第20話

浮かれ気分は仇となる
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2022/09/19 15:08






付き合ったばかりの恋人とキスをしてから、約半日。


翌日の朝になってもずっと浮かれていた。


ウパパロン
ふんふん♪


土曜日にこれから部活に行くというのに、明らかにテンションが高いのは自分でもよくわかった。


だってやっと恋人らしいことができたのだ。


ウパパロン
ラテ、おはよ!今日は一緒に行こうね。
Latte
なんで土曜日なのに学校があるの……
ウパパロン
いいじゃん、一緒に居られる時間が増える。
Latte
うっ……




ルカ
(完全に俺らのこと忘れてる。)
ぜんこぱす
(空気ってこういうことを言うんですね。)


他の人外野がなにか言いたそうだったけれど、そんなのお構いなし。


Latte
そんなに浮かれてると、いつか痛い目に遭うよ。
ウパパロン
ふふっ、だいじょぶだいじょぶ。







その時は本当にそう簡単に思ってた。











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そうして部活が始まって早々、部長のめめさんの言葉にげんなりする。


今日は金管は申し訳ないけど廊下で練習ね!
めめんともり
今日は金管は申し訳ないけど廊下で練習ね!
ウパパロン
(うげ、廊下かかぁ。)


あそこ暑いし、狭いし、音が聞こえにくいし。


なにより、


ウパパロン
(ラテが見えないじゃん……)
ウパパロン
(萎えた。ガチで萎えた。)
めめんともり
(ウパさんから視線を感じる……?)




渋々廊下でトロンボーンを吹くことにした。


昨日のラテの表情と言葉を思い出して、にやにやしてしまう。


ウパパロン
(あー、可愛かった。)
ウパパロン
(多分、自分は今めっちゃきもい顔してる。)
八幡宮
ウパパロン、なんでそんなきもい顔してんの。
ウパパロン
ひみつひっみつー。



この胸を満たす幸福感をどうにかしたくて、手に力を込めた。




この時、調子に乗って、トロンボーンのスライド管を思いっ切り伸ばしたりなんてしていなければ……













後輩
わっ!?
ウパパロン
あっ……!





『そんなに浮かれてると、いつか痛い目に遭うよ。』




どうやら恋人の言っていたことは正しかったようだ。








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Latte side


後輩
大丈夫!?
Latte
んー?


後輩の声が廊下に大きく響いた。


たしか譜面台持ってきてって頼んだんだけど、なにかあったのかな?


Latte
……ッ!?
後輩
う、うっ……
ウパパロン
えっ、ちが、ちがくて、


声のした方向を見ると、床に倒れ込んで目のあたりを抑えて泣きじゃくる私の後輩と、楽器を持ったままうろたえるウパパロンの姿が。


私は真っ直ぐ駆け寄って後輩を起き上がらせる。




もしかして、ウパパロンのトロンボーンのスライドが……


そんなこと思いたくなかった。


だってウパパロンは何よりもトロンボーンを大切にしていて、粗末に扱うだなんて信じられない。







そして何よりも後輩を怪我させてしまうなんて信じたくなかった。


Latte
なに?なにがあったの?
後輩
いや、その、トロンボーンのスライドがこの子に当たって……
後輩
そのまま目抑えて泣いたまま動かなくなっちゃって。
Latte
(もしかしたら目に直撃したのかも……)
Latte
信じらんない……
ウパパロン
…ッ!!

そう、嫌な予感がした。


万が一には失明だってしかねない。




ウパパロンを睨みながら私は言った。


Latte
あとで話、聞かせてもらうから。
ウパパロン
………は、い…







ウパパロンは掠れた小さな声でそう言ったきりだった。







Latte
(一体何があったの、ウパパロン……)





後輩を保健室に連れて行く時、私はウパパロンの顔を見ることができなかった。












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あの後、後輩を保健室へ連れて行って、保健室の先生に診てもらったら特に大きな怪我はないとのこと。


ただ後輩の目のすぐ横には痛々しい痣が残った。


Latte
文化祭前なのに、ほんっとうにウパパロンがごめんっ!
後輩
全然、そんな!
後輩
前見ないで走ってた私も悪いんで……







ウパパロン
あの……


突然の声に扉の方を見ると、ウパパロンが立っていた。


ウパパロン
本当にごめん、なさい。
後輩
いっ、いえ!ほんとに大丈夫です!
後輩
むしろ先輩の楽器は壊れたりしてませんか?
ウパパロン
それは一応大丈夫……
後輩
それならよかったです!
Latte
(ああ、この子どこまで優しいんだろう。)




ウパパロンは完全に反省している様子で、朝とのテンションの落差がすごかった。


だから痛い目見るよって言ったのに。


後輩
じゃあ私そろそろ練習に戻ります。
後輩
ウパ先輩、本当に気にしなくても大丈夫ですからね!




後輩は出て行ってしまい、ウパパロンと2人きりになった。


Latte
……だから浮かれないでって言ったじゃん。
ウパパロン
だって、嬉しかったんだもん……
Latte
そう!それが浮かれてるって言うの!
Latte
もう今日一日私と接するの禁止ね!
ウパパロン
ええ!?また!?まって、それはやだ。
ウパパロン
断固として認めない!
Latte
ダメっ!
ウパパロン
でもっ……
Latte
むりっ!
ウパパロン
うああぁぁぁぁぁぁぁ______!







ウパパロンの悲しみの叫び声が響いた。



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