特許第6228564号(P6228564)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6228564
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】爬虫類用脱皮促進組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/194 20060101AFI20171030BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20171030BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20171030BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20171030BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
   A61K31/194
   A61K45/00
   A61K47/26
   A61P17/00 171
   A61P43/00
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-80932(P2015-80932)
(22)【出願日】2015年4月10日
(65)【公開番号】特開2016-199502(P2016-199502A)
(43)【公開日】2016年12月1日
【審査請求日】2017年6月19日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000187714
【氏名又は名称】松下工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076406
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 勝徳
(74)【代理人】
【識別番号】100117097
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 充浩
(73)【特許権者】
【識別番号】597029310
【氏名又は名称】セパレ−タ−システム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076406
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 勝徳
(72)【発明者】
【氏名】松下 行利
(72)【発明者】
【氏名】倉地 辰盛
【審査官】 馬場 亮人
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第103125772(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第101406482(CN,A)
【文献】 特開2002−234845(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/194
A61K 45/00
A61K 47/26
A61P 17/00
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
G−Search
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クエン酸及びその塩を有効成分として含む爬虫類用脱皮促進組成物。
【請求項2】
クエン酸の塩が、クエン酸三ナトリウムである請求項1に記載の爬虫類用脱皮促進組成物。
【請求項3】
抗生物質を含む請求項1に記載の爬虫類用脱皮促進組成物。
【請求項4】
糖類を含む請求項1に記載の爬虫類用脱皮促進組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱皮促進組成物に関し、より詳しくは爬虫類用脱皮促進組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘビや蜥蜴等の爬虫類は、そのコミカルな動きやマニア性からペットとして大変人気があり、一昔前までは非常に珍しかった品種も、近年では多くのペットショップで取り扱われるようになっている。
【0003】
