この事件では、21日起訴された元生活安全部長の本田尚志被告(60)が裁判所の手続きの中で「野川本部長が警察官の事件を隠蔽しようとしたことが許せなかった」などと主張していました。
このため鹿児島県警察本部はきょう午後、記者会見を開き、冒頭、野川本部長は「元生活安全部長が県警の警察職員に関する盗撮事件とストーカー事案について私が隠蔽を図ったかのような発言をしたことは誠に残念であり、県民に多大な心配を与えてしまったことを県警の責任者として改めておわびを申し上げます」と謝罪しました。
そのうえで「隠蔽を指示した事実はない」と改めて隠蔽を否定しました。
また元部長の行為が組織の不正を通報する「公益通報」に該当するのではないかとの指摘について、野川本部長は「元生活安全部長が送付した資料には本部長が隠蔽を指示したとの記載はなく、元刑事部長の名誉を害するような内容が記載されている一方、公表を望んでいないストーカー事件の被害者の個人名や年齢が記されていることから、県警としては、公益通報には当たらないものと考えております」と述べました。
一方、警察庁は、野川本部長が、警察官による盗撮事件について、本来ならすみやかに事実関係を捜査して刑事事件として立件したり、真相解明をしたりしなければならない立場にもかかわらず、きめ細かな確認や指示をせず、捜査の基本にかけていたなどとして、きょう付けで、長官名での訓戒処分にしました。
これについて野川本部長は、「処分については厳粛に受け止めて再発防止に全力を尽くしてまいります」と述べました。
【会見詳しく】鹿児島県警本部長 “不祥事の隠蔽”改めて否定
鹿児島県警察本部の元生活安全部長が個人情報を含む内部文書をライターに漏らしたとして逮捕された事件で、元部長の起訴を受け、鹿児島県警は21日会見を開き、野川明輝本部長が「県民に多大な心配を与えた」として謝罪したうえで元生活安全部長が主張する不祥事の隠蔽については改めて否定しました。
《会見詳細》
「県警職員の不祥事相次ぎ 深くおわびを申し上げたい」
鹿児島県警察本部の野川明輝本部長は、県民に伝えたいことを問われたのに対し、「昨年来、本県の警察職員の不祥事が相次いでおり、本来、県民の安全安心を守るべき立場の警察が県民の皆様の安全安心を落としていることについて大変重く受け止めており、深くおわびを申し上げたい。警察としては職員が一丸となって、抜本的な再発防止対策を進め1日も早い信頼回復ができるよう努力していきたい」と述べました
「処分厳粛に受け止める」
野川明輝本部長は「私がきめこまやかな確認を行いそれに応じた指示をしていればより早期に被疑者を検挙できた可能性もあったところであり、この点について本日、警察庁から私に対し、長官訓戒、当時の首席監察官に対し、口頭厳重注意がありました。この処分については私は厳粛に受け止めて再発防止に全力を尽くしてまいります」と述べました。
「捜査状況みずから確認せず反省」
野川本部長は、元生活安全部長が警察官の盗撮事件を本部長が隠蔽しようとしたなどと主張していることについて「この事件について改めて振り返りますと、私は去年12月22日に首席監察官から報告を受けて、指示をして以降、捜査状況などについて報告を受けておらず、みずから確認もしていませんでした。きめ細かい確認を行ってそれに応じた指示をしていればより早期に被疑者を検挙できた可能性もあったのではないかと反省している」と述べました。
「『泳がせよう』などと指示した事実ない」
元生活安全部長が、警察官の盗撮事件について本部長が「最後のチャンスをやろう。泳がせよう」などと言って隠蔽しようとしたなどと主張していることについて、野川本部長は「そもそも事件認知時はもとより、その後も元生活安全部長が私のところに事件について報告や指揮伺いにきた事実は一切ございませんので、私が元部長に対し『最後のチャンスをやろう』とか『泳がせよう』などと指示した事実もございません」と述べ否定しました。
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「公益通報には当たらない」
野川本部長は「元生活安全部長が送付した資料には本部長が隠蔽を指示したとの記載はなく、元刑事部長の名誉を害するような内容が記載されるなど県警としては、公益通報には当たらないものと考えております」と述べました。
「職員が盗撮を行っていたことが判明していたわけではない」
野川本部長は、会見で元生活安全部長が本部長による隠蔽の指示があったと主張している警察官が逮捕・起訴された盗撮事件について「事案を認知したあと直ちに警察署で捜査を開始し、当時、私が報告を受けた段階では警察職員が犯人であるというのは証拠に乏しかった状況だ。元生活安全部長が述べたように職員が盗撮を行っていたことが判明していたわけではない。報告を受けて引き続き、警察署で捜査を尽くすように指示したところが事実だ」と述べました。
野川明輝本部長「元生安部長 虚偽内容の文書を郵送した」
鹿児島県警察本部の野川明輝本部長は、21日の会見で「元生活安全部長は、元刑事部長の名誉を害する虚偽の内容の文書を第三者に郵送した」と述べました。
野川本部長「おわびを申し上げる」
野川本部長は、会見の冒頭で「元生活安全部長が県警の警察職員に係る2つの事案について私が隠蔽を図ったかのような発言をしたことは誠に残念であり、県民に多大な心配を与えてしまったたことを県警の責任者として改めておわびを申し上げます」と謝罪しました。
