か、カマクラが若返ってる!?   作:9ナイン9

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19:ダンジョンにお泊りするのは、やっぱり大変である。

 卒業アルバムの件で〆られた翌日。

 ……いや何で俺が〆らてんの? 昨日の、あの〆はマジで理不尽だったからね?

 まあ、マスターである俺に対してのある種の愛情表現なのかと自分を無理矢理納得させたけどな。

 俺的にはもっと別の平和的な愛情表現がいいんですけどね……。なんなら最近、愛情表現が重いような気がする。いかんいかん、従魔は家族、従魔は家族、従魔はk

 

「にゃ~」

 

 思考を正常に戻す作業してると、モフモフとしたデカイ手が俺の肩に置かれた。

 声の主は勿論、愛猫のカマクラ──もうカマクラさんと言った方がいいだろう。威厳が以前とは段違いだ。その二足で立って、雄々しく歩く姿はまさに将軍様。本当ににゃん将軍様なんだけどね。

 

「……未だに進化したお前に慣れねえんだけど」

 

 俺が引きつった顔で言うと、俺より僅かに身長が高いカマクラが、俺を見下ろす形で腹を擦りながら腹ペコアピールしだした。

 まさかコイツ……!? 飼い主である俺を食う気か!! 

 

「よ、よせカマクラ! 俺を食ったら内蔵が腐るぞ!」

 

「にゃ~」

訳:飯くれよ〜

 

「何だ、飯が欲しいだけかよ……」

 

 ため息をつきながら、空間収納から適当な缶詰を出してカマクラに渡す。

 

 昨日も一昨日も進化前の時より、3倍近くの飯をあげたのに足りないらしい。

 もっと稼がなきゃな……。赤字って訳では全然無いが、従魔達の今後の成長を考えるともっと売上が必要なのかもしれない。

 

 こうなれば我が従魔達のグッズ──ストラップとかTシャツをリスナー向けに作るか?

 なんとも企業っぽい企画だ。また社畜になる未来が見える。しかも今度は事業主になる訳だから、逃げることが許されない立場だ。

 

 やっぱり法人化はもう少し考えようかな……。でも、節税の面は調べた限り個人事業主より法人のが有利なんだよな〜。

 

 あわよくば上場とか狙えたりして……。

 

「準備出来ましたわよ」

 

 自分の今後のキャリアを都合の良い様に想像してたら、ルーメリアが裏庭ダンジョンゲート前に現れた。ルーメリアに続き、他の従魔達も続々と現れる。

 

「集まったな。昨日も言った通り、これよりダンジョン遠征をする。今回でこのダンジョンを全階層攻略するのが目的だ。想定日数は3日から4日。何か意見がある者は?」

 

 従魔達に問うと、特に意見が上がらない。まあ、前々からルーメリアと散々議論を重ねてきたしな。

 ルーメリアの見たてだと、裏庭ダンジョンは『階層型逆三角形ダンジョン』とのこと。

 

 探索者の常識だが、ダンジョンには大まかに2タイプある。

 1つ目は階層型ダンジョン。このタイプのダンジョンは1番下、或いは1番上の階層にボスモンスターが居る。ウチの裏庭ダンジョンもこのタイプに該当する。で、逆三角形って言うのは、上から下に行くにつれてマップ範囲が狭くなるタイプだ。

 

 2つ目は広域型ダンジョン。このタイプは1階層しかないが、兎に角広い。中央部、或いは最北端にボスが居る場合がほとんどだ。因みにだが、お台場には北海道と同レベルの面積を誇る世界一の広域型ダンジョンがある。広すぎて攻略不可能って言われているらしいけどな。

 

「にゃ~」

 

「…………カマクラ、お前。マジで言ってんのか?」

 

 カマクラ曰く、一気に5階層までショートカット出来るらしい。

 移動系統のスキルなんて【水面歩行】しか持ってない筈だろ……。だが、大幅な時間短縮が出来るなら有り難い。

 

「にゃ、にゃーにゃ」

 

 言われた通りに、一旦カマクラ以外の従魔をモンスターブックに入れる。

 

 カマクラは二足立ちから、前足を地に着けて四足歩行体勢になった。

 

「にゃっ」

 

