第七王子ですが女装していたら嫁ぐことになりました ― 相手はイケメン(意味深)です
見た目がいいからと女装していたらある日突然「嫁に行け」といわれてしまった第七王子のリュシアン君のお話です。相手はタグで察してください。
2024/06/11~2024/06/17[小説] オリジナルウィークリーランキング12位になりました
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揺れる馬車、その窓から外を見てみればこじんまりしていながらも活気のある街並みが見え始め、もう間もなく目的地に着くことがうかがえる。
そんな変化する外の景色を目に、頬をつきながら出て来るのは……
「はぁ……」
ため息ばかり。
シンプルながら着るものを最高度に引き立ててくれているドレスに身を包まれている自分は今どんな姿で映っているだろうか?
黄昏ているカワイイ女の子? うん、自分で言うのもなんだけど見た目はすごくいいと思う。
正直これが今でなければドレス着て「うわ自分チョーカワイイっ!」と小躍りしそうな嬉しさなのだが、ドナドナされている状態なのを考えたら喜びはない。
着ているドレス、まあまあなウエディングドレスである。要するに、嫁入りである。
普通嫁に出される女性ってどんな気分なのだろうか? 嬉しいモノだろうか? 相手によるだろうか?
なお自分は喜ぶとか絶望するとか、それ以前の問題を抱えておりまして。
なにって、僕……リュシアンは男なのですよ?
グレンド王国はかつて魔族の脅威にさらされていた。
魔族の支配地域が隣接しており、たびたびその地域から攻め込まれていたためだった。実質最前線だった。
魔族の姿は様々であり、一定の知性があるとはされている。そして多くの魔物を従えている。
が、知性はあるとはいえ、あいにくと交渉はできない。過去に接触と交渉ができるか試されたことがあったらしいが、残念ながら知性はあってもほとんど本能に従っているような状態で、ただひたすらに人類を、隣接する王国を攻めてきているのみ。
もちろん人類もされるがままにすることはなく、攻めてくる魔族に対抗し、戦略を立て、そして少しずつ優勢になっていた。
だが、その中で大きな変化が起こる。魔族の中にかなり力を持った存在、魔王が現れたからだ。
力ある魔王の出現によって優勢だった人類は次第に押されるようになり、窮地に陥ってきた。
こうした中で最後の切り札として実行されたのが、勇者召喚。
異世界から力ある勇者を召喚し、そして魔王に対抗するというもの。実際召喚された勇者は力があり、様々な能力があり、その力を活用して苦境に立たされていた人類はあっという間に優勢になっていく。
そして多くの魔族魔物を討伐し、ついに魔王を撃破した。
勇者のおかげで人類は、王国は魔王の力に怯えることはなくなった。
そして使命を果たした勇者は後にグレンド王国のお姫様と結婚、前王から王座を引き継ぎこの国の王様になったのでした。めでたしめでたし。
……というのが、グレンド王国の歴史でございます。そしてその勇者の子供が僕、リュシアンなのでございます。
といっても第七王子なのですけどね、7番目の男ですけどね。それも側室の子だし。
僕の父親である勇者様は王妃以外にも側室2人がおりまして、結構子だくさんなのですよ。僕の上にも下にもたくさんおりまして。
夜の方でも勇者だったわけですな。
やっぱり王の子供だとお世継ぎがどうとか大事になるでしょうけど七男ともなればあんまり関係なくなってくるものですよね。
お世継ぎとかそこのところは長兄にお任せするとして、僕は王子だけどのんびり過ごして自由にしていたいものでして。
そうした中で見つけてしまった僕の趣味ですが、それが女装。
とある時に姉さまが「リュシアンって可愛いからぁ」なとど謎の理由付けであれこれと着せ替え人形にされまして、女の子のドレス着せられまして。
そうして鏡で見た自分に僕は思わず「これが、僕?」ってなりました。
