第三章 調査報告

 

第一節 宇奈月自立塾について

 

第一項 概要

様々な要因により相当期間、教育訓練も受けず、就労することもできない若者に対して、合宿形式による共同生活の中での生活訓練、就労体験、社会人、職業人として、必要な基本能力の習得、勤労観の醸成を図るとともに、働くことについての自信と意欲をつけることにより、就労に導くことを目的としている。生活リズムの安定や人間関係のスキルを付けながら、コミュニケーション力を培っていく。ビジネスマナーや基本的なパソコンスキルを学びながら様々な職種の就労体験を行い、その中から新たな自分発見し「働くことの楽しさ」を学んでいく。共同生活と訓練をマッチさせ、他人との交流が自然にできるようにし、自分への自信をつけることが訓練の特色である。2005年開設。(基金訓練 宇奈月自立塾ホームページ2010年より)

今後は、自立塾・公共職業訓練で行ってきた訓練をさらに細かく精査したプログラムを行う。(特定求職者支援法を使った公共職業訓練を行う可能性もあり。)

宇奈月自立塾寮長である牟田光生さんによると、今後は社会に出る一歩前の人たちに、社会にでる自信をつけてもらえる支援を行うそうだ。基金訓練のような求職者のための訓練ではなく、これから求職者になるため、社会復帰するための支援であるため、不登校の学生なども入塾可能となる。

 

・宇奈月自立塾入塾者数推移

2005

18

2006

28

2007

24

2008

14

2009

27

2010

18

2011

6

 

・宇奈月自立塾5年間の成果(平成22年10月1日付け)

入塾者数

110名(他塾を出て来た塾生3名)計113名(うち3名退塾)

病気

20名(卒業後、通所施設通い3名、治療中17名。統合失調症12名、躁鬱1名、神経症その他4名)

就労者

66名(正社員35名、アルバイト31名)

大学在学中

2名

職業訓練受講中

1名

受験予定者

2名

求職中

16名

連絡拒否

1名

現在もとの生活に

5名

 

進路決定率(病気除く)

74.1%

就労率

70.9%

正社員率

37.6%

脱ニート率

94.6%

*病気を患っていながら社会復帰している者はカウントせず。

 発達障害系は年齢によりばらつきがあるのでカウントせず。

 

・自立塾の塾生の内訳

母子家庭

40%

不登校経験

50%

ひきこもり

90%

低所得(世帯収入400万円以下)

30%

 

・一日の流れの例(NPO法人教育研究所「宇奈月自立塾・スケジュール」http://kyoken.org/unazukijiritujuku/schedule.htm

 

 
time_schedule

 

・一週間の予定のサンプル(NPO法人教育研究所「宇奈月自立塾・スケジュール」(http://kyoken.org/unazukijiritujuku/schedule.htm

平成238

夏目君(仮名)

高卒認定試験

荒川さん(仮名)

入塾一カ月

三島君(仮名)

入塾三カ月

川端さん(仮名)

入塾一週間

8(月)

学習(英語)

Word/Excel

講座

昆布屋

研修

宇奈月散策

料理教室

9(火)

学習(数学)

休み

ビール工場

ウェイター

休み

フィットネス

10(水)

学習(世界史A)

ゴルフクラブ

製造

休み

研修

料理教室

宇奈月散策

11(木)

清掃・運動

清掃・運動

清掃・運動

清掃・運動

12(金)

模擬試験

休み

牧場

牧場見学

川遊び

畑作業

13(土)

休み

Word/Excel

講座

休み

ホテル見学

フィットネス

14(日)

休み

ゴルフクラブ

製造

ビール工場

ウェイター

休み

木曜日は全員が午前清掃、午後運動。

 

・基金訓練カリキュラム(基金訓練のカリキュラムであるため現在はこの通り行われていない)(NPO法人教育研究所2010「基金訓練 合宿型若者自立プログラム科 募集要項」)

訓練の内容

科目

科目の内容

時間

学科

オリエンテーション

プログラムの目的、受講に向けての心構え、共同生活のルール等

 

