か、カマクラが若返ってる!?   作:9ナイン9

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15:都会のお店は、個性的なのが多い。

 タマエをテイムした翌日。

 必要物資を揃えるべく、俺は東京の秋葉原に来ている。

 秋葉原は相変わらず、本屋やカード屋、アニメのグッズショップ等が建ち並んでおり、オタクの聖地として健在している。

 

 だが、オタクの聖地であると同時に、探索者の聖地でもある。7年前から秋葉原には探索者用のショップが結構な数、建ち並び始めたからだ。

 主にはアイテムショップや鍛冶屋とかだな。モンスター素材を売買してる店だってある。

 

「にしても、コスプレなのか探索者なのか分からないのがゴロゴロいるな……」

 

 行き交う人々を観察してると、ファンタジー衣装を纏う人間がわんさかいる。

 そう、秋葉原が探索者の聖地と呼ばれる理由がこの風景だ。

 ファンタジーと秋葉原の親和性が純粋に高い。現に、そこら中にある派手な看板を掲げてるアイテムショップが、目に入っても全く違和感が無いしな。

 

 色々と関心してると、目当てのビルに着いたので入って、案内版を確認する。

 目的のショップは8階なので、エスカレーターで悠長に目指す事にした。

 

 スマホにメモった、従魔達の欲しい物リストを改めて確認するか。

 

俺:新装備

カマクラ:高級ツナ缶

ゴブタニ:刀、和牛

ソフィー:マスターの健康

ルーメリア:都会のスイーツ

タマエ:獣人用の服、プリン

 

 食べ物系は後回しだ。

 ここで一番ネックなのは獣人用の服だな。秋葉原と言えど、尻尾が通せる服が売ってるか甚だ疑問だからだ。

 刀も厄介だ。探索者用の刀とか、確実に100万超え……下手したら1000万いくと思われる。だがこれも戦力向上の為、分割払いになってでも買ってやる。

 ソフィー……マスターの健康って……。やっべぇ、ちょっと泣きそう。うん、ソフィーの為に長生きするわ俺。

 

 買い物の優先順位を確定した所で、目的の店に辿り着く。

 

「人が多いな……」

 

 着いた店は、大手のアイテムショップ。棚には大量のポーションや探索用アイテムがあり、ショーケースには様々な武器が飾られている。

 とりあえずゴブタニ用の刀だな。

 

 そう思い、ショーケースにある刀の値札を見てみるが、

 

「2000万円……だと……!?」

 

 いくら最近、稼げてるからと言っても、この値段に手を出すのは無理がある。

 刀の説明欄を見てみると、マスタースミス製と書いてあり、刀工銘が彫られていた。

 素人の俺には分からないが、高名な奴が製作したのかもしれない。予算200万ぐらいで考えてたが、甘かったようだ。1000万なら、まだ分割する気になれたんだがな……。

 悔しいが、この分だと他の刀も同じだろう。

 

 余りの値段に絶望してると、後ろから誰かに話かけられた。

 

「お客様、大丈夫でしょうか? お探しの物があるなら、ご相談に乗らせて頂きますが……」

 

 店員さんのようだ。相談するだけしてみるか。

 

「ええ、その、予算200万で刀が買いたいんですが、流石に無いですよね……」

 

 諦め半分で聞くと、店員さんは笑顔であるコーナーの方を指さして、説明してくれた。

 

「ショーケースに入ってるのは巨匠と呼ばれる方々の製作品なので、どうしても値段が高くなってしまうんです。ですが、あちらのコーナーなら1人前に成り立ての鍛冶師。またはメーカー製が置かれてますので、お客様のご予算内で買えると思います!」

 

 成る程。俺は店員さんに感謝の言葉を告げて、言われたコーナーで実際に刀を手に持って確認してみる。

 うん、全く分からん。どれを手に持ってみても、同じ刀にしか見えない。

 

 リュックから物を取り出すフリをして、空間から借り物を取り出した俺は周りを確認する。

 よし、誰にも見られてないな。

 目の前にある、無数の刀に【鑑定勇者の髑髏水晶】を向ける。

 

 うん?この黒刀は掘り出し物か?

