ハリーポッターと何も知らない転生者   作:シャケナベイベー

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今回で一気に話が進みます。


影来たりて

 あれから、スリザリンの五年生が親衛隊として動くことは極端に少なくなった。ダフネは「貴方を信頼したからよ」と我が事のように嬉しそうに微笑んでいたが、本当のところは分からなかった。

 

 

「巨人の弟を連れてきただって?」

 

 そして場所はまたもグリフィンドール談話室。リオンはお馴染み三人組からもたらされた情報に目を最大まで見開くことになった。

 

「その……フィレンツェが他のケンタウロスに蹴り殺されそうになってるってハグリッドが言ってて……」

「そうしたら出てきたのよ。グロウプっていうハグリッドの弟が」

「父親は違うみたいだけどね。他の巨人より小さいから苛められてたのをハグリッドが保護したんだ」

「丁重に故郷にお帰り願え」

 

 ロンとハーマイオニーが交互に話すと、眉間を押さえたリオンが素早く断言した。しかし、それにハリーが呻くように溢す。

 

「……それで、僕らハグリッドに世話を頼まれて……」

「あの馬鹿はお前らを見殺しにする気か?」

 

 あまりにもあんまりだ。ハグリッドとは違って純粋な巨人。体躯が小さくとも根本的に人間と違うのだ。それをまだ五年生の彼らに世話を任せようなど……。

 

「まぁ、好きにしろよ。流石に今回は面倒を見れん」

 

 

 

 結局、リオンはハグリッドの問題を放置することに決めた。ダンブルドアに報告しようにも彼の居場所が分からないし、他の教員も試験に向けての準備──大抵はアンブリッジに押し付けているが──でてんてこ舞いだし、無論アンブリッジなど論外だ。

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

 そして、いよいよO.W.L.試験が始まった。リオンは目の下に極薄い隈を作りながらも淀みなく羽根ペンを走らせる。

 

(この問題は……こうか。で、次が……あぁ、これはセオドールが教えてくれたやつだな)

 

 そして午前の筆記を終え、昼食を食べてから待合室代わりの小部屋に移動する。

 アンソニー・ゴールドスタイン、ゴイル、ハーマイオニーの名前と共にダフネが呼ばれ、少し緊張した面持ちの彼女の肩を優しく叩いて送り出す。

 

「デイビス、トレイシー──ロングボトム、ネビル──パーシヴァル、ランス──アーデル、リオン」

「頑張れよリオン、ランスもな」

「大丈夫、君たちなら出来るさ」

 

 立ち上がったリオンとランスを近くに座っていたザビニとマークが激励する。二人はそれに頷き、やがて近くに寄ってきたネビルとデイビスと共に待合室を出て試験場へと向かう。

 

「リオン、マーチバンクス教授のところが空いているよ」

「はい先生」

 

 変わらぬキーキー声で案内するフリットウィックに従って、リオンはマーチバンクス教授のいるテーブルに腰掛けた。

 

「それでは、ゆで卵立てを取って回しなさい!」

 

 マーチバンクス教授は耳が遠いようでたった数十センチしか離れていないのに大広間に響くような大声を出した。

 隣のノットが目で激励してくるのに応え、リオンはゆで卵立てを持って言われた通りに回した。

 

 

 

 

「いくら実技だからってこれはやり過ぎでは……?」

「全て巧く捌いておいて何を言う」

 

 からくり人形が飛ばしてくる呪文擬きを盾の呪文で防ぎながらボヤくリオンにトフティ教授は穏やかに微笑むだけだった。

 

「君のお父さんもお祖父さんもやり遂げたものじゃよ」

「だからって……エクスペリアームス!」

 

 隙を突き、武装解除呪文を飛ばしてからくり人形を無力化した。興奮したように拍手するトフティ教授に「これで防衛術に最高点くれなかったら抗議してやろう」と考えながら、礼をして試験会場から退出した。

 

 

 

 

 

 

 そして順調にリオンは試験を進め、数占い、古代ルーン学、魔法生物飼育学の試験も終えて残すは天文学のみとなった。

 

