MAMOR 最新号

『MAMOR』2024年8月号

8月号

定価:780円(税込)

 全国で15個ある陸上自衛隊の師団・旅団に編成されている偵察隊をメインに、普通科部隊の情報小隊などにも配備されているのが『オートバイ(偵察用)』だ。通称「偵察オート」と呼ばれるこのバイクはオフロードタイプで、高い機動力と悪路走破性などを備えていることから、重要な装備となっている。災害派遣活動の報道などで目にしたことがある読者もいるかもしれない。

 この偵察オートとは、どんな特徴があり、どういう任務で使われているのだろうか。群馬県相馬原駐屯地に所在する、第12旅団に属する第12偵察隊に取材を敢行し、偵察オートの実力に迫ってみた。

「偵察オート」のスペックを紹介

画像: 「偵察オート」のスペックを紹介

オートバイ(偵察用)
 カワサキの市販オフロードバイク「KLX250」をベースに、自衛隊の偵察車両として必要な装備と改造が施されたマシン。

 エンジンのスペックや車体サイズ、タイヤやブレーキなどの性能、燃料タンク容量などは市販車と同じだが、車体各部にガード類が取り付けられているほか、フレームの一部が補強されている。車体の色はOD(オリーブドラブ:濃緑色)に塗装され、フレームやカウリング類、スイングアームなども同様に塗装が施されている。

 フロントフォークのように市販車では無塗装の金属部分も、光が反射して目立たないようODか黒に塗られている。イベントでのドリル展示や演習での作戦行動時、航空機に搭載する際などはバックミラーを取り外す。

<SPEC>
全長:約2.1m 全幅:約0.9m 全高:約1.2m 重量:約154㎏ 最高速度:約135㎞/h 乗員:1人 エンジン形式:4ストローク水冷DOHC単気筒 排気量:249cc 最高出力:24PS 最大トルク:2.1kgf・m 駆動方式:チェーン 変速機形式:リターン式6段

偵察オートの特徴的な装備

味方に位置が伝わる最小限のランプを装備

画像: ヘッドライト右脇の円形のランプが管制灯火

ヘッドライト右脇の円形のランプが管制灯火

画像: テールランプの両端には管制灯火とブレーキランプを備える

テールランプの両端には管制灯火とブレーキランプを備える

 演習時の夜間走行では、敵に見つからないようヘッドライトやウインカーなど灯火類はカバーをかぶせて光が漏れないようにするが、味方に位置が分かるよう、暗闇でもわずかに判別できる最小限のランプ(管制灯火)をヘッドライト右脇とテールランプ右側に装備する。後部のテールランプ左側はブレーキランプの役割を持つ。

タッチパネルで無線を操作

画像: 左ハンドルのグリップ横には通話用のスイッチを搭載

左ハンドルのグリップ横には通話用のスイッチを搭載

 無線機本体は車体後部にあるが、操作はハンドル中央のタッチパネル端末で行える。左ハンドル右側には通話する際に押すスイッチがある。

無線機用のキャリアを装備

画像: 無線機用のキャリアを装備

 車体後部右側には無線機を収納するための専用キャリアを備えている。無線は取り外して持ち運びができ、アンテナは移動時などに折り畳みが可能。

市販車にはない特徴も

自衛隊の桜のマーク

画像: 自衛隊の桜のマーク

 フロントフェンダーもODに塗られているが、自衛隊車両であることを表す桜のマークが白色で表示されている。

各種ガードを装備

画像1: 各種ガードを装備
画像2: 各種ガードを装備

 ヘッドライトやエンジンの脇、車体後部などには、転倒時の車両破損防止や隊員の保護目的でパイプ状のガードが装着されている。

たくさん積めるリアキャリア

画像: たくさん積めるリアキャリア

 リアシートの後ろ側には大型のキャリアを装備。遠方の演習場への移動や演習中には食料や着替えなどを入れた大きな背のうを載せて固定する。

消灯スイッチを増設

画像: 消灯スイッチを増設

 市販車にはない灯火管制用スイッチを装備。0番は電源断、1番はブレーキランプのみ、2番は全点灯、3・4番は夜間走行(管制灯火)用。

これが偵察オート隊員の装備だ!

