地方を去る女性たち・・・なぜ?本音を聞いてみた
若い女性の減少率を分析した最新のデータが、衝撃を与えています。
2050年までに若年女性の人口が半数以下になる自治体は、全国744に上るとされ、そうした地域では人口が急減し、最終的に消滅する可能性があるという推計が4月に発表されたのです。
(「人口戦略会議」より)
なぜ地方から女性が消えていくのか?地方を去った女性たちに本音を聞いてみると…
「そもそも働く場所がないんです」
「『女性は嫁としてもらわれて家庭を持ってやっと一人前になる』と言われた」
「国の“人口減少対策”では私たちの声が聞かれていない」
このテーマ、皆さんはどう考えますか?意見・感想や体験談をお寄せください。
(クローズアップ現代 取材班)
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744自治体が“消滅可能性” 女性の流出が止まらない
民間の有識者グループ「人口戦略会議」が公開した分析結果です。全国744の自治体が「最終的には消滅する可能性がある」としています。
消滅の根拠としたのは、20代~30代の”若年女性人口”の減少率。
子どもを産む女性が減ることで将来の出生数が減り、自治体として維持できなくなるとしたのです。
若年世代の人口移動を都道府県別で見ると、この10年間で全国33の道府県で男性より女性が多く流出。
中には、男性の2倍の女性が去っている地域もあります。
国は2014年以降、人口減少対策として「結婚・妊娠・出産・子育て」の支援を行う自治体を積極的に後押ししてきました。
その交付金の予算額は年々増加し、2014年度には30億円だったのが、2024年度には100億円に上っています。
こうした対策を講じているにも関わらず、なぜ地方からの女性の流出が止まらないのか?
なぜ地方から女性が流出?「女性の本音を聞いてほしい」
国や自治体に対し、女性たちの本音を聞いてほしいという思いから「地方女子プロジェクト」を立ち上げた、山本蓮さんです。
きっかけは3年前、地元山梨で就職活動をしていた時の出来事でした。
- 山本蓮さん
「女性の先輩の話を聞いたら、『私は営業で入ったのに事務に回されて、男性が営業、女性がその補佐をする体制になっていて、この会社でやりたいことはできないと思うよ』ってアドバイスをもらったときに自分の意志だけではどうにもならない環境があるなと思いました。
東京に出れば少しマシになるけど、地元に残ったら我慢し続けなきゃいけないのかというのは、おかしいんじゃないかなと思って」
山本さんが人口減少などのレポートを見て感じたのは、「女性は子どもを産むべき」という社会からの圧力。
女性たちの本音を反映させて欲しいと、この活動を始めました。
- 山本蓮さん
「地方から女性が出ていってそれが人口減につながっている、みたいな課題を見たときに、投げかけられているのは『地元に戻って子どもを産め』ということなのかなみたいな。
そういう圧みたいな、あおりみたいなものに感じ、地方が女性にとって生きづらい場所になっているのではないかという疑問があって。
でも報道とかレポートとかを見ていても、そこに当事者である女性の声が全くない。私たちの思いは統計や数字になっていない感じがするので、それを示したいです」
女性の本音「働きがいがある仕事が見つからない」
これまで山本さんは、10代後半~30代の地方出身の女性たち50人ほどに聞き取りを行ってきました。
多くの人が地元を離れた理由としてあげたのは、「地元では働きがいがある仕事が見つからない」ということでした。
- そとさん(30歳・岩手出身)
「(地元は)めちゃくちゃいい町ですよ。県で一番大きな川があって、湖もあります。ブドウもすごく有名でワイナリーがあります。
ニュージーランドに留学したので英語を使える仕事をしたかったんですけど、岩手では見つからず 、ホテルに勤めたいと思って、そのまま上京しました」
希望する就職先があれば、地元に残りたかったと話します。
- そとさん
「震災の時に岩手県にいなかったというのをめちゃくちゃ後悔していました。
私以外の人はすごく苦しい思いをしていて、私はただ見ているだけだったというのがすごく悔しくて岩手に戻ってきました。
