ライアン・レイノルズ小特集。
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映画『Just Friends』
(監督:ロジャー・カンブル)
★★★★
デブでモテない高校生のライアン・レイノルズは、大好きなエイミー・スマートとの関係も友達止まりで、彼女への想いを皆から馬鹿にされ、地元ニュージャージーを飛び出してしまう。10年後、ハリウッドでレコード会社の音楽ディレクターとして成功(ついでに減量にも成功)した彼は、初の里帰りを果たし、今度こそ高校時代の想いを遂げようとエイミー・スマートに再びアタックを開始するが…という『ロミー&ミッシェル』のバリエーション。
主演のライアン・レイノルズは、日本だと『ブレイド3』や『悪魔の棲む家』に出ていた冴えない2枚目俳優といった程度の認識なのかもしれないが、アメリカではコメディTVシリーズ『ふたりの男とひとりの女』で注目されたことからも分かるように、この人の本領はコメディ演技にあるのである。というわけで本作では『クルエール・インテンションズ』や『クリスティーナの好きなコト』を手掛けたロジャー・カンブルの演出のもと、本来の魅力を存分に発揮。デブ時代の彼がオール4ワンの「I Swear」を熱唱するシーンは本作の白眉だ。
しかし、実はライアン・レイノルズ以上に素晴らしいのが、徹底的にバカな歌手を演じたアンナ・ファリスなのである。一時期のジャック・ブラックに匹敵する暴れっぷりで、普通の女優がするコメディ演技の範疇を完全に超えちまってるよ! いやあ、おいらは本気でこの人のことを尊敬しますわ。彼女が歌う「Forgiveness」は、歌詞のクダラなさとは対照的に、モロにビートルズの「I Am The Warlus」なサイケデリック・サウンドだったりと、なかなかに凝った作りで楽しい。これ以外にも、ニュージャージーが舞台ということで、ブルース・スプリングスティーンの「Thunder Road」をネタにした台詞があったりと、小技の利いた音楽ギャグが満載なのが嬉しいやね。
まあ、こうした「美女と野獣」系の話だと、どうしたって「エイミー・スマートはライアン・レイノルズが痩せて格好良くなったからくっついたんじゃねえの?」という引っかかりが残ってしまうんだが、それを差し引いたとしても十ニ分に楽しめる快作だ。学園コメディ好きは必見。クリス・クラインも出てるよ。
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映画『Waiting...』
(監督・脚本:ロブ・マッキトリック)
★★★★★
そんなライアン・レイノルズとアンナ・ファリスの共演第1弾がこちら。『アメリカン・パイ』シリーズのプロデューサーであるクリス・ムーアが製作総指揮に名を連ねていることから、おそらくは90年代の学園映画の後日談として企画されたものなのだろう。郊外のレストランで働く従業員達の一日を描いた群像劇で、要するにこれは00年代版の『クラークス』であり『モール・ラッツ』なのだ!
一応の主役は『ギャラクシー・クエスト』のジャスティン・ロングってことになっているんだが、実質的にはケヴィン・スミス組におけるジェイソン・リーの役割を果たすライアン・レイノルズが完全にメインの扱いでサイコー。この映画を観ると、彼の役者としての立ち位置が「(ジェイソン・リー+ベン・アフレック)÷2」であることがよく分かる。
その他のキャストもアンナ・ファリスとルイス・ガズマンを筆頭に、『Stick It』のヴァネッサ・レンジース、『ミート・ザ・ペアレンツ2』のアラナ・ユーバック(怪演!)、フラットパックとも関わりの深いデヴィッド・コークナーなど、それぞれキャラが立ちまくりで魅力的に描き分けられている。監督・脚本のロブ・マッキトリックには今後も要注目だ。
ちなみにライアン・レイノルズの次回作は学園ブラック・コメディの傑作『Pretty Persuasion』を手掛けたマルコス・シエガの新作『Chaos Theory』! 期待せずにはいられないってなもんで。