これはとある夢のVRMMOの物語。   作:イナモチ

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血塗れの君

黄河やカルディナのカジノも良いものだったが、レジェンダリアのカジノは独特な印象だ。

 

魔法を使ったルーレットやポーカーはレジェンダリアの魔法技術によるもので、ディーラーが手を翳しただけで回り始めたり、シャッフルする光景はそれだけでもアニメーションのようで見ていて飽きない。

 

レジェンダリアの亜人種の給仕も妖精や長命種など綺麗どころばかりで、俺的には蝙蝠系獣人種らしき美女が一推しだ。ミステリアスな目隠しがとてもセクシーで、是非とも彼女とはベットの上で話し合いたい。特に深い意味はない。

 

ただ、俺はミステリアスな目隠しが性癖だったのかという新鮮な発見があった。

 

空中遊戯場と呼ばれる壮観な浮遊魔法建築物が屋内に収まっている程の大規模カジノはナイトプールやバー、宿泊施設など各設備が充実していて、それだけでも満足する至れり尽せりのクオリティーであり、伊達に凝り性の長命種のオーナーが0から計画しただけの事がある。

 

そんな施設に金がねぇと言っていた俺がいるのは勿論、コネありきである。

 

最近オンリーワンの超級職である【死霊王】に就いて〈蜃気楼〉内での俺の重要度が上がったようで、様々な【死霊王】転職祝いの品が贈られてきた。

 

その中に俺が滞在しているレジェンダリアのカジノのVIP優待権を保証するバッジが贈られてきたというのが事の顛末である。

 

ナイトプールの傍らでサングラスを掛けて水着美女を鑑賞しながらグラスを傾ける至福の時間はデンドロ歴でもピークに到達しており、俺は心がぴょんぴょんするんじゃ〜と放蕩の限りを尽くしていた。

 

娼館の美女のような思わず唾を飲むような色気も良いが、其ればかりでは胃もたれして疲れてしまう。

 

偶には健康的な色気で目を休めるのも大事なので、俺はプールを楽しむ女性客の水を弾くハリのある肌を見て頬を緩めた・・・

 

うむ。レジェンダリアの亜人種も中々どうして・・・

 

良き哉、良き哉。絶景哉。

 

「のぅ、主様ぁ・・・随分と機嫌が良いではないか・・・・」

 

ぶすっと膨れたカーソンがじとっとした視線を投げかけてきている。さっきまでナイトプールで年相応な小娘のように楽しそうな様子で泳いでいたというのに、今はご機嫌斜めに。

 

「色情魔・・・」

 

オネーサン方にマスターである俺が性的な視線を送っているというのが気に入らないようだ。男の本能だから仕方がないと思うのだが。

 

だがな、カーソン。君のような女性を目で追うようなマスターはロリコンだという事だぜ。それで良いのか?性的な目で見てくる変態は紋章に引き篭もる程に忌避していただろうに。

 

「じゃがのぅ、他の女に気を取られるというのもワシとて色々と複雑なのだぞ。乙女心を解さんか・・・馬鹿者。」

 

つまり・・・俺にロリコンになれ、と・・・!?

 

俺はあまりにも驚愕的な言葉に頭の中に雷が走るかの様な戦慄を覚えた。親類の少女から「将来は結婚する」という言葉よりも生々しい要求だ。

 

「私を性的に見て!」など幼い少女が言っている光景を見れば一発で警官を呼ばれてしまう。間違いなく少女ではなく相手が警官のお世話になる。

 

しかし俺は既にカーソンと何回か寝たし3Pもした。俺はロリコン・・・?