「は? 俺が乗るのか?」

 

「にゃー!」

 

「分かったよ。乗れば良いんだろ、乗れば」

 

 ぎこち無くカマクラの背中に乗る。モフモフしてるせいか、意外と座りやすい。

 尻の辺りがメッチャ気持ちいい。やっぱコイツ、ヨギボーより優秀だわ。

 

「にゃぁぁぁああっ!」

 

 カマクラは常識的に有り得ない速度で駆け出し、ダンジョンへと突入。

 

「ちょ、カマク!? 速い! 速いって! マジ速いから!! ウアァァァァァァァァ!!」

 

 俺の絶叫が聞こえないのか、カマクラは一階層を突破してひたすらに五階層を目指し続けた。俺は半べそをかきながら、振り落とされなように必死にカマクラの首にしがみつく。

 

「こんなの間違ってるぅぅぅぅぅうっ!!」

 

♢ ♢ ♢

 

 恐怖に震えながら五階層に着いた。俺はカマクラの背中から転げ落ちるように降り、従魔達を全員を召喚。

 

「ウゥ……モウネコノラナイ。コワイヨ、オウチカエリタイ」

 

「あるじ様、いい子いい子。怖かったですね〜♪」

 

 四つん這いで地面に向かってブツブツ言う情けない俺の頭を、タマエが撫でてくる。

 これ何って言うプレイ? リア充プレイ? プレイって付くと、途端に卑猥さが増すよな。

 

「情けないマスターですわね。そんな体たらくでは、魔王になれませんわよ」

 

 なんで俺が魔王を目指してる前提なんだよ。てか、魔王なら既に日本にいるぞ。なんなら、その魔王は今では世界的大企業の役員だしな。

 

「わたくしのマスターなら魔王を目指すのは当然ですわ」

 

 俺の表情から察したのか、偉そうに無い胸を張りながら釘を刺してくるルーメリア。

 いや、思考を読まないでくれる?

 

「魔王なんて御免だね。当面はBランク探索者になるのが目標だ」

 

 何ヶ月か前にFランクからEランクに昇格したと言うメールが探索者協会から届いた。なんでも、素材納品系の依頼を五十回こなしたから昇格したそうだ。

 何でBランクを目指してるかと言うとだな、探索者としてプロを名乗れるボーダーラインだからだ。

 

 Fランクは素人。

 Eランクは素人に毛が生えたレベル。

 Dランクは低級ダンジョンならジョブにもよるが、1人でも戦えるレベル。

 Cランクまで行くと、色んなパーティから助っ人を頼まれるレベル。

 Bランクは経験実績豊富なプロと見なされる。ここまでが努力の限界点だと言われている。

 Aランクは正直言って、努力ではどうしよも無い才能と運が必要。珍しいジョブ、或いはジョブの進化先に恵まれた人間がなれる。

 Sランクにはどうやってなるのかは知らん。偉業を成し遂げたとか、探索者協会のお偉方に認められない限りは成れないと、ネットに書いてあったよ。

 

 自身にラノベみたいな飛び級展開が起きるとは思ってないが──いかんせん、俺じゃなく従魔達(特にカマクラ)が強過ぎる。

 探索者協会のお偉いさんに目を付けられて、推薦でもされたら堪ったモンじゃない。Aランク以上になると、国や探索者協会から名指しで難易度の高い依頼をされるらしいしな。

 だから、俺が目指すのはBランクであって、それ以上は誘われたとしても『ごっめ〜ん、俺って面倒くさいのNGなんで、Aランクとかマジ無理〜』って突っぱねてやる。

 覚悟無き者は昇級を断わる事が出来るって書いてあったしな。

 

「むむっ、わたくしのマスターなら志を高く持って欲しいですわ。それこそ世界を征服するぐらいの」

 

 なんとも魔王らしい発言だ。世界征服とか面倒なだけだろ。多種多様な人種を統治とか出来る気がしない。

 

「これでも昔よりは、志を高く持った方だぞ。俺は身の丈に合った肩書で満足なんだよ。仮に魔王とかSランクになれたとしても、俺だと力不足だしな」

 

「そんな事ありません! あるじ様は優しくて素敵で、ちょっとだけ捻くれ屋さんのお腐りさんですけど、凄い人です!」

 