 天文学の試験はその特性上真夜中に行われる。天候にも左右されるが気持ちのいい星空が見えたので大変よろしかった。

 

 静寂が支配するなかで試験を受けていたリオンの耳に場違いなほど鋭い破裂音が届いた。

 音のした方に目を向けると、ハグリッドが五人ほどの人間に取り囲まれて杖を向けられていた。中にはアンブリッジの姿も見える。

 五人が一斉にハグリッドに向けて失神光線を放つが、ハグリッドは気にした様子もなくその内の一人を持ち上げて数メートル先まで吹っ飛ばした。

 

「なんということを!」

 

 そして、その場に一つの影が躍り出る。マクゴナガル先生だ。

 

「彼が何をしたと言うのです!」

 

 返答は紅い閃光となって返ってきた。飛んできた数本の失神光線の内の何本かを防いだマクゴナガル先生だが、四本が胸に当たりドサリと地面に倒れた。

 

「南無三! 不意打ちだ! けしからん!」

 

 もはや監督する立場も忘れて役人達に激昂するトフティ教授。そして役人達は倒れたマクゴナガル先生を見て怒り狂ったハグリッドによってボコボコにされていた。

 やがてハグリッドは失神呪文を当てられたファングを担いで森の奥へと消えていった。

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

 それからしばらくリオンは『ふくろう』の試験に追われて他に構う事が出来なかった。マクゴナガル先生は心配だが聖マンゴに運び込まれたし、馬鹿なことをした役人は駆け付けた闇祓いに拘束された。

 

 だが、今のリオンは平静ではなかった。廊下を全力疾走して地下にあるスネイプの研究室へと飛び込んだ。

 スネイプから送られた手紙を見て居ても立ってもいられなかったからだ。

 

「ハリーが神秘部に向かったと!」

 

 スネイプは飛び込んできたリオンに顔をしかめたが、すぐに気を取り直して手短に告げた。

 

「ポッターはウィーズリーとグレンジャー、他にも数名引き連れて魔法省に向かったそうだ」

「あの馬鹿、他人を巻き込んだのか!?」

 

 あぁ、ロンはハリーに同調し、ハーマイオニーは止めようとしてなし崩し的に付いていったのだろう。予想がつく。

 

「騎士団で手の空いている者が神秘部に向かっている。ダンブルドアも向かうが、校長はお前も来るよう仰せだ」

「分かりました」

「行かないとは言わんのだな」

「仮にも魔法騎士の端くれですから」

 

 スネイプはフンと鼻を鳴らすと研究室の扉を大きく開け放った。

 

「ポッターとグレンジャーがあやつを禁じられた森のケンタウロスに預けたそうでな。今ならばアンブリッジの暖炉が使えるぞ」

「ざまあみろガマガエルのクズが! てなわけで行ってきます!」

「待て。フルーパウダーだ。これが無ければ意味があるまい」

「おっとと──すみません助かります!」

 

 駆け出そうとしたリオンにスネイプがフルーパウダーの入った瓶を投げ渡し、リオンはそれに礼を言ってから全速力で駆けた。

 

 階段を駆け上がり、廊下を抜けてアンブリッジの部屋に辿り着いたリオンは素早くフルーパウダーを暖炉に投げ込む。

 

「魔法省エントランス!」

 

 そしてエメラルドに輝く炎にその体を滑らせた。

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

「リオン!?」

 

 エントランスを駆け、神秘部へと急いでいたリオンに声が掛かる。

 すぐさま身を翻せば、そこには驚きの表情を浮かべる両親と騎士団の姿があった。

 

「どうして此処にいるの!?」

「スネイプ教授からハリー達が神秘部に向かったって聞いて来たんだ! ダンブルドアも俺を寄越すようにって!」

「危険よ! 貴方はホグワーツに───」

「今言っても仕方あるまい。今回は手が多い方が良い」

「マッドアイ!!」

 

 神秘部に向かう道すがら状況を説明するリオンを帰そうとするエレインだが、マッドアイがそれを諌める。

 

「アーデル。盾の呪文は使えるか?」

「無論です」

「よし、だが危なくなれば直ぐに逃げろ。いいな?」

 

