川崎ヘイト禁止条例1年、在日コリアン女性が語る課題
【神奈川】ヘイトスピーチに刑事罰を科す川崎市の「差別のない人権尊重のまちづくり条例」が可決、成立してから12日で1年になる。ヘイトを犯罪と位置づけた全国初の条例は、差別をなくすことができるのか。差別の被害者として条例制定を訴え、攻撃と闘ってきた市内在住の在日コリアン3世、崔江以子(チェカンイヂャ)さん(47)に課題を聞いた。(大平要)
2015年11月、私たちに対して「死ね」と叫ぶデモ隊が地域に向かってきたとき、行政も警察も助けてくれませんでした。地域の子どもたちをどう守るか、恐怖が残りました。
ルールがなかったからです。今は違います。16年に国がヘイトスピーチ解消法をつくりました。川崎市の条例では、実効性を高めるための罰則も設けました。
ただ、運用が慎重すぎます。例えば、私に対するインターネット上の書き込みについても、有識者でつくる差別防止対策等審査会に市が対応を諮ったのは、私が申し立てた300件のうち一部に過ぎません。削除要請までの時間もかかっています。ネットパトロールを担う、市の職員に対する研修が足りないのも一因です。
JR川崎駅前では、デマを用いて(在日コリアンへの)差別を扇動するような街宣活動も行われています。「殺す」「ゴキブリ」といった言葉は使われておらず刑事罰の対象には該当しないのかもしれません。でもこれは、条例が解消をめざす「差別」にあたります。行政には、すぐに警告のメッセージを出して、啓発して欲しいと思います。
条例をつくった川崎市が突出している状態は好ましくありません。相模原市で同様の条例をつくる動きもあり、これから先、広がって欲しいと思います。
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川崎市議会は11日、インターネット上の誹謗(ひぼう)中傷を抑止するための法整備を国に求める意見書を、賛成多数で採択した。自治体がSNSなどへの投稿の削除を要請した場合、要請を受けて削除した事業者の責任を免除することなどを求める内容だ。同市はヘイトスピーチを禁止する条例の制定後、5事業者に削除要請を行ったが、一部の事業者が要請に応じないなど、解決に時間がかかっている。