第12話

残酷な恋の行方は
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2022/09/19 16:01



ぐさお
うーん、今日は中々いい音が出ない。


私はオーボエを担当している。


オーボエを吹くときにいつも悩むのがやっぱり音の質。


日によって安定しないんだ。


オーボエは木管楽器の中でも一番難しいとギネスに登録されているほど。


指は回りにくいし、運指も難しいし、リードはすぐに消耗しちゃうし。

iemon
今日の調子はどう?
ぐさお
い、イエモンさん!?
ぐさお
なんでここに?
だってここは木管の練習場所……
iemon
あ、ああ。ちょっとね。


そう言ってイエモンさんは「ある人」に視線を向けた。

ぐさお
………


視線の先に映っているのはやっぱり私ではなくて、


銀色に輝くフルートで美しい音を奏でている、吹奏楽の部長。


部長とだけあって一番上手。








めめんともり
あっ!間違えちゃった!
レイラ―
ちょっとめめさんそこ繰り返すとこです!








でも少しだけ抜けているところがある。


きっとそんなところに惚れたんだろうな。

iemon
……ふふっ。


ほらやっぱり貴方は今日も「あの人」を見て笑顔になる。


わざわざ「あの人」を見るために、トランペットであるはずの貴方は木管の練習場所に来るのでしょう?


そして近くにいる私と話しながら「あの人」を見つめる。


それはそれは、愛おしそうに。

ぐさお
…ッ……
ぐさお
(ああ、悔しいなぁ。)
メテヲ
イエモンさん!またこんなところに……
iemon
はいはい、戻りますよ。


メテヲさんがイエモンさんの前に立ちはだかるように近づいてきた。

メテヲ
またそうやってさぼってるからこの前の合奏みたいに失敗するんだよ。
メテヲ
そんなんだとまた部長に叱られるよ。
iemon
そ、それは嫌だなぁ。
メテヲ
大体さ……
ぐさお
もうお2人とも戻ってくださいよ……
ぐさお
このまま長話するつもりでしょう?
メテヲ
はいはーい。
iemon
戻るかぁ。


私はなんて卑怯なんだろう。








貴方の瞳にこれ以上「あの人」が映るのが嫌で嫌でたまらなくて、2人を引き返そうとさせるなんて。


でも神様。これくらい許してくださいよ。


私だって少しは希望を持ちたいの。

iemon
じゃあぐさおさん、またあとで!
ぐさお
はいっ!!




メテヲ
……ぐさおさん。
ぐさお
なんですか?
メテヲ
俺も少しは希望を持ってもいいですか……?
ぐさお
……?
ぐさお
それはどういう……
メテヲ
……いずれ分かるよ。
ぐさお
は、はい。
メテヲ
じゃ、またね。
ぐさお
はーい!






















恋は残酷だ。


叶わない恋だと分かっていても諦め切れない。


頭では理解しているのにどうしてか心は言うことを聞かない。


それほど好きになってしまったということだ。


もういっそ、想いを伝えて、きっぱり切り捨ててくれたらどんなに楽だろう。








そうしてくれたら "俺" / 私 も未練なく次の恋に進めるのに。


苦しくなくなるのに。


それでも貴方に想いを伝えるなんて怖くてできない。


失恋するのが怖いのだ。


この恋は叶わないって認めたくないのだ。









今日も "俺" / 私 は遠くで愛しい人を見つめ続ける。





















メテヲ
(そろそろ気づいてくれても良いのにな。)
ぐさお
(今日もイエモンさん、かっこよかった……)

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