 オート隊員は、普通科隊員などが着る迷彩戦闘服と半長靴で乗車する。サスペンダーには弾薬を入れる弾のうを装備。ヘルメットとゴーグルは公道で乗車するときのもので、演習時には鉄帽を着用し、敵との遭遇を想定し89式5.56mm小銃を携えて走行する。イベントでは、走りながら立位での射撃や、バイクを倒して盾にした状態での射撃などを披露する。

冬季用乗車服

 冬季用に厚手のオートバイ乗車服があるが、動きにくいため実際に着る隊員は少なく、一般隊員用の防寒戦闘服外衣2型や雨衣などで寒さ対策をすることが多いそう。

偵察オートは「過酷な訓練に耐えうる相棒」

画像: 偵察オートは「過酷な訓練に耐えうる相棒」

\隊員の声/

「訓練では倒したり小川を渡ったり、荒れた地形や獣道を走るなど、とにかく過酷な状態で走りますが故障はほとんどありません。単なる移動手段だけでなく、時には身を守る存在でもある頼もしい相棒です。実は私有車として同じ車種を所有する隊員も多いんですよ」【第12偵察隊 飯沼裕慧 陸曹長】

(MAMOR2021年8月号)

<文/野岸泰之 撮影/楠堂亜希>

自衛隊ライダー、参上!

 15歳から18歳という、遊びたい盛りの青春期を、わが国を守るために、勉学と訓練に費やす若者たちがいる。

 その学び舎は、高機能化・システム化された防衛装備品を運用する自衛官となる者を育成する陸上自衛隊高等工科学校。そんな陸上自衛隊高等工科学校で年に1度開催される「開校祭」の翌日、工科学校の創立68周年記念行事が執り行われた。

 記念行事には、同校の後援会会員の国会議員や歴代学校長、各協力団体の会長などの来賓が出席。開校祭と同様に一般開放され、約2000人もの人たちが来場した。その様子をレポートします。

創立68周年記念行事に生徒たちも参加

画像: 創立68周年記念式典に先立ち、行事に参加する来賓に向けて、吹奏楽部の生徒たちによる栄誉礼が行われた

創立68周年記念式典に先立ち、行事に参加する来賓に向けて、吹奏楽部の生徒たちによる栄誉礼が行われた

 陸上自衛隊では1955年、科学技術の発展により近代化する自衛隊の装備品に対応できる人材を育成するため、「生徒制度」を発足した。

 63年には防衛大臣直轄の教育機関として「少年工科学校」を創立。2010年には、その伝統を継承しながら、任務の多様化や高等学校教育の変化を受け、同校を「陸上自衛隊高等工科学校」として再編した。

 こうした歴史を歩んできた工科学校の創立68周年記念行事では、快晴の空の下、記念式典と生徒隊による観閲行進、ドリル演技、和太鼓演奏を実施した。

生徒への期待を口にした学校長

画像: 「本校は創設以来、伝統を継承しつつも、時代の変革に応じて組織、教育内容を充実・発展させてまいりました」と語る今井陸将補

「本校は創設以来、伝統を継承しつつも、時代の変革に応じて組織、教育内容を充実・発展させてまいりました」と語る今井陸将補

 式辞では学校長の今井俊夫陸将補が、記念行事の出席者への感謝の言葉を述べた後、これまでの同校の歩みを振り返り、今後の抱負について語った。

 そして、「将来の陸上自衛隊の主役を担う覚悟で職務にまい進し、信頼の下、各人が成長しつつ、役割をしっかりと果たしてもらいたい」と生徒への期待を口にした。

多くの来場者でにぎわいをみせた創立68周年記念行事

画像: 講堂のロビーに飾ってある、巨大な校章のレプリカ。向かって右が現在の「飛桜馬」(天かける大望)で左は少年工科学校時代のものだ

講堂のロビーに飾ってある、巨大な校章のレプリカ。向かって右が現在の「飛桜馬」(天かける大望)で左は少年工科学校時代のものだ

 記念行事の後には、装備品展示や広報展示などが行われた。10式戦車16式機動戦闘車、戦車が故障・損傷した際に回収などを行う11式装軌車回収車などの展示を、来場者が興味深そうに見ていた。