 

銘:夜叉丸

製作ランク:B

製作者:菱沼久

 

 他の刀の製作ランクがDとかCなのに対して、この刀だけがBだ。きっと、この菱沼さんって人は才能ある若手に違い無い。値段も予算内の180万だし俺は良い掘り出し物を見つけたようだな。

 会計を済ました俺は180万円痛かったな〜、と思いながらビルから外に出て、秋葉原の散策を再開する。

 

「はぁ~……果たして、獣人用の服って売ってんのかな……」

 

 結局、色々な店を巡ってはみたが、獣人用の服が売ってる店を見つける事が出来なかった。

 オーダーメイドしようとも思ったが、「尻尾付きケモミミ幼女用の服が欲しいです」とか言ってみろ。確実に白い目で見られてしまう。せめて、店に居るのが店主だけの状態なら、やりようはあるんだがな……。

 

 そんな事を考えながら俺は今、適当なカフェに入ってランチをしている。

 

「ここも行った。ここもさっき行った……次はここに行ってみるか……」

 

 駅の案内所で貰った秋葉原の詳細地図を見ながら、コーヒーを味わう。

 この図は、地味な店まで載ってるからマジ助かる。

 

 サンドイッチとコーヒーを腹に納めた俺は、会計を済ましてサンドイッチ2つを追加でテイクアウト。

 どうか、次行く店で目的の物が買えますように。

 

♢ ♢ ♢

 

 現在、古びた五階建てのビルの中にいる。天井を見上げると蛍光灯周りには蜘蛛の巣が張ってあって、手入れが行き届いてないのが丸わかりだ。

 案内地図情報によると、このビルの中に服屋があるらしい。本当かよ。

 

「本当にあんのか……」

 

 疑心に駆られながら、エレベーターに乗り込む。

 頼むから原宿にある黒人のぼったくり店みたいなのはやめてくれよ……。

 

 ピンポン

 

 到着音が鳴り、ドアが開いたので外にでるが、

 

「綺麗だな……」

 

 一階の古びた感じとは、丸で世界が違う。不思議の国に迷い込んだみたいな感覚に陥ってしまった。

 ファンタジーを連想させる服が沢山ある。見るからにコスプレイヤーの店って感じだ。

 

「いらっしゃいませ〜♪何をお探しでしょうか?」

 

「ご、ゴスロリメイド……だと……?」

 

 小柄で元気そうな、ショートヘアーの金髪女性。しかもゴスロリのメイド服だ。ゴスロリメイドがレジの奥の控え室から出て来たのだ。

 落ち着け俺、ここは秋葉原だ。ゴスロリメイドが居たって不思議じゃない。これが久しぶりに感じる田舎と都会のギャップか。やっぱ都会怖いよ。

 

 俺は周りを確認するが、客は俺だけのようだ。

 

「あ、あの……ちょっと相談が……」

 

「はい!なんの相談でしょうか?」

 

 うぅ……。この笑顔、俺とは違う陽側の人間だ。だからと言って陰側の人間が出てきても困るけどな。

 

「先ず、失礼を承知で聞くんですが、ここっていつも客数はこんな感じなんですか?」

 

「そうですね……当店は通販の方がメインですので、毎日こんな感じです」

 

 失礼な事を聞いているのに、笑顔を絶やさないでいてくれる店員さん。

 客が俺しか居ないこの店なら、相談出来るかもしれない!

 

「あの……尻尾付き幼女用の服って作れますか?」

 

「……は?」

 

 笑顔が崩れかけた女性は、不信感を出しながらこちらを見てくる。そして、手は段々と固定電話へと伸びていく。

 

「待って下さい!怪しい者じゃないですって!」

 

「それ、怪しい人の決まり文句ですよ!しかも幼女って何ですか!?」

 

 そうだよな。目の腐った男から幼女なんて単語がでたら、通報したくなるよな。本当にごめんなさい!!

