_______________________
数年前
吉川とはクラスの暴君で、ことあるごとに女子に突っかかってくるうざい男子。
私はさっき吉川と喧嘩をした。
結局私が勝ったけど、少しだけ怪我をしてしまった。
しかも先生に怒られたし。
吉川と同じ空間にいるだけで腹が立つ。
ほら今だって、「ざまぁ!」とか言いながら私を煽ってる。
都合のいい嘘をつき、私は授業を抜け出した。
保健室に行くと誰かがベッドの上で寝ていた。
サボりの私と体調不良の男の子とでは、明らかに保健室にいる理由の重さが違いすぎる。
ちょっとだけ罪悪感。
第一印象、それは「めんどくさそう」だった。
初対面の人にここまで距離感が近いのは逆にすごいと思う。
結局その日に交わした会話はそれだけで、その後は男の子の母親が迎えに来て帰ってしまった。
数日後、私はまた授業をサボりに保健室へ行った。
そしたら前に見た男の子がいた。
まず会ってみて思ったことは、その頬の絆創膏はなんだろう、ということ。
次の瞬間、2人同時に質問をしていた。
驚いて私が固まっていると、その男の子は笑った。
「女の子」という言葉にドキッとした。
私が女の子?
男子はみんな「野蛮」とか「女じゃない」とか言うのに。
何かと共感出来たり、波長が合う所もあって私達はすぐに仲良くなった。
その後、私達は「また明日。」という約束をして別れた。
翌日、私は再び保健室へ行った。
ちなみに今日は「頭が痛いから」という仮病を使ってきた。
案の定、その男の子は居た。
それからというもの、毎日のように私は保健室に通い続けた。
両親の心配する声も無視をし続けて、保健室に通っていた。
それと共に、日を重ねるごとに男の子とは仲良くなっていった。
そんなある日だった。事件が起きたのは。
その日から、保健室には一切近づかず、校内でその男の子と会っても会釈をするだけだった。
だんだんと話さなくなって疎遠になり、完全に関わらなくなっていった。
だから本当に驚いた。
高校の入学式で出会ったあの瞬間は。
_______________________
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!