 また、講堂内にある巨大なサイズの校章のレプリカや、生徒たちの1日のタイムスケジュールを示した広報展示にも、多くの人が見入っていた。

 こうして、開校祭と同じように、多くの来場者でにぎわいをみせた、2日にわたる一連の行事は盛会のうちに幕を閉じた。

(MAMOR2024年2月号)

<文/魚本拓 撮影/増元幸司 写真提供/防衛省>
※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです

開校祭アルバム

 自衛官の髪型は、黒髪で端正が基本ですが、品位を保つことができれば、十分おしゃれを楽しめます。マモルでは、すてきな隊員の姿は最高の広報になると信じ、品位を保ちながら、おしゃれでカッコイイ髪型を提案することにしました。一般の方も応用できるスタイルなので、ぜひチャレンジを!

担当するヘアスタイリスト:keiko
ヘアスタイリスト歴22年。東京・表参道にある「NORA HAIR SALON」にてサロンワークをこなすほか、アーティストなどのヘアメークも担当。「髪質や顔形から似合う髪型を提案します。自衛隊の皆さん、お待ちしています!」

BEFORE:

モデル隊員

【青木 淳 3等空曹】

任務内容

航空自衛隊航空中央業務隊に所属。空自で使用する物品を出荷、受領、保管するなど、主に倉庫業務を行う。

髪型の悩み

「クセ毛で髪型がまとまらないのが悩み。かといって、以前、坊主頭にしたときは、頭のてっぺんがボコッと膨らんでいて似合わないなぁ~と。しかたなく可もなく不可もない今の髪型に落ち着いている状態です」

憧れの芸能人

「俳優の山田孝之さん。あんなふうにひげが似合う渋い男になりたいです!」

ヘアカルテ(keikoさんからのコメント)

 もみあげにクセがあるのと、髪全体、特に襟足がペタッと張り付くのが気になりますね。また、つむじより右側の毛がはねやすいようです。

 ご本人は髪に動きがつけにくいとおっしゃっていますが、髪質を見ると、そんなことはなさそうです。つむじ周りの毛は動かしやすいよう長さを残して切り、クセを生かすスタイルに仕上げたいと思います。

AFTER:

サイドはすっきり、トップはふんわりのメリハリスタイルに

画像: サイドはすっきり、トップはふんわりのメリハリスタイルに

 後頭部が平らな絶壁を隠すためトップの毛は長めに残し、ボリュームをもたせる。

 つむじの位置が向かって右寄りなので、毛が左に流れるようドライヤーをあてる。

keikoさんが解説!カットのポイントは

 サイドの耳周りと襟足はバリカンで3ミリの長さにカット。それより上部は、外側の毛が長く、内側の毛が短くなるようグラデーションカットにし、丸みを出します。頭頂部(つむじ周り)は長さを残し、毛先に斜めにはさみを入れてギザギザな切り口にし、動きを出しやすくします。

 前髪は、向かって左寄りに分け目があるので、右に流れるよう短めにカット。仕上げにハードタイプのワックスを全体に付け、下から上に指を入れて形を整えます。

ARRANGE:

前髪を立ち上げると表情も豊かに。髪型で休日のリラックス感を演出

画像: 前髪を立ち上げると表情も豊かに。髪型で休日のリラックス感を演出

 全体的にグリースを付け、ウエットな質感にします。

 前髪はドライヤーの風をあてながらしっかりと立ち上げ、7対3くらいに分け、トップの毛先は指先でつまんで自由に遊ばせ、ラフ感を出します。

「これまでは、クセ毛や頭の形を考えてこれしかないと同じ髪型を続けていましたが、クセ毛を生かす、頭の形をカバーすることで、新しい髪型を発見できました!」

<撮影/増元幸司>

(MAMOR2023年1月号)
※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです

自衛隊ヘアスタイル

最新号のご案内(6月21日発売 定価:780円)

