第21話

アイスよりも甘い一時を
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2022/09/20 00:18





その日の夜、もちろんウパパロンを避け続けた私は、自分の部屋に戻って一息つく。


Latte
(意外と心にくるかもな……)
Latte
お風呂行こっかな。


多分誰も入っていないだろうと洗面所の扉を開けた時、先客がいた。


Latte
げっ……
ウパパロン
げっ、ってなんだよ!
Latte
もう……私お風呂入ろうと思ってたのに。


ウパパロンはお風呂上りなのか、髪の毛が濡れていた。


自分の部屋に帰ろうと背中を向けた時だった。


ウパパロン
これ……
Latte
な、なに?


差し出されたのはドライヤー。


Latte
まさか私に乾かせと?
ウパパロン
ん。


「ん。」じゃねぇよ、「ん。」じゃ。


とか思いながらも押し返す。


Latte
無理無理、私忙しい。
Latte
第一、距離取るって言ったじゃん。
ウパパロン
無理無理、もう限界!
Latte
私は絶対に乾かさないよ!
ウパパロン
ふん、なら恋人が風邪ひいてもいいの?
Latte
文化祭前だからやめて!?
ウパパロン
心配するのそこ!?
Latte
(だって私ろくに自分の髪も乾かせないのに、他人のだなんて……)
ウパパロン
ねぇー、おねがーい!
ウパパロン
やってくれなきゃ此処どかない。そしたらラテはお風呂入れないよ。
ウパパロン
あ、それともラテがお風呂入るの見といてあげよっか?
Latte
いやだっ!それだけは無理!
Latte
乾かせばいいんでしょう!?


完全にこれは負けたなと思った。


私ってもしかしてウパパロン相手には弱いのかな。


だってこんなデレデレのウパパロン初めてだし、甘えられるのはうれしいし……。


ウパパロン
やったぁ!


なんとなく悔しさを感じながらもドライヤーのスイッチを入れた。











ブォーッ_____






ドライヤーが大きく音を立てて、熱風を出した。


ウパパロン
ねー、ラテー。
Latte
んー?
ウパパロン
……今日の、わざとじゃないからね。
Latte
……うん、分かってる。ウパパロンはあんなことしないから。
ウパパロン
ラテに、嫌われたかと思って、怖かった。
Latte
うん。
ウパパロン
浮かれてたの本当にごめん。だから、






ウパパロン
距離取るだなんて言わないで……
Latte
……はいはい。分かったよ。
Latte
私も冷たい態度取っちゃったかも。ごめんね。
ウパパロン
うん。なら、明日2人で何かしよう?
Latte
いいよ。


なんだかんだ言って私達はまだ2人っきりで遊んだりとかはしていない。


ウパパロン
じゃあ今度、______
Latte
ん?うん……。


ドライヤーの音が大きくて聞こえなかったが、まぁいっかと適当に返事をしておいた。






それにしてもウパパロンの髪の毛は本当に柔らかいなぁ。


まるで猫の毛みたい。


Latte
普段髪の毛のお手入れしてるの?
ウパパロン
…うん、まぁ一応してる。
Latte
えー、珍しい。どんなのやってるの?
ウパパロン
やっぱりオイル塗ったり、トリートメントしたりかな。
Latte
なんでそんな入念に……
ウパパロン
……なんとなく。
Latte
へぇー。


女子の私よりも手入れしてるとかショックだし、なんかムカつく。





そろそろ乾いてきたからドライヤーのスイッチを切った。


Latte
はい、終わったよ!
ウパパロン
うーん、まだ濡れてる!
Latte
えー、本当?


さっきよりも丁寧に一通り乾かして、再びドライヤーを止めた。

Latte
はい!今度こそいけたでしょ。
ウパパロン
んー、まだまだー。
Latte
(どう見たってさらさらじゃん……)
Latte
……もしかして嘘ついてる?
ウパパロン
あっ、バレたー?
Latte
も、もうっ、なんでそうやって……
ウパパロン
だってラテに髪の毛乾かしてもらうの心地良いから。
Latte
……もうっ。


怒るような言葉も出なかった。


なんでこの生物はこんなに素直なんだ…?


