天才と星の子   作:もう何も辛くない

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時間が飛んでいます。
もう少しじっくり書きたいけど、話がいつまでも進まないので。

知ってます?この小説、投稿するまでは五話くらいで終わる予定だったんですよ?
書きながらもっとじっくり書きたいな、詳しく書きたいな、とか、書きたい事が増えていった結果こうなった…。

え?今の見解?
三十話くらいには流石に終わるんじゃね。(鼻ホジ)


天才と星と奴隷

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一つ、皆に質問をしたい。

 

 仮に一推しのアイドルがいたとしよう。

 切っ掛けは人それぞれとして、それこそ医者の身でありながら病室のテレビでそのアイドルのライブ映像を流し、患者に布教活動を躊躇なく出来るくらいに魅了された、そんなアイドルがいたとしよう。

 体調不良で活動休止のニュースを見て、人目も憚らず号泣してしまうくらいに推しているアイドルがいたとしよう。

 

 そのアイドルがある日突然、お腹を大きくしながら目の前に現れたら、君はどうする?

 

 因みにいうと、僕は今、完全に脳が破壊された。

 妊娠という事実を突き付けられただけでなく、その子供の父親と思われる、()()の容姿に引けを取らない超絶イケメンの少年が、寄り添うように傍に居るのだから─────。

 

 自己紹介が遅れたが、僕の名前は雨宮吾郎。宮崎県の田舎にある病院で産婦人科医をやっている。

 …そう、産婦人科医をやっている僕が診察していて、お腹を大きくしているのだから、アイが何故この病院に来たのかなんて、火を見るよりも明らかだ。

 

 アイ─────

 結成から四年、メディアの露出も増え、ここ最近人気がうなぎのぼり中のアイドルグループ、B()()()の絶対的エースでありセンター。

 そのアイが、妊娠…?しかも相手は同年代と思われるこいつ…。殺して良いかな?

 

「あの、先生…。実はとんでもない便秘だったりとかしませんか?」

 

「だとしたら死んでますね」

 

 ここ、診察室に居るのは僕とアイと少年(仮)の他にもう一人、二人よりも二回りは歳が離れているであろう男性が居た。

 その男性が諦め半分といった様子で尋ねて来た。

 

 …そうだね、僕もそっちの説を信じたかったよ。でもね、ここまでお腹が膨れる便秘なんてあり得ない。普通に死ぬから。

 

「往生際が悪いなぁ、佐藤社長は。それに、そっちの方は順調!今日も問題なかったよ!」

 

 サムズアップするアイは可愛すぎた。

 言ってる事はお下品なのに、何でこんなにも可愛すぎるんだろう。

 

 …可愛すぎるからこそ、脳が破壊されてしまうぅ─────。

 

「…貴方は親御さん?」

 

「まぁ、戸籍上は…。彼女は施設育ちなもので、実質後見人というか、身元引受人というか…」

 

 知ってる。アイが施設育ちだというのは、ファンの間じゃ公然の事実といってもいい。

 

 …やはりというか、予想通りというか、この感じだとどうやらアイのお相手はこの男性ではなさそうだ。

 

 ───────────

 

「総司さん、一体、本当にどうしてこうなったんですか…?」

 

 本当だよ。

 本当に、一体どうしてこうなったっていうんだ─────?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 親父から、アイが()()()()()()()()()()()()に立てたら結婚しても良いという条件を突き付けられてから、しばらく経ったある日。

 

 俺はアイと斉藤の三人で、宮崎県にあるとある田舎町に来ていた。

 目的はその町にある病院。それなりの設備と医者が揃い、そして()()()()()()()()()病院で、アイを診てもらうためだ。

 

 親父と話したあの日から、俺は全国の病院のリサーチを行った。

 第一の条件は、当然だが四宮の影響力が及ばない病院である事。

 この条件を満たしていない所は論外だ。どこから情報が兄貴達へ漏れるか分かったものじゃない。

 

 第二に、アイを知る者と出会す事がない場所である事。

 これに関しては、どうしたって運の要素が混じってしまうのだが─────斉藤にも協力してもらい、吟味をした結果、ファンレターの数が一番少なかった宮崎県を選んだ。

 だから、俺が選んだ病院にアイのファンがいないとは限らないのだが─────そこに関しては割り切るしかない。居たら仕方ない。口止め料でも渡して口を噤んでもらおう。

 もし、それで情報が漏れてしまったら─────社会的人生からご退場願うとしよう。漏れた情報を得てしまった、不幸な人達も一緒に、な。

 

 第三は、これも大事な事であり当たり前の事だが、その病院が親身にアイに寄り添ってくれるかだ。

 初めての診察には俺も付き添うが、以降の診察に毎度毎度俺が一緒に行ける訳ではない。

 本当は行きたい所なのだが、俺も俺でやらなければならない事が山積みだ。

 

 それに、()()()()()()()()兄貴達に察知される恐れがある。今回の宮崎遠征だって、正直ギリギリを攻めているのだ。

 そのため、次回からは斉藤に任せる事にする。

 

 因みにいうと、俺とアイに子供が出来た事を知っている人物が、斉藤の他にもう一人いる。

 大体想像がつくだろうが、妹のかぐやだ。あいつには、今回の件…親父との話の内容も全て伝えてある。

 

 だってあいつ、アイから送られてきたメールを覗いてからポンコツ過ぎるんだよ。

 あれからどうなったのか気になり過ぎたのか、早坂は勿論、白銀どころか藤原にまで心配される始末だ。

 隠す方が逆効果だと判断して、かぐやにも全て伝える事にした。

 

 ()()()()()()()()()()と釘を刺した上で今回の顛末を話し、その結果かぐやは、はれ?はれ?とか言ってかつて見た事がない程に混乱していた。

 

『高校生で子供…?つまりセッ…っ──────!!!?』

 

 とか言って、恥ずかしさの余り顔を真っ赤にしたかぐやにマリアージュを感じた俺は悪くない。

 あんなの可愛すぎだろ。可愛すぎるかぐやが悪い。

 

 …話が逸れに逸れたな。

 とにかく今、俺は厳正な選別の上に選んだとある病院にアイと斉藤と共に来ている。

 

 の、だが─────もしかしたら、運に嫌われているのかもしれない。

 

 必死に平静を装ってはいるが、強く握り締められた拳と滲んでいる手汗。

 動揺から来ているのか、アイを見る瞳が微かに揺れている。

 …アウトだな。こいつ、アイを知っているどころか、結構熱烈なファンだ。

 

「総司さん、一体、本当にどうしてこうなったんですか…?」

 

 うるさいぞ斉藤。そんなの、俺が言いたいくらいだ。

 

 選別に手応えはあったんだけどな…。不確定な要素に嫌われてしまえばそれまで。そこに関しては諦めるしかない。

 

「とにかく、診察してくれ。何をするにしてもまずはそこからだろう」

 

「もしかして、病院に来るのは初めてですか?…お腹の感じからして、二十週くらいですよね」

 

「一度診て貰っている。ただ事情があってな。紹介状とかそういうのは作って貰ってないんだ」

 

 本来、転院をする際には担当の医師に診療情報提供書やら紹介状やら、正式な手続きをした方がスムーズにいく。

 ただ俺達の場合、田沼先生に動かれれば親戚どもに察知される恐れがある。

 

 …マジで身内同士で足の引っ張り合いしか出来ないクソどもが。その癖、変な時に家の格がーとか言って一致団結すんのは何なんだ。

 俺も大概ではあるが、こういう時くらい大人しくしていて欲しいというのは、そんなにも難しい話なんだろうか。

 

「なるほど、分かりました。それでは、準備がありますのでお待ちください」

 

 どうやらかなり精神的な打撃を受けているのか、それともプロとして心得ているのか。

 結構引っ掛かる言い方をした自覚はあったのだが、先生は何もそこにツッコまずに診察室を出て行った。

 

「…総司さん」

 

「分かってるよ」

 

 斉藤も、あの先生がアイのファンである事に勘付いたらしい。

 

 一応そうなった場合を考慮して、対応策は作ってある。

 

「とりあえず八桁を提示しますか?」

 

「最悪もう一桁追加も考慮しておく。それでもダメなら、強硬手段だな」

 

「二人とも、何の話してるの?」

 

 先生は数分もすれば戻ってきて、それからはまあ、田沼先生の所に行った時と同じだ。

 アイの検査が行われ、二卵性の双子だと言われ、後はまあ、今度は斉藤も交えて産むのかについての話し合い。

 

「産むよ」

 