画像: 最新号のご案内(6月21日発売 定価:780円)

自衛隊の任務を支える道具たち 誰も知らない防衛装備品54

「衛装備品」というと、戦車や護衛艦や戦闘機などを思い浮かべますが、国を守る道具は、私たちに身近なモノから、「これは何?」と見ただけでは用途が分からないモノまで、多岐にわたります。

 そこで、マモルでは、自衛官が任務を遂行するために、日ごろから使っていて、しかし、私たちの目に触れることが少ない道具を中心に紹介します。「能書は必ず好筆を用う」といいます。はたして、国防の志士たちが駆使する道具とは?

能登を救え! 改めて実力を示した自衛隊のLCAC(エルキャック)とは?

 海上自衛隊に25年以上前から配備されているホバークラフト、LエルキャックCAC 。

 2024年に、持ち前の実力を改めて発揮し、注目を集めました。この年の元日に能登半島を襲った地震は海底を隆起させたため、多くの港に艦艇が入れなくなってしまい、さらに土砂崩れなどで
陸路もふさがれて、救助隊が被災地に入れないという事態がおきました。

 そこで、空気の力で船体を浮かせて、深度の浅い海でも高速で航行でき、そのまま砂浜へ上陸できるLCACが、多くの救難物資や救助隊員を運び、能登を救ったのです。われらがヒーローLCAC 、その実力を今一度紹介します。

隊員食堂:「サンドイッチセット」 海上自衛隊 多用途支援艦『すおう』

防人たちの女神:相楽伊織 in Narashino

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 島国・日本の国防において脅威となるのが敵の潜水艦です。隠密行動をする“海の忍者”の侵入を防ぐため、海上自衛隊は日夜、任務に就いていますが、どうやって海中の潜水艦を発見するのか知っていますか? 

 世界トップレベルといわれる海自の潜水艦探知能力を知るためにVRの対潜水艦戦をシミュレーションしてみました。そこで繰り広げられる作戦を、実況アナとして女優・五島百花さんが読者の皆さんに中継し、元自衛艦隊司令官・倉本憲一氏に分かりやすく解説していただきます。

 世界トップレベルといわれる海自の潜水艦探知能力を知るために、VR(バーチャル)の対潜水艦戦をシミュレーションを作成した。トラブルを乗り越え、敵潜水艦を撃沈するまでの様子を紹介しよう。

※前回の記事『海自の潜水艦探索は世界トップレベル、カギを握る「P-3C哨戒機」の任務』(敵潜水艦の詳細な位置や針路、速力などの情報が収集でき、敵潜水艦をじわじわと追い詰めはじめた…)

【今回のVR対潜戦の状況は…】
1機のP−3C哨戒機のほか、2隻の護衛艦とそれぞれ搭載している哨戒ヘリコプターSH−60Kで編成を組み、目的地まで航行する輸送艦『おおすみ』を護衛し、必要に応じて敵潜水艦に対処するというもの。『おおすみ』の航行ルート上に敵潜水艦がいるかどうか各ユニットが警戒し、連携する作戦が展開される。

緊急事態発生!エンジン異常を起こしたP-3Cが現場を去る

画像: スモーク・マーカーを投下するP-3C(イメージ)

スモーク・マーカーを投下するP-3C(イメージ)

五島百花(以下、五島):P-3Cが離れていきます。トラブルでしょうか!?