さて、一般的に、爬虫類は定期的に脱皮しながら成長する。ただ、自然界で生育するのとは異なり、ペットとして狭い空間で生育すると、ストレスなどを原因として脱皮が完了しない状態、いわゆる脱皮不完全になることが多い。
【0004】
脱皮不全は、爬虫類の成育にとって好ましくはなく、細菌感染症や発育不良を引き起こし、重篤な場合には細菌感染症が悪化して自ら手足を切り落とすことさえある。
【0005】
このような脱皮不完全を解消するためには、脱皮不完全部分にお湯や水を掛けて、人手で皮を剥いていた。
【0006】
しかし、人手で皮を剥く際には、人手が掛かるとともに、爬虫類に噛まれることもあり、それに伴って人が感染症を罹病することもあった。また、爬虫類を漬けることによって脱皮を促進する組成物(非特許文献1を参照。)は既に開発されてはいるものの、効き目が不十分であり、完全に脱皮させられなかった。さらに、人手や前記組成物によって脱皮させた場合、脱皮後に爬虫類が感染症に罹病することもあった。
【0007】
さて、爬虫類の皮膚は我々人間を含めた動物と同じく表皮と真皮に分けられる。表皮は、外界からの刺激に対する防御組織である。また、爬虫類は、表皮の外側に厚いケラチン層を有し防御機構に加えて水分蒸発を防ぐ、いわゆる乾燥に耐えられる構造を持っている。
【0008】
このケラチン層は、皮膚の外側から硬いケラチン(βケラチン)、脂肪層、軟らかいケラチン(αケラチン)の3層構造を有している。そして、この3層構造により水分の蒸発を防ぐと同時に外界からの有害物質の侵入を防いでいる(非特許文献2を参照。)。
【0009】
ケラチン層を構成するケラチンと脂肪は、表皮から分泌される。そして、我々人間を含めた哺乳動物では、ケラチンは継続的に分泌されて入れ替わる(いわゆる垢として脱落。)。これに対して、爬虫類ではケラチンの分泌が一時的に休眠する期間があり、休眠期間後に新生されたケラチン層と休眠期間前の古いケラチン層とは連続しない。そのため、新旧のケラチン層の間に空間ができ、この空間より旧ケラチン層が脱落、いわゆる脱皮する。この脱皮の頻度は、飼育環境にもよるが理想的な環境(自然状態に近い環境)では、小型のヘビでは数週間に一度とされている。一方、大型のヘビでは年に一度程度とされている。
【0010】
また、脱皮時の体温は、外界温度よりも0.6℃高いことが分かっている。これは、旧ケラチン層を新ケラチン層より脱落させるため、及び脱皮前後の代謝活性を高めるため、多量のエネルギーを必要とするからであると推定されている。より具体的には、新・旧ケラチン層の空間に水溶液を貯留させるため、激しい体動によって脱皮を促進するのに必要なエネルギーを供給するため、及び脱皮直前、直後の新陳代謝のため、多量のエネルギーを必要とすると推定されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】"シードイース"、 [online]、神畑養魚株式会社、[平成26年11月15日検索]、 インターネット< http://www.kamihata.co.jp/reptile/r_0303.html >
【非特許文献2】M.C.Tu 他.J. Experi. Biology. 3019-3030, 2002.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、人手を掛けることなく、爬虫類の脱皮を簡易に促進することができるとともに、脱皮後の爬虫類の健康を損なわない爬虫類用脱皮促進組成物を提供することを課題とする。
【0013】
また、本発明は、爬虫類の脱皮直後の感染予防ができ、ヒーターによる火傷などの飼育中の損傷による組織修復を速やかに治癒できる爬虫類用脱皮促進組成物を提供することも課題とする。
【0014】
さらに、本発明は、飼育者に無害であるとともに、飼育者が爬虫類に噛まれた際の損傷に対する感染予防ができる爬虫類用脱皮促進組成物を提供することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
発明者らは、前記推定に基づいて、クエン酸とその塩とを含む溶液中の分子状クエン酸は、表皮の水分の蒸発を防ぐと同時に外界からの有害物質の侵入を防いでいる三層構造を容易に透過できる、と考えた。
【0016】
また、発明者らは、前記推定に基づいて、前記分子状クエン酸が、脱皮前、脱皮中及び脱皮直後の新陳代謝の表皮細胞内に入って、表皮細胞中のクエン酸回路(TCAサイクル)を経てエネルギー源であるATPを産生し、脂肪、コレステロール、タンパク質、核酸などを合成する、と考えた。
【0017】
