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理事会文書第 434 号

2024 年 6 月 23 日

警察力導入に対する抗議声明

東京大学教養学部学生自治会理事会

1 警察力導入と大学の自治

6 月 21 日夜、授業料値上げ問題についての「総⻑対話」が実施されました。しかし、この

「対話」は学生の意見を大学本部に届ける場としては全く不十分なものであったため、「総⻑

対話」後に本郷キャンパスの安田講堂前で抗議集会が開催されました(本会はこの抗議集会と

関係がありません)。この集会においては、「総⻑対話」に参加した東京大学役員が講堂内に

いると思われたことから、講堂の出入口に集まってシュプレヒコールを上げるなどの運動がな

されましたが、全体的には非暴力を貫いており、警察が導入される必要性はなかったと参加学

生は証言しています。そして、私たちはこの証言を信用します。

ところが、この抗議集会に合わせて本郷キャンパスにパトカー3 台を含む警察官 30 人程度が

入構するとともに、警察官が抗議活動に参加していた一部の学生を取り囲んで詰問する事態が

発生しました(誤認逮捕をおそれて学生は早急に抗議運動を切り上げたため、警察官と抗議運

動をする学生との衝突はなかったとのことです)。私たちは、今回の事態に際して、東京大学

の構成員として、断乎たる抗議の姿勢を見せなければならないと確信しています。

そもそも大学には、学問の自由、思想の自由を保障するために国家からの自治が認められて

きた歴史があります。そして、これは憲法学の通説からも理論的に証明されています。警察は

国家権力の筆頭であり、これが大学に介入することは大学の自治を脅かすことに直結するた

め、極めて抑制的であるべきです。ましてや、本来は学内で解決すべき問題を解決するため

に、大学本部が自ら警察を導入すること、又は介入を認めることは、大学の自治の放棄である

として誹りを免れ得ません。

このような前提を踏まえて、東京大学においては、1969 年に大学本部と学生との間に締結さ

れた「東大確認書」で、「大学当局」が原則として学内の問題を解決する手段として警察力を

導入しないことが確認されました。仮に、大学側が今回の警察入構を事前に把握していた、又

はこれを要請したのであれば、最も強い非難を受けるべきです。そうでなかったとしても、警

察入構に対し、大学側が毅然とした態度でこれを拒もうとする姿勢が見られなかったという事

実は確実に非難されるべきことです。

2 本部広報課の声明への反論

今回の警察入構を受けて、本部広報課は 6 月 22 日に声明を出し、「学生を含む複数名が本学

施設(安田講堂)内に侵入し、制止しようとした警備員が怪我を負ったことにより、警察に通

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報する事態が生じた」と述べています。ところが、警察入構に居合わせた本会執行部員が現地