それ以来僕は女装するようになりました。やっぱり自分可愛いからカワイイ服着てもいいよね? な感じで。
こうして姉からいただくおさがりをしっかりため込んで色々と楽しんでおります。そんな僕の姿をみて姉たちもご満悦です。
ついでに町娘な格好で女装してこっそりと王宮を抜けて城下町に遊びに行ったこともあります。
意外とバレないものですね。ちょっと意気投合した芸団に混ざってダンス披露して小金稼ぐこともしちゃっいましたけど。
皆僕のこと男だと全く気がついてませんでした。すごいね僕の女装クオリティ。
そんなこんなで四六時中女装していた僕ですが、母上は果たしてどう思っていたことやら。
あんまりいい印象はしていなかったろうねぇ。王女お姫様だった正妻の王妃に対して、母上はかつて冒険者だったというし。
今でも護衛の兵士や兄上を引き連れて「一狩りいこうぜ!」なノリで魔物ハントに出かけることもあるし。
結構男勝りでワイルドな性格なのですよ、僕の母上って。
だからといって嫌いなわけではありませんよ? 自分の母親の事が。
ちょっと甘えたらすぐ迫力の胸部装甲に僕の顔を埋めてくれるのですからねぇ。おかげですっかり僕の好みがボリュームのある人になってしまいました。
ちなみに姉たちもしっかり遺伝してそれは立派な胸部装甲です。まだ幼い妹も将来有望ですな。
それはそうと言い訳になるけど僕はそのまま女装してだらだら一生を過ごすつもりはなかったのですよ? 本当ですよ?
無駄飯ぐらいはダメ、王家だからといって怠けていてはいけません、というのが家訓でしたからねぇ。ワイルドな母親の文言でもあって無視できません。
だからちゃんと考えていたのですよ? 僕の美貌を生かして引き続き女装して例の芸団とともに各地を回って稼いでいくって将来プランもあったのですよ?
ちゃんと働くつもりだったのですよ? 本当ですよ? まあ話したことないからどう思うか知りませんけど。
どっちにしてもその将来プランは実行されることはありませんでした。
何故なら母上と国王である父上、さらには王妃直々に嫁に行けと言われてしまったのですから。
母上なにゆえ自信満々に「喜べ、お前のいい嫁の貰い手ができたぞぉ」っていうのですか? 怖いんですけどその笑顔。
いや色々おかしいでしょ? なんで男の僕が嫁なのさ? 無理でしょ絶対。
そのお相手は辺境伯の一人息子という。辺境伯は魔族領に近い地で防衛上重要な土地。
魔王が倒されたといっても魔族や魔物の活動がなくなったわけではないのでその地を任せられるのは相応の実力者であり、信頼できる人物でなければならない。
ちなみに現辺境伯当主の奥様は王妃の妹です。親戚関係ってわけですね。
その人の息子というから義理のいとこということになる。ちなみに母上曰くその一人息子はイケメンという。
いやその情報いる? むしろそんなイケメン一人息子に僕を嫁に出すっていいのか? 国の防衛を任せる信頼できる人物の息子の嫁に男を送るってどういうことなのさ? ダメだろ色々。
などと抗議しても母上も国王の父上も聞く耳持たず、あれよあれよと日取りは進んでいき、あっという間に僕が嫁にドナドナされる日が来てしまいました。
側室の子だし直系の王族の血じゃないからそこまでじゃないけど、相応に盛大に送られました。
しっかりと花嫁衣裳なドレスに身を包んだ僕を見た妹は「リシュ兄きれー」と素直に褒めてくれて、姉さまたちは「最高っっ!!」といいながら鼻血出して倒れるし。
馬車に乗りながら城門を出て街門までの城下町の中央道路でも多くの町民が手を振って見送ってくれて、僕はそれに作り笑顔を見らながら手を振って。
その中に例の芸団の姿が見えましたが、あの顔は「げ、あいつ王族だったの!?」って内心で間違いないと思います。
何とか途中で脱出できないかなーなんて思っていたけど今回の縁談旅には母上もしっかりついてきました。さすがに国王である父親は同行しないけど、そりゃ実の子供の縁談だから同行するのは当然だよね?