倉本憲一(以下、倉本):何かのトラブルでしょうが大丈夫、対潜戦の能力のある哨戒ヘリが任務を引き継ぎます。

※※※※※※※※※※※※

 P−3Cによるこれまでの戦術展開が功を奏し、敵潜水艦の存在エリアがようやく絞り込まれてきた……と、思ったのもつかの間、ここで緊急事態が発生。エンジンに異常が見つかり、帰投を余儀なくされたのだ。

 そこで、P−3Cは、この後の追跡のために磁気探知装置を使用し、ついに敵潜水艦の位置を特定する。敵潜水艦の位置を示す目印として、海上に「スモーク・マーカー(煙を発する浮標)」を投下してからP−3Cは現場を離れた。

「スモーク・マーカー」を目指して急行するSH-60K

画像: 「スモーク・マーカー」を目指して急行するSH-60K

 P−3Cが現場を離れる少し前、エンジントラブルが発生したとの情報を受けとったSH−60Kは、護衛艦のヘリコプター甲板から発艦。立ち上がる煙を目指して急行した。

 磁気探知装置によって得られた、敵潜水艦の正確な位置情報と針路・速力などの情報を引き継ぎ、敵潜水艦の追尾任務を引き継ぐのである。

つり下げ式ソナーで潜水艦を捜索!

五島:SH-60Kが何かをつり下げました!

倉本:敵潜水艦の位置を特定するためのつり下げ式ソナーです。これでもう敵は逃げられないでしょう。

※※※※※※※※※※※※

画像: つり下げ式ソナーを下ろすSH-60K。ソナー部分(写真赤丸)を海中に沈め、アクティブソノブイと同様の捜索を行う

つり下げ式ソナーを下ろすSH-60K。ソナー部分(写真赤丸)を海中に沈め、アクティブソノブイと同様の捜索を行う

「P−3Cの任務を引き継ぎ、継続して目標を追尾する!」と、SH−60Kのパイロット。

 スモークが知らせる現場海域に到着すると、さらなる敵潜水艦の情報収集を開始した。ホバリングしながら、胴体の底部から海中につり下げ式ソナーを下ろし、目標の位置や針路、速度を特定するのだ。

「ソナー探知! ターゲット○○度(方向)、○○ヤード(距離)」。航空士の声とともに、ソナーからの情報を機上で判定。そこで得られた敵潜水艦の情報を戦術データ・リンクによって護衛艦と共有し、場合によっては攻撃を行うなど、次の戦術に備える。

必死に逃げようとする敵潜水艦

海中を航行する潜水艦(イメージ)。SH-60Kのつり下げ式ソナーなどにより自艦が探知されていることに気付く

 潜水艦の最大の特長はその隠密性にある。だから、見つかってしまったら、その時点で潜水艦の敗北を意味することになる。自艦が探知されていることが分かった敵潜水艦は必死で逃げようとする。

 ソノブイやつり下げ式ソナーなど、各種センサーからの探知をかいくぐろうと、蛇行や高速航行を繰り返した。だが、時すでに遅し。敵潜水艦の包囲網は確実に狭められている。

敵の反転攻勢にミサイルで反撃開始!

護衛艦から発射されるアスロック。甲板の艦首側に搭載されている

 窮地に追い込まれた敵潜水艦は、最後の手段に出た。反転攻勢をかけてきたのだ。

 敵潜水艦が護衛艦『おおすみ』に近づき探知された結果、護衛艦は艦載用対潜ミサイル「アスロック」で反撃を開始。ランチャー(発射機)から発射され目標海域で着水すると、敵潜水艦に見事、命中。

(写真はイメージ)

 こうして敵潜水艦による脅威は去り、輸送艦は目的地に無事到着。護衛は成功裏に幕を閉じた。

五島:敵潜水艦を撃沈! 『おおすみ』の安全は守られました!