 タマエが、大袈裟な身振り手振りで説明してくる。

 いや、お腐りさんって何だよ。おを付ければ悪口がマイルドっぽく聞こえるのは日本語の悪い所だよな。

 おを付けても腐ってるのに変わりないのが悲しい。

 

「ケチで捻くれてて、料理が美味しい以外の取り柄が無いマスターですけど、わたくし達が居ますわ。ひとえにマスターの世間的評価が低いのなら、それはわたくし達が弱いだけですのよ」

 

「…………なあ、もしかしてお前、俺の事を褒めt……」

 

「ゴブリン! 【間合】を使いながら先導しなさい!」

 

 ルーメリアは俺の言葉を遮って、ゴブタニに命令を飛ばした。

 

「ゴブゴブ!」

 

 ゴブタニは敬礼をすると、先陣を歩き始める。俺らはゴブタニに付いてく。

 

 違うんだルーメリア。弱いのは俺の方だ。お前達が居てくれるから、俺はBランク探索者を目指したいと思えた。

 B以上を目指したくないのは外部の奴らに、俺達のプライベートを脅かされたくないからだ。

 

 自分が保守的で、閉鎖的で、排他的なのは理解している。

 それでも俺は、奉仕部に居た時と同じぐらいに、今の生活──お前達が居てくれる環境を何が何でも守りたいと、心の底から思っている。

 

「「カヒュゥゥゥ!」」

 

 五階層を難無く突破し、六階層に入ってからは敵モンスターの攻勢が勢いを増してきた。

 三本角の生えた筋骨隆々の山羊であったり、蝙蝠みたいな翼が生えた猿が攻撃してくる。

 

「ブラッドアロー!」「プルプル!」

 

「「グロック!」」

 

「チッ、右から大型の太ったカエルがくるぞ! カマクラ、ゴブタニはそっちを迎撃しろ!」

 

「ゴブ!」「ニャー!」

 

 猛然と斬りかかるカマクラとゴブタニに恐れをなしたのか退却を始めたが、もう遅い。

 

「タマエ、妖術で敵の退却を阻害してやれ」

 

「妖術・妖光!」

 

 妖しき光で敵は混乱に陥る。その隙を突かれ、カマクラとゴブタニによって敵は壊滅。

 

 戦闘を繰り返しながら俺達は6階層を探索の継続し、接敵するモンスターを潰していく。

 戦闘の間は指示だけでは無く、俺は結構前に買ったマッピングタブレットに地図情報を書き込んでいく。

 地味な役割だが、これもダンジョン攻略に必要不可欠。

 どんなに地味でも仕事を探すとか、社畜精神が旺盛過ぎるだろ俺。社畜が嫌だから探索者になったのに、本末転倒な気がしてきたぞ。

 

──【結界術】

 

 戦闘も少し落ち着いたので、腰を下ろして従魔達に昼飯を与える。飯を食いながらマッピング作成に没頭してると脳内に情報がインプットされた。

 大体予想は付くが、一応全員に聞いてみるか。

 

「結界術ってスキルを覚えたのは誰だ? 手を上げてくれ」

 

 タマエが「はーい、はーい\(^o^)/」と元気よく手を上げた。

 流石は俺の天使!

 

「やっぱタマエか。新しいスキル獲得おめでとさん。少し調べたいから使ってみてくれないか?」

 

「結界術・防逢陣!」

 

 俺達を中心に立方体の陣が形成された。結界と言うからには、防御系スキルだと思われるが現在、敵を殲滅し尽くした後だから確かめようが無い。

 

「これは見た所、気配を遮断する結界ですわね。休むときに便利ですわ」

 

 流石は魔王様、博識だ。

 このスキルがあれば、ダンジョンで寝る時に怯えずに済むって事か。なんともタイムリーだな。

 

「タマエ、結界術は他にレパートリーはあるか?」

 

「えーと、えーと後はね……」

 

 聞いて見ると、色々とレパートリーはあるようだ。魔法攻撃を反射させするのとか。

 それはどうかな? 聖なるバリア─ミラーフォース! みたいな逆転プレイが出来そうだな。

 