そして街門を出たところで空間魔法を発動、一気に辺境伯の町まで移動したのです。あっという間でした。もう逃げられません。
ちなみに簡単にワープできるんだったら別に城内でやればいいんじゃね? って話だけど、この空間魔法による移動は若干精度に問題があって、失敗するとかべのなかにいる状態になってしまうらしい。ひえー。
そういうわけで多少ずれても問題のない、周囲に何もない安全な場所である街の外で発動、移動先も町の外にしている。
あとは街での盛大なお見送りなパレードをするためってのもあるのですけどね。
城下街でもそうだし、辺境伯の町でも同じく。
魔族領に近い辺境伯の町は魔物を倒して素材をゲットして一儲けしようと活動している冒険者もあり、また周辺の土地も肥沃なために農業も活発で、そのため辺境であっても結構にぎわっている。
つまりどういうことかというと、僕の嫁入り歓迎ムードも非常に盛り上がっているというわけです。
僕が乗る馬車と母上が乗る馬車そして荷物運びと護衛の数台ですけど目立つには十分。
道行く人々は歓声を上げ、僕はは窓から再び作り笑いしながら街の住人の皆様に手を振る。
自信を持っていうほどに僕は綺麗でカワイイのでどう見ても女の子ですけど、中身はしっかり男なのですよ? ちゃんとついているのですよ? しかも王子なのですよ?
そんな奴がこんな大歓迎されて好意的に迎えられて、こんな状態で実は男だと発覚したらどうすんの本当に!
罪悪感ハンパじゃないんですけど。それ以上にバレたらどんな仕打ちになるのかと不安しかないのですが。そして国の尊厳にかかわりませんか大問題でしょ絶対!?
などと不安という爆弾を抱えながらあれよあれよと時は過ぎていき……
「あれ!? もう夜なんだけどっ!!?」
気がついたら窓の外はすっかり暗くなって、部屋も薄暗くなっており。
そして僕は今どこにいるかといえば、慎ましながらも身綺麗で品位のあるベッドルームに二人きりでおりまして。
そう、一人でなくて二人です。もちろんそのお相手は……
「緊張して記憶ないのか? 可愛い奴だな」
言うまでもなく僕の婚姻相手、辺境伯子息のミシェルさんでございます。
絵に描いたようなイケメンでございます。若い女の子であればもうメロメロになるでしょうねぇ。
しかし残念、僕は男です。ですから僕にイケメンの魅了は効きません。
「ていうかなんでベッドルーム!? その過程は!? 式とか婚宴パーティは!? 豪華な食事はっ!?」
「君意外と食い意地が張っているんだね」
そりゃそうでしょ。だってパーティですよ? そうなったら普段食べれないような豪華なものがあるでしょ普通。
ましてやこの辺境伯領地って土地が肥沃で色々と産物も多いっていうからここでしか食べれない美味しいモノだってあるんじゃない? って期待するでしょ?
なのに、パーティはどうした?
