挿絵表示切替ボタン
▼配色






▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ガイド役の天使を殴り倒したら、死霊術師になりました ~裏イベントを最速で引き当てた結果、世界が終焉を迎えるそうです~【1巻5/15発売】 作者:エリーゼ

第十三部

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました
532/536

529 Lifthrasir

 緑の呪いはすっかり大人しくなってしまった。ポツリポツリと漏らす言葉を汲み取り繋げたところ、究極スキルも切ってしまい、残っている力でおにーちゃんを倒しきれる見込みが完全になくなってしまったことで、完全に戦意を喪失してしまったらしい。

 カーサさんを取り込むのも止めてくれた。ウーズ化は解除され、ミーシャさんが泣きながら抱きついて喜んでた。緑の呪いの拡大が停止し、蔓延していた呪いも全てが無力化。グリムヒルデさんとティアちゃんはいつでも再発動出来るようにはしているけど、結界と領域の展開を解除した。それでも尚、何か行動を起こそうとしたりせず、ただジッとして言葉にならない言葉を発して佇んでいる。


「さっき思わずムービースキップしてもうたが、今ライブラリから見てきたで。なんや可哀想なやっちゃな」

「流石に同情致しますわ。暴れるなら対処せざるを得ませんけれど、この様子では……」

「わっちは別に。正直、毎回毎回可哀想だって同情してたら、いつか手痛いしっぺ返しが来る……と、おおお思う、から」

「半端な救済はより深い絶望を与えることになりますよ~?」

「私は救済したい。赦したい。もうこれ以上苦しんで欲しくないし、苦しめるようなこともして欲しくないです」

「誰かが赦さないと終わらない負の連鎖だよね。僕は、ん~……赦しても良いんじゃないかなって。解放されるべきだと思う」

「エリスちゃんはお昼寝が酷い目に遭わされたから、赦さないけど!」

「それを赦してこそだよ~。ここで断ち切らないと~」

「説得してみたいです。良いですか?」

「ワイはそういうの苦手や、任せるで」

「良いよ~やってみようよ~」

「ありがとうございます」


 緑の呪いに対する意見は三者三様。悲しい過去があったとは言えども到底赦されるべき存在ではないと思う人、半端に救おうとしてはかえって絶望を与えるだけだとトドメを刺そうとする人、どうにかして救済できないかと深く心を痛めた人……。私は、出来ることなら救済したい。バビロン様だって、そうすると思うから。


『パパ……ママ……。ワタシ、モ、テンゴ、クニ、、イキタイヨ……』

「天国は駄目よ。メルティスはお前に救いを与えない。メルティナを救わなかったように、メルティナの誰にも罰を与えなかったように。そこに救済はない」

『ドコ、ドコ……苦シイ、苦シイ……』

「私がお前の憎しみの根源を断つ。お前の憎しみを私が背負い、諸悪の根源に全てをぶつけよう。必ずメルティスを、殺す。もしもお前をこんな姿にした者の子孫が生きていたのなら、そいつも殺す。約束するわ」

『…………ズット、み、まもって、いたい』

「浄化を、受け入れてくれる?」

『…………わか、ッタ。でモ、どこニモ、いきタくなイ』

「解放されたら、お前の好きなようにすると良いわ。どこからでも、好きに見ていて」

『エリアアナウンス:緑の呪いが憎しみを捨て、浄化を受け入れることを選択しました』

「おお~……」

「こういう終わり方は、初めてだな」


 説得、出来た……。でもその代わりに責任が大きくなった。これからは緑の呪いの分まで憎しみを背負って、メルティスやメルティナの生き残りに立ち向かわないと。


「じゃあ、やるね~……?」

「うん、お願い」

「災い成す混沌の色彩よ、今一度清らかなる清浄を思い出せ! ピュリフィケーション!!」

『デロナが【ピュリフィケーション】を発動、緑の呪いが浄化を受け入れました。緑の呪いが形を失い霧散します……』

『呆気なく、逝ったな』

「出番がなかった~」

「あ! あのね、ビッグボスが言ってた! 引き金を引かないで解決出来るのが、一番良い結果なんだって! じゃあじゃあ、今回のは良い結果だよねっ!」

「確かに。そうとも言う。シャーリーぴょんは頭が良い」

「えっへへ~♡」


 そうね、本当は武器を手にせず傷つけ合わず、それで解決出来るのが一番良い。でもこの世にはどうしても解決できない、分かり合えない相手が存在する。だから自分達の身を守るために、武器から手は離せない。離すことが出来ない。