ウパパロン
というわけで、


ウパパロンは突然立ち上がり、洗面台へ向かった。


あー、なんとなく嫌な予感するなぁとも思った。




次の瞬間、水を頭からかぶっていた。


水がぽたぽたと垂れるほど浴びたその髪の毛は、今までせっかく乾かした私の努力を水の泡に……

Latte
はっ!?
ウパパロン
もっと乾かして~。もういっか~い。
Latte
(こ、こいつっ……!)
Latte
あー!もうっ、少しでもキュンってした私が馬鹿だった!
ウパパロン
えっ?キュンってした?ほんと?
Latte
私、知らないからね!もう知らない!
Latte
もう風邪引いちゃえ!!
ウパパロン
えぇ……















私は少し不貞腐れながら洗面所を出た。


そしてキッチンに向かい、「ウパパロン」と書いてある付箋が貼られた15個入りのアイスの箱を出す。


Latte
(仕返しに食べてやる!)


先週、ウパパロンがるんるん気分で買ってきたアイス。


いろんな味があって、「一人で食べるんだぁー。」とか言ってた気がする。


律儀に食べられないように名前まで書いっちゃって。


ヒナ
あれラテさん、それウパさんの……
Latte
……ふん。知らん。
ヒナ
ふふふっ、じゃあ私も食べます!
ぜんこぱす
お、アイスですか?食べます!
レイラ―
へいへい、これはアイスか!私も食べる。
まりょ
アイス……!僕も食べる。







アイスの匂いを嗅ぎつけてきた他の人達が集まってくる。


ぐさお
いちごアイス、みんなで食べれば怖くないって言いますよね?
ぐさお
私も食べまーす!
メテヲ
ふふふ、俺も食う。あ、いちご味ね。
iemon
めめさんミントにします?
めめんともり
イエモンさんはどれに?
iemon
俺は無難に抹茶かなー。
めめんともり
じゃあ私も抹茶で!
iemon
あ、ならミントと抹茶交換しよ。
めめんともり
……!はいっ!
Latte
もうじゃんじゃん食べっちゃって!
みぞれ
他人の物は奪うためにあるのだ!ありがたくもらっちゃおっと。
八幡宮
お。レイマリー。一緒に食べよ。
Sレイマリ
おお!ちょうど食べたかったとこ!
ガンマス
食べよ食べよー。
ルカ
罪悪感なんてものはもう遥か彼方に置いてきましたわ。
Latte
ふふふふ……見てろよ、ウパパロン。






ウパパロン
っ、くしゅっん!!
ウパパロン
ねぇー、ラテー。寒いんだけど髪の毛まだ……ってえぇぇ!?
ウパパロン
そ、それ……
iemon
あ、どうも。
レイラ―
センスいいねぇ、なかなかにうまい。
ウパパロン
ひっ、酷い!せっかく買ってきたのに!!
ウパパロン
まさか、ラテの仕業!?
Latte
………おいしいよ!食べるー?
ウパパロン
うわぁーーー!もうやけ食いだぁぁ!!










みんなの楽しそうな笑い声が家中に響いた。




今日もめめ村は平和です。























みんなでわいわいと勝手に食べたアイスはとても甘かった。






けれどそれ以上に、洗面所で貴方と過ごしたあの一時の方が甘かったよ。












だなんて、素直に言える日が来たらいいのにな。



















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作者
実はですね、夜型の私はこの話を現在深夜0時頃に書いてるんですよ。
(投稿するのは数日後なので、若干時間軸ずれてます。)
作者
そしたらなんと書いてる最中にお気に入りがつきまして!
作者
びっくりですよ。こんな時間にも読んでいただいていた人がいただんて……!
作者
思わず、通知がきて数秒後に見てしまいました。
作者
本当にありがたいです!

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