「あまりの緊張に覚えてないのか? 式もパーティもつつがなく行われたのだが?」
「え? ん? ……はっっ! そうだった!!」
うん、なんとなく思い出してきたぞ。
馬車で到着後早々に結婚式会場に案内され、なんか誓いの言葉を上げたような気がする。
ガッチガチに緊張してて僕は「はい」「はい」としか口にしていなかったような気もするけど。
そしてそのままお披露目で馬車に乗って町を一周したような。
僕手を振ってました? 「花嫁きれー」「めっちゃ美人」「美人というより可愛らしい」なんて賞賛の言葉いっぱいで普段だったら喜ぶけど股間に物体があるから花嫁美人じゃないんだよなとひやひやでして。
その後パーティ会場に行ったけど豪華な食事があったような気もするけど口にした記憶がない。
とりあえずグラスを片手にご挨拶したような気はする。助けを求めて母上の方を見たらいいカンジに酒飲んで酔っ払って来賓に絡んでいてあんた何してんだと心の中でツッコミ入れる余裕もなくて。
で、気がついたら今に至る。
「もうダメだぁぁおしまいだぁぁ!!」
「結婚相手の目の前でそんなこと言うのか君は」
いや多分ミシェル殿は悪くないのですよ? 悪いのは僕をこんなところに花嫁として送り込んでしまった父上とか母上でして。
取り急ぎこの場をどうするか、であります。僕は紛れもない男であり女ではない。だというのに今から男相手に初夜がスタートしてしまう危険イベント。
ここをどう乗り切る? 選択肢は……
1. ミシェルを振り切って逃亡
2. 自分はおち○ちんがついてる女の子なんですと言い張る
3. 素直に謝る
1.はなかなか難易度が高い。正直自分は足が早いけど身体能力的にはどう見てもミシェルの方が体格的にも上だし、魔族領も近いから日々鍛錬してそうだし。
仮に振り切ったとしてもこの周囲は土地勘がない。ましてや魔族領に近いだけあって魔物による命の危険は高い。
ついでに逃げてしまえばいくら辺境伯の妻が王妃の妹で親戚関係にあるとはいえ、王室と辺境伯との関係がこじれてしまう。
父上である国王のメンツをつぶすことになって場合によっては魔族に対する国防の危機になってしまう。これはまずい。
2.はどうか? いやおち○ちんがついてる女の子っているのかよ!?
そりゃ兄さまが裏ルートで入手したソッチ系の書物をこっそりと見せてもらったことあって、その中におち○ちんが生えてる女の子って設定あったけどそんなの所詮はフィクションの話だし。
もしかして探せばそういう魔術式が実際にあって生えちゃったみたいなのあるかもしれないけど、それで相手が納得するか定かじゃないしやっぱり無理あるし。
というわけでこの案も却下。となると残る道は……
「すいませんでしたぁぁぁっ!! 自分本当は男なんですぅぅっっっ!!」
3.を選択。土下座して謝るしかない。
我ながらそれはそれは素晴らしい潔い土下座である。完璧を尽くす、それぐらいしないとこの場はおさまりそうにない。
とにかくブチ切れて切捨てられることだけでも回避しなければ。
「く、くくっ……そんなとこ最初から知っているさ」
「……え?」
知ってる? 僕が男ってことをですか? 最初から?
「国王たるものが信頼が必要な相手にこんな隠し事して花嫁送るわけないだろ?」
「えーっと……」
まあ確かに。考えてみればこんな重大事項隠し通せるはずもないよな? ちゃんと伝える可能性あるよな?
そういえば姉さまから見せてもらったソッチ系の書物でも偽って男を嫁に送って、ってのがあったけどアレは臣下の貴族が王子の相手にと送った場合でしたね。
「あるぇ? じゃあみんな僕が男だって知ってるの?」
「町民までは伝わってないけど、俺の父様も母様も、ウチの家来もみんな知ってるよ」
「え? じゃあ僕が勝手にバレたら切り捨てられるってビビッてただけ?」
「君のお母様が黙ってた方が面白いだろうって」
「母上ーーーーーーーーーっっ!!」
ええいっ、あのいたずら好きな迷惑母親がーーーっっ!! こんな大事な時になんてことしてくれているんだ!
こういうのドッキリっていうんでしたっけ? やめてくださいよ緊張で死にそうなレベルだったのですよ!!
「ってちょっと待て。だとするとミシェルさんは僕が男と知ったうえで嫁に迎えたと?」
「そうだよ」
きゃーーーーーっっ!! たいへんへんたいだーーーーーーーーっっ!!
どこの世界に男を嫁に迎えるモノ好きがいるんですかたいへんへんたいですよーーーーーっっ!!
「すごく失礼なこと考えてない?」
「男と分かったうえで僕を嫁に迎えた人に言われたくないですっ!」
そこは断言、きっぱり言います。マジ姉さま大変ですよ、あなたの愛読書のびーえるってジャンルの出来事がマジで発生してしまいましたよ!!
