愛知県蒲郡市が約10年前に実施した職員採用試験を巡って、女性受験者らを不正に減点する操作があったと市の公益通報制度に基づく通報があり、市が調査委員会を設置したことが14日、複数の市関係者への取材で判明した。通報では、当時の稲葉正吉市長(72)が男性の採用を優先するよう指示したと指摘されているというが、稲葉氏は取材に「指示はしていない」と否定している。
関係者によると、通報は、2013~14年ごろに実施された採用試験の一部で、女性や市外居住の受験者の点数を引き下げる操作があったと訴える内容だという。操作には複数の職員が関わったといい、その一人とされた市幹部は取材に対し、「自分の立場からは何も言えない。10年前のことで記憶も薄れている」と話した。
また通報では、当時市長だった稲葉氏が女性の出産に伴って欠員が生じることなどを懸念し、市内の男性を優先的に採用するよう担当者に指示したと指摘されているという。これに対し、稲葉氏は取材に「市はそれほど余裕をもって採用しておらず、欠員が出ると苦しい。災害時にはすぐに参集できる職員が求められ、そうした人を採用したいという心情が担当者にはあると思う。だが、試験はあくまで公平でなければならない」と語った。
公益通報者保護法は特定の法令に違反する組織内の行為を公益通報の対象と定め、通報者への不利益な扱いを禁じている。性別を理由とする採用差別を禁じた男女雇用機会均等法違反も対象。国の指針で、自治体が通報を受理した際は正当な理由がある場合を除き、必要な調査を実施するよう定められている。
一方、14日の市議会一般質問で、藤田裕喜議員(自民)が「匿名で職員と思われる方から『市に公益通報があったようだ』と連絡があった」として内容を聞いた。市側は調査委の設置を認めた上で、通報内容については「調査中の事案なので回答は控える」と述べた。【永海俊】