前記の考えに基づいて鋭意検討した結果、発明者らは、分子状クエン酸が爬虫類の表皮の外層を形成しているケラチン層の新陳代謝を活性化して、脱皮すべきケラチン層(旧ケラチン層)と新生されたケラチン層(新ケラチン層)との分離を促進するとともに、全身の旧ケラチン層を完全に(全身の旧ケラチン層を保ったまま)新生ケラチン層より分離することを見出した。そして、これらの知見に基づいて、本発明を完成させた。
【0018】
すなわち、本発明の爬虫類用脱皮促進組成物は、クエン酸とその塩とを有効成分として含むものである。なお、クエン酸の塩としては、クエン酸三ナトリウムが好ましい。また、本発明の爬虫類用脱皮促進組成物は、抗生物質や糖類を含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の爬虫類用脱皮促進組成物は、爬虫類の皮膚に噴霧等するだけで、容易に爬虫類の脱皮を促進できる。これにより、爬虫類の脱皮不全による皮膚疾患を抑制して、爬虫類を健康な状態で飼育できる。
【0020】
また、本発明の爬虫類用脱皮促進組成物は、爬虫類の脱皮直後の感染予防もでき、ヒーターによる火傷などの飼育中の損傷による組織修復も速やかに治癒できる。
【0021】
さらに、本発明の爬虫類用脱皮促進組成物は、飼育者に無害であるとともに、飼育者が爬虫類に噛まれた際の損傷に対する感染予防もできる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、ガーデンツリーボアの噴霧前の状態を撮影した写真である。
図2図2は、ガーデンツリーボアの噴霧前後の変化を示す写真である。
図3図3は、ガーデンツリーボア全体の噴霧前後の変化を示す写真である。
図4図4は、コースタルカーペットパイソン全体の噴霧前後の変化を示す写真である。
図5図5は、ヒョウモンヒトカゲの噴霧前の状態を撮影した写真である。
図6図6は、ヒョウモンヒトカゲの噴霧後の状態を撮影した写真である。
図7図7は、ヒョウモンヒトカゲに蒸留水を噴霧した結果(実験対照)を撮影した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の爬虫類用脱皮促進組成物は、クエン酸及びその塩を有効成分として含むものである。なお、クエン酸の塩としてはクエン酸三ナトリウムが好ましい。また、本発明の爬虫類用脱皮促進組成物は、抗菌剤や糖類を含んでいてもよい。各成分の詳細について、以下に説明する。
【0024】
(1)クエン酸及びその塩
クエン酸の塩を構成する陽イオンとしては、生物に対して無害で薬理学的に使用可能な公知のものであれば、特に限定することなく使用することができる。使用可能なクエン酸の塩として、具体的には、クエン酸一、二、三ナトリウム及びクエン酸一、二、三カリウムが例示できる。中でも、pH調整が容易であるため、クエン酸の三価のナトリウム塩及びカリウム塩が好ましく、心停止等の危険性がないことからクエン酸三ナトリウムがより好ましい。なお、クエン酸の塩は、単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0025】
さて、クエン酸(示性式 HCOOH-CH2-COH(COOH)-CH2-COOH pKa1 酸解離度定数 3.13)の3つのカルボキシル基(−COOH)は、pH依存性によって、分子状クエン酸(−COOH)とイオン化クエン酸(−COO-とH+にイオン化)の濃度比が異なる。例えば、第2、3酸解離を無視して第1酸解離の分子状クエン酸とイオン化クエン酸の濃度比を計算すれば、pH2.1では10:1、pH3.1では1:1、pH 4.1では1:100、pH6.3では1:10,000である。
【0026】
また、分子状クエン酸は容易にケラチン層や脂質層に透過し細胞内に流入するのに対して、イオン化クエン酸は脂質層即ち細胞膜には透過できない。そのため、爬虫類用脱皮促進組成物のpHは、1.5以上、4.0以下が好ましく、3.0以下がより好ましい。それは以下の理由による。
【0027】
爬虫類用脱皮促進組成物のpHが1.5以下となると、90%以上の分子状クエン酸が細胞内に入り、細胞内pHは7.4となる。この状態では、細胞内で分子状クエン酸はほぼ100%解離してH+イオンを放出するので、細胞内を酸性にして細胞障害が生じる。また、爬虫類用脱皮促進組成物のpHが4.0以上となると、分子状クエン酸の存在はごく僅かである。
【0028】