倉本:哨戒機と哨戒ヘリ、護衛艦のスムーズな連携で、敵潜水艦にしっかりと対処できましたね。

「対潜戦」に関する基礎知識

潜水艦捜索の2つの戦術

 潜水艦を捜索するには2つの戦術がある。「コバート・オペレーション」と「オバート・オペレーション」だ。

「隠れた」を意味する「covert」の名のとおり、コバート・オペレーションは潜水艦を捜索していることを敵に悟られないよう隠密に作戦を展開。潜水艦から気付かれにくいパッシブソナーを主に用いて敵を捜索する戦術だ。

「overt」が「公然の」を意味するように、オバート・オペレーションは、自ら音を発することで潜水艦を捜索していることを敵に知られるアクティブソナーや、大音量を発するためその活動が露見しやすい哨戒ヘリを使用して敵潜水艦を捜索する戦術。この戦術には、あえて捜索活動を相手に知らしめることによって、敵潜水艦の行動を抑止するという効果もある。

 VR対潜戦では、コバート・オペレーションで開始され、敵潜水艦の追跡をSH−60Kに引き継いだことで、オバート・オペレーションに切り替わった。

磁気探知装置(MAD)

P-3Cの最後部にあるMAD。地磁気の乱れを検知するには、低高度で水平に飛行する必要がある

 地球は磁気を帯びていて、金属の塊である潜水艦はこの地表の磁場=地磁気の乱れを生じさせる。その変化を検知して潜水艦を探知する装置がMAD(Magnetic Anomaly Detector)だ。

 海自の哨戒機は、機体の胴体などの金属や、搭載している電子機器から発生する磁気の影響を受けないようにするため、MADは機体の最後部に設置されている。

魚雷・アスロック

発射される魚雷とアスロックのイメージ。護衛艦から発射されたアスロックは、目標付近まで飛翔して魚雷を分離する。魚雷より目標を素早く攻撃でき、より遠くまで届く

 魚雷は19世紀後半に完成した兵器で、正式名称は魚形水雷。潜水艦のほか、航空機や水上艦艇にも搭載される。海中を自走し、敵の水上艦艇や潜水艦を撃沈する。

 現在、主流となっている魚雷は、目標を自動的に追尾して攻撃するタイプだが、ワイヤーなどで接続して操作するタイプもある。その魚雷とロケットを組み合わせた兵器が、アメリカが開発した艦載用対潜ミサイル「アスロック」(ASROC:Anti Submarine ROCket)。

 水上艦艇に装備されたランチャーからロケットが発射されると、事前に入力されたポイントまで飛翔。そこで魚雷がロケットから切り離され、海中で目標を自動的に捜索・追尾・攻撃する。遠くの敵を素早く攻撃することができる。

【五島百花】
1999年生まれ、滋賀県出身。映画や舞台、CM、バラエティー番組で活動。とくに俳優として『正直不動産』(NHK)など、多くのテレビドラマに出演している

【倉本憲一】
1952年生まれ、奈良県出身。元海将、自衛艦隊司令官。防衛大学校卒業後、海上自衛隊に入隊。海上幕僚監部などに勤務後、第2航空群司令などを経て、現在は軍事解説者

(MAMOR2023年7月号)
※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです

<文/魚本拓 CGイラスト/浜口泰昭 写真/星亘(扶桑社) 写真(五島百花)/鈴木教雄 写真(倉本憲一)/山川修一(扶桑社) ヘアメイク(五島百花)/藤垣結圭 スタイリング(五島百花)/松本人美>

海自のVR対潜水艦戦を実況中継!

 自衛隊には数多くの部隊があり、中には自隊のテーマソング「隊歌」を持つ部隊もあります。

 その歌詞を読むと、国を、地元を愛する気持ち、家族、仲間を想う気持ちが表されて、各隊員の心意気が伝わってきます。そんな隊歌にあなたも触れてみてください。

 今回は、長崎県佐世保市・相浦駐屯地に所在する「水陸機動団」の隊歌をご紹介します。

水陸機動団とは…

画像: 画像はイメージです 出典:陸上自衛隊Webサイト(https://www.mod.go.jp/gsdf/news/train/2019/20190212.html)

画像はイメージです 出典:陸上自衛隊Webサイト(https://www.mod.go.jp/gsdf/news/train/2019/20190212.html

 2018年に陸上自衛隊に新編された、長崎県佐世保市・相浦駐屯地に所在する部隊。

 万が一、島しょを占拠された場合に、地上だけでなく水上を浮上航行する能力を持つ装軌式の水陸両用車などを用いて、速やかに上陸、奪回、確保をするための水陸両用作戦を行うことが主な任務。