「あら……?」

「ん? ペルちゃん、どうしたの?」

「そこに、何か残っていますわ……?」

「本当だね~。浄化されてキラキラしてる光の湖の中に、何かあるね~」

「なんやろな、なんか……こう……」

「植物の、芽……?」

『これだけ暴れたところに植物など、ありえないだろう』

『じゃあ、今生えてきたってこと、ね……?』

「ミーシャさ」

『みーちゃん。ごめんなさい、もう大丈夫だから……。本当に、ごめんなさい』

「私もどん太やリアちゃん、千代ちゃん達従者の皆があの姿になってしまったら、取り乱していたと思います。だから……」

「いや、多分師匠なら普通に戦闘を続け、エェッ……!?」

「黙ってろもってぃ。わかってんだろ?」

「ペェイス……」

「ふざけとる場合ちゃうぞお前」

「すい、ましぇん……」


 これは、緑の呪いが残した芽……? そう、確かにその姿なら、もうどこにも行くことはないね。ここで植物になって私達を見守りたい、お前はそう選択したのね。


「踏み潰されたら大変ですね~。植物を成長させる促進アイテムとか、ないんですか~?」

『ありまぁ~す! ありますあります、作れま~す!!』

「アルスさん、そんな凄いアイテムがあるんですか?」

『ついさっき、緑の呪いを浄化して効果を反転させたり、色々やってる内に出来たすっごーい神薬がね、あるんで~す!! じゃじゃ~ん、これが』

「あ、エリクシール」

「エリクシール、HPとMPの最大値を上げる神の薬だね~」

「確かに、副作用に植物の育生がどうこうとか書かれてたな」

『エリ、ク、シール……。うん……。皆知ってたのね……』

「ええ!? エリクシールを人間の手で作れるって凄いことですわよ!? 皆様もっとアルスさんを讃えるべきではなくって!?」

「あ、確かに。アルス凄い、偉い」

「確かに凄いことやな。神の薬が作れる錬金術師か、かっこええなあ!」

『うう、今更褒められてもちょっと嬉しくないかもぉ……』


 確かに、小さいままだと踏み潰されたら大変だし、エリクシールで成長を促進出来るならそうするべきだよね。どの程度大きくなるか不明だけど、やっておいたほうが絶対に良いのは確か。私も倉庫に余ってた気がするなあ~……。かなり強い無慈悲ボスを倒すと、そこそこの確率で宝箱からドロップするのよね。


「私も数本あると思います」

「ワイもあったなあ、永続で最大値増えるんは一回だけやし、使ったるか」

「え、僕持ってないから欲しい……」

「お前は自分で取りに行け」

「僕もあるよ~。エリスも余ってなかったっけ?」

「うっ……。あります、けどぉ……?」

「じゃーん。私、7本もある。むふ~」

「あらあら、皆も結構余ってたんですね。それじゃあ使っても良い分だけ全部使っちゃいましょう」


 どこでも倉庫を呼び出して、えっと~……30本ぐらい余ってるわ。皆には使っちゃって今の今まで出番がなかったし、どうせこれからも定期的に手に入るんだから思い切って全部使っちゃおう~。ほれ、緑の新芽よ、大きく育つんだぞ~。


「誰にも踏み潰されないように、大きくなるんだよ。緑の新芽ちゃん」

「大きくなれ~」

「大きくな~れ、ですわ~!」

「僕達の身長を軽く超えるぐらい大きくなったりして」

「ハッゲよりデカなったらおもろいな」

「まさかよ。そこまでデカくならねえだろ、いくらなんでも」

『え、え、皆さんそんなにエリクシールを……お? お……!?』

「あ、ちょっとずつ大きくなってきましたね~」


 おお、早速大きくなってきた。やっぱり成長速度がファンタジーしてるね~。植物の成長を早送りで流す動画みたいに、にゅるにゅる~ってあっという間に伸びて……。伸び、て……。


「なんだか、成長が早く、ありませんこと……?」

「すっごく大きくなってる~♡」

『あら、凄く大きく……』

「こ、これ、どこまで大きく、な、ななな、なる、んで……?」

「えっと~……。もうユキノより大きくなりましたね~……?」

「え、もう全部使っちゃったんだけど」

「リンネちゃん何本使ったの!?」

「30本……ぐらい」

「これ、50本ぐらい使われとらんか!?」

『凄い成長速度だ、どんどん加速してる! 離れたほうが良いんじゃないか!?』

「あ、ヤバイ。退避退避~えっほ、えっほ」


 伸びて、いやいや伸び過ぎじゃない!? もう大きな木ってレベルを超えて、モリモリと成長しすぎて巨木、どこぞの神木を凌駕するんじゃないかってぐらい大きくなってるんだけど! アールゲインがあった領地よりも広く枝葉を伸ばしてる気がするんですけど!! 


