逆境と俄（にわか）

僕の人生は１６歳から

逆境が次々に起こっている。

その度に突破口を見つけては

這い上がって生きてきた。

家庭環境が悪く進学校へ行き後悔し

いつも一匹オオカミで

学校をサボり家事をしていた

地獄のような高校３年間。

高校の時に友達は１人もいない。

高校３年生の５月に

初めて１年生の教科書を開いた。

切欠は司馬遼太郎の

俄（にわか）という本を読み

感銘を受けたから。

英語の問題が

「１問も解けた」

そこから僕は４カ月猛勉強をし

落ちこぼれで県で後ろから３０番目だったのに

偏差値が７０までになった。

医学部進学を高校は期待したが

僕は特待生として数個の大学を選べて

某大学の法学部を選んだ。

高校を卒業後アルバイトを数個かけもち。

体調がどんどん悪くなり

親に隠れて通院するようになった。

１回の検査代が２万円。

アルバイトで１４万稼いでいたから

通院が週に２回に増えた時は

貯金を切り崩し４万円。

つまり医療費が１６万円かかっていた。

週に３回の通院になった時

僕は通院をやめた。

高熱が続きバイトも次々にやめた。

唯一、誰も手のつけようのないとされた

やんちゃな中学生３人の家庭教師だけは

這ってでも行った。

僕が１０代で大人不信になったように

彼らも同じ心境だった。

ところが時間はかかったが

唯一僕には心を開いてくれた。

「こいつは他の大人とは違う

俺ら私を裏切らない」

そう思ってくれていたので

何が何でも行かなければ

彼らと交わした約束を破る事になる

「喧嘩をしたら

謹慎にもなるが家庭教師に２週間来ない。

２週間、電話で話す事も一切しない

（これが彼らにとって１番辛いと父兄が言った）

その代わりお前らを見捨てはしない」

通院をやめて１か月半経った時に

医者が実家に電話をした。

「子供の命を何だと思っているんだ！

今すぐ病院に連れて来なさい！」

怒られたらしい。

通院がバレたか…

即入院となりバタバタと大学病院に

搬送された。

病名は膠原病。

失明宣告、余命宣告。

ぼくは膠原病が怖いと思った事はなかった。

膠原病に選ばれた、

だから必ず治してみせると思った。

入院中に家庭教師の生徒が

他の学校に殴り込み

金属バッドでガラスを割って

謹慎が１か月半だったのが救いだった。

「ごめんなさい…

喧嘩した…ガラスを破った…

たんたんぴちゃんと会えなくなった。

でも警察が来る前に声が聞きたかった…」

僕は病院のベッドの上だったが

「相手にどの位の怪我をさせたのか？

喧嘩は相手に先に殴らせたのか？」

「先に殴らせた。

俺も少し血が出てるけど勝った。

仲間がボコボコにされたから

仕返しに行ったら結果、つい約束を破った…

ごめんなさい。

でもそんな心配の仕方をする

大人っていないと思う」

「もう喧嘩に二度と金属バットは使うな」

点滴しながら何を言っているのだろうと

おかしくもなったのだが

彼は「警察が来た！」と慌てて切った。

その次に彼が大きな喧嘩をした時に

僕は父兄に前もって伝えて

柱や壁を蹴り上げ叩き

大暴れしながら叱りまくった。

「お前人をなめるな！

喧嘩はもうしないと約束したのは何だ！

約束は守るためにあるんだ！

いいか？頭を冷やせ！」

そう言って帰った事があった。

それから彼らは喧嘩をやめた。

毎週日曜日に生徒が

我が家に遊びに来るので

バイト代は発生しない。

ハンバーガー等を一緒に食べた。

成績が上がれば他の友達も連れ来ていい

もっと偏差値が上がれば遊園地に行くなど

特典を設けた。

懐かしい素敵な思い出だ。

２０歳位だったからか

病気以外にも次々と逆境が来て

その頃ともなると

「よし逆境が来た！チャンスだな！

逆境よ、どんどん来てみろ！

乗り越えてみせる！」

そう思って生きてきた。

僕が膠原病に今回も打ち勝てると

思えるのには大きな理由がある。

実家を離れ一人暮らしをして

プログラマーやSEとして会社員をしたのだ。

主治医は一人暮らしも仕事も

猛反対だったが

夜８時に必ずプライベイト携帯から電話をくれた。

会社には膠原病だと言わなかった。

当時、女性のSEやプログラマーは

会社の１割もいなかった。

「やっぱり女だな」

そんな言葉を言わせないために

人の数倍は努力した。

法学部だからパソコンの知識は０であり

独学で学んだ。

レイノー症が出たら

腱鞘炎だと誤魔化した。

深夜２時まで毎日残業をしたら

倒れて膠原病が悪化し即入院となった。

入院中に部下から電話があれば

コメントを残していたので

それを解除すれば

プログラムが稼働すると指示した。

システムは大成功だった。

しかし会社は僕をリストラした。

法学部を出ているという意地で

通告書を自分で書いた。

互いに弁護士を雇ったが勝利。

膠原病だろうが

一人暮らしをし仕事が出来た。

だから僕は多年仕事が出来ないが

必ず治してみせる。

線維筋痛症と共に完治させるのだ。

逆境に強いはずの僕は

線維筋痛症という病名が分かるまでに

１５年間もドクターショッピングをし

線維筋痛症に完敗した。

逆境と俄があったのに

完全に線維筋痛症に負けた多年。

今の僕は線維筋痛症に負けていない。

４４歳になった僕には

今も次から次へと逆境が襲っている。

今夜もそんな出来事がある夜だった、

逆境と俄

また僕は逆境が来ても

突破口を見つけて這い上がってみせる

俄の主人公の明石家万吉は

当時９０代まで生きた。

最後の言葉は

「ほないくで」だった。

僕は逆境が明石家万吉程ではないが

次々とやってきても乗り越える。

僕も人生を全うし

死ぬときが来たら

「ほないくで」

と高らかに笑顔で言いたい。

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