爬虫類用脱皮促進組成物のpHを上記の範囲に納めるため、クエン酸とその塩の配合量は適切に調整しなければならない。例えば、爬虫類用脱皮促進組成物がその成分含む粉末組成物を蒸留水等で希釈して調製するものであって、爬虫類用脱皮促進組成物中の粉末組成物の濃度が3重量%/Lであり、かつクエン酸の塩としてクエン酸三ナトリウムを使用する場合、粉末組成物中の配合量は、クエン酸が25重量%〜40重量%、クエン酸三ナトリウムが8重量%〜18重量%である。
【0029】
(2)抗生物質
本発明の爬虫類用脱皮促進組成物は、脱皮による治癒効果や感染予防効果を高めるため、抗生物質を含んでいてもよい。抗生物質としては、抗菌剤、抗真菌剤、抗ウィルス剤などの柔らかくて感染症に弱い脱皮直後の皮膚を感染症から守る公知の抗生物質であれば特に限定することなく使用することができる。
【0030】
具体的には、抗菌剤としては、β-ラクタム系、アミノグリコシド系、サルファ剤系の抗菌剤などが挙げられる。また、抗真菌剤としては、ポリエン系、フロロピリミジン系、イミダゾール系の抗真菌剤などが挙げられる。さらに、抗ウィルス剤としては、核酸系逆転写酵素阻害剤、非核酸系逆転写酵素阻害剤、プロテアーゼ阻害剤などが挙げられる。
【0031】
なお、これら抗生物質は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。中でも、外用薬、うがい薬として人体に使用され安全性が確認されているとの理由から、セチルピリジニウムクロリドが好ましい。また、爬虫類用脱皮促進組成物中の抗生物質の濃度は、使用する抗生物質の種類に応じて、抗菌効果と安全性が担保できる範囲内の任意の値に設定できる。
【0032】
(3)糖類
本発明の爬虫類用脱皮促進組成物は、粘液性、ぬめりを持たせて爬虫類の皮膚に定着し易くするため、糖類を含んでいてもよい。糖類としては、公知の水溶性の糖類であれば特に限定することなく使用できる。具体的には、単糖類としては、ブドウ糖、果糖、ガラクトース、マンノース等が挙げられる。また、二糖類としては、ショ糖、乳糖、麦芽糖、トレハロース、セロビオース等が挙げられる。さらに、三糖類以上のオリゴ糖としては、スタキオース、マルトトリオース、マルトテトラオース、マルトペンタオース等が挙げられる。加えて、多糖類としては、デキストラン、プルラン、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0033】
なお、これらの糖類は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。中でも、安価で入手し易いとの理由から、二糖類が含まれることが好ましく、乳糖と麦芽糖がより好ましい。また、爬虫類用脱皮促進組成物中の糖類の濃度は、使用する糖類の種類に応じて、爬虫類の皮膚への定着効果と溶解性とが担保できる範囲内の任意の値に設定できる。
【0034】
(4)その他
本発明の爬虫類用脱皮促進組成物は、その効果を損なわない範囲であれば、(1)クエン酸及びその塩、(2)抗生物質、(3)糖類以外の公知の物質を含んでいてもよい。例えば、pHを調製するpH調整剤、安定化剤、香料などを含んでいてもよい。
【0035】
(5)調製方法
本発明の爬虫類用脱皮促進組成物は、水溶性成分を含む組成物を調製する公知の方法により調製することができる。例えば、各成分を秤量して混合し、これらを水に溶かしてもよい。また、各成分の濃縮液(例えば10倍液)を調製したのち、濃縮液を水と混合してもよい。さらに、必要に応じて加熱・冷却やpH調整などの公知の溶解操作を加えてもよい。
【0036】
(6)爬虫類への投与方法
本発明の爬虫類用脱皮促進組成物は、皮膚と直接触れる公知方法によって爬虫類に適用される。具体的には、爬虫類用脱皮促進組成物を噴霧器に入れて爬虫類の皮膚に噴霧してもよく、爬虫類用脱皮促進組成物を洗面器等に入れて爬虫類を漬けてもよい。
【0037】
以下、本発明について実施例に基づいてより詳細に説明する。なお、本発明の特許請求の範囲は、以下の実施例によって如何なる意味においても制限されない。
【実施例1】
【0038】
1.脱皮促進組成物の調製
クエン酸30重量%、クエン酸三ナトリウム15重量%、乳糖40重量%、麦芽糖10重量%、セチルピリジニウムクロリド2.5重量%、無水ケイ酸2.5重量%の割合となるように各成分を秤量したのち、秤量した各成分を混合して粉末組成物を調製した。調製した粉末組成物の濃度が3重量%/Lとなるように蒸留水に溶解して、脱皮促進組成物を調製した。
【実施例2】
【0039】
2.脱皮促進組成物の評価