で警察官・守衛・抗議運動に参加した学生に話を聞いたところ、警察官は「講堂前で守衛と抗

議運動がもみ合いになり、守衛が殴られた」との通報があったと主張しており、安田講堂への

侵入は現場において誰の口からも問題として聞かれませんでした。なお、警察官の主張につい

ても、守衛・抗議運動に参加した学生ともに、もみ合いの事実や守衛に対する暴力の事実はな

かったと話していました。ましてや救急車の臨場も、当然確認されていません。

また、朝日新聞などは「男性数人が警備員と口論している」との通報が大学関係者よりあっ

たと報じており、講堂への侵入やもみ合いについては、警察力を導入した後に発生した、又は

捏造された事実であるおそれがあります。そして、警察への通報が講堂の警備を担当する守衛

ではなく(安田講堂警備室(守衛)は本会執行部員の聞き取りに対して通報への関与を明確に

否定しました。)、大学職員により行われたことも重要です。通報がなされた時点において

は、守衛の対応能力の範囲内であったにもかかわらず、いたずらに警察力が導入された可能性

があるのです。

広報課の声明は、「このような事態に至ったことは大変遺憾」と続きます。警察力の導入を

他人事のように捉え、むしろ学生の抗議行動に責任があるかのような書きぶりです。大学本部

には、大学に警察力を導入するということがどれだけ重大な意味を持つことなのかについての

認識が圧倒的に欠如していると言わざるを得ません。私たちはむしろ、学内での解決を試みる

努力もなく警察力が導入されたことに対し、「大変遺憾」と表明します。

広報課の声明は、「今後事実に基づき必要な対応をと」ると結んでいます。これはとりもな

おさず安田講堂前での授業料値上げ反対運動を排除していくという意思表明です。私たちは、

大学本部が、本来不要な場面で警察力を導入して、抗議運動が危ないという誤った印象を抱か

せ、大学側にとって都合の悪い言論を排除するかのような意図を持っているのではないかと憂

慮しています。言論の自由がより一層保障されるべき大学において、学生による自由な意思表

明の機会が阻害されかねないことに深刻な懸念を表明します。

3 今回の警察力導入の問題点

警察力の導入は、戦後一貫して大学における一大問題であり続けました。有名な 1960 年代の

東大闘争は、安田講堂を占拠した学生らに対して総⻑が警察力を導入してこれを排除したこと

から一気に学生・教職員を巻き込んで全学に広まり、講堂占拠に反対であった学生も大学への

警察力導入反対では一致し、総⻑らに対する抗議運動を展開したのです。そしてその結果締結

された「東大確認書」では、大学側が警察力導入を自己批判することになりました。

この背景には、大学が戦前・戦中に味わった言論弾圧による苦い経験を再び繰り返してはな

らず、そのために大学の自治を守り抜くという強い決意がありました。警察力の導入によって

鎮圧される対象となった学生側はもとより、鎮圧する側であった大学側も、警察力の導入を重

く受け止め、苦渋の決断でもって警察力の導入を決意していたのです。

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その証左に、キャンパスに暴力が跋扈していた大学紛争の時でさえ、大学執行部は「人命の

危険」「人権の重大な侵害」「緊急の必要」といったごく限られた場合に限るという基準を警

察力の導入に設け、かつ導入には部局⻑会議や総⻑の判断が必要とされていました。しかし今

回の通報は、守衛でさえその必要性を認識しないほど軽微な理由に基づきなされたものです。

現在の大学本部は、警察力を大学に導入することの意味を十分に理解しているとは到底思えま

せん。

そして、仮に講堂への侵入が事実であったとしても(ましてや口論程度であればなおさ

ら)、既に述べた大学の特殊な環境に照らして、まずは学内の警備態勢によってこれに対処す

るべきでした。また、警備室でさえ警察力の導入の必要性を感じないままに通報がなされた事

実は変わらず、警察力の導入があまりにも軽々に行われたことに対する非難もまた変わること

はありません。そして、学生ら「複数名」の侵入に対して警察官 30 人程度が臨場したことから

しても、軽々な警察力の導入が何をもたらすかは明らかです。

今回の警察力導入は、大学本部が検討を進める授業料値上げについて、ありもしない容疑を

捏造することで大学本部自らが警察という大学外部の力を導入し、もって抗議運動を鎮圧しよ

うとしたという見方もできます。このような不誠実な態度は、先人の血と汗の上に確立された

大学の自治を蹂躙するものであり、さらには苦渋の決断の結果警察力導入を行い、又はやむな

く容認してきたこれまでの大学執行部と学生の意思をも踏みにじるものです。

私たち学生は、もはや大学本部を信用することができません。当初教授会に対して授業料値

上げを「6 月末までに決定する」と示していたにもかかわらず、「総⻑対話」では「決定された

ことはない。これから検討していく。」と繰り返すのみの大学です。本部広報課が主張する

「もみ合い」の事実も、抗議運動に居合わせた学生・守衛双方が否定しています。大学本部は

「対話」を標榜する一方で、警察力を導入し、その結果抗議運動は沈黙しました。嘘を嘘で塗

り固める大学本部には、深い失望の意を表明します。

4 結論と呼びかけ

本会理事会は、今回の警察力導入を大学の自治を脅かすものとして最も強い言葉で非難しま

す。そして、大学本部(総⻑)に対し、学内外に対して直ちに事実を説明して弁明の機会を設

けるとともに、今後の警察力との向き合い方について「東大確認書」の理念を再度確認するよ

う求めます。

東京大学の全ての学生及び職員の皆さんに訴えます。東京大学を構成する一員として、今回

の警察力導入に関心を向けるとともに、これが歴史的・理念的に異常なことであることを認識

し、抗議の意思を表明することを強く求めます。

東京大学の全ての教員の皆さんに訴えます。学問の自由が警察によって脅かされた戦前の歴

史を直視し、今回の警察力導入が教員の皆さんでさえ関知しないところでなされたことに対し

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て危機感を共有するようお願いします。そして、私たちと連携して大学本部に対して抗議の意

思を表明することを強く求めます。

この抗議文を読んでいただいた全ての方に訴えます。国立大学の授業料値上げ問題が社会的

問題になっている現在、今回の警察力導入は、国立大学の意義とその役割について考え直す重

大な契機となります。学問がどのように行われるべきなのか、大学はどんな存在でどのように

運営されるべきなのか、全国⺠的な議論がなされることを切に希求します。