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「隠蔽を指示した事実はない」
野川本部長は午後3時から会見を行い、「隠蔽を指示した事実はない」と説明しました。
刑事部長“捜査書類廃棄を促すかのような文書 不適切”
鹿児島県警察本部の中野誠刑事部長は、会見で、去年10月に捜査書類の廃棄を促すかのような内部向けの文書を出していたことについて「周知しようとしていた内容は必要な捜査書類を検察庁に確実に送致すること、それからその写し等がある場合にはこれを適切に保管管理することなどでした。周知すべき内容と異なる受け止めをされるような不適切な表現内容になっていた文書が一度発出された結果、文書の管理について多くの方に疑問と不信感を抱かせたということについては大変申し訳なく思っています」と述べました。
苦情や意見 約1370件
鹿児島県警察本部の西畑知明警務部長は、会見で、一連の問題で、20日朝の時点で県警におよそ1370件の苦情や意見が寄せられていると明らかにしました。
《警察庁 一連の不祥事への対応を説明》
鹿児島県警に監察を実施
警察庁は、鹿児島県警察本部の元生活安全部長が逮捕・起訴されるなど、一連の不祥事への対応について、県警側の会見と同時刻の午後3時から、説明を行っています。
県警に対し、事案の再発防止のため、今月24日から当面の間、監察を実施し、網羅的な形で再発防止策を実施することを検討していると明らかにしました。
監察は監察トップの首席監察官を含む3人が担当し、「再発防止策ができるまでの間」実施すると説明しました。再発防止の観点から、一連の不祥事の事実確認や、原因の分析を改めて行い、聴取を行う対象には、野川本部長も含まれると説明しています。
野川本部長を訓戒処分に
警察庁は、野川本部長が、警察官による盗撮事件について、本来ならすみやかに事実関係を捜査して刑事事件として立件したり、真相解明をしたりしなければならない立場にもかかわらず、きめ細かな確認や指示をせず、捜査の基本にかけていたなどとして、21日付で、長官名での訓戒処分にしたと明らかにしました。
警察庁 盗撮事件の捜査経緯を説明
警察庁は、枕崎警察署の巡査部長が逮捕・起訴された盗撮事件の捜査の経緯について、去年12月19日に事案を認知し「盗撮事件の現場近くの防犯カメラに枕崎警察署の公用車と同じ車種の不審な車両が映っている。運転しているのは、枕崎警察署の署員である可能性がある」という情報が、その日のうちに枕崎警察署長から首席監察官に、そして、首席監察官から野川本部長に報告されたと説明しました。
野川本部長は、警察署で引き続き捜査を尽くすとともに、仮に署員が容疑者として特定されれば、本部長指揮の事件として伺いを立てるよう、首席監察官に指示をしたということです。
一方、捜査には一定の時間を要すると想定されることから、本部長は、捜査の間に同種の事案が発生しないよう、綱紀の粛正と不祥事防止のための教養を実施することも指示したということです。
こうした指示は、首席監察官から枕崎警察署長にも伝達されたとしていますが、その際に行き違いが発生し、枕崎警察署長が署員に対し「捜査を中止して、教養を実施する」と述べたため、署員が意義を唱え、再度、指示の確認を求めたということです。
署長から指示内容の確認を求められた首席監察官が「当初からの指示どおり、警察署で捜査を尽くすように」と再度伝え、2日間中止されていた捜査が再開されたということです。
警察庁は、野川本部長は盗撮事件の捜査の過程で、一度指示を出しただけで、巡査部長が容疑者として特定される3月19日までの間、報告を受けたり、自分で確認したりしていなかったと説明しました。
警察庁監察官「公益通報かどうかは答えかねる」
警察庁の監察官は、今回のケースについて「公益通報」の観点から疑問視する意見が出ていることについて、個別具体の事案について、公益通報かどうかは答えかねるとした上で、「鹿児島県警では、公益通報にはあたらないと考えていると思う」などと述べました。
鹿児島県警元部長を起訴 国家公務員法違反の罪 検察
鹿児島県警察本部の元生活安全部長が個人情報を含む内部文書をライターに漏らしたとして逮捕された事件で、鹿児島地方検察庁は、21日、元部長を国家公務員法の守秘義務違反の罪で起訴しました。
起訴されたのは、鹿児島県警察本部生活安全部の元部長、本田尚志被告(60)です。
起訴状などによりますと、本田元部長は退職後のことし3月、在職時に作成した警察官による県内のストーカー事案に関する内部文書を、自分の名前などを削除した上でライターに郵送し、職務上知り得た秘密を漏らしたとして、国家公務員法の守秘義務違反の罪に問われています。
検察は元部長の認否を明らかにしていません。
元部長は、先月(5月)逮捕された後、裁判所で行われた手続きの中で「野川明輝本部長が警察官の事件を隠蔽しようとしたことが許せなかった」などと主張していました。
一方、野川本部長は「必要な対応がとられていて、隠蔽の意図をもって指示したことは一切ない」と隠蔽を強く否定していました。
今回の事件をめぐっては、元部長の行為が「情報漏えい」なのか、組織の不正を通報する「公益通報」なのか議論を呼ぶ展開にもなっていました。
「公益通報」にあたるかについて検察は「総合的に検討はしたが証拠の具体的な内容に関わるので明らかにしない」とする一方、「一連の警察の捜査に違法な点はないと判断した。起訴に値する程度の悪質性があると判断した」としています。