心理検査・体力測定

YG検査、クレペリン検査、最大酸素摂取量等を測り、現状の自分を理解し、より良い訓練を行い、本人にもフィードバックする。

ビジネスマナー講座

授業方式で行い、基礎学力講座等も含まれる。簡単なビジネスマナー、自分の気持ちの出し方等を学んでいく。

48

ワークガイダンス

グループワークを中心とした形で、ワークガイダンスの中からピックアップし、集団コミュニケーション能力向上のツールや自己意識の向上をはかる。

60

実技

PCスキル講座

ワード、エクセル、パワーポイント等、簡単なPCスキルの基礎を学んでいく。

18

生活・体力訓練

食事、清掃等を併せた生活面での指導、習慣的に運動を行い、体力面の向上を図る。

138

就労体験

様々な職場へ行き、実際に働いている人と一緒にショートジョブ体験を行う。

90

就労講座

面接の受け方・履歴書の作成、添削等、就職試験を受けるための演習

18

事例発表演習

個人の力でテーマを決め、皆の前で調べた事例を自分の意見を入れながら発表を行う。

12

学科・実技等計396時間  職場体験(各種職場)300時間職業人講話  職場見学

訓練時間総合計 約744時間(学科120時間 実技276時間 職場体験等348時間)

 

 

第二項 今後の自立支援について

 宇奈月自立塾では、自立支援プログラムと学習支援プログラムを主な支援とする。

 

・自立支援プログラム

(1)自立サポートコース

 ・ビジネスマナーや職業適性を調べる

  社会に出るための必要最低限のマナーを身につける。YG検査やクレペリン検査を通じて本人の職業適性を調べ、適職を一緒に考えていく。

 ・コミュニケーションスキルをアップ

  自然なコミュニケーションが取れるよう細心の気を配りながらサポート。

 ・様々な職種の就労体験

  ホテル業務全般、工場、農業など幅広い職種を本人の希望で体験できる。

 ・就職活動の支援

  基本的には一緒にハローワークに出かけ、職を探し、面接の練習や履歴書の添削を行う。中々決まらない人は短期でのアルバイトの斡旋も行う。

 ・東京、海外等での様々な研修

  自分の適職を発見するための研修が東京、海外等であり、研修を通して海外の事情を知り、また、海外で働く、学ぶきっかけをつくる。

慣れるまで一人部屋使用可能

(2)プレ入塾コース

 様々なコース開始前や、留学等を考えている方のウォーミングアップコース。このコースから基本的に他のコースに移行し、さらに公共職業訓練に移行していく。一人一人の状態に合わせて規則正しい生活リズムを整えていく。

一人部屋使用。

(3)OB向け再トレーニングコース

 若者自立塾および基金訓練を過去に受講したOBのみを対象としたコース。卒業したが進路が決定しない、社会復帰をしたが挫折して再び引きこもってしまった人を対象とした卒業後のフォローコース。

 

・学習支援プログラム

中学校コース、高校コース、国際コース、ネット依存脱出コースなどがある。

 

第二節 インタビュー概要

 

・宇奈月自立塾寮長 牟田光生さん

NPO法人教育研究所の理事長、牟田武生さんのすすめで自立塾が開所した2005年から寮長を務める。自身にひきこもりなどの経験はない。

 

・HTさん(宇奈月自立塾ケースワーカー)

20代半ばの女性

高校卒業後、アルバイト(コンビニ、ウェイトレス、セールス)などをしていたが、気分の落ち込みで、投薬を受ける。

インターネットで自立塾を知り、3年前入塾。

卒業してから3年ほど民間企業で事務や接客の仕事をし、退職後自立塾のスタッフになる。

 

・ASさん(仮名)

20代半ばの男性

高校中退後、3年程アルバイトをしていた。高卒検定に合格したが行きたい大学が見つからず、半年ほど何もしない状態だった。親の紹介で自立塾を知り、なにかしなければと思い、自分で入塾を決めた。

現在は卒業したが、宇奈月自立塾で生活しながら就労体験先である昆布屋で働いている。

 

・YEさん(仮名)

20代半ばの男性

高校卒業後、進路相談でNPO法人教育研究所に訪れ、宇奈月自立塾を知り、2007年の春に入塾。

現在は卒業したが、宇奈月自立塾で生活しながら、ファミレスでアルバイトをしている。