 国防の最前線で領土を死守する特殊任務のため、選ばれし精鋭たちが集う。

「水陸機動団歌」の歌詞を紹介

画像: 「水陸機動団歌」の歌詞を紹介

彩雲たなびく西海に 九十九島(1)を仰ぎ見て 己を磨く相浦

陸海空風雪波嵐(2) 鍛う心とこの腕 日々練武の精神に 守りは堅し四方の海

嗚呼 尚武の構え 水陸機動団

祖国に嵐すさぶとも 艱難辛苦を打ち払い 先見確実迅速(3)

柔軟不屈(4)と団結と ひとたび葉港(5)出たならば

尽くす誠は唯ひとつ 勇猛果敢 兵の道

嗚呼 凛たる戦士 水陸機動団

夕陽に映える日の丸台(6) 先人の恩に報いたる 武夫の伝統受け継ぎて

国の守りの礎と 御国に思う我が使命

正義と秩序のためにとて 晃りし海侍(7)ここにあり

嗚呼 輝く陽光 水陸機動団

「水陸機動団歌」の歌詞を解説

(1) 長崎の佐世保と平戸にかけて連なる群島で、水陸機動団のある佐世保・相浦を象徴する風光明媚な場所。

(2)「水陸両用作戦」は、海上自衛隊、航空自衛隊と一体となっった統合作戦であること、また過酷な環境の中でも任務をやってのけるという気概が込められている。

(3) 水陸両用戦闘員の心得。先を見通して周到に準備する「先見性」、常に点検を欠かさない「確実性」、即断・即決で速やかに行動する「迅速性」が求められる。

(4) 水陸両用戦闘員の心得。変化に臨機応変に対応する「柔軟性」と、いかなる困難に直面しても決して諦めない「不屈」の精神も必要とされる。

(5) 佐世保港の美称で、湾口が狭く、奥に広がる形状がヤツデの葉に似ていることから、そう呼ばれる。

(6) もともとは、国防意識高揚のために、旧海軍の給水塔に描かせたもの。戦後、陸自の駐屯地となり、改めて建造物として残した。

(7) 松浦水軍(平安から戦国時代に肥前松浦地方の海を舞台に活躍した武士団)、旧海軍、そして自衛隊と、長崎において活躍してきた武人らを総称した造語。

<作詞/陸上自衛隊 水陸両用戦闘員有志一同 作曲/海上自衛隊 東京音楽隊 藤吉正規3等海曹>

精強部隊に秘められた、愛をヒシと感じる歌

 水陸機動団(以下、水機団)の隊歌は、2017年に新編のための準備隊が企画し、完成させたもの。

 この歌詞の作り方はユニークで、水機団に加わることが決まった各部隊の隊員などから、入れてほしい単語やフレーズを公募、その中から言葉を選んでまとめあげたのだそう。

 そのときにこだわって盛り込んだのが、佐世保鎮守府を象徴するフレーズ、統合作戦を連想するフレーズ、水陸両用戦闘員としての心得。中でも思い入れが強いのが、3番にある「正義と秩序のために」というフレーズなのだとか。

 これは、水機団の礎となった今はなき西部方面普通科連隊の当時の連隊長が、自衛官の本分として掲げた言葉で、水機団の隊員らは、この歌詞によって自身の存在意義を感じ、使命感を強くするのだそう。

 続く歌詞の「晃りし海侍」は、その使命を受け継ぐ強き者を表している。一方、作曲のほうは海自の隊員が担当。

 水陸両用作戦は、海自の艦艇との相互信頼が重要で、海自との合作が望ましいという声から。

 佐世保愛、元連隊長への感謝、そして3自衛隊統合愛、そんな愛にあふれた隊歌をぜひ聴いてみて!

URLより曲が聴けます

(MAMOR2022年12月号)
※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです

<撮影/江西伸之>

これが部隊のテーマソング

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