父と約束した「ベイスターズを応援しないと野球はやらせない」という鉄のおきて。修学旅行に筒香のユニホームを持っていくほど熱烈な地元ファンだった野球少年が、背番号54を背負って憧れのマウンドで躍動した。正真正銘の夢物語だ。
ドラフト5位新人の石田裕がプロ初登板初先発し、ソフトバンク打線を5回1失点に抑えて初勝利。その偉業に「まさか勝てるとは思っていなかった」と初々しく謙遜したが、2軍で出力の向上に努めた直球は150キロに迫り、シンカーやスライダーを交えて、ストライク先行で押し切った。
緊張感がにじんだ初回は2者連続三振で滑り出すも、連打と四球で満塁とされ、2試合連続で3安打をマークしていた柳町を迎える。内角の149キロでファウルを打たせ、沈む変化球で一ゴロに仕留めた。一塁ベース付近で両腕でガッツポーズし、安堵(あんど)の笑みでベンチに戻った。
ピンチをしのげば、頼れる先輩が強烈バックアップ。直後の攻撃では、同じ中大で3学年上の牧が満塁弾を放って背中を押し、七回には筒香が3ラン。「お母さんが『牧さんに打ってもらえ』と言っていて、筒香さんも打ってくれた。今日は持ってるな」と感謝した。
チームの新人で初登板初勝利は2020年の坂本以来。目標の一つだった牧とのお立ち台に立った22歳の勇姿を、スタンドから多くの少年少女が見つめたに違いない。「小さい時からベイスターズを見て野球を続けてきた。まだ1勝だが、もっと勝って勇気を与えられる投手になりたい」。チームの連敗を止め、力強く一歩を踏み出した。
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