 昼飯も食べ終わり、六階層のマッピング作成を粗方終わらせて探索を再開すると、結構すぐに七階層への下り通路を見つけた。

 やっぱり逆三角形ダンジョン説は正しかったようだ。下階に進む程に探索範囲が狭くなっている。こっちからすれば好都合だ。

 

 七階層でも、見敵必殺(サーチ&デストロイ)を続けながら難なく進み続ける。

 

 途中パラライズリザードとか言うトカゲ型モンスターの麻痺攻撃をゴブタニが受けた時はヒヤッとしたけどな。

 念の為にパラライズポーションも買っておいて良かったわ。

 

「これは……八階層への通路か?」

 

 マッピングしながら歩いてると、一つの竪穴通路を見つけた。

 七階層は未だ三時間しか探索してないのに、もう下り通路を見つけられたのは幸運だな。

 

「入りますの?」

 

「いや、もう少しこの階を探索しよう」

 

 七階層の探索を続行。

 だけど、直ぐに行き止まりに差し掛かってしまったので、タブレットに記入する。その後も探索するが、最初に見つけた竪穴以外の竪穴は無かった。

 この分だと八階層も直ぐに突破出来そうだな。

 

 俺達は最初に見つけた竪穴の前まで行き、近くで腰を下ろした。

 もう定時なので、今日の探索はおしまい。なので、野宿の準備をする。

 これぞ俺が望んでたホワイトな働き方。ダンジョンに入って命を賭けてる時点で本当にホワイトかは疑わしいけどな。

 

「マスター、今日は終わりですの?」

 

「そうだ。8時間以上も働くとか前職を思い出すからイヤなんだよ。急ぎの用件とか無い限りは、ウチはホワイトな働き方を推進していく」

 

「魔王軍は常に全員が身を粉にして働いてましたので、中々に理解し難いですわね」

 

 どうやら魔王軍株式会社は相当ブラックだったようだな。異世界と日本じゃ価値観はかなり違うだろうから、何とも言えない。そもそも戦争がある世界の働き方が、ブラックになるのは安易に予想が付くけどな。

 

「ブラック、ダメ、ゼッタイ」

 

「ゴブゴブ」

 

 ゴブタニは牛肉とゲームが貰えるなら、いくらでも働くようだ。

 俺から言わせれば、その社会人1年目みたいな熱意溢れる考えは甘いな。

 ブラック企業は時間すら搾取してくる。必然的にゲームをする時間はなくなるし、大好きな牛肉を料理するのが面倒くさくなる。で、気付いた時には毎日がコンビニ弁当になるのが社畜戦士(ブラックウォリアー)の末路だ。

 

「いいか、規定の時間だけ働く。あとは全力で休む。これが一番生物がパフォーマンスを出せる生活だ、オーケー?」

 

「でも、あるじ様はダンジョンから帰った後もぱそこん?って言うのをカチカチしてますよね」

 

「あれはだな……ただの簡単な仕事だから良いんだ」

 

 悲しい事にダンジョン探索者はダンジョンを探索するだけが仕事ではない。空いた時間に経理関係やら雑務やらのデスクワークをしなきゃいけないのだ。

 まぁ、大して時間を取られる訳じゃないから良いけど。

 

「そんな事より風呂を沸かすぞ。ルーメリアは風呂の用意を手伝ってくれ。タマエは敵が接近しないように結界を張ってくれ」

 

 タマエに遮断結界を張らせ、俺はポータブル浴槽やテント等を空間収納から取り出す。

 

「ルーメリア、水魔法を詠唱して浴槽に水を満たして貰えないか」

 

「生命の始源たる水よ、球となりて敵を流せ、アクアボール!」

 

 ルーメリアがそこそこのデカさの水の塊を浴槽に落とすと、浴槽が水で満たされる。次に小さいファイヤーボールを浴槽に入れると、程よい湯加減となった。

 

 続いて、支柱を二本立ててビニールカーテンを付ける。

 よし、これで野外浴室の完成だ。

 

「ルーメリアとタマエから先に入っていいぞ、ゴブタニはその後な」

 

 カマクラは風呂と言うか、昔から水を浴びるのが嫌いだから月一でしか入らない。ソフィーはそもそも汚れを吸収するから風呂の必要がない。

 

