暗殺者を裏路地に引き込んで説得(物理)し、首輪を掛けていく。
【死霊王】転職が人伝に伝わった結果、【大死霊】からの刺客が増えてきたので、ついでに刺客をスカウト(物理)して回っている。
何故急に捕縛に転向したかというと、組織の人材に雑用や実行部隊が居なかった事に起因する。
我が社には専門の諜報部が無く、研究員の兼任という形で組織を動かしているので、そろそろ社長として一働きしようかと思い立った次第だ。
スカウトの具体的な要項は裏稼業の住人のスカウトであり、殺されても文句は言えない弱みを持っている人物。つまり鹵獲された暗殺者や刺客達である。
コイツらは俺が【霊公形代】の《世界改創》で脳内にダイレクトに忠誠心の刷り込みと洗脳教育を行なっているので、本拠地がバレないように分散させてカルディナの本部に送りつける予定になっている。
一気に大人数が移動したらかなり目立つからだ。それが後ろ暗い集団であれば尚更に。統計的にはバレるかもしれないが、一々全体を把握できる情報収集能力が規格外の組織とはフィクションの存在だ。
デンドロの超級職やエンブリオなら可能かもしれないが、総数が曖昧な裏の住人を把握しようとする物好きはいないだろう。
因みに俺が掛けた首輪は音声と位置情報の発信機と小型爆弾、特殊な香料が仕込まれている。
特殊な香料は、もう一つの香料を合わせて嗅ぐ事で生物の鼻で匂いを辿れるようになる優れものであり、部外者がこの匂いを辿るようなハプニングはありえない。
もし俺の洗脳教育を上回って逃亡したとして、首輪の発信機と爆弾を解除しても匂いで辿れる。特殊な香料は念入りに洗っても落ちにくいので隠密に優れた者でさえ追跡が容易になるのだ。
目に見える形で解決した者ほど欺き易い。それ以上に思考の発展の余地がなくなるから。
実際は目に見えないマーカーの方が本命だから、首輪が解除されても問題はないという訳だな。
それに、俺の手から仮にも逃げ遂せた人材など逃す筈がない。
そいつはウチに永久就職確定だ。昇進させても良い。裁量権を与えるかどうかは俺が判断するが、待遇は確実に向上させても良いだろう。
そんな訳で首輪は部下候補者の篩い分けの側面も兼ねている。一種のテストとも言えるな。
自分で言っておいてなんだが、洗脳から始まるテストとは一体・・・?
まぁ、洗脳から脱するほどに精神力を持っている人材がいるかどうかわからないが、念を入れて備えるに越した事はない。
ーーーそれと俺の暗殺を依頼した【大死霊】達は一度締める。
洗脳で正体が露呈した依頼主は一度OHANASIして回る事になるだろう。
【大死霊】の精神汚染で狂った屑だったら容赦なく俺の経験値にする。というか殆どがこのタイプだと予想している。
ティアンは経験値効率が最高だから、治安も向上するついでに俺の【死霊王】のレベル上げも出来るという一挙両得である。
現時点で送られてきた暗殺者の数から何人かの【大死霊】を消す事が確定しているが、俺に良心を抱かせない奴等の方に原因があると思った。まる。
・・・・・
おんどれぁ!
そして吐き出させた情報にあった依頼主の一人である【大死霊】の工房の扉を蹴り壊してカチコミをかける。
「貴様ァ!誰の工房に無断d」
ホーリー男女平等パンチ!!
天使の力が込められた聖なる鉄拳は如何にも邪悪なネクロマンサーの頬を打ち砕いた。
何か言っていたが邪悪な死人に口なし。喋るまでもなくコイツは工房の禍々しさからアウト判定の外道なので問題はない。
明らかに違法な痛々しい奴隷達やフックで室内に吊るされた人の死体。ギルティである。
天誅!天誅!天誅!天誅!
倒れ込んだ隙を逃さず馬乗りになって、邪悪な不死者を天に代わって誅した事で【死霊王】のレベルが上がった。やはりティアンの上級職は経験値が美味しい。
フゥ。今日も善行で良い汗かいたぜ・・・
不死者の成れの果てである灰の山の上で額に浮かんだ爽やかな汗を拭ってから、被害者である奴隷達に笑いかける。
突入してきた不審者によって主人が殺されるという急激な展開にビクッと震える奴隷達に向かって、俺はバッ、バッ、バッと体全体を使った力強いジェスチャーで自分は邪悪に対して義憤に燃える熱血漢であり、君達を悪いようにはしない事を強調した・・・!
もっと怖がられた。
(´・ω・`)?解せぬ・・・
通報で連れてきた官憲に違法奴隷達の保護を任せ、行き掛けの駄賃代わりに俺は工房の財産をごっそり貰っていった。幾つか《死霊術》の資料もあったのでそれも貰った。
不当な扱いを受けていただろう奴隷達の為に、ある程度金銭を残してあるので大丈夫だろう。
レベルも上がる、金も貰える、善行を積める。・・・全く、悪人狩りは最高だぜ!
