博多 女性殺害事件の初公判 ストーカー規制法違反では無罪主張

去年1月、JR博多駅近くの路上で元交際相手の女性を殺害したなどとして、殺人などの罪に問われている被告の初公判が開かれ、被告は殺人と銃刀法違反の罪については起訴された内容を認めた一方、ストーカー規制法違反については「待ち伏せしたことは違います」と述べ、無罪を主張しました。

住所不定、無職の寺内進 被告(32)は、去年1月福岡市の博多駅近くの路上で、ストーカー規制法に基づく禁止命令が出される中、元交際相手で那珂川市の会社員、川野美樹さん(当時38)を待ち伏せしたうえ、包丁で刺して殺害したとして殺人やストーカー規制法違反などの罪に問われています。

17日、福岡地方裁判所で初公判が開かれ、被告は「刺したことは間違いないが待ち伏せしたことは違います」と述べ、殺人と銃刀法違反の罪については起訴された内容を認めた一方、ストーカー規制法違反については無罪を主張しました。

検察は、冒頭陳述で「被告の束縛などに嫌気がさして交際の解消を望んだ被害者に対して、被告は交際中の不名誉な写真や動画を送信し、被害者の携帯電話や勤務先に電話をしてストーカー規制法に基づく禁止命令を受けた。事件当日は、被害者が警察に被害を申告したことについて文句を言って謝罪を求めたが、『警察で話そう』と言われて激高して刺した」と主張しました。

一方、弁護側は「被告は被害者とすれ違いが多くなり、関係が悪化するようになった。事件当日、被告は携帯電話料金の支払いに博多駅付近に向かっていて偶然、被害者と出会ったが、相手にされずに感情が爆発した。いろいろな偶然が積み重なって起きた事件だ」と主張しました。

このあと、行われた被告人質問で弁護側から「禁止命令を受けてから事件当日まで被害者と連絡を取ったことがありますか」と問われると、被告は「ないです」と答えました。

また、警察に相談された時の気持ちについては「ショックでした」と述べました。

判決は、今月28日に言い渡される予定です。

審理での被告の様子

寺内被告は、紺色の上着にグレーのズボン姿で、白いマスクをつけ髪は短髪でした。

審理が始まり、証言台に立つよう促された被告は裁判長から起訴状の内容に違う点がないか尋ねられると、「はい。刺したことは間違いないが、待ち伏せしたことは違います」と裁判長を見つめながらはっきりと述べました。

裁判の冒頭の手続きや、その後もほとんど動かずにじっと前を見ていました。

午後の被告人質問では、質問に対して「はい」、「そっすね」などと短いことばで答える場面も多くみられました。

事件のいきさつ

検察と弁護側の双方の冒頭陳述で明らかにされた事件のいきさつです。

被告と被害者の関係

双方の冒頭陳述によりますと、寺内被告は福岡市の歓楽街、中洲でバーテンダーとして働いていたおととし、2022年4月、客として訪れた被害者の女性と出会い、交際を始めました。

その後、被告は女性の浮気を疑い束縛するようになります。

同じ年の10月、被告はスマートフォンを取り上げるなどの行為に及び、嫌気がさした女性は被告との交際関係を解消します。

ストーカー行為と殺人事件に至る経緯

その後、被告が女性のプライバシーを侵害する内容を含む大量の写真や動画を送信し、女性は警察に相談。

おととし10月24日、被告はストーカー規制法に基づく警告を受けました。

しかし、被告は女性の勤務先の会社で待ち伏せしたり居酒屋で復縁を求めたりし、女性が被告からの電話の着信を拒否する中、LINEで「警察に何言うた」、「なめてると後悔すんぞ。わしはしつこいからの」などとメッセージを送ったうえで、同じ日に女性の勤務先に「人の人生めちゃくちゃにして謝罪なしか。あのなめた女に言っとけ」などと電話しました。

こうしたことから、女性はおととし11月26日、警察に相談に行き、被告は、ストーカー規制法に基づく禁止命令を受けました。

17日の法廷では、この時の事情聴取の内容が読み上げられました。

女性は「被告が怖くてたまりません。別れてから関係を絶っていましたが、連絡するしかなくなりました。はやく被告を捕まえてほしいです」などと訴えていたということです。

検察は「被告が女性から2度にわたりストーカー被害の申告を警察にされたことにいらだちを募らせ、『会って文句を言い、謝罪させたい。返答によっては、殺すかもしれない』と考えるようになった」と主張しました。

一方、弁護側は「被告は禁止命令を受け、何かあったら逮捕されると思って連絡を取らず、会わないように、通る道を変えていた」と主張しました。

殺人事件当日の状況

事件当日の去年1月16日、被告はバッグに包丁を入れて自宅を出ました。

そして午後6時すぎ、博多駅の近くで勤務先から帰宅途中の女性を見つけました。

検察はこの時の状況について「被告は現場の歩道上に立ち止まって女性を待ち伏せしおよそ170メートル追従しながら警察に被害を申告したことへの文句やそのことへの謝罪を求めるなどした。女性から『離して、しつこい。警察で話そう』などと言われて激高し、少なくとも18回女性を包丁で刺した」と主張しました。

一方、弁護側は「被告は、別の傷害事件のあと自宅が襲撃され、護身用に包丁を持ち歩いていた。携帯電話料金の支払いに博多駅付近に向かっていたが、立ち止まって生活費などのことを考えて支払いをやめた。その時に偶然、女性と出会ったが、相手にされず感情が爆発して気がついたら包丁を持っていた」と主張しました。

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