 

「もう見て貰った方が早いんで、見せますよ!来い、モンスターブック!」

 

 絵をタップすると、タマエが光に包まれながら姿を現した。

 店員さんは、この一連の工程を口を半開きにしながら見ていた。

 

「ふぇぇ?……あるじ様〜、寂しかったです〜」

 

 潤んだ瞳で、俺に向かってハグ待ちポーズをしてくるケモミミ幼女のタマエ。

 耳は萎れてて、尻尾でペタペタ、と床を叩いている。

 やっべ、めっちゃ可愛い。お兄ちゃん的にグッときちゃいました。

 

「ごめんな〜、タマエ〜。お兄ちゃんも、凄く寂しかったぞ」

 

「う、うそっ!! 天使がいる!!?」

 

 店員さんの叫び声にビックリしたタマエは、俺の足の後ろに隠れてしまった。

 耳と尻尾が隠れきれてないのが、また可愛い。

 

「ビックリさせてすみません。自分は従魔士なんですが、従魔達に着せる服を買える所が中々無くて……それでココに来ました」

 

 経緯を伝えると、店員さんは俺とタマエを交互にまじまじと見つめてくる。オマケに「まさか」とかブツブツと言い出す始末。

 うそ、何この展開? やっぱり通報されちゃう感じなの? そん時は小町に身元引受人になって貰お。ごめんな小町。

 

「ルーメリアちゃんは元気ですか?」

 

「ルーメリアなら家にいm……って、ハッ!?」

 

 しまった! カマを掛けられた!

 

 店員は凄い勢いで俺の手を掴み、距離を詰めてくる。

 

「あ、あの!嫁ニ……義経さんですよね!?私、鎌谷幕府のファンなんです!いつも見てます!!で、やっぱ義経さんですよね?義経さんでしょ!ほら、やっぱり義経さんじゃないですか!!」

 

 何この子、早いよ、めっちゃ早い。決めつけが音速だよ!

 しかも今、嫁ニキって言い掛けなかったか?

 

「はぁ……はい、ネット上では、そんな名前かもしれないですね……」

 

 もうダメだ。ここは潔く認めて、交渉した方が良い。にしても、鎌谷幕府のリスナーだったとはな。ツイてないぜ全く。

 

「生の義経キター!!」

 

「あの……舞い上がってる所悪いんですが、離して頂けると嬉しいです」

 

 我に返ったのか、ハッとした店員さんが2歩程、離れてくれた。

 まだ全然、近いんですけど……。

 

「本当にすみません!お詫びに色々サービスさせて頂きますので、帰らないで下さい!」

 

 DOGEZAしそうな勢いで、頭を下げてくる店員さん。

 弱みに付け込むようで嫌だが、これならタマエの服を作ってくれるかもしれない。

 

「とりあえず頭を上げて下さい。俺の正体を口外しなければ、それで良いですよ」

 

「絶対に言いません! 誓います! それと私、こういう者です!」

 

 名刺を差し出してきたので、丁寧に受け取る。名前の所には店長・唐ヶ原桃華と書いてある。見た所、個人店みたいだな。

 へー、店名は【ワンダーカーテン】と言うのか、良い名前だな。

 顔も割れてしまったし、こっちも名乗るか。俺の正体を言い触らさないって、約束もしてくれたしな。反故にされたら? そん時は、俺の人を見る目が無かっただけの話だ。

 

「自分は比企谷八幡って言います。宜しくお願いしますね、唐ヶ原さん」

 

「宜しくお願いします!ひき、がやさん?」

 

 イメージ出来て無いみたいだから、スマホのメモアプリに、フルネームを書いて見せる。

 

「へー、珍しい名前ですね。特定されたら直ぐ経歴とかバレそう……」

 

「最近それが一番怖いですよ。それより相談なんですが、この子の服を作って欲しいんです」

 