 

だが、俺はカーソンよりもオネーサン方に目を奪われていたことも事実。

 

◯◯才以上の女はBBAという世の中の女性に喧嘩を吹っかける様な輩では無いという事だ。だが、若すぎる年からBBA呼ばわりしない俺もマジモンのBBAは勘弁願いたいがね。

 

では俺はロリコンなのか、と問われると答え辛い。実年齢はともかくとして体は二次性徴期を経験しているぐらいのカーソンは、ロリだな・・・ロリかぁ・・・。

 

そんな実年齢と肉体年齢共にロリ判定に手を出した俺はやはりロリコンだ。

 

「カーソン。俺はロリコンなのかも知れない。」

 

パァン!(甲高い破裂音)

 

俺のロリコン宣言を聞いて顔を真っ赤にしたカーソンに頬をビンタされた。

 

ビンタされた俺の脳内に強烈な衝撃が走った。かなり物理的に。

 

天使という人外のSTRによって俺の首が玩具のように回転し【頚椎複雑骨折】と叩かれた頬が【頭蓋骨粉砕骨折】を発症。【脳震盪】で頭がグワングワンする・・・

 

幸い見ていた客は居ないようで騒ぎにならなかったが、幾らVIPでも出禁にされかねないギリギリだった。

 

しかし解せない。お前が自分を性的な目で見てくれって言ったんだろうに。

 

カーソンにビンタの詳しい理由を聞こうとすると赤面した顔で誤魔化されてしまった。

 

why?なんでだ・・・?分からない。カーソンが分からないぞ・・・

 

俺は危機感を覚えた。やはりカーソンをより深く知らなければならない。

 

つい最近相互の深い信頼を感じさせる良い感じの会話をしていたというのに、その相方を全く知りませんでしたでは俺でもかなり不味いと分かる。

 

しかも、もうデンドロ内部で三年以上共にいるというのに。その時間内では力を合わせて死線を潜り抜けたことすらある。

 

ではどうするか。俺だけを読み取る読心を自然に使えるカーソン相手にカーソンの調査は無謀だ。

 

マルチタスクで読心を誤魔化すこともできなくも無いのだが、それはカーソンとの約束で出来ない。【契約書】では約束していないが、俺の信用に関わる。

 

【グデアメール】は戦闘マシーンに精神改造済みなので相談相手には適さない。普通の常識に擬態する事は出来るが、こういった感覚的で感情的な話題は既に機械染みた【グデアメール】には理解できないだろう。

 

【ヘイワン】はこういう話題を振っても一向に答えようとしないので除外。長年の観測経験の大部分を消去したとはいえ、お前がこの面子で最年長だろうが・・・!

 

という訳で自我を持つメンバーは全滅だ。改造前の【グデアメール】なら辛うじて相談相手になったかも知れないが。

 

ーーーカーソンの性的嗜好は謎に包まれている。

 

・何故かマスターである俺を殺そうとする※黄河の秘匿死刑以降か?

・殺害時《殺気感知》が反応しない※殺気が無い?《危機察知》には反応

・興奮して殺そうとする時と殺しても興奮しない時がある

・殺害における異常性は俺に対してのみ

・最近【死霊王】の《ネクロボディ》の使用頻度が酷い

・段々とエスカレートしている傾向を見せている

 

大抵はデスペナルティになるまで追い詰めるのだが、一歩手前で止めるケースもある。但し普通に殺されるよりも俺の体が格段に酷い状態になった。

 

具体的には関節という関節を外し、全身の骨を綺麗に折り、眼球は抉られ、腹を裂いて抜き取られたモツは食癖通り小さな口で端から喰われた。

 

手と足の全てが出来損ないの人形のようになった俺は死の間際で生存し、長い夜を越えることになる。

 

頬を赤い血化粧で染めながら「おんしは、此処が良いのかの・・・?」と不安気に言いながら体内を俺の血に染まった手で弄られるのは初夜を経験する少女の様で正直興奮したが、ストックホルム症候群かもしれない。

 

しかし、とうとう人肉嗜好に目覚めた・・・というより俺はアンデットなので正しくは屍肉嗜好なのだがカーソンが天使らしからぬ食癖に目覚めