に受講済みであり、また、2021 年度には誓約書(本学が公的研究費の運営・管理に関わる
教職員に提出を求めているもの)を提出しており、公的研究費に関する不正防止の重要性につ
いては十分認識していたと言わざるを得ない。そうであるにもかかわらず、本件において、大
門教授は、虚偽であることを認識しながら、思いとどまることなく、あえて虚偽の出張申請及
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び出張報告を行っていたことに鑑みれば、大門教授に研究者としての基本的な倫理観の欠如
があったと言わざるを得ない。
(2)再発防止策
① 教職員に対する本事案の共有および注意喚起
本学として、今回の研究不正事案の内容を教職員に共有し、再発防止のための強い注意喚
起を行う。
② 研究費不正に対する危機意識醸成を目的とする意見交換会の実施
文部科学省「研究機関における公的研究費の管理・監査のガイドライン(実施基準)」の遵
守徹底に向けた統括管理責任者とコンプライアンス推進責任者との意見交換会を実施し、
研究費不正に対する危機意識の醸成を全学的に図る。
③ 宿泊証明の提出および実費精算
公的研究費に関して、出張システムでの学会・研究出張における出張報告書への添付書類
として、宿泊したことを証明できる根拠書類の提出を義務づけ、実費精算とすることを検
討する。
④ 研究実施にかかる根拠資料の提出
公的研究費に関して、出張システムでの学会・研究出張における出張報告書への添付書類
として、出張先での研究の実施を証明できる根拠資料の提出を義務づけることを検討する。
⑤ 航空運賃を他機関等が負担する場合における搭乗証明等の提出
出張システムでの学会・研究出張における出張報告書への添付書類として、航空運賃を他
機関等で負担してもらうケースでも、飛行機に搭乗した事実が証明できるものまたは他機
関等が航空券を手配したことが証明できる根拠書類の提出を義務付ける。なお、本対応は
今回の事案を受けて 2023 年度より実施しており、今後も必要に応じて実施方法等の見直
しを図り継続していく。
⑥ リスクアプローチ調査の実施
研究費の管理・執行が適切に行われているかどうかのモニタリングにおいて、リスクアプ
ローチ調査として出張先等への事実確認を行うとともに、事前にその実施内容に関する周
知を行うことで、研究費不正に対する抑止力の強化を図る。
5.研究機関としての措置の内容
(1)処分について
本学の「教員の表彰および懲戒に関する規程」に基づき、査問委員会における審議を経た答
申を踏まえ、2024 年 6 月 21 日付で大門教授を停職(4 カ月)の懲戒処分とすることを理事会
において決定した。
(2)交付中の競争的研究費等の取扱いについて
大門教授に対して、2024 年 4 月 5 日付で交付中の科学研究費助成事業(学術研究助成基金助
成金)の使用停止措置を行った。
以 上
び出張報告を行っていたことに鑑みれば、大門教授に研究者としての基本的な倫理観の欠如
があったと言わざるを得ない。
(2)再発防止策
① 教職員に対する本事案の共有および注意喚起
本学として、今回の研究不正事案の内容を教職員に共有し、再発防止のための強い注意喚
起を行う。
② 研究費不正に対する危機意識醸成を目的とする意見交換会の実施
文部科学省「研究機関における公的研究費の管理・監査のガイドライン(実施基準)」の遵
守徹底に向けた統括管理責任者とコンプライアンス推進責任者との意見交換会を実施し、
研究費不正に対する危機意識の醸成を全学的に図る。
③ 宿泊証明の提出および実費精算
公的研究費に関して、出張システムでの学会・研究出張における出張報告書への添付書類
として、宿泊したことを証明できる根拠書類の提出を義務づけ、実費精算とすることを検
討する。
④ 研究実施にかかる根拠資料の提出
公的研究費に関して、出張システムでの学会・研究出張における出張報告書への添付書類
として、出張先での研究の実施を証明できる根拠資料の提出を義務づけることを検討する。
⑤ 航空運賃を他機関等が負担する場合における搭乗証明等の提出
出張システムでの学会・研究出張における出張報告書への添付書類として、航空運賃を他
機関等で負担してもらうケースでも、飛行機に搭乗した事実が証明できるものまたは他機
関等が航空券を手配したことが証明できる根拠書類の提出を義務付ける。なお、本対応は
今回の事案を受けて 2023 年度より実施しており、今後も必要に応じて実施方法等の見直
しを図り継続していく。
⑥ リスクアプローチ調査の実施
研究費の管理・執行が適切に行われているかどうかのモニタリングにおいて、リスクアプ
ローチ調査として出張先等への事実確認を行うとともに、事前にその実施内容に関する周
知を行うことで、研究費不正に対する抑止力の強化を図る。
5.研究機関としての措置の内容
(1)処分について
本学の「教員の表彰および懲戒に関する規程」に基づき、査問委員会における審議を経た答
申を踏まえ、2024 年 6 月 21 日付で大門教授を停職(4 カ月)の懲戒処分とすることを理事会
において決定した。
(2)交付中の競争的研究費等の取扱いについて
大門教授に対して、2024 年 4 月 5 日付で交付中の科学研究費助成事業(学術研究助成基金助
成金)の使用停止措置を行った。
以 上
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