「任せて下さい! ダンジョン用に作ります? それとも普段着用ですか?」

 

「ダンジョン用も作れるんですか?」

 

 詳しく聞くと、どうやら唐ヶ原さんのジョブは裁縫師で、ダンジョン素材を使った服も作れるようだ。

 

 にしても生産系ジョブか。一般的に生産系はハズレジョブと言われている。

 戦闘スキルはほぼ手に入らないし、自分のやりたい仕事とマッチしなかった場合なんかは、死にジョブと化すからな。

 だが逆を言えば、上手く活用してしまえば大儲け出来る可能性だって有る。

 

「ならタマエ用に2セットづつお願いします」

 

「あるじ様……このお姉さん、怖い人……?」

 

 タマエは俺のズボンをギュッと引っ張って、不安そうに聞いてくる。

 

「違うぞタマエ。この人はタマエの服を作ってくれる優しい人だぞ」

 

 不安を払拭してあげると、タマエは笑顔で唐ヶ原さんにトテトテ、と可愛く歩きながら近づいていく。

 

「あのね、私タマエ!可愛いお洋服をお願いします!」

 

 ペコっと頭を下げるタマエ。

 初めてのお辞儀だと!?お兄ちゃんとして、これは写真を撮らねば!

 

「キャー!!タマエちゃんマジ可愛い!マジ天使!!食べちゃいたい♡」

 

「うぅ、お姉さん、私を食べちゃうの……?」

 

「ち、違うよ!食べたいってのはタマエちゃんが凄く可愛いって意味なのよ!」

 

 えへへと照れ笑いながら、タマエは唐ヶ原さんの足にハグする。

 ちょっとタマエちゃん?まさか将来、可愛いって言われただけで、陥落するチョロインさんにならないよね? いや、ならないな。何故なら近づく野郎共は、俺が全力で駆逐するからだ。

 

「お姉さんもね、すごーく可愛いの♪」

 

「っ!!ねえねえ比企谷さん!!タマエちゃんを私にゆz……」

 

「却下です」

 

 即答してやると、「比企谷さんのケチ〜」と言いながら頬を膨らませた唐ヶ原さんは、壁の棚からファイルらしき物を取り出して、提案してくる。

 

「比企谷さんとタマエちゃんは控え室に来て下さい。他のお客さんが万が一にも来る可能性がありますから」

 

 なんて気の利く人なんだ。危なく変人メイドの烙印を押すとこだったわ。

 

 お言葉に甘えて、控え室に入れて貰い、俺達は椅子に座る。

 

「タマエちゃんはキツネの獣人さんですか?」

 

「あー、そうですね。ビックテイルフォックスから進化したんで、そう言う事になりますね……」

 

 即興で組み立てた俺の嘘に対して、唐ヶ原さんは「なるほど」と言いながら、真剣にファイルのページを捲る。

 一方、タマエは俺に対して純粋無垢な視線を向けてくる。その視線には「あるじ様は何で嘘を付くんだろ〜?」って意味が込められてる気がするが、きっと気の所為だ。

 

 だが、やはりタマエの視線が痛いので、テイクアウトしたサンドイッチを渡して、注意を食べ物に逸らす事にした。

 

「あるじ様、ご飯ありがとうでーす♪うまーい!」

 

「あの……飯を食わせてすいません」

 

「控え室なので、大丈夫ですよ。それと、タマエちゃんはファンタジー和装が似合うと思うんですよね。ダンジョン用は、こちらの衣装とかどうでしょ?」

 

 提案された衣装を見てみる。

 ほぉ〜、表現としては巫女服にファンタジーテイストを加えた感じだな。これなら確かに、タマエに似合うぞ!!

 

「ダンジョン用のは、それを2つお願いします。プライベート用のは、適当に似合う幼女服をお願いします」

 

「分かりました。絶対に似合いますので、期待してて下さいね♪ 後は他に、欲しい物とかありますか?」

 

「そうですね……俺とゴブリンの装備も欲しいんですが、それも頼めますか?」

 

「はい、可能ですよ。ただ…私は鍛冶師じゃないので、鎧とかはオーダー品じゃなくて、メーカー品になるんですが、大丈夫ですか?」

 

「全然大丈夫です。できれば軽装備でお願いします」

 

 そう言うと、軽鎧に特化したメーカーのパンフレットを渡してくれた。

 

「この、黒い装備が良いですね」

 

「分かりました、準備しときますね。作製の為に、タマエちゃんの尻尾を確認させて欲しいんですが、大丈夫ですか?」

 

 タマエを起立させて、尻尾を向けて貰った所で、唐ヶ原さんが確認するべく触るが、

 

「凄いモフモフ、これが新たなモフモフ……モフモフ最高……」

 

 訳の分からない事を言い出したのだ。

 

「うーん、くすぐったいです〜」

 

「あの……堪能してません?」

 

「………いいえ、ちゃんとした確認です」

 

 そう言いながら、メジャーで測りだした。やっぱ堪能してたんだな。

 

「ふぅー、確認終了です。型はありますので、1時間もあれば出来ると思います。ここで、待ちますか?」

 

 そうします、と答えると気合いが入った様子で、唐ヶ原さんは出て行ってしまった。

 1時間で出来るって凄いな。流石は裁縫師。本でも読んで待ってるか。

 なので俺は、空間から小説を取り出した。

 

「うーん、あるじ様〜私も何かしたいです〜」

 

「そっか……タマエも暇だよな……」

 

 自分のスマホからモンストを起動して、タマエに渡す。

 

「タマエ。これはモンスターを弾くゲームだ。こう引っ張れば、モンスターを飛ばせられるから、やっててくれ」

 

 ざっと説明して、俺は読書に戻る。

 ちょいちょいタマエの方から「でな〜い」と聞こえる。

 きっとドロップ率が悪いのかもしれないな。

 

「やっとヤクモさんが6体になったでーす♪」

 

 ふと、そんな声が聞こえてきた。

 そうか、そうか。ヤクモが6体か……うん? ヤクモって超獣限定のキャラだよな? 6体って何だ? ハッ!まさか!?

 

「なぁタマエ……何をしてるんだい……?」

 

「うん?金色のドラゴンさんにボールを弾いてるの〜♪」

 

 画面を見せて貰うと、信じられない事にオーブの個数が500になってた。

 俺は急いでスマホを取り上げた。

 

「げっ!課金されただと!?Oh my god!!」

 

 よりによって一番弾いてはイケないモノを弾かれてしまった。危ねえ、止めなかったらガチャ限運極を作られてしまう所だったぞ。

 

「……あるじ様……グスッ……ごめんなさい……グスッ」

 

「ち、違うぞ。タマエは何も悪くないぞ。悪いのはお兄ちゃんなんだ。ほら、大丈夫だから泣かないで」

 

 俺は慌ててハンカチでタマエの涙を拭う。

 っべー、課金されるし、泣かれるしで最悪だ。これも全部ソシャゲーが悪い。

 

「本当に……?グスッ……私、悪い子…グスッ…じゃない……?」

 

「ああ、本当だ。悪いのはお兄ちゃんと、この金色のドラゴンさんだ。タマエはこれぽっちも悪くないぞ」

 

 俺は急いで課金設定をワンクリックからパスワード制に変更する。

 これで俺以外は課金が出来ない筈だ。

 

「ほら、残ったオーブでガチャガチャしていいぞ……」

 

 引きつった笑顔で、スマホをタマエに渡すと「わーい!ガチャガチャ〜♪」と楽しそうな声が返ってきた。

 タマエが将来、重課金者なりそうでお兄ちゃん怖いよ……。

 

 小説を読みながら待っていると、一時間程で満足顔の唐ヶ原さんが戻ってきた。

 

「衣装が出来ましたので、試着お願いします♪」

 

 唐ヶ原さんが服を持って入って来たので、タマエを着替えさせる。

 着替えは唐ヶ原さんに任せ、俺は後ろを向く。幼女とは言え、レディーの着替えを見るのはマナー違反だからな。

 

「あるじ様〜着替えたよ!見て見てー!」

 

 タマエが興奮気味にそう言ってくるので、振り向く。

 

「………おっふ。ファンタスティック」

 

 余りの可愛さにフリーズしかけたが、俺は懸命に言葉を絞りだした。

 何が言いたいかと言うとアレだ、ケモミミ幼女最高だぜ!!