このまま岩手に留まりたいと思ったんですけど、これまで外資系のホテルで英語もしゃべれてきたし、マネジメント経験も積めたのに、岩手での就職先はビジネスホテルしかなくて、(自分のキャリアを生かして)貢献できる実感がありませんでした」
子どもを持つ女性からは、働く場所がないと子育てをするのが難しいという声もあがりました。
- Aさん(35歳・京都北部出身)
「本当に過疎がかなり進んでいる地域なので、そもそも働く場所がないんですよ。介護施設か、農協、郵便局か、役場ぐらいしかなくて。私たちの世代だと、地元で働くということをイメージしている人はほぼいないんじゃないかなと思います。中には家業を手伝うために戻って継いでるという人もいるんですけど、本当にまれですね。
「地元自体は本当に自然が豊かで、都会と違って子供がのびのびと過ごせるいい環境なんですけど、子どもの親が働く場所がなかったり、子育てをするには難しい環境なので、戻って子どもを育てたりとか、そこで暮らすっていうのはちょっと考えにくいなとは思います。
なんとかしてほしいと思いつつ、私たちもどうするのがいいのか全く思いつきません」
東北地方の地域シンクタンクが18~29歳の女性を対象に行った調査からも“仕事”の重要性が浮かび上がります。
東北圏から東京圏に移動した理由を複数回答で尋ねたうえで、インタビュー調査で最も重要視する項目を順位付けしてもらったところ「やりたい仕事・やりがいのある仕事が地方では見つからない」ことが地方から転出した主要因だということが分かりました。
女性の本音「女性の役割を求められるのが息苦しい」
また、多くの女性が口にしたのが、「女性の役割」を求められる地方の息苦しさでした。
- ななこさん(24歳・新潟出身)
「地区の行事では女性陣が絶対台所に近い席に座っているんですよね。男の人たちは絶対動かなくていい席に座りっぱなしで。お母さんからずっと『女性は気が利く人間にならないとダメだよ』と言われて育ってきたので、将来生きづらいなって」
- かなさん(28歳・沖縄出身)
「東京に就職するって親とか親戚に言った時にやんわり反対されたんですよね。東京は仕事をバリバリやっていくイメージがあるので、私はそれを望んでいたんですけど、『女はそんなに一生懸命働かなくていいよ。それよりはいい人見つけて早く結婚して』と言われました」
- ぐちゃんさん(29歳・大阪出身)
「すごい『家父長制』みたいな言葉を頂戴してます。『女性は嫁としてもらわれて、家庭を持ってやっと一人前になる。あなたもみんなから好かれるような女でないと』、『結婚するという意識が女性にないから日本はおかしくなっていく』。
もっと最悪なのは『最近の若い人は性行為が気持ち悪いと思っている。だから日本の人口が減っていく』みたいなことを言われました」
- むくげさん(19歳・山形出身)
「育ってきたので地元に愛着はあります。でも東京が令和だったら、地方は江戸時代だなって」。
女性が人口増加の役割を担わされていると感じ、違和感を訴える人もいました。
- みずきさん(26歳・新潟出身)
「本当に若年女性が生きやすい国にするとか、力をつけるということじゃなくて、単純に『人口を増やさなきゃ』みたいなメッセージに感じてすごく危機感を持っています。女性を頭数で産む機械って思わないことが一番大事だと思っています」。
結婚・出産・子育て支援に力を入れる自治体 しかし・・・
一方、人口減少に悩む地方自治体の多くが力を入れるのは、結婚・出産・子育てへの支援です。
新たに「消滅可能性自治体」とされた、富山県入善町です。
この10年、町から流出する若年女性の割合は2倍に増加。出生数はこの10年で半分以下にまで減少しました。(140人→64人)
笹島春人町長は、人口減少を止めるには、子育て世代の支援を手厚くし、出生数を維持する事が不可欠だと考えてきました。
そのために町独自の予算をつけ、不妊治療費助成や子宝支援金など、子を産み育てる全てのライフステージでの支援を目指してきました。
しかし、若年女性の流出は止まりませんでした。
手厚い子育て支援が、思ったよりも引き留めにつながらなかったことについて、対策の難しさを感じています。
- 笹島春人町長
「本当に悔しいなというのが私の思い。全国の自治体の子育て支援関係を見ても私はどこにも負けていないと自負しています。