 マッドアイの言葉に頷き、ようやく辿り着いた神秘部の扉を蹴破る。その瞬間、飛んできた呪文を早速盾の呪文で防いだ。

 死喰い人だ。隙を縫うようにルーピンが失神呪文を直撃させればあっという間に倒れ込んだ。

 

「嵌められてる……!」

「急ぐぞ!」

 

 唇を噛むリオンをシリウスが促す。やがてリオンはとある部屋で見知った顔を見つけた。

 

「マークにランス!?」

「リオン!」

 

 二人は頭から軽く血を流しているものの受け答えは問題無さそうだった。

 二人の後ろには失神しているジニーと、触手に巻き付かれているロンを何とかしようとしているハーマイオニーとルーナ・ラブグッドの姿もあった。

 

「お前ら何してる!!」

「リオン、行って。この先にハリーがいるんだ」

「ネビルも後を追っかけてった!」

 

 ランスの言葉にフランクとアリスが顔色を変える。そんな二人を見たマッドアイが指示を飛ばした。

 

「フランクとアリスはここで子供らの護衛だ。恐らくポッター達を追った奴ら以外にも死喰い人がいるだろう」

「……分かりました」

 

 マッドアイの言葉にフランクが悔しそうにしながらも頷く。

 マーク達を二人に任せ、リオン達は先にある扉を蹴破って中に飛び込んだ。

 

 中には大勢の死喰い人とハリーとネビルがいる。そしてやって来たリオンたちに気付いた死喰い人の一人が悲鳴ともつかない声を上げた。

 

「騎士団だ!」

「待て、レックス・アーデルもいるぞ!!」

「殺せ!」

 

 飛んでくる呪文をかわし、三々五々に散る。リオンは即座にハリーとネビルの周りにいる死喰い人達に失神呪文を放って二人から引き剥がした。

 

「リオン!?」

「この猪突猛進の馬鹿ハリー!! 帰ったら一発殴るからな!!」

 

 襲い掛かる失神光線を盾の呪文で防ぎ、お返しに武装解除で死喰い人を吹っ飛ばしたリオンはハリー達に叫ぶ。

 

 近くではキングズリーが二人の死喰い人を相手取り、無操作に立てられたアーチの近くでベラトリックスとトンクスが決闘している。

 ハリーを締め上げたマクネアを失神させ、リオンは二人を伴ってここを抜け出そうとする。

 

 しかし、そんな彼らの足元にマッドアイが着けていた魔法の目が転がってくる。

 マッドアイを倒したドロホフが歓喜の雄叫びを上げて三人に追い縋ろうとしたが、それより早くロドルファス・レストレンジを叩きのめしたレックスがドロホフの前に立ち塞がった。

 

「ようドロホフ。それにベラトリックスもだが──いつかの礼をしてやる」

「アーデル……!」

 

 憎々しげに歪んだドロホフが呪文を放ち、二人が遠ざかっていく。

 さらにアーチの方でトンクスを伸したベラトリックスが声を上げトドメを刺そうとしたところにエレインが割り込む。

 

「ブラックの恥さらしめ!!」

「それはどちらかしらねベラトリックス?」

 

 二人が苛烈な呪い合いをするのを横目に三人が出口に向かって駆ける。しかしそんな彼らを妨害するように呪文が通りすぎていった。

 リオンはその顔に見覚えがあった。墓場で見たことのある顔だったからだ。

 

「アンタの息子とは友達なんだ。大人しく退いてくれないかノットシニア? ヴォルデモートの腰巾着は散々だろ?」

「顔はエドワードだが、奴と違って品がないなリオン・アーデル」

「言ってろ」

 

 飛んできた呪詛を杖で弾く。そうしてリオンは未だ後ろで突っ立っている二人に吼えた。

 

「何してるとっとと行け! 死にたいのか!!」

 

 その言葉に我に返った二人は急いで駆け出すが、そこにルシウス・マルフォイが立ち塞がった。

 助けに行きたかったリオンだが、それよりもノットシニアを倒す方が先だとそちらに意識を集中させた。

 

