授業もきっちり6時間受けてついに放課後となった。
もちろん集中なんてできなかった。
ぼんやりと楽器を出しながら部活が始まる時間を待つ。
更に、いつも買っているお気に入りのカフェラテを買うのを忘れた。
めめさんの掛け声と共に部活が始まった。
めめさんは一応部長をやっている。
ウパパロンが第一音楽室に行くのを見て、私は敢えて第二音楽室へ向かった。
たしか130円だったよね、とか考えながら私はカフェテリアの自動販売機へと向かった。
________________________
ガタンッ!
最悪、なんでこいつがここにいんのよ。
しかもカフェラテ飲んでるし。
無理矢理ウパパロンを押し退け、自動販売機でカフェラテを買おうとした途端、目の前に新たなカフェラテが現れた。
ウパパロンはまるで見捨てられた子供のような瞳をした。
私は昔からこの瞳に弱いのだ。
思わず同情して許してしまう。
なんだかめんどくさくなってきた。
もう許してあげようかな。
思わず言葉だけはなく息も止まった。
唇に何かの温もりが触れた。
振り返った私の唇にウパパロンは小鳥が啄むようなキスをしてきた。
目の前にはいつもと違った顔をしているウパパロンが。
近くで見るとどうしてか無性にどきどきしてしまった。
本当にこの霊長類はずる賢いと思う。
まさに小悪魔。
私はこいつにこれから先も翻弄され続けるのだろうか。
そう思うと反吐が出る。
でも今は何故か、嬉しい気持ちでいっぱい。
ファーストキスはレモンの味だなんて誰が言い始めたんだろう。
甘酸っぱい恋をレモンに例えたのが元となっているとか。
でも私のファーストキスの味はカフェラテの味がした。
ミルクのように甘くて、それでも所々に苦さも感じて。
きっとこれから先何度も思い出してしまう味。
絶対に忘れられない。
だって今だってほら
心臓が鳴り響いて止まらない。
貴方の微笑む横顔に思わず一段と胸が高鳴ったのは私だけの秘密。
恋にすれ違いはつきもの。
相手とすれ違って落ち込んだり怒ったり、相手の反応次第で自分の全てが決まってしまうようなもの。
それでもやっぱり相手と分かりあえた時はどうしようもない多幸感で満たされる。
たまには素直になって相手に純粋な想いを伝えてみたら、きっとそれ以上に幸せな未来が待っているはず。
初恋の味もファーストキスの味も
カフェラテのようだった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。