これはとある夢のVRMMOの物語。   作:イナモチ

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膝の上に置いたマウスパッド

「「俺はルンバだ」」

 

同じ顔をした人間が1秒違わず同時に言った。

 

「「お前もルンバだ」」

 

同じ顔をした人間が1秒違わず同時に言った。

 

「「「俺達はルンバだ」」」

 

同じ顔をした人間が1秒違わず同時に言った。

 

「セルフゲシュタルト崩壊しそうな光景じゃの。くれぐれも踏み外すではないぞ?」

 

カーソンが趣味の悪い暇つぶしの感想に対し、呆れた表情でコメントした。

 

同時に複数のアバターを操作する為の練習も兼ねているのだが、カーソンからは不評だ。

 

ぶっちゃけ自分は自分である限り自分であり続けると決めているのだから、自分が何なのか見失う事は無いのだが。

 

一寸の違わずコピーされたならそれは俺だし、少佐の言葉を借りるなら

 

ーーーたとえガラス瓶の培養液の中に浮かぶ脳髄が俺の全てだとしても きっと巨大な電算機の記憶回路が俺の全てだったとしても 俺は"俺"だ。

 

今さら材料や工程の差異如きで既に出力されて決定された結果をどうしたら影響させられるというのか。

 

答えは“何も変わらん”だ。

 

それはそうあれかしと作られたホムンクルス、クローンや蘇生という名の別存在に変化してもという事であり、自我の連続性や種族、出自は俺である事に影響しない。

 

アバターの俺も現実の俺も実際には違う存在だったとしてもそれらは俺だ。俺が俺であるという意志を持つ限り俺なのだ。他の誰にもなり得ない。

 

極論、意志という曖昧なものこそ俺という存在だ。だからカーソンも俺だと思えばカーソンでは無く俺だ。

 

「・・・そうじゃな。まぁ、主様がどうなろうとついていくのだから、踏み外してもそう変わらんか。」

 

主様が主様であり続けるのであればな。とカーソンは呟いた。

 

異常な光景を見ていた長老が恐る恐る疑問を呈した。

 

『ど、どれがルンバ殿なのでもる?』

 

「「「「全員俺だ」」」そうじゃの。」

 

長老は明らかにドン引きした様子で『そ、そうですか・・・もるるっ。』と言っていた。

 

まぁ、幻術でも無く物理的に増えているからな。前来た時は【死霊王】でも無かった上、アンデッドなのに聖属性漂わせているし。

 

俺自身がかなり異常な状態である事は自覚しているとも。

 

『・・・ま、まぁそれは置いておくとして・・・もる。』

 

長老が座り直した。

 

『神前決闘の契約に従い、此方から代表者を派遣するもる。些か決めるのに時間がかかりましたが、無事に住人の総意で決定されましたもる。』

 

野生のレジェンダリアンの血で血を洗う性癖戦争は終結した。

 

流れ弾でお昼寝を邪魔されてキレた神獣様が半☆殺☆しに処した全員が【契約書】に連名した上、公平に選ばれたそうな。

 

デブい招き猫みたいな姿なのに野生のレジェンダリアン達を鎮圧して見せた神獣様は、レジェンダリアトップクラスの戦闘力を誇る神話級UBMだ。殆どイレギュラーのようなものらしいが。

 

神獣様は昔から隠れ里の住人と共生関係にあり、全ての世話を任せる代わりに脅威を排除する契約を結んでいる。普段は◯ャンコ先生だが、戦闘スタイルはかなりエグい。

 

干渉能力の支配によって一方的に殺人猫パンチを繰り出してくる。ハッキリ言って糞である。攻撃も防御もすり抜けた上、神獣の攻撃は防御スキルや耐性スキルも貫通してくる。

 

魔法だろうが物理だろうが空間操作だろうが力任せに突破するストロングスタイル。

 

無敵化に肉体限界突破していた【アガナースタ】の同類だ。神獣様の方が悪質な方向に特化しているが。

 

こんなん、どないせぇっちゅうねん。というのが感想である。コイツが弱いうちに殺さなかった奴らは何をしていたというのか。

 

きっと全員揃って目が節穴だ。はよ殺しておけば良いものを。

 

勿論隠れ里の守り主と敵対関係になる予定は無い。

 

俺はただ、当たり前のように美女に膝枕されているケダモノに天罰が起きないかと切実に願っているだけだ。

 

なんか顔がイヤらしいし。しきりにモゾモゾしてるのはなんなの?明らかにナニしてるよね?オネーサン顔赤いですが風邪じゃ無いですよね?現在進行形でヤッてますよね?

 

隣で知らない野生のレジェンダリアンがハァハァしていた。彼はNTR趣味の変態だった。

 

あのセクハラ猫め、ぶっ殺してやる!/今すぐその場所代われ!

 

カーソンが無言で俺の頭をガッと掴んで膝に乗せた。オイオイ、嫉妬か?可愛いものよ。

 

だが残念だったな。

 

とても・・・ボリュームが物足りないです・・・

 

セクハラ猫に対する嫉妬に狂っていた俺はスンッとなった。悲しかったのだ。カーソンのあまりの発育の無さに。

 

どこかの詩人が背負った母親のあまりの軽さに涙したように、俺はカーソンのあまりのまな板っぷりに涙した。

 

哀れなり、カーソン。お前というやつは上級エンブリオになっても体は不毛の大地だった。

 

膝枕されても大人の女性と違って肉付きが良くないから骨を感じる。

 

とても・・・痛いです・・・

 

無言でカーソンがカーソン専用のアバターの造形を変更した。

 

俺達は融合時の姿を自在に変える事が出来る。作られたアバターも同様だ。

 

胸は大きく、膝は柔らかく、髪を伸ばす。俺の隣にいたカーソンは俺の性癖を知り尽くしている。

 

しかし感触が美女の膝枕になっても俺は涙が止まらなかった。

 

こんなものは全身に盛る高性能な肉襦袢に過ぎない。膝の上に置いた◯っぱいマウスパッドに頭を乗せるのと何が違うというのか。残酷な現実は何も変わりはしない。

 

カーソンは大人の女性に対して永遠にコンプレックスを抱える事になるだろう・・・

 

◯っぱいマウスパッドに膝枕されている俺は泣きながら笑って言った。心からの言葉だった。

 

「俺はペッタンコでもカーソンは可愛いと思うぞ・・・!!」

 

他の俺達は膝枕されている俺を生贄にその場から逃走を開始。状況を俯瞰的に見る事でいつものパターンに入った事を察した。

 

カーソンの暴力衝動を予測できた初のケースだ。ハッキリ言って快挙だった。

 

しかし本体である俺は無表情かつ無言になった大人カーソンに顔が膨れ上がるまで本気で殴られた。頭がガッチリホールドされているせいで逃げられなかった。柔らかい。天国と地獄とはこの事かと思った。

 

いつものパターンを察せても本体が無事じゃないとはどういう事なのか。

 

助けろ。分身のお前らが身を挺して俺を助けるんだよ!お前らは俺で俺を助けるのは当然じゃ無かったのか?いつもの自分に対する自己弁護と自己愛はどこに行った!?

 

「「お前が原因であって俺たちには責は一切無い筈だ。甘んじて受け入れろ。幸運を祈る。以上。」」

 

同じ顔をしたアバター達から意思共有を通して、同時に自己愛100%の自己弁護という名の言い訳が飛んできた。

 

俺も同じ状況だったら見捨てていたがそれはそれ。全く、使えねぇ奴らだぜ・・・

 

ボコボコに嬲られてグッタリとした俺は人気の無いところまでカーソンに引き摺られていった。

 

これはとある夢のVRMMOの物語。

蛙の子は蛙。鳶が鷹を産む事は無かった。

子供の教育方針はどれにする?

  • 蠱毒にぶち込む
  • 普通の子供のように育てる
  • 子供の為だけの揺籠()で育てる
  • 放任主義。子供は勝手に育つ
  • 帝王に愛など要らぬ!!

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