「…総司さん」

 

「諦めろ。俺もアイも、意見を曲げるつもりはない」

 

「…」

 

 斉藤に知らせてから数え切れないほど重ねてやり取りはこれで最後となり、遂にこいつは白旗を上げる。

 

 これで、一先ずアイが子供を産むための環境は整った。

 ─────とある一点を除いては、だが。

 

「初めは八桁で交渉、ダメなら九桁。それでもごねる、強請る等の対応が見られた場合は俺の方で処理する。それでいいな?」

 

「…アイの為だ。総司さん、よろしくお願い致します」

 

 その一点というのは、アイのファンであるあの医者だ。

 あの医者の口を封じなければ、アイを預ける事など出来やしない。

 

 不穏要素が出た時点で病院を変える選択肢もあったが、四宮の影響下になく、安心してアイを預けられる病院というのは俺が思っていたよりも少なかったのだ。

 そこからアイのファンが居ないであろう病院を更に特定していくのに時間が掛かり、今ではアイの妊娠から二十週という所まで来てしまったのだ。

 

 可能であるなら、この病院で本決定したいというのが俺の本音だった。

 

「…そういえば、アイはどこ行った?」

 

「…俺は見てないですよ」

 

 一先ず方針が決まった所で、ふとアイの姿が見当たらない事に気付く。

 斉藤に尋ねてみるが、斉藤も知らない様子。

 

 流れる沈黙。聞こえてくるのは、周囲を歩く医者や看護師、他の患者達の話し声のみ。

 

 ──────あの野郎っ!?

 

 どこの誰に顔を知られているか分からないからフラフラするなとは言いつけていたのだが、効果はなかったらしい。

 多分、暇だから散歩でもしようっと、とか思いながらどっかほっつき歩いてるに違いない。

 

 すぐに、俺と斉藤は手分けしてアイを探しに歩くのだった。

 

 …そろそろ、この辺りなら星が見えだす頃だな。

 だったら、あいつが居そうな場所は───────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「総司の勧めでここを選んだけど、良い所だね。夕暮れでも星が凄くよく見えるし…。東京じゃこうはいかないな」

 

 全身を駆け巡る混乱、困惑を抜くために屋上に来た僕だったけど、その元凶が現れた。

 

 アイは頭上の星空を見上げながら、自身の瞳にも宿る星を輝かせていた。

 

 確かに、この景色は都会では見られないだろう。

 とある番組で星を見るのが好きだって言ってたし、星好きのアイにはこの景色はたまらないだろう。

 

「…総司って、君と同い年くらいの子か?」

 

「うん。私の大好きな人で…、この子達のパパだよ」

 

「…」

 

 僕の質問に答えるアイは、僕は勿論、ファン全員が目にした事がない()の顔をしていた。

 

「相手の子は随分愛想がなかったように見えたが」

 

「そうなんだよねぇ~。でも、そこが可愛かったりするんだよね。いつもツンツンしてるけど、私の事をちゃんと考えてくれるんだっていうのは伝わるし」

 

「…そうか」

 

 推しの子の惚気を聞かされるという、堪らなく複雑な状況にある今の僕だが、何故かダメージは少ない。

 自分でも驚くくらい、すんなりとその言葉を受け入れる事が出来ていた。

 

「君は、アイドルを辞めるのか?」

 

 だからだろうか。僕の口から無意識に、そんな言葉が出て来た。

 

 星を見上げていたアイがこちらを向いて、驚き目を見開いていた。

 

「あれ、私のお仕事、言ってたっけ?」

 

「昔、患者に君のファンが居たんだよ」

 

「あちゃー…。ここならお医者さんもおじさんばっかりだし、バレないと思ったんだけどなー。…溢れて出るオーラは隠せないか」

 

 こまったこまった、なんて言いながら誇らしげに笑うアイ可愛い。

 そして、さっきの惚気は割と受け入れられていたのに、こんなに可愛いアイをあのガキが抱いたのだと考えると殺意が湧いてくるのだから僕もこまったこまった。

 

「やめないよ」

 

「─────え?」

 

 その溢れて出る殺意は、アイのその一言によって一瞬にして霧散した。

 

「女としての幸せも、母としての幸せも、アイドルとしての幸せも、私は全部欲しい」

 

「いや、でも…それは、つまり─────」

 