姉さまめっちゃ喜んでましたよねぇ「びーえるな展開が目の前で……」って鼻血出しながら僕を送り出しましたよねぇ。リアルは勘弁ですけどっ!!
ということはアレですか!? やっぱりあの書物のように僕はこれからおいしくいただかれてしまうのですかっ!
このイケメン辺境伯子息にアッー! な展開になってしまうのですかっ! いやマジ勘弁あれはフィクションだから成り立つのであってリアルはダメなのですよっっ!!
「まったく、夫婦初めての夜なのだからもっとロマンチックになってほしいものだね」
「ロマンチックになってたまるかーーーっっ!!」
わーっ、わーっ、この人服脱ぎ始めちゃったよ花婿衣装のボタンに手をかけてるしーーっ!
いやーーっっ! リアルで男同士は勘弁ーーーっっ!! イケメンボディに襲われるのはイヤだーーーーっっ!!
わーーっっ、もう上着が脱ぎ捨てられて野郎の胸板がー……って、アレ?
「く、くくっ。いい反応だねぇ」
実に楽しそうに服を脱いでたミシェルさん。男の胸板に抱かれるーーって恐怖していたけど、胸板?
上着とシャツを脱いで現れたその下のボディ、胸板じゃなかった。さらしがまかれた、二つの物体。それは……
「デカいっ!」
「本当に素直な感想だなぁ」
いやだって圧倒的ですもの。胸板だと思えるほどさらしに巻かれているけど存在感は圧倒的ですもの。
そういえば王妃もその妹の辺境伯夫人も大ボリュームでしたね。やはり遺伝か。
「っていうかミシェルさん女だったのですかっ!?」
「まあ、今は女なのだが……」
どう見ても大ボリュームは紛れもない女性なのですけど、なんかいまいち歯切れが悪いですね。
辺境伯は今まで会ったことなかったけど、一人息子だと僕は聞いていましたし。もしかして子供いなくて男として育てられたとか、自分が女だと認めたくないとか、複雑な事情があるのでしょうか?
「つい1か月ほど前まで俺は男だったんだよ」
「もっとすごい事情だったーーーっっ!!」
なにそれ! 男だったのに女になったということですか!? それどういうこと!?
そんな面白いことあるの? どうして女になったんですか!? 魔法式の暴走とか? 興味あるんですけどっ!!
「君、急に食い入ってきたな?」
「いやもうそりゃ興味深いものでして」
だってねぇ、男って一度は女になってみたいって思うことあるでしょ?
僕も女装しているだけあって物は試しに一度女になってみたいなー、なんて思ったこともあるし。
「言っておくが面白いものではないぞ? あげく男に戻れないのだから」
「うーん?」
戻れないかぁ、なってみたいって簡単に言えるものじゃないってことですねこれは。
そしてミシェルの渋い顔。そんなにヤバいことあったのですか?
「いうまでもなく我が家は辺境伯で魔族領に近いだろ? となると領主の息子だからって悠長にしていられない。時として迫ってくるかもしれない魔族に対抗するためには実力をつけなければいけないから、俺も討伐に出て経験を重ねる必要がある」
「おおう、結構肉体派なのですね」
町がにぎわっているので忘れがちだけど、魔族領と接しているということは相応に危険地帯でもあるってことだよな。
そりゃ時には自ら出て魔物相手しなければいけないってのはわかるわ。
あれ? ってことは僕もここに来たということでやらなきゃいけないでしょうかね魔物退治。
ちょっと待ってよ僕戦闘経験一切ないのですけど?
「で、一か月前のその時も定期的な訓練で補佐役で雇った冒険者二人と一緒に町から少し離れて討伐訓練していたのだが……そこで奴が出てきたんだよ」
「やつ?」
「食虫植物のような姿した魔物だよ。あいつ図体の割に異様に俊敏で、同行した冒険者含めて俺たち全員あっという間に触手につかまって……」
「触手!?」
なんということでしょう。物語でしか見たことない触手な魔物が実在したとは!