実施例1で調製した脱皮促進組成物を爬虫類に噴霧し、その脱皮促進効果を調べた。その詳細について、以下に説明する。なお、実験対照には、蒸留水を使用した。
【0040】
(1)実験動物
実験動物には、市販の爬虫類であるガーデンツリーボア(生後2年、雄)、コースタルカーペットパイソン(生後約2年、雌)、ヒョウモンヒトガゲ(生後3年、雄)を使用した。
【0041】
(2)実験方法
爬虫類に噴霧し易くするため、調製した脱皮促進組成物を噴霧器に注ぎ入れて、爬虫類の全身に2日1回、10日間に渡って噴霧し、脱皮の状態を目視により確認した。なお、噴霧の前後に爬虫類を写真撮影した。その結果を図1図7に示す。
【0042】
(3)実験結果
1)ガーデンツリーボアの場合
図1は、ガーデンツリーボアの噴霧前の状態を撮影した写真である。なお、図1(a)は通常の写真であり、図1(b)は脱皮不全箇所を白線で表示した写真であり、図1(c)は脱皮不全箇所を画像処理により強調した写真である。このガーデンツリーボアは、全身に2重脱皮不全症が発症し、画像処理で強調した部分の皮膚が硬くなり、その部分は人手を加えなければ剥けない状態になっていた。
【0043】
図2は、図1のガーデンツリーボアの噴霧前後の変化を示す写真である。なお、図2(a)は脱皮促進組成物の噴霧前の写真であり、図2(b)は脱皮促進組成物の噴霧後の写真である。図2に示すように、脱皮促進組成物の噴霧によって2重脱皮不全が解決し、皮膚の色彩も完全に発色することが分かった。
【0044】
図3は、図1のガーデンツリーボア全体の噴霧前後の変化を示す写真である。なお、図3(a)は脱皮促進組成物の噴霧前の写真であり、図3(b)は脱皮促進組成物の噴霧後の写真である。図3に示すように、ガーデンツリーボアでは脱皮促進組成物の噴霧によって、皮膚の色彩がより鮮やかに発色し、柄もよりはっきりすることが分かった。
【0045】
2)コースタルカーペットパイソンの場合
図4は、コースタルカーペットパイソン全体の噴霧前後の変化を示す写真である。なお、図4(a)は脱皮促進組成物の噴霧前の写真であり、図4(b)は脱皮促進組成物の噴霧後の写真である。図4に示すように、コースタルカーペットパイソンでは脱皮促進組成物の噴霧によって、完全に脱皮するとともに、皮膚の色彩がより鮮やかに発色することが分かった。
【0046】
3)ヒョウモンヒトカゲの場合
図5は、ヒョウモンヒトカゲ全体の噴霧前の状態を撮影した写真である。なお、図5(a)は全体的に皮膚が浮き始め、皮膚の色が白くなった脱皮直前の状態を示す写真である。また、図5(b)は皮膚が部分的に脱皮した状態を示す写真である。図5に示すように、本発明の脱皮促進組成物を噴霧しない状態では、皮膚の一部が捲れ、感染症に罹患し易くなる。
【0047】
図6は、図5のヒョウモンヒトカゲに本発明の脱皮促進組成物を噴霧した結果を示す写真である。なお、図6(a)は噴霧された体の一部分を拡大した写真であり、この写真に示すように、噴霧された脱皮促進組成物は、弾かれることなく皮膚のケラチン層まで浸透することが分かった。
【0048】
また、図6(b)は全体写真であり、この写真に示すように、本発明の脱皮組成物の噴霧によって爬虫類を完全に脱皮できることが分かった。さらに、この写真では分かり難いが飼育中のけがや火傷による傷も治療できたことが分かった。
【0049】
図7は、図5のヒョウモンヒトカゲに蒸留水を噴霧した結果(実験対照)を示す写真である。図7(a)は蒸留水が噴霧された体の一部分を拡大した写真であり、噴霧された蒸留水は直ぐに流出してしまうことが分かった。また、図7(b)は、体全体を蒸留水に浸した状態を示している。図7(b)に示すように、体全体を蒸留水に浸しても、蒸留水が皮膚に浸透して脱皮を促進しないことが分かった。
【0050】
このように図5図7から、ヒョウモンヒトカゲでは、脱皮促進組成物の噴霧によって、完全に脱皮するとともに皮膚にできた傷も治療できることが分かった。
【0051】
4)まとめ
図1図7から、本発明の脱皮促進剤を爬虫類に噴霧した場合には、綺麗で均一に脱皮し、脱皮した皮も一本にまとまっていることが確認できた。一方、実験対照である蒸留水を爬虫類に噴霧した場合には、蒸留水は爬虫類の皮膚に弾き返されて浸透せず、脱皮不完全になることが確認できた。以上の結果から、本発明の脱皮促進組成物が、爬虫類の脱皮を促進する効果を備えていることが確認できた。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7