「そ。公表しない」

 

「い、いやいやいや!流石にそれは…認めてくれないんじゃないか?その…子供のお父さんも…」

 

「え?総司?公表しないでアイドル続けようって、総司から言ってくれた事だよ?」

 

「はぁっ!?」

 

 たった十数秒の内に、僕は立て続けに驚かされた。

 

 アイが子供について公表しないでアイドルを続けるつもりでいる事。

 そして、それを提案したのがアイを抱いたあのが─────総司という少年である事。

 

「─────くくっ、あははははははっ!」

 

 可笑しい。狂っている。

 そんな地獄にも等しい道を二人して選んで、しかもその理由が幸せが欲しいからだなんて。

 

「大丈夫なのか?バレたらただじゃ済まないぞ」

 

「うーん…。その時は総司と一緒に高飛びしよっかな?ドバイとか行ってみたかったんだよねー」

 

「やめてやめて。僕泣いちゃうから」

 

 でも、一番狂っているのは、幸せが欲しいと言い放つアイに更に惹き込まれてしまった僕自身だ。

 

 突き付けられ、自覚をする。僕は───────

 

「星野アイ。…君のその野望を、手伝わせてほしい」

 

「僕が産ませよう。安全に、元気な子供を」

 

 どうしようもない、君の奴隷(ファン)なのだと。

 

「やっぱりここに居たか」

 

 僕がアイに向けてその決意を表明した直後、背後から第三者の声が聞こえて来た。

 

 一瞬、今の会話を聞かれたかとひやりとしたが、こちらに歩いてくるその人が総司と呼ばれたあのガキだと気付き、緊張が抜ける。

 

「総司!」

 

「お前さ…。あまり歩き回るなって言われたの覚えてるか?」

 

「んー?忘れた!」

 

 無邪気に笑うアイ可愛い。

 そして呆れて溜息を吐くガキ、ふざけんな。

 アイの笑顔だぞ?ファンが知らないアイの笑顔を向けられる神の如き立場に居ながら、その態度は何だ。

 もっと有難がれ。

 

「ねぇ、総司。ここの病院にしよ?」

 

「…どうした、急に」

 

「何となく。総司が迷ってるんじゃないかって思って」

 

 相も変わらず愛想のない、偉そうな顔をしてるだけだと思っていたが、アイには違った風に見えたらしい。

 そしてそれは図星だったらしく、ガキは驚き目を見開いてから、小さく息を吐いてから後ろ頭を掻く。

 

「まあ、そうだな。お前を知ってる人がいる訳だし、また時間は掛かるが、別の病院を探すべきかもとは考えてた」

 

「やっぱり。でも総司、このせんせなら大丈夫だよ」

 

 アイに言われたガキが、こちらを見る。

 

 赤黒い瞳が、試すようにこちらに向けられる。

 アイとはまた違った輝きを放つその瞳に吸い込まれそうになりながら、しかしここで目を逸らしたら負けだと謎の対抗心に駆られた僕は、必死に耐え続けた。

 

「…根拠は?」

 

「勘!」

 

「だと思ったよ。…随分と気に入ったみたいだな」

 

 アイの返答にまたも呆れたように溜め息を吐いてから、だけど今度は穏やかな笑みを浮かべるガキ。

 

 …そんな顔も出来るんだな、って少し意外に思ったのは秘密だ。

 

「先生。アイを頼む」

 

「…いいのか?僕は、()()()()()()を知っているんだぞ?」

 

「俺はこいつを信じてるんでな。こいつが信じるアンタを、俺も信じる事にするよ」

 

 偉そうな態度は変わらない。

 

 だけど、その言葉を聞いて、このガキは()()()()()()()()()()と感じられた。

 

 あと、それと一緒に、アイがさっき言った事を思い出す。

 

『でも、そこが可愛かったりするんだよね。いつもツンツンしてるけど、私の事をちゃんと考えてくれるんだっていうのは伝わるし』

 

 ─────なるほど、ツンデレか。

 

 アイが言ったその言葉について、ほんの少しだけ分かる気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




基本的に原作と流れは変わらず。
なお、せんせの総司への好感度は馬鹿低い模様。
推しを孕ませちゃったからね、仕方ないね。

先週も出来たし今日も出来るやろの精神で、今日中にもう一話投稿できるよう頑張るつもりです。

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