配信エンコーダー「Web Presenter HD」の魅力を語る 〜そもそもエンコーダーって別で必要なの?〜
今回のテーマは配信機材の一つ「エンコーダー」について。
私が愛用しているエンコーダー「Web Presenter HD」の魅力を紹介していきたいと思います。
更に、そもそもなぜエンコーダーを専用で用意しているのか、そういった初心者目線の情報にも触れていきたいと思います。
ご参考になれば幸いです!
エンコーダーとは?
ライブ配信の機材の一つに「エンコーダー」があります。これは、配信先のサービスに映像・音声のデータを送るための機材です。
例えばYouTubeなら、YouTubeが持つ配信用のサーバーにデータを送る役割を担います。多くの場合は、主流の「RTMP」という方式でデータを送ることになります。
つまるところ、エンコーダーとは最終配信装置です。その前の機材で調整した映像・音声を、配信先のサービスに送ります。
ただし、ZoomなどのWeb会議の場合はエンコーダーを使いません。双方向なWeb会議はデータを送受信する方式が異なりますし、Web会議アプリがデータを送る役割を担っています。
このマガジンでは過去にも幾つかのエンコーダーを紹介してきました。例えばCerevo社の「LiveShell」シリーズは有名な機材で、昨年新型が出た際にはレビューもしていました。
今回紹介するのは「Web Presenter HD」です。ATEM Miniと同じBlackmagic Design社が販売するエンコーダー機材になります。
実は既に1年くらい使っているのですが、改めてその良さを感じる機会がありました。とても気に入っている機材なので、その良さを紹介したいと思います。
そもそもエンコーダーって別で必要なの?
Web Presenter HDの紹介に入る前に、「そもそもエンコーダーって必要なの?」と思う方もいるかもしれません。
なぜなら、ATEM Miniシリーズはそれだけで配信ができます(無印除く)。最近は配信機能を搭載している映像スイッチャーも多く、私が愛用しているRolandの映像スイッチャー「VR-6HD」も配信機能を搭載しています。
これらは映像スイッチャーにエンコーダー機能も搭載されているので、エンコーダー機材を用意する必要がないんですね。
それでも、わざわざ別でエンコーダー機材を用意するのはなぜでしょうか?
もちろん別で用意しなくても配信はできるのですが、私の経験としては大きく2つの理由で欲しくなることがありました。
追加機能が欲しい
映像スイッチャーに搭載されているエンコーダー機能はシンプルなものなことも多いです。そのため、より細かな機能を求めてエンコーダー機材を導入することがあります。
例えば、複数のサービスに同時配信したいケースがあります。YouTubeとFacebookに同時配信したいような場合ですね。
また、より細かい設定で配信したいケースもあります。例えば、配信するデータ量を固定したいような場合です(固定ビットレート)。
他にも様々ありますが、やはり専用機材の方が機能が充実していることも多い印象です。
安定性を求めて
機材の安定性を考える時、やはり負荷は分散したほうがリスクが下がります。何でもできるオールインワン機材は便利な一方で、負荷が集中していてリスクが高い状況とも考えています。
中でも配信の処理は比較的負荷が高い処理な印象です。そこを切り出すことで、安定性の向上が期待できるのではないかと考えています。
例えば、ATEM Miniシリーズは便利な一方で、不具合や熱暴走の事例を聞くことも少なくありません。それを聞いていると、失敗したくない配信では少しでも信頼性を高めたいなとも考えてしまいます。
感覚の話ばかりで申し訳ないのですが、機能が増えるほど負荷が高まりやすくなることには違和感もないかと思います。一概に同じとも言えませんが、OBSも配信せず動画再生ソフトとして使うと、トラブルの可能性がグッと下がる印象もあります。
Web Presenter HDを使う理由
前振りが長くなりましたが、ようやくWeb Presenter HDのお話です。
先日のライブ配信では、Roland VR-6HDをメインスイッチャーに、最終的な配信はWeb Presenter HDで行っていました。
VR-6HDも単体で配信までできるオールインワンな映像スイッチャー&ミキサーです。それでもWeb Presenter HDを採用した理由は2つあります。
一つは前述と同じ安定性向上。もう一つは、配信と録画を別々で行うためでした。
これはVR-6HDの問題ですが、録画と配信が連動しています。つまり、何か問題が起きて配信を止めると、録画も一緒に止まってしまう仕様です。録画だけは続けるには、エンコーダーを別途用意する必要があったのでした。
採用理由がWeb Presenter HDと関係なくてすみません…。ただ、実は幾つかのエンコーダー機材と比較した上で、最終的に選ばれたのがWeb Presenter HDでした。
なぜWeb Presenter HDが選ばれたのか、その理由は3つありました。
HDMIのモニター出力がある
Web Presenter HD最大の魅力は、分かりやすいHDMIのモニター出力画面だと思います。
出力した画面には、配信中の映像に加えて、現在の配信ステータスが大きく表示されます。これが、トラブルが起きた時にも非常に分かりやすいです。
あとは、オーディオのレベルメーターが大きく表示されるのも助かります。先日の配信でも、音響担当の方がこれを見て、配信側の音声を調整してくれる一幕もありました。
それぞれの情報が大きく表示されているので、デスクトップ型のモニターに映しておくと周囲の人が見やすいのは嬉しいですね。
意外とHDMIでモニター出力できないエンコーダー機材もあったりします。実際に、比較検討したTASCAM VS-R264はモニタリング出力がなかったことが、不採用の決め手になったのでした。
USBで設定アプリが操作できる
もう一つ評価が高かったのは、USBケーブルで設定を開けることです。
幾つかのエンコーダーを試しましたが、ネットワーク経由で管理画面にアクセスする機材が多い印象です。Web Presenterはアプリのインストールこそ必要ですが、USBケーブルを挿せば接続できる安心感がありました。
ネットワーク経由の接続だと、どうしても環境構築に一手間がかかります。そもそもネットワークに問題が起きていると、接続できない課題もありますね。
Web Presenter HDはUSBとネットワーク接続の両方ができるのが嬉しいですね。
シンプルで安定している
これは印象の話にはなってしまいますが、安定して配信を行ってくれるので信頼を置いています。
試す中では癖を感じるエンコーダーもありましたが、Web Presenterは比較的シンプルな機能なこともあってか、変な挙動を感じることも少ないです。
逆に言えば録画もできず、複数サービスへの同時配信もできず、単純に配信をする機材です。ただ、それで信頼性が得られるのなら、下手に機能が詰まっているよりも個人的には嬉しいです。
唯一のネックはSDI入力
そんなWeb Presenter HDの唯一のネックはSDI入力な点です。
これは人によるとは思うのですが、HDMIを中心に機材を組んでいる人にとっては、SDIからHDMIに変換する機材が必要になります。
用意すれば良いと言えばそこまでなのですが、やはり直接HDMIで入れられるならその方が嬉しいです。
とは言え、それ以上に得られる恩恵が大きいです。上記で紹介した機能以外にも、テザリングの回線との冗長化や、配信トラブル時のキャッシュ機能など、何かあったときに嬉しい機能も搭載されています。
Webカム出力のUSB端子があるのも便利な点です。コミュニティメンバーの伊藤さんは任意に出力する解像度・フレームレートを設定できる(配信設定と同じになる)ことを評価されていました。私も配信のラウドネス計測をする時などにはここを使っています。
こういった利便性、そして分かりやすさや安定性には、とても信頼を置いています。これからもWeb Presenter HDを使っていこうと思っていますので、皆さんのエンコーダー選びのご参考になれば幸いです。
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