『エリアアナウンス:新たな名も無き神木が誕生しました。神木は地下迷宮を取り込み始めました』

「え、えっ……。うわわわ、ヤバイんじゃ……?」

「これ、絶対一本で良かったよな!?」

「50本はアカンかったんや!!」


 なっちゃった、神木に……!! 確かに元が世界を変えるかもしれない力を持つアイテムで、それだけの凄まじい存在が浄化されたってのはあるんだけどさ! 成長に限度ってものがあるじゃん!! 地下迷宮まで取り込んじゃってるし!!


『エリアアナウンス:名も無き神木の迷宮が誕生しました。名も無き神木の根本のポータルから挑戦することが出来ます』

『エリアアナウンス:名も無き神木の恵みボーナスが発生します。元アールゲイン領地エリア内にランダムで、名も無き神木の果実が発生するようになります』

『エリアアナウンス:名も無き神木の恵みダンジョンが誕生しました。様々な希少素材を入手出来る採取ダンジョンです』

「うわあ……。凄いことになっちゃった……」

「神の薬ってやっぱ凄いんやな……」

『普通の植物にこんなことしたら、植物がもたないからこんなことは、ありえないんだよ!?』

「もも、元が、よよ良すぎた……のかな……?」

「世界を変えるかもしれない力を持つ者がベースですから、きっとそうですね~!」

「いつまでも名も無き神木では可哀想ですわね! リンネさん、名前をつけてあげたら如何かしら?」

「え、名前? 名前かあ……」


 確かに、ここまで立派になったのに名前がないのも可哀想だね。でもいきなり名前って言われてもなあ~。緑の呪いが綺麗になって大きな木になったから~……。みのりん、みのりんだね。


「ペルちゃん、みのりんが良いと思うんだけど」

『エリアアナウンス:名も無き神木がプレイヤー【リンネ】の命名を拒絶しています』

「そんなアナウンスで堂々と断られると傷つくんだけど……」

「みのりんはちょっと、アレですわね……!!」

「じゃあペルちゃんが決めてよ。ペルちゃんも拒絶されて傷つけ~」

「えっ、困りましたわね……。うーん……」


 みのりん、駄目か~……というか元緑の呪いの意識、わりとハッキリ残ってるのね。浄化された影響でその辺りも解決されたのかな。


「元はRegin(レギン)さんの名前から取ってアールゲイン、そのレギンさんが放棄を決定したこの地は残されしもの、つまりReginleif(レギンレイヴ)ですわね! そのレギンレイヴの生命を受け継ぎし場所ですから、そうですわね……。Lifthrasir(レイヴスラシル)が貴方の名前ですわ!!」


 お……? あれ、特に反応が返ってこない。これはもしかして、また拒絶してくる感じかな~? や~い、ペルちゃん! ちょっと格好いい名前をつけようとして拒絶されて、私と同じように傷心すれば良いんだ~! いっひっひ~。


『エリアアナウンス:名も無き神木がプレイヤー【ペルセウス】の命名を快諾しました。新たな神木の名は【レイヴスラシル】、また【ラビリンス・オブ・レイヴスラシル】と【レイヴスラシルの恵み】とダンジョン名が変更されました』

「なんや格好ええ名前になったなぁ!」

「お~。さすがペルちゃん、センスが良いね~」

「リンネ? みのりん? みのりん?」

「レーナちゃん、やめて、心にダメージが……!」

「りんねーさま、ネーミングセンス0点~♡」

「う゛っ゛」


 ひっ……。ひっ……。こんなのあんまりだ、私のネーミングセンスが終わってるなんて、そんな……。あ、どん太も『鈍臭くて太っちょ』だからどん太って名前にしたんだった。私のネーミングセンス終わってるわ。でも自覚すると心に、更に、深刻なダメージが、あああ、あああああ……!!


「リンネ様~? あれ、リンネ様~!?」

「わあ~りんねーさまが倒れちゃった~!」

『(;´∀`)……』

「みのりんは流石に、その……此方もどうかと思いまする」

「駄目駄目、お姉ちゃんを甘やかしちゃ! この機会に、ネーミングセンスが終わってるのを自覚させないと!」


 リアちゃんやめて、もう赦して? お願い、負の連鎖を断ち切るのは誰かが赦さないといけないんだよ!? お昼寝さんが言ってたでしょ!?


『わう? (僕の名前は格好いいよ?)』

「ほら! ほら、どん太は私のことわかってくれてる!! 格好いいって!!」

「鈍臭くて」

「太っちょ」

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」


 皆が私のことをいじめる!! 良いもん、もう何も聞こえないもん! 私はどん太に埋もれて辛い現実から逃れまーす。はい、どん太もふもふばーりあー! 何も聞こえませ~ん!!


『わう!! (皆は変な名前って言うけど!)』


 う゛お゛……。


  • ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いいねで応援
受付停止中
ポイントを入れて作者を応援しましょう!
評価をするにはログインしてください。

感想を書く場合はログインしてください。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
作品の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