第11話

仲直りのお味は2
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2022/09/14 16:00


授業もきっちり6時間受けてついに放課後となった。


もちろん集中なんてできなかった。


ぼんやりと楽器を出しながら部活が始まる時間を待つ。

Latte
あっ、飲み物買ってない……


更に、いつも買っているお気に入りのカフェラテを買うのを忘れた。

Latte
(最悪だぁー……)
めめんともり
はい!これから部活を始めます。
めめんともり
席着いてくださーい。


めめさんの掛け声と共に部活が始まった。


めめさんは一応部長をやっている。

めめんともり
今日は文化祭に向けて各自で個人練にしようと思います。
めめんともり
本当はパート練とかセクション練、合奏とかもやりたかったんだけど、今日だけは個人練にします。
めめんともり
それでは各自部屋に分かれて練習してくださーい!


ウパパロンが第一音楽室に行くのを見て、私は敢えて第二音楽室へ向かった。

レイラ―
ラテさん!この曲のEの部分合わせましょ。
Latte
おっけー。










レイラ―
そこもうちょいスタッカート気味で吹いてみてって先生が前言ってたよ。
Latte
あー、うん。ごめん。
ぼーっとしてて忘れてた。
レイラ―
……カフェラテでも買ってきたら?
Latte
え?
レイラ―
ほら、いいからいいからっ!
レイラ―
集中できてないんだし、気分転換に!
Latte
わかった……


たしか130円だったよね、とか考えながら私はカフェテリアの自動販売機へと向かった。




________________________

ガタンッ!
ウパパロン
あっ……
Latte
………


最悪、なんでこいつがここにいんのよ。


しかもカフェラテ飲んでるし。

ウパパロン
……ねぇ、ラテ。
Latte
………
Latte
(絶対に無視するんだ。)
Latte
(目の前のこれはウーパールーパーの土偶とでも思っておこう。)
ウパパロン
ラテってば!!


無理矢理ウパパロンを押し退け、自動販売機でカフェラテを買おうとした途端、目の前に新たなカフェラテが現れた。

ウパパロン
これっ……
ウパパロン
あげる。
Latte
……私別に要らないんだけど。
ウパパロン
本当に朝のことごめん。
ウパパロン
全く気づいてなくて、気遣ってあげられなくて。
Latte
………
ウパパロン
ねぇ、許して。ごめん。
ラテのこと好きだから……


ウパパロンはまるで見捨てられた子供のような瞳をした。


私は昔からこの瞳に弱いのだ。


思わず同情して許してしまう。

Latte
………もう、いいや。許す。
ウパパロン
……!


なんだかめんどくさくなってきた。


もう許してあげようかな。

Latte
ただし!もう二度とあんなことしないで。
Latte
めめさんたちもいろいろ考えちゃうでしょ!
ウパパロン
うん!ありがと、ラテ。
Latte
じゃあもど……





思わず言葉だけはなく息も止まった。

















唇に何かの温もりが触れた。

Latte
……ッ!?
ウパパロン
仲直りのキス……


振り返った私の唇にウパパロンは小鳥が啄むようなキスをしてきた。


目の前にはいつもと違った顔をしているウパパロンが。


近くで見るとどうしてか無性にどきどきしてしまった。

ウパパロン
これで、上書きできた、でしょっ……?
Latte
………ぅ、


本当にこの霊長類はずる賢いと思う。


まさに小悪魔。


私はこいつにこれから先も翻弄され続けるのだろうか。


そう思うと反吐が出る。














でも今は何故か、嬉しい気持ちでいっぱい。

ウパパロン
怒った……?
Latte
こ、こんなことされて、怒れるわけないじゃん……
ウパパロン
ふふふっ。
ウパパロン
ラテのファーストキスいただきました!
Latte
ぅ、や、やめてっ、
ウパパロン
恥ずかしい?
Latte
は、はっずかしいに決まってるでしょ!
ウパパロン
……ラテ、好きだよ。好き。
Latte
ぅああああ!何回もやめてよっ!
ウパパロン
はははっ、じゃあ戻ろっか。
Latte
……うんっ。
ウパパロン
帰ったらソロを一緒に練習しよう。
Latte
いいよ。
あんたの下手な演奏聴いててあげる。
ウパパロン
はっ……!?言うようになったねぇ。
ウパパロン
こっちだって負けてらんないな。
Latte
それは私の台詞。
最高のソロにしよう。
ウパパロン
もちろん!








ファーストキスはレモンの味だなんて誰が言い始めたんだろう。


甘酸っぱい恋をレモンに例えたのが元となっているとか。













でも私のファーストキスの味はカフェラテの味がした。


ミルクのように甘くて、それでも所々に苦さも感じて。


きっとこれから先何度も思い出してしまう味。


絶対に忘れられない。














だって今だってほら





心臓が鳴り響いて止まらない。





貴方の微笑む横顔に思わず一段と胸が高鳴ったのは私だけの秘密。






















ウパパロン
ふぅー、カフェラテうまい!
今度ラテが作ったのも飲みたい。
Latte
じゃあ今度2人で作ろう。
ウパパロン
ほんと…!?やった!!
Latte
あ、あと今度さ______

























レイラ―
全く。ウパパロンも中々やるねぇ。
レイラ―
まさか一発で堕とすとは。
レイラ―
ラテをカフェテリアに誘導して、なんて言われた時は何をしでかすのかと不安だったけど、どうやらうまくいったみたいね。
レイラ―
これからもそっと見守ってやりますか。





恋にすれ違いはつきもの。


相手とすれ違って落ち込んだり怒ったり、相手の反応次第で自分の全てが決まってしまうようなもの。


それでもやっぱり相手と分かりあえた時はどうしようもない多幸感で満たされる。


たまには素直になって相手に純粋な想いを伝えてみたら、きっとそれ以上に幸せな未来が待っているはず。




ウパパロン
ラテ、好きだよ。
Latte
私も、好き。







初恋の味もファーストキスの味も





カフェラテのようだった。


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