 

「あるじ様?可愛いですか〜?」

 

「良いぞ……良いぞ! よしタマエ、次はダブルピースをプリーズ!」

 

 スマホで写真を撮りまくる。決していやらしい意味で撮ってる訳では無い。コレは家族の思い出写真なんだ。現に他の従魔達の写真も大量にあるしな。

 

「良い…ハァ…タマエちゃん最高だわ!次はキョトンって首を傾げて!」

 

 そして、隣で息を荒くしながら写真を撮る唐ヶ原さん。しかも一眼レフ。

 傍から見たら、確実に俺達は変態に映りそうな光景である。

 

「あの、その写真は……」

 

「大丈夫です!絶対に公開しませんから!成果物コレクションにするだけですから!」

 

「なら良いですけど……」

 

 撮影会続行。タマエにテヘペロポーズやキュンポーズをして貰い、尊い写真をスマホに納め終える。

 

「楽しかったー! 所で比企谷さん。値段の方なんですけど……色々サービスさせて頂いて、この値段になります」

 

 今回の明細に目を通す。

 58万から色々サービスして貰って50万か。ギガスパイダーとか言うモンスターの糸素材を使ってるだけあって結構すんだな。

 服の名前は【巫女服アーマーver.タマエ】か。うん、カッコいいぞ、可愛いぞ。今後を考えれば安いもんだ。

 

 俺は空間から札束を取り出し、唐ヶ原さんに渡す。

 

「………やっぱり凄いですね、その指輪」

 

「HAHA……運が良かっただけですよ」

 

 上手く誤魔化して、商品を受け取る。

 あれ?なんか服多くない?

 

「サービスでルーメリアちゃん用にゴスロリメイド服を入れておきました!」

 

「流石にサービスし過ぎって言うか、悪いですよ……」

 

 つーか、この人ゴスロリメイド服を布教しようとしてません?

 

「いえいえ、比企谷さんとは長いお付き合いになりそうなので。今後とも宜しくお願いしますね」

 

 あざといウィンク付きで釘を刺されてしまった。

 流石は商売人って言った所か。このサービスは最後の一押しに違いない。

 義経の正体が割れた今となっては、ここ以外で従魔の服を頼む気は無いしな。何よりこっちの事情を考慮して控え室に案内してくれたのがポイント高い。

 

「なら、有り難く貰います。次来る時は、名刺のアドレスにアポ入れときますね」

 

「はい!そうして頂けると提案資料を前もって準備出来るので、嬉しいです!」

 

「今回は本当にサービスまでして貰って、ありがとうございました」

 

「ばいばーい!とうかお姉さん!」

 

「タマエちゃんもいつでも遊びに来てね!むしろ来て下さい、お願いします!」

 

 最後に軽い会釈をして、タマエをモンスターブックに入れて、服も空間にしまう。

 背中越しから「またのご来店をお待ちしてます!」と元気な声を貰いながら、俺は店を出た。

 

 その後は、従魔達の欲しい食べ物を求めて東京を巡った。

 久しぶりの東京巡りは思ったより楽しかったし、息抜きになった。

 ただ、家に着いた時間が結構遅くなってしまい、従魔達が腹ペコ丸になってしまっていたのは申し訳無かったな、とは思う。

 まぁ帰りの途中で、ピザのLサイズを5枚も買ったから従魔達は喜んでくれたけどな。良かった良かった。

 




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