舞妓(まいこ)は「地域おこし協力隊」
- 2024年05月13日
地域おこし協力隊として舞妓さんに!
あでやかに舞う新人舞妓の風實華(ふみか)さんと史津乃(しづの)さんです。
多くのお客さんの前で舞を披露した2人。実は去年、湯沢市に委嘱された地域おこし協力隊です。
銀山に端を発する湯沢の芸舞妓文化
かつて日本一の産出量を誇る院内銀山でにぎわった湯沢市。銀山周辺には街が形成され、明治時代には京都や大阪から多くの芸舞妓が湯沢に入りました。
しかし、50年ほど前に一度途絶えたため、地元でもそのお座敷文化はあまり知られていません。
台湾から舞妓さんに!
そこで募集したのが地域おこし協力隊。地元の文化を継承しながら、湯沢の魅力を発信する役割が期待されています。
そこに応募して来た1人が、台湾出身の風實華さん、本名=戴于如(たい・うじょう)さんです。
高校生のころに本やテレビで見た舞妓の姿にあこがれ、舞妓を目指すようになりました。
戴さん「舞妓は、とてもきれいな見た目ですし、日本の伝統文化を継承する部分が、自分はとても好きです。1つの技術を極めるために一生かける。そういう姿にすごく惹(ひ)かれていますね」
戴さんは、日本語をはじめ日本文化について学び、舞妓になろうと京都の置屋に問い合わせ断られたこともありました。しかし、夢をあきらめきれず、大学時代には日本に留学。日本で就職し、偶然にも湯沢市の募集を知り、その日のうちに応募したそうです。
デビュー目指してみっちり稽古
去年8月に湯沢市に移り住んだ戴さんは、自宅から芸舞妓の団体『秋田湯沢湯乃華芸妓』に通っています。舞のほか茶道や華道の稽古を通して、舞妓としての所作を学んできました。当初は足の運び方などお座敷での身のこなしに苦労する場面もありました。
そして今年3月、半年間の稽古を経て、正式に舞妓としてデビュー=見世出しをしました。湯沢市では5年ぶりの舞妓の誕生です。
無事にデビューを果たした戴さんは、「舞妓として、地域おこし協力隊として、湯沢の魅力を伝えられるような舞妓になりたいです」と意気込みを話していました。
台湾にも湯沢をPR
戴さんに期待されているのが、国内だけでなく、故郷・台湾への情報発信です。去年12月、秋田と台湾を結ぶチャーター便が就航しました。県の試算によると、その経済効果は年間10億円と見込まれています。湯沢市もインバウンド需要を呼び込もうとしています。
湯沢市情報政策課・高畑博文さん「外国人旅行客にお泊りいただけることが少ないと考えておりますので、お座敷文化をご覧いただければ、市内の宿泊も増えるんじゃないかなと期待しております」
そこで戴さんは、台湾の人に向けてSNSで情報を発信しています。自分たちの様子をスマートフォンで撮影。写真や動画の内容を台湾の言葉で説明し、舞妓さんの日常や舞台裏を紹介しているのです。
中でも話題を呼んでいる動画が、白塗りされていく舞妓さんの化粧の様子です。SNSを見た人からは「まさに芸術だ」とか「化粧道具がおもしろい」といった反応が寄せられました。
戴さん「日本人にとって見慣れていることも、外国人から見ると文化の違いがかなりおもしろいと思いますね。そういう所を自分の言語で伝えられると、より日本の文化の魅力が伝えられるんじゃないかなと思います」
去年12月には台北で行われた観光キャンペーンに舞妓姿で参加し、湯沢をPRしました。そうした取り組みが台湾の人の目にも止まり、現地のインターネットメディアから取材依頼がありました。
この日は、取材を前にした打ち合わせをオンラインで行いました。舞妓を目指すきっかけや仕事の内容など戴さん自身の話を取材しようと考える記者に対し、戴さんは湯沢の魅力も伝えたいと持ちかけていました。
こうした活動を通して、戴さん自身も手ごたえを感じているようです。
戴さん「メディア経由で違う人に見られる可能性、より多くの人に伝えられる効果があるんじゃないかなと考えています。湯沢も好きだし、自分が感じた湯沢のいい所も、舞妓さんの視点から多くの人に伝えたいですね。そういう舞妓さんになりたいです」
多様な人たちを受け入れ、それぞれの強みをいかしていく湯沢の懐の深さ。そして戴さんのチャレンジ精神。その2つがうまく融合して、湯沢の町おこしは前に進んでいると感じました。