「えー、いつもみたいにあるじ様は一緒に入ってくれないんですか……?」

 

 タマエは寂しそうに聞いてくる。こんな可愛い子を悲しませるなんて心が痛い。が、ここは心を鬼ぃちゃんにしなくては。

 

「お家と違ってダンジョンだから効率的に入る必要があるんだタマエ。お前達が入ってる間、お兄ちゃんは料理もしなきゃイケないしな。お家に帰ったら一緒に入ろうな」

 

 タマエの頭を撫でながら優しく諭す。

 何も知らない奴がこのセリフを聞いたら事案だろうが仕方無い。

 そもそも、ルーメリアもタマエも大きくなったら『あるじ様とお風呂に入るのはちょっと……』とか、『マスターとお風呂!? 気持ち悪いですわ変態!』とか言うに決まってる。

 あれなんか、視界がボヤけてきたぞ。

 

「さあタマエ、一緒に入りますわよ」

 

 気を利かせてくれたのか、ルーメリアがタマエを連れてってくれた。

 最近知ったが、意外とルーメリアは面倒見が良い。王様としての経験があるからマネジメントのノウハウが豊富なのかもしれないな。

 サラリーマン時代に俺が面倒を見た後輩なんて『比企谷先輩、俺これから合コンなんで後の仕事はよろしくっす!』とか言いながら仕事を押し付けてくる舐め腐った奴だったしな。

 因みに、アイツには王様ゲームで絶対に王様になれない呪いをかけてやったぜ☆

 

「今日の飯は……カレー味の唐揚げするか」

 

 適当なサイトから印刷したレシピにザッと目を通す。

 空間収納からBBQ用テーブルと野外用料理器具、材料を取り出して料理開始。

 

 先ず鶏肉は余分な脂を除き、食べやすい大きさにひたすら切りまくる。

 醤油、酒、塩、おろしショウガ、おろしニンニクを厚手のビニール袋に入れ、切った鶏肉も加えて揉み込む。それが終わったらボウルに移して20分程放置する。

 放置してる間、違うボウルに薄力粉、片栗粉、カレー粉の材料を混ぜ合わせる。

 

 混ぜ合わせ作業してると、おおよそ20分が経過したので、一つ目のボウルから汁だけを切って、混ぜ合わせた粉を加えてもみこむようにまぶす。

 

 油で満たしたフライパンに粉をまぶした肉を投下していく。後は5分程度揚げる。肉をひとつを裏返してみて、こんがりきつね色になっていれば他の肉も全て裏返し、全体がこんがりとしたきつね色になるまで揚げる。

 

 揚がった唐揚げは油をよくきって皿に乗っけていく。

 

「ぷるぷる!」

 

「そうだろ、そうだろ。美味そうだろ」

 

「にゃ〜」

 

 カマクラが涎を垂らしながら手を唐揚げに伸ばそうしたので、軽くはたく。

 

「にゃっ!?」

 

「ダメだ。食べるのは全員が食卓に着いてからな。暇なら皿にご飯を盛ってくれ」

 

 空間収納から家で予め炊いておいたご飯を炊飯器ごと取り出して、カマクラに皿としゃもじを渡して盛り付けるように指示する。

 カマクラは進化してから、前足を手のように器用に扱えるようになった。昨日なんて普通にスプーンで飯を食ってたしな。

 その瞬間を撮った動画を小町に送ったら『アッチョンブリケノ)゚ε゚(ヽ』って、いかにもビックリしてそうな反応が返ってきたぞ。

 

「カレーとやらの匂いが……唐揚げですわ!」

 

「カレーの匂いがする唐揚げさん……?」

 

「ゴブブ!!」

 

 どうや従魔達の入浴が終わったようだ。

 余りにも従魔達の反応がいいので、変な虚栄心が俺の中に芽生えてしまった。

 

「カレーと唐揚げの組み合わせ。これは今の所、俺にしか編み出せて無い門外不出のレシピだ」

 

 サンタは存在するよ並の下らない嘘を言ってしまった。

 仕方無いだろ。従魔達がキラキラした目で見つめてくるんだから。今更、昨日の内に適当なサイトから印刷したレシピの一つです、なんて言えない。もし俺がピノキオなら鼻が凄い勢いで伸びてるだろうな。