 階段を駆け上がり、アーチの近くまでやって来たリオンは上からノットシニアに向けて呪文を飛ばす。

 どうやらノットシニアは足を怪我しているようで動きが鈍い。それを利用して立て続けに呪文を飛ばし、生まれた隙を突いて失神呪文を炸裂させた。

 

 床を転がるノットシニアを横目にリオンは辺りを見回す。どうやらルシウスはルーピンが引き受けたようで二人は急いで脱出しようとしている。しかし、ハリーの持っていた水晶はいつの間にか割れてしまっていたらしい。

 そしてアーチの横で起きていたベラトリックスの戦闘はエレインからシリウスに引き継がれたようだ。

 エレインはクラップとゴイル、それに名も知らぬ死喰い人二人の計四名を相手に優位を保っている。

 

とりあえずハリーたちと合流すべきかと踵を返そうとして──

 

 

『シリウス!』

『死んだ死んだ!! 我が親愛なる従兄弟様が死ーんだ!!』

『僕がアイツを殺してやる!!』

 

 

「まずいっ!!」

 

 未来視が発動したことを悟ったリオンは急いでシリウスの下に向かう。

 

「今度はもっと上手くやってくれ!!」

 

 シリウスが挑発するようにベラトリックスに叫ぶ。

 いつの間にか、他の死喰い人はやって来ていたダンブルドアに拘束されていた。

 

 リオンは脇目も振らずシリウスの下に急いだ。死なせるものか、ハリーの唯一の家族だ。彼が死ねば、ハリーは耐えられない。

 早く早くと心臓の鼓動が急かす。そして放たれたベラトリックスの呪文がシリウスの胸を穿ち、シリウスは驚愕の表情を浮かべたままアーチの向こうへと───

 

 

 

 

 

 

「アクシオ!!」

 

 杖を振り、シリウスの服を媒介としてほんの僅かにシリウスの体を前に倒す。その隙にだらんと力無く垂れたシリウスの腕を掴んで全力でこちら側に引っ張った。

 

 ベールに半分ほど掛かっていたシリウスの体が地面に倒れる。一緒に倒れ込んだリオンはすぐさま体を起こしてシリウスに駆け寄った。

 

「シリウス! シリウス!!」

 

 呼び掛けるも反応がない。脈を測り、とりあえずいきてはいることを確認する。

 急いで階段を駆け上がってくるダンブルドアに恐れおののいたのかベラトリックスは尻尾を巻いて逃げ出した。

 

「シリウス!!」

「止すんだハリー……アイツは、向こうに逝ってしまった……」

「そんな──だって、そこに……そこにいるじゃないか!!」

 

 駆け寄ろうとするハリーをルーピンが羽交い締めにして抑えている。そんなハリーに心臓は止まっていないことを伝えようとして──

 

「僕がアイツを殺してやる!!」

 

 それより早く、拘束を振りほどいてハリーが駆け出す方が早かった。ベラトリックスの後を追ってハリーが向こうへと消えていくのを見ていたリオンは、少しして立ち上がり駆け出そうとする。

 

「リオン!!」

 

 瞬間、リオンに迫った呪文をレックスが防いだ。どうやら拘束された死喰い人の一人が放ったらしい。気絶させ、今度こそ身動きを取られないようにされているのを横目に今度こそリオンは駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 部屋を抜け、廊下を駆けるごとに空気が澱んでいくのを感じ取る。

 

 ───奴だ。近いぞリオン

 

 頭の中でエドワードが告げた。奴とは、つまり──

 

 

 魔法省エントランスホールにまでやって来たリオンは、踞るハリーと怯えるような顔をしているベラトリックスの他にもう一つの影を認めた。

 その影が振り向き、リオンを視認して喜悦の笑みを覗かせる。

 

「……リオン・アーデル。待ちわびた、まったく待ちわびたぞ我が友の孫。俺様に歯向かう愚かな一族よ」

「……ヴォルデモート」

 

 ヴォルデモートは焦がれるように、リオンは静かな炎をそれぞれ声に乗せて向かい合う。

 

 

 ついに、因縁が相対した。


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