「愛。愛ですよ。ダグラーン。」
全身真っ黒な仮面の男が愛を説く。
「縺頑仂縺ョ逶ョ邇峨¥繧頑栢縺?※繝懊?繧、」
呪われた武具で体を変質させていながら生きている男が音の羅列を外界に出力した。
「愛とは与えられるものか、ですか?まだ、貴方には実感が薄いのかもしれませんね。」
しかし仮面の男はその音の意味を理解出来ていた。
狂った上に理解不能な言語を使っている男の言動を理解できる人間は極めて稀有としか言いようが無い。
「ダグラーン。愛とは一つではありません。愛は多様性の許容、様々な正と負の愛が存在しているのです。きっと、貴方もいつかわかる時が来る筈ですよ。」
どこか教え導くように言った仮面の男は幾つもの端子に接続された黒い棒を持っていた。
「繧ー繝ゥ繝ウ繧キ繝」繝ェ繧ェ繝?ヤ」
「これですか?私達は便宜上『カートリッジ』と呼称しているもの。」
「人間の可能性を拡張する黎明の光の一つです。これから貴方に移植するものですよ。」
「『カートリッジ』は【呪王】の保有者との融合が理論上、最大出力を発揮出来ます。それに加えて、あぁ、貴方のエンブリオも素晴らしい。故に最も『カートリッジ』を上手く扱えるのは恐らく貴方でしょう。」
ーーー大事に扱ってください。きっと、彼女も喜ぶでしょう。
・・・・・
【石化】した《竜王気》を切り離し、辛うじて【石化】していない《竜王気》で【呪王】に向けて射出。
ただの石となった以上、《竜王気》の物理耐性の特性は期待出来ないが、目眩し程度にはなる。
案の定素手で粉砕され、ダメージは与えられなかったがそれで十分。
【呪王】が投げた投擲斧を怨念の手で掴んで、遠くに投げ飛ばすことが出来たから。
投擲斧は空高く飛んで、視界から消えた。狙い通りに投擲斧を遠ざける事に成功。
《窮鼠精命》で防げない【石化】でも【呪王】が装備できなければ装備スキルは発動しない。多分。
遠隔でも発動は可能だったらお手上げだ。あれは切断面を発生させた者を問わず【石化】させる呪い。遠くに投げ飛ばしても状況は変化しない事になる。
ダメだったら戦闘中に破壊することも視野に入れる。
さっきは投擲斧を即座に投げ捨てざるを得ない状況だったから聖属性の浄化が出来なかったが、振るう者が居なくなった投擲斧なら【石化】されず、聖属性の浄化が有効になるので破壊は可能だ。
確認の為に地属性魔力で生成された金属塊を手刀で切断した。
ーーー切断面が発生した金属塊に【石化】は発動しなかった。
これで心置きなくボコボコに殴れるようになった訳だ。
「よぉ。お気に入りの玩具を勝手に捨てられた気分はどうだ?」
俺は狂人を挑発した。解除不能な【石化】能力を失った【呪王】は、もはや恐るるに足らず。
大砲だの弓だの色々イロモノを揃えてきたようだが、俺なら見てから回避は余裕の速度に過ぎない。
デンドロの飛び道具は素早い速度が無ければ、その速度を上回る前衛系超級職にとって当たりそうも無いただのオブジェクト。
むしろ同等以上のAGIで振われる近接武器の方が脅威度は上だ。単純に当たるから。
「繧ー繝ゥ繧ケ縺ォ繧ェ繧、繝ォ繧」
ーーーいつもの調子が出てきた俺を見て狂人は笑った。
そして。
黒い棒が目に見える形で拍動し始める。
これはただの前哨戦に過ぎないとでも言わんばかりに。
狂気の奥の手は大砲でも無く、必殺の弓でも無い。
人間を材料にした非人道的武装、『カートリッジ』。
効果は生物の『覚醒』を促すというシンプルかつ奥の手に相応しいものだった。
狂人が苦痛に堪えるように蹲った。生えている呪われた武具が血走り、生き物のように動き出す。
今にも爆発しそうな怪しい雰囲気。よく登場する迂闊に手を出したら周辺に被害が出る系の敵に似ている。
だから。
ーーー俺は狂人の首を不意打ちで刎ね飛ばした。腕や足もSTR任せに捥ぎ取る。
どうせ《ラスト・コマンド》と死亡しても継続して動き出す特典武具で全身を粉々にするまで死なないだろうが、俺は変身中の敵を容赦無く殺せる男。
達磨にしておけば勝手にあの狩人が殺すだろう。
ついでにと黒い棒も【誇獣闘輪】で破壊しておこうと振り回し。
ガッチリと掴まれた。
へ?
手足は捥いで達磨にした筈ーーー
ブンッと力任せに上空まで投げられる。雲を貫いて蒼い空まで。
飛行機の窓から見た事がある光景だ。
上昇エネルギーが尽きて自由落下を開始。耳元の風切り音が激しい。
STRが上がっている上に欠損の再生・・・?いや、俺を掴んでいたのは確か・・・
思考は中断され、《危機察知》が煩い程鳴り始めた。
・・・!このアラート、あの大砲か!?
ありえない。そんな距離で当てられる訳が無いだろ・・・!
雲の上、2万キロメートルだぞ!?
・・・・・
僅かに角度がずれただけで狙いが逸れる距離で上方向への砲撃。
専用のスキルの補助でも無い限り当てられる筈がない。それは人間技ではない。
しかし《危機察知》は明確に危険を示している。それが意味する事は。
ーーー【呪王】が確実に当てるという未来を保証していた。大砲の射程範囲内に収められている事も。
・・・『カートリッジ』による『覚醒』によって狂人の知覚領域は大幅に広がっていた。厚い雲に遮られて物理的に観測できない情報は、跳ね上がった聴覚嗅覚触覚など他の感覚器官で補完。
今やルンバの姿を脳内で鮮明に理解出来る。
軌道演算だけに集中した脳がゾーンに入った事によって、その照準は常に微調整を加え。
物質構成強制混合固定改変兵器【マテリアル・フィックスドミクス】の神話金属製の砲口は、物理的な視認不可能状態のルンバを正確に捉えていた。
対象の構成物質を周辺物質と混合、拘束する《幾何学的砲撃》の装備スキルが乗った砲弾発射まで、あと1秒。
・・・・・
ーーー風属性魔力の噴出で回避
ーーー揚力の為にアバターを操作して翼を生成
咄嗟に考えついた対応策を実行しても、一様に《危機察知》が止まない。
恐らく、照準が外れていない。どれだけ移動しても発射角を僅かに変えるだけで追随されている。
・・・そもそも狂人がどうやって俺を認識している?
なんらかのスキルだとは思うが、前提情報が少な過ぎる。対応が出来ーーー
認識!そうか。回避する必要はない。
奴に砲撃を
引き金を引いた音が戦場に響き渡る。
ーーー砲弾が発射された。
飛翔する砲弾は超音速で回避しようと抵抗する【死霊王】に命中。
《バッド・デトリオレーション》によって強化された呪いの改変兵器はその本領を発揮し、広い範囲の大気と【死霊王】の構成物質を混合し一時的な《破壊不能オブジェクト》に変貌させる。
ーーー『覚醒』した知覚領域はその様子をしっかりと認識していた。
・・・・・
【呪王】ジャクジャイン・ダグラーン
そして固定化された成れの果てが大地に墜落する。
勝利を確信しつつも落胆した様子の【呪王】が側に近づいて、【呪王】は体内からボロボロの妖刀を取り出し、躊躇う事なく破壊。
折れた刀身から呪いの濁流が溢れ出し、成れの果てを覆い隠す。
【憑依】【肉体剥奪】の呪怨系状態異常を発生させる妖刀の呪いは、成れの果てに吸い込まれて被憑依者のスキルの発動権限を掌握し、強制的に自害へ導く。
《ラスト・コマンド》と《死が一人を分かつまで》さえ封じれば殺せてしまえる。
規格外の不死者であろうとスキル頼りの不死。命綱が切られた瞬間に普通に死ぬ存在へと貶められ、容易く死に至る。
だから《幾何学的砲撃》の固定化が解除され、《ラスト・コマンド》さえ発動出来ずに光の塵へと還っていく。
ーーー期待外れ
そんな落胆と共にもう一人隠れている奴を殺しにいく。きっとただの作業になるだろう。
直接的な戦闘力は低いのだろう。知覚領域で認識している歩き方も狩人のものだが、だからこそ愉しめるはずもない。
どこか見覚えのある女を淡々と殺した。怯えずに死ぬ時まで見つめられていたが興味は無かった。
これはとある夢の物語。
あり得たかもしれない未来。
・・・・・
【死霊王】ルン・バ・ンル
俺は棒立ちになっている【呪王】を前に狩人と合流していた。
これはとある夢のVRMMOの物語。
我流写輪眼・・・今この瞬間、開眼・・・!!
子供の教育方針はどれにする?
- 蠱毒にぶち込む
- 普通の子供のように育てる
- 子供の為だけの揺籠()で育てる
- 放任主義。子供は勝手に育つ
- 帝王に愛など要らぬ!!