目撃報告が圧倒的に少なくて実に貴重な存在なのですよ!!
「そいつに捕まってからは……思い出したくない。とにかく気がついたら、俺も同行した冒険者も女になっていて」
「なんとっ!!」
触手プレイののちに女ですとっ!! かつて4番目の兄さまが入手した裏書物にあった触手モノ的な展開と同じではありませんかっっ!!
そういえば肝心の書物は母上に見つかって処分され兄さまも徹底的にしごかれていましたなぁ。僕も読んだけど上手く逃げ切りましたがね。
それにしても創作の世界だけの存在と思われていた存在が実在したとは。興味深いですなぁ。
「リュシアン君、なんで君はそんなに嬉しそうな顔しているんだい?」
「アッハイ、スイマセン……」
しまった、ついついテンション上がってしまった。聞いている側は興味津々だけどそりゃ当事者にしてみたら悲惨だからなぁ。
気がついたら女だし、触手に(ピー)されたわけだし。
「俺も同行の冒険者も絶望状態で、男に戻る方法もわからず、問題の魔物も気がついたらいなくなっているし、幸いにして装備から身元は保証して父様も母様も女になった俺が俺だと認めてくれたけど、絶望状態になって」
「あー……」
姿が大きく変わってるからなぁ。自分が自分であることを証明するって大変だろうなぁ。
軽率に触手でテンション上がってしまって申し訳なかったわ本当に。
「少しずつ立ち直ったけど、体が変わってしまったことは事実で、不必要に胸がデカいせいで体感も変わって戦闘経験も実質リセット状態で」
「うーん、邪魔ですかぁ」
見下ろす胸部装甲。さらしで巻いてますけどなかなかの質量なのはよくわかります。
ウチの母上も大きいし王妃様も大きいし、緊張でちゃんと見た記憶ないけどミシェルのお母様も大きいのでしようか? やはり遺伝ですかねぇ。
「同行していた女になった冒険者も続けられそうになっいってことで、支援としてウチでメイドとして雇うことになったが」
「そちらも苦労しますねぇ」
そういえば思い出した、この部屋に来るまでにメイドさん二人がお手伝いしていたような。
あの二人が女になってしまった元冒険者? 胸すごいなぁと記憶してますが。
「なによりも跡取りの問題が、な。ウチの家系は俺一人だから家系を継ぐのは間違いないし、女伯爵ってのもアリだが、どっちにしても後継ぎが……」
「深刻な問題ですねぇ」
「王女との……君の姉のうち一人との縁談の計画があったのだが、これも白紙になって」
「え? そうだったの?」
それは知りませんでした。まあでも辺境伯って信頼できる相手ですからねぇ。そりゃ縁談の相手として姉様が検討されるのは妥当な話か。
ちなみに上の姉様は王妃様の子もいるし、実の姉もいるし、もう一人の側室でもいるし。誰と縁談の計画だったのだろう?
しょっちゅう「尊い」って言いながら鼻血出してる姉様だけど、果たしてミシェルとうまくいくかは不明。
「そうした中で王女との縁談が白紙になって、代わりに君との縁談が持ち上がって」
「は?」
どうしてそこでそうなる? そりゃ確かに同じ王族ではありますよ? けど側室の子だし、おまけに七男だし。
「勿論王女との縁談が白紙になったのは仕方ないとしても、だからって男と結婚なんて俺ができるかって反発したさ」
「そりゃそうですよねぇ」
正直僕だって御免こうむりたい。僕は日ごろ女装してますけどハートは男ですよ? だから結婚相手は当然女性ですよ?
男とアッーな関係はご勘弁です。ですからその気持ちはわかりますがね。
「母様は『女の子みたいな男の子だから大丈夫よ』なんてわけのわからんこと言うし」
「わけのわからん奴で申し訳ございません」
そうですよね、僕って男だけどそんじゃそこらの女子が裸足で逃げていく可愛さですよ? 自画自賛だけど。
10人中9人が女って思うでしょうね。無い胸を張って言いますが。
「だが……見合い写真を見て気が変わった。そして実際に見て文句なくなった」
「は?」
「ふふっ、リュシアン君……完全に俺のタイプなのだよ」
「ふぉわっつ!?」
え、なに? ドストライクだったのですか僕!? まさかの的中!?
「俺は小動物みたいな女の子が好みだったみたいだな。君はまさにそんなタイプだよ」
「小動物だったの僕ーーーーっっ!?」
始めて聞きました、自分の属性。確かに男としては華奢だし体感は女っぽいし、背も低いし。
おや? だとすると当初の縁談の姉様たちは軒並み好みから外れそうだな。まあまあ背もあるしメリハリあるし鼻血出してターゲットオンしている様子は小動物というより飢えた獣だし。
などとやり取りしていたら、いつの間にかミシェルがケモノみたいに迫って来ているのですが!?
あの、えっと……あ、まずい。ちょっと後ずさりして逃げようとしていたら気がついたらベッドの上じゃん僕。
「ふふっ、わざわざ自分からベッドに上がるなんて。君もその気かな?」
「いえちょっと待ってください心の準備ってのが……」
さらし巻ている存在感はあるけど顔は完全にイケメンなんでよミシェルって。
だから今は男に迫られているは気分そのままでして、ちょっとこう、ざわざわしているというか。
そんな僕の心境などお構いなしにミシェルは僕に迫るのをやめることはありません。
迫りつつ、背中に手をまわしてとめてあったであろう部分に触れて、結果さらしが落ちる。
「わっほう。メロンですかスイカですかっ♪」
残っていたさらしが外された結果ミシェルはトップレスに。そうなれば当然胸もあらわに。
開放されてぷるんっとこぼれた胸はかなりデカい。ものすごい存在感ですよ!
「くくっ、聞いていた通りだね」
「ん?」
「君のお母上から『あいつは巨乳好きだから見せればイチコロよ』って先ほど教えられてね」
「母上ーーーーーーーーっっ!!」
息子の性癖しっかり把握していたのですかっっ! いや多分わかりやすかったかもしれない自覚はあるけど。
だとしても恥ずかしい情報を結婚相手に伝えないでいただけますかねっ! そういうところですよっ!!
「それと母様からしっかり房中術を教えれているからな」
「お義母様ーーーーーーーーっっ!!」
女になったばかりの息子に何を教えているんですかっ! 最強ですかっ!?
それはそれで興味深いのですが、目の前の僕をまさに襲おうって方を見るとちょっと怖いのですがっ!!
「つれなくするなよ? もう俺たちは夫婦なんだぞ?」
「いやそうかもしれませんがちょっと心の準備が……」
何て急展開についていけない僕をよそにミシェルは穿いていたスラックスも脱いでしまいまして、残るはパンツ一枚。
下はちゃんとショーツなのですね。ちょっと気合入っているのがわかるデザインですね!
「へぇ? リュシアンもなかなか攻めた下着じゃないか。期待してたのかな?」
「わーっスカートめくらないでーっ! これは姉様が穿いてけって言われてーっ!!」
出発前に「下着もちゃんとしなきゃダメよ」って言われて渡されたエッグいパンツでございます。
鼻血出しながら押し付けてきたものですから拒否できずに仕方なく穿いております。
「そして、意外と凶暴なモノを持っているんだな」
「いえどうもすいません」
きわどいパンツに収まりきってないレベルですよ僕のエクスカリバーは。
そこは何体もの魔族を倒し魔王を討伐し何人もの子供を作り上げた勇者の血を引き継いでますからねぇ。
「それはそれで、血が騒ぐな」
「いやちょっと物騒なこと言わんといてーっ、そしてもうちょっとロマンチックにーーっ!!」
アッーーーーーーーー!!
「まあおっぱいも技も素晴らしかったのでよしとしよう」
「君、わりとチョロいんだな」