何が原因かを再度掘り下げていろいろと考えてみる必要があるのかなと思います」
地方創生の一環で婚活支援に力を入れる自治体もあります。長野県山ノ内町です。
町の婚活イベントの10日前。
婚活支援を担当している網守大輝さんのもとを尋ねると、全体の申し込みは42人。
そのうち女性は3人でした。
その後女性の申し込みが2人増えたことでイベント自体はなんとか開催することはできたものの、女性の参加母数が少ない中で、現場で支援を続けていく難しさを感じています。
- 網守大輝さん
「これだけ男性の応募者数が多いという現象は、若年女性と出会える場所がないことの裏返しでもあると感じています。婚活の民間業者も、人口が少ないエリアで婚活イベントをやることはあまり多くはありません。
ただ行政主体の婚活において、効果が上げられないから諦めてしまうとなると、農家などの一次産業に従事している人など、この町に根ざして暮らす人たちは出会うチャンスを失ってしまいますので、こちらも諦めずに支援を続けていきたいと思います。」
一方、地元を離れた女性たちからは、国や自治体が行う支援は結婚や子育てを前提にしたもので、独身女性へのサポートが少ないのではないかという声もあがりました。
- しまさん
「(地元に)帰りたくない女性が、数を増やすためだけに来いってさせられるのは、断固拒否です。
地方だったら子どものいない女性って本当に透明化されるんですよ。でもみんな国家貢献のために子供を産む義務も責任もないですし。
困っているのは、行政が単身女性向けとか子どもがいない女性向けのサポートをほとんどやってないところですね。大体、行政の女性支援って、子どもがいる前提のものばかりで。
子どもを産まない女性を責めないこと。あとは、産みたくない女性がいるということで、ちゃんと産みたくない女性向けの支援もやってほしい」
「一人ひとりが多様な幸せを実現する社会を」 地方創生の10年を経て政府は
政府は先週、この10年の地方創生に関する政策の効果を点検し、報告書にまとめました。
現状について「人口減少や東京圏への一極集中などの大きな流れを変えるには至っておらず、地方が厳しい状況にある」としています。
そうした中で、今後は「女性・若者にとって魅力的な、働きやすい、暮らしやすい地域づくりに向けた検討を女性・若者の視点から行っていく必要がある」としており、「従来の取組を超える新たな発想に基づく施策を検討・実行していくことで、一人ひとりが多様な幸せ(well-being)を実現する社会を目指すことが重要である」としています。
あなたはどう思いますか?意見・感想・体験談を募集しています
地方から女性が去っている現状や、国・自治体の施策について、あなたはどう思いますか?
感じている課題や、こうすればいいのではないか?という改善案など、あなたの意見・感想・体験談をぜひお寄せください。
みんなのコメント(125件)
- 感想thiazou2024年6月17日
- これは女性たちが「自分の貴重な時間を何に費やすか」を追求した結果ではないのか。要は出産して子育てするということに時間を使いたいと思えるかどうか。子育てして良かったと思えるまでには長期間かかるし、もしかすると良かったと思えずに終わるかもしれない。そんな賭けをするのではなくて、自分の能力を活かした仕事をして中期的な喜びを得つつ、現代の多様な“エンタメ”という短期的な楽しさを消費する人生の方が堅実的で良さそうに思える。人間の本当の喜びは子どもを育てた後に分かると誰かから聞いたことがあるが、“本当にそうなんだろうな”と思わせてくれる人との出会いが今どれだけあるだろうか。いかに出産・子育てに支援が手厚かろうと自分の時間を使う価値があると思えなければ、女性たちはそっぽを向いたままだろうと思う。
- 提言コロン2024年6月17日
- 自治体が頑張っても、女性が生活するのは昔から住んでいる人たちの「ナカ」。
男性に、勝手な価値観を押し付けない「教育」そして、女性の価値観を尊重する宣言をさせていくことしか意識改革はできないと思います。
旗振りの自治体職員だけに任せて、自分は何も改革しない男性が、すべての原因です。