 

「門外不出のレシピ……凄いですわマスター!」

 

「やっぱりあるじ様はカッコイイです! 誰も作れない料理を作るなんて凄い!」

 

 頼むからそれ以上は褒めないでくれ。心が痛くなってくるから。いや結構マジで。

 

「お、おう……早く熱々の内に食べようぜ。マジで美味いから」

 

 唐揚げを全部揚げきって、全員でキャンプ用の椅子に着く。

 

「「頂きます!」」

 

 全員で頂きますをし終えると、凄い勢いで大皿から唐揚げが減っていく。

 60個も作ったのに、もう30個しか無いんだけど……。

 

「おいカマクラ、ちゃんと噛め。こらゴブタニ、一気に5個も持っていくな! ってルーメリア!? 空間収納にいれるんじゃない! ちょっとタマエちゃん? 尻尾で皿を持つのは行儀悪いから辞めなさい!」

 

 サバイバルをしてる訳じゃないんだから、ゆっくり食えよ。いや、ダンジョン内だからサバイバルと言っても過言じゃないか。

 一番行儀良く食べてるのがスライムのソフィーってのが、なんかシュールだ。

 いやまぁ美味しく食べてくれるのは何と言うか、嬉しいけどな。

 

「美味かったですわ〜♪最強同士を組み合わせると究極的な美味さですわね」

 

「きゅうきょくを作れるあるじ様って凄いね、ルーお姉ちゃん♪」

 

 従魔達の胃袋をガッチリホールドした自分を褒めてやりたい。

 これなら無駄に見栄なんて張るんじゃなかったぜ!!

 

 

『あれって門外不出のレシピじゃなかったんですね。あるじ様の嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つきetc……』

 

『わたくし達の無知に付け込んで、ホラを吹くなんて最低ですわ』

 

『ぷるぷる……』

訳:流石にちょっとガッカリ……

 

『ゴブ』

訳:見損なったぜ旦那

 

『にゃっにゃにゃ』

訳:お前じゃなくて小町の所で世話になるわ

 

『『さようなら』』

 

『お前達待ってくれ! 捨てないでくれぇぇぇぇぇええっ!』

 

 

 流石に考え過ぎかもしれないが、こんな風になったら最悪だ……。

 

「あるじ様?」

 

「ひっ、ヒャイ!?」

 

 ネガティブ思考中に話かけられたせいで、キモい声を出してしまった。動揺し過ぎだろ俺。

 

「どうしたんですのマスター? 取り返しの付かない嘘がバレたような顔をしてますわよ?」

 

 ピンポイントで的を射抜くなよ。お前やっぱエスパーだろ。

 そうだ、謝ろう。最悪土下座でもして許し貰お。

 

「門外不出のレシピってのは嘘ですちょっと君達にカッコイイ所を見せたくて見栄を張りたくなってしまったんですでも唐揚げの味には自信があるんで許して下さい本当にごめんなさい!」

 

 これがいろはすから学んだお断り芸を応用した渾身のごめんなさいだ!

 

「……今までで一番しょうもない嘘ですわね。と言うより、唐揚げは美味しかったのでどうでも良いですわよ。プッ」

 

 何故かルーメリアは笑いを堪えている。

 

「あるじ様はえーと、えーと……カッコイイって思われたいんですか?」

 

 グハッ、なんか幼女に指摘されるとマジで恥ずかしくなってくる。比企谷八幡29歳にして黒歴史を更新しちゃいました☆

 

「いや……まあ、その……はい……」

 

「今回のをネタにして、半年ぐらいは強請れそうですわね。フフッ」

 

 ルーメリアはヴァンパイア特有の鋭い八重歯を見せながら、妖しく笑う。

 やっぱ白状しなきゃ良かった……。

 

「風呂入ってくるわ……」

 

 居心地が悪いので風呂へとエスケープ。逃げるをエスケープって言い換えるだけで、途端にカッコイイ事をしてるような気になるわ。よって俺はカッコイイ。

 

 気持ち良く風呂に入れるかと思ったが、時間がかなり経ってるせいでお湯がかなり冷めてました。

 もう泣いて良いかな俺?




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