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紫の色慾  第1話 「紅茶の香る口づけ」/Novel by てとが

紫の色慾 第1話 「紅茶の香る口づけ」

3,177 character(s)6 mins

秘封倶楽部の小説を書いてみたかったので書いてみました。

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紫の色慾

第1話 「紅茶の香る口づけ」

蓮子、えっちしよ?
メリーの一言が頭から離れられない。

大学の講義中、私は昨日の事を思い出していた。講義の内容など何一つ入ってこない。
それは、昨日メリーが私に放った一言が原因である。

私達は人気の無い寂れた神社でいつものように境界を探していた。私はその時からメリーの様子がおかしかった事に気付いていた。何かぼーっとしているような、いつも以上にフワフワしている雰囲気だった。

「れーんこっ」
「わぁっ!?」
私はメリーの突然の大きな声に驚く。
「ビックリした?」
「ちょっとメリー…ビックリしたじゃない。っていうか今日テンションおかしくない?」
「そんなことないわよー!」
明らかにいつもとは違うが、何が違うかは明確には分からなかった。強いて言うならなにか吹っ切れたような…
いつもとは何か違うメリーを前に戸惑っていた私にメリーは話を続ける。

「蓮子って私の事どう思ってるの?」
「な、なによ今更…どうって何が?」
「だからー好きか嫌いか!」
「そ、それは好きじゃなかったらい、一緒にいないでしょ…」

唐突な話題に戸惑いつつも私は少し照れながらメリーに答えた
しかしメリーは少し不服な顔をした

「それってそんなに私の事好きじゃないみたいな言い方じゃない?」

ぷくーとメリーは頬を膨らませる。

「そんなことないって!好きだよ凄く!一緒に居ると楽しいし…」

私はあわあわと焦りながら弁解の発言をした。メリーは暫く黙ったままだった。
私はなんとなく空気が変わった気がした。

「本当に?」

メリーはいつの間にか悩ましい表情になっている。私はそのメリーの豹変した女の子らしい声のトーンと表情にどきっとしてしまっていた。

「それならお願いがあるの…」

メリーは私に顔を近づけて囁く。目の前の深く暗い紫色の瞳は私の心を見透かそうとするような印象を与えた。

「もっと蓮子のことを知りたいの。」

メリーの顔が紅くなり、息が荒くなっているのが解る。ほのかに香るメリーの甘い匂いが私の頭をぼーっとさせる。
神社に響く風の音や木々の音はいつの間にか聞こえなくなっていた。
その時、予想外のことが起きた。
メリーは私に口づけをしたのだ。

「蓮子、えっちしよ?」

メリーの手はいつの間にか私のネクタイをはずしていた。
私は一瞬何が起きたのか分からなかったが、身体はすぐにメリーを振りほどいていた。

「ーー!何をしてるのメリー!!」

私は頭が沸騰しそうになりながら叫んでいた。きっと顔は真っ赤になっていたと思う。
メリーはきょとんとした顔をしている。

「私の事、好きじゃないの?」

私はいつものメリーじゃない事を確信した。そして訳がわからないままメリーを置いて私は走って神社を後にしていた。


家に戻ってから今まで、私はずっとその事を思い出して悩んでいた。
メリーはどうしてしまったのだろう。
大学には来ていないようだった。
このまま放っておけない、きっと何かあったに違いない。私はそう思い、メリーの住むマンションに行くことにした。


メリーのマンションは大学から近く、高級な物件が並ぶ住宅街の中でも一際目立つほどの豪華な見た目をしている。私はマンションのロビー入口のインターホンでメリーの部屋番号を押した。

「どちらさまですか?」

いつものメリーの声。私は少し躊躇ったが、勇気を出して答える。

「あ、あの…メリー?私…連子だけど…」
「蓮子!来てくれたの!?今開けるわね!」

昨日あんな事があったのにメリーの声は急に明るくなった。私はほっとした反面やはり違和感を覚えた。
いつものメリーではなくしている要因。それを突き止めないことには何も分からない気がしてならなかった。
エレベーターを降り最上階のメリーの部屋の前へ着く。インターホンを押すとメリーが扉を開けてくれた。

「来てくれて嬉しいわ蓮子。さぁ上がって」

メリーは笑顔だった。特に変わった変化は見
られない。

「あ、ごめんね。急に押しかけちゃって…」

メリーはいいのよ。と言って私を部屋に入れてくれた。
メリーの家は広く、部屋の数も多めである。私はリビングにあるソファーに座るように促された。

「今紅茶入れるわね。」

私も手伝おうか?と言ったがいいわよ、座っててと言われてしまった。
紅茶が入ったカップが私の前に置かれる。メリーも私の正面に座って紅茶のカップに手を掛ける。
私は昨日のことについて切り出した。

「メリー…昨日は急に帰っちゃってごめん」
「…私こそあんな事しちゃってごめんね。」
「…メリー…何かあったの?急にあんな事…するなんて」

少し自分の顔が赤くなってしまっているのが分かる。私は昨日のメリーの発言やキスの事を思い出さないように話を続けた。

「悩み事があるなら言って。私はメリーの一番の友達なんだから」
「蓮子、ありがとう。でも私…蓮子を裏切ってしまいそうなの。」
「どういうこと?」

裏切り、という予想外の単語に戸惑う

「私は蓮子を…友達として見れない…」
「え…?」
「蓮子の事、好きになってしまったの。友達としてではなく、恋愛対象として」
「め、メリー…」
「ごめんね…気持ち悪いよね…でも蓮子には嘘を付きたくないの…だけどどうしていいか分からなくて…」
「…」

私は何を言えばいいのか分からなかった。部員として。友人として。それ以上の感情をメリーに抱いたことは無い。でもメリーは…。
メリーは続けた。

「昨日、蓮子と2人きりになった時、何かに取り憑かれたみたいに蓮子にあんな事を…」

メリーは涙を浮かべて少し震えていた。
それから私達は黙ったままだった。メリーもどうしていいか分からないのかもしれない。わたしはメリーの気持ちに答えられるのか、同性に対して恋愛感情を抱けるのか私は考えていた。
重い空気の中、私は口を開いた。

「…っそうなんだ。ごめん、気付かなかった。でもわたしはー」

友達として。そう続けようとした私の口はメリーの唇に塞がれてしまった。
昨日と同じ柔らかいメリーの唇の感触…ただ昨日と違うのはほのかに紅茶の香りがした事だった。
私はキスをしているメリーの悲しい表情を見ていると、不思議と振りほどこうという気持ちは薄れていった。
唇が当たる微かな音。昨日のような驚きの感情は無く、メリーの軟らかな唇の感触が気持ち良いという性欲に近い気持ちを抱いていた。
メリーはゆっくりと自分から唇を離した。

「…ありがとう蓮子。ごめんね…」

そういうとメリーは、鍵はオートロックだから好きな時に帰って大丈夫よ。気をつけて帰ってね。と言い残し奥の部屋に消えていった。
メリーの「ごめんね」はもう2度と会えないような、さようならを意味しているような気がした。

次の日、メリーの存在は消えていた。
私の周りの教授、友達、色々な人に聞いたがそんな人は存在しないという事になっていた。勿論マンションにも行ったが入居者は居なく、家主に聞いてもそんな人は入居していないということだった。私の中のイマジナリーフレンドだったのか、本当に消えてしまったのか、いまではもう分からない。

だけどー

今でも紅茶の匂いがすると私はあの夢か現か分からない口づけを思い出してしまう。

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