女性がしてきたこと、家事、料理、子供の世話の研修をすべての男性に義務付ける自治体が出てくることを望みます。
そうした研修、宣言をした男性の比率を各自治体が競いあい、子育て支援という金銭的支援ではなく、「未来を産み出す女性」への心からの敬意をもって見守られる世界が、実は求められていることを、カンケは理解して欲しいです。
- 提言うぐ2024年6月17日
- 町長が75歳。そりゃあ考えることは上手くはいかいないだろうし、政治家も定年があれば、国会は元より若い地方議員も増え地方でも収入が増える若者が増え、結婚、少子化、地方活性に繋がるかもと思った。
- 感想星砂2024年6月17日
- 地方から女性が減った理由って、家庭から女性が逃げた理由(=結婚しない人が増えている)にも繋がると思う。都会といわれる神奈川に住んでいるけれど、誰かが言っていた台所に一番近い所に座るのは私だし、合理的だと思ってやってたけれど、地方であれ都会であれ、女性が家庭の雑用係だったり家庭運営の調節弁の立ち位置であるのは根強く浸透していることを改めて思い知らされた。
- 感想なみか 追伸2024年6月17日
- 今日の特集とても興味深く鑑賞させていただきました。田舎に移住したいと、考えてるシングル女性が働ける場所、地域との繋がりが必要。だが、現実の地域支援隊で1年だけ勤務は難しい。結婚相談所も地域だけでなく、東京、名古屋など都市の新聞広告、フリーペーパーに出してみるのはいかがでしょうか?意外にチャンスを待ってる独身女性はいると思う。20~30代の若年層だけでなく、40代の働き盛りの女性を対象にしてみてはいかがでしょうか?
- 体験談野菜サラダ2024年6月17日
- 年の若い友達の夫が九州出身。親戚が集まると、幼児の息子は前方に座り母親は下座です。いつか離婚しようとひっそりと準備しているそうです。
私の元夫は東北出身。帰郷すると、兄弟と親戚がたくさん集まり飲食。私は家政婦。何年か我慢して、年2回の帰郷を私が行くのを1回に認めさせました。核家族だった私には苦痛でした。その他色々の事情により離婚。子供が独立して、一人暮らし。こんな穏やかな日をありがたく思います。
男よ、地方の人々よ、今までの生活が当たり前だと思わないで、改善しましょうよ!
- 体験談田舎暮らしの幻想2024年6月17日
- まさに江戸時代、男尊女卑、ひどい嫁の生活を見た二十代の娘達は、地元の就職先でも嫌気がさし、結婚も全くする気無し、私も離婚寸前です。おじさん、おばさんの意識を変えないと田舎で暮らすのは無理です!
- 提言コロン2024年6月17日
- 自治体が頑張っても、女性が生活するのは昔から住んでいる人たちの「ナカ」。
男性に、勝手な価値観を押し付けない「教育」そして、女性の価値観を尊重する宣言をさせていくことしか意識改革はできないと思います。
旗振りの自治体職員だけに任せて、自分は何も改革しない男性が、すべての原因です。
女性がしてきたこと、家事、料理、子供の世話の研修をすべての男性に義務付ける自治体が出てくることを望みます。
- 悩み星砂2024年6月17日
- 仕事しながら育児しようとすると、職場と家と保育園が近くにないと両立できない事実に直面しています。
結婚前か結婚後、先を見据えて転職しないと出産以降詰むなんて…地方に限らず、現行の母、妻の役割を果たすためには、仕事は地理的要件で決めなきゃいけないなんて、若い時にはそこまで気づかなかったです。
- 感想てぃーちゃんのママ2024年6月17日
- 女性に対して、職場や行政の場において、その人らしい生き方や活躍、働き方を期待していないことがあからさまなのでは。
女性を一人の人間として何によらず尊重できなければ、あるがままの女性の力、意欲を活かすという構造に繋がらない。自分が活かされないような印象では希望が感じられず希望に満ちたところに行きたいと考えることにもなろう。それは女性だけでなく、若者や弱い立場にある人全てに対して同じことが言えると思うが。都会の大企業の管理職であってもできない人はできない。差別的な扱いなど溢れるほどあるが、都会は人口も多く目立たないだけではないか。
女性に対して、女性のもつ意欲、女性に対する期待などを言語化し伝える訓練をしてみたらどうか。取材を受けられていた市長さんなどにはぜひ取り入れて頂きたい。