「マイナ保険証への一本化、本当に大丈夫?」 いまだに相次ぐ「マイナカード」トラブル 保険証としての利用率も低迷 被災地では役に立たず 専門家解説【前編】
■顔写真なしのマイナ保険証(マイナンバーカード)も
マイナンバーカードを保険証として使うことになり、乳児もマイナ保険証(マイナンバーカード)を持たなければいけなくなりました。ところが乳児は顔写真による認証が難しいため、「写真のないマイナ保険証(マイナンバーカード)」を発行して対応することになったのです。その結果、本人確認の出来るカードと出来ないカードの2種類が存在することになり、医療現場の事務プロセスは複雑になり、手間がかかることになりました。
■持ち歩きたくない情報を、持ち歩くものと一体化させる矛盾
現行の保険証は、月に1度、医療機関で確認をしてもらえばよいのですが、マイナ保険証は通院の度に必要です。本来、マイナンバーが記載されているマイナンバーカードは、持ち歩かない方が良いものです。それを持ち歩く必要がある保険証と一体化させることは、矛盾しています。
■目的が違うことを整理しきれていない
マイナ保険証の問題の1つとして、保険証とマイナンバーカードは目的が違うのに、それを整理しきれないまま一体化させようとしていることが挙げられます。 本来、保険証というのは「資格確認証」ですから、見た目で分からないものは使いにくいのです。しかし、今のマイナ保険証(マイナンバーカード)は、資格証明になっていません。とはいえ、マイナンバーカードの表面や裏面に様々な情報を書き込むことには無理があります。 1枚のカードでなんでも出来るように求めすぎている…、それが今の事態を招いていると思います。目的に応じて、カードを使い分ける方が、利便性が高いと思います。 デジタル分野では失敗はつきものです。重要なことは失敗を認めて、修正することです。しかし、2026年に導入する新しいマイナンバーカードの検討では、現行のマイナンバーカードにおける課題の総括を十分に行っておらず、新しいマイナンバーカードでも現行のマイナンバーカードの課題はそのまま残ることになりそうです。 (佐藤一郎教授)
「マイナ保険証はオンラインでしか利用できない…」よく考えたら当たり前の、しかし大変な問題だ。マイナ保険証への一本化は、どう考えても、患者にも医療機関へも負担が大きそうだ。しかし国は強く進めてきた。地域医療にしわ寄せが及ばないかも心配される。 なぜこのような状況になっているのか、「後編」では、弁護士で地方自治研究の専門家でもある、神奈川大学法学部・幸田雅治教授に詳しく聞く。
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