アイツら他人が割って良い貯金箱も同然だからな。勧善懲悪、いい時代になったものだ。
俺は新たなる貯金箱の居場所にその足で颯爽と向かって行った。
俺の貯金箱行脚は終わらない・・・
・・・・・
幾つかの貯金箱の儚くも無い命が割られ、俺の手元にはかなりの金銭と《死霊術》の研究資料が残った。
遺った研究資料を見ると、狂った【大死霊】程普通では無い視点から研究したりしているので、俺よりも《死霊術》が上手かった奴などザラにいた。その全てが暴力で捩じ伏せられた訳だが。
俺はどちらかというと小細工よりも殴り飛ばす方が得意というね。結構【死霊王】としては珍しいタイプではなかろうか。
まぁ、下手な超級職よりも前衛を張れるだけの物理ステータスがある訳だから、過去に同じような【死霊王】が居てもおかしくは無いが。
一連の出来事が俺にとって得しかない辺り、最近ツキがいいようだ。最終奥義という見るからに凄そうなスキルもレベルを上げてたら解放された。
今回の貯金箱行脚によって投資(賭)の軍資金に不足は無いが、俺としてはもう少し楽に稼いでおきたい。これらは所属人数が増える組織の運用資金に回して更なる利鞘を上げていくべきか・・・
賭博はいつでも出来る。しかし組織を拡大させるなら、今しかない。
・・・やはりカルディナの本部に送金するか。
この辺りで研究員達の好感度稼ぎをするべきだと俺の明晰な灰色頭脳が言っている。
態度は謝礼ではなく金銭の額で決まる。
すなわち、人の心をガッチリと掴むのは人心掌握の王道、伝家の宝刀・札束ビンタである。
金は信用を生む。コイツなら大丈夫という、安心こそ人間を動かす原動力。
脆い組織というのは信用の低さで崩壊する。だからこそ、組織の長は部下に安心を提供する人物でなくてはならない。
それは財力であり、カリスマであり、評価など様々だが、俺の場合は俺の能力と将来的な展望、豊富な財源によって部下達との信用関係が結ばれている訳だ。
俺が上、部下が下という明確な上下関係があるものの、雇用関係を抜きに俺達は対等である事実が重要になってくる。
だから組織では今の立場など関係無しに有能な奴を引き上げて無能を切り捨てる。それは社長の俺でさえ例外では無い。
徹底した実力主義。
だから今まで俺を押し退けてトップに居座ろうとしてきた部下など何人もいた。今も俺がトップに居座って甘い汁を吸えている辺りお察しの末路を迎えたが。
そいつらはトップになれるだけの器量はあったが、俺はもっと上だった。
それは単純な事実で、順当な結果。だから俺が勝った。
俺達は利益を求めて自ら裏道に入った。それは表向き友好的で寛容な関係であっても、裏道の掟通りお互いに蹴り落とし蹴り落とされる関係性に変わりない。
俺達は敵であり、味方であり、互いに信用しあっている。
だから今回の送金は、いつか敵対するまで俺達は仲間なので日頃から仲良くしておこうという打算だ。
取り敢えず敵対者は粗方始末したし、今日も贔屓のキャバ(キャバクラ)に行くとしますかね。
俺は始末した最後の【大死霊】の工房の残骸の上で座り込んでいた。ガチガチに準備していた【大死霊】が配置したアンデットの群れが多かったので工房ごと潰したのだ。
まぁ、暗殺の失敗を悟っても待ち構えていた辺り結構自信があったんだろうが、建物ごと潰されると想定しなかった事が敗因だろうな。
これは【死霊術師】系統の戦い方ではなく、土石を操る【黒土術師】のような質量で押す戦い方だから仕方ないのかもしれない。俺にはカーソンがいるから生身で実現出来たが。
俺に暗殺を依頼してきた【大死霊】達は事前調査不足では無いだろうかというのが俺の所感だ。
あまりにも呆気なさすぎる。アンデットを蹴散らし、状態異常魔法をものともせず、ステータスでは完璧に上回っているので、今回の下手人である【大死霊】達に最初から勝ち目が無かっただろうに。
まぁ精神汚染された狂人の思考は理解出来るはずがないか。
既に死んだ奴らの事よりも、今日はキャバの人気投票集計の最終日。行かぬ理由が無い。
俺の最近のブームはカジノで会った給仕のようなミステリアスな美女だった。
彼女と似た嬢とは結構良い線いっていると思うのだ。きっとカーソンを交えた3Pも夢ではない。
残骸の山から飛び降り、俺は特注の一張羅をバサッと肩にかけて夜の歓楽街に消えていった・・・
これはとある夢のVRMMOの物語。
今日は奮発してシャンパンタワー。レジェンダリアの何処かではキャバクラを存分に楽しんでいる【死霊王】の姿があった・・・
子供の教育方針はどれにする?
- 蠱毒にぶち込む
- 普通の子供のように育てる
- 子供の為だけの揺籠()で育てる
- 放任主義。子供は勝手に育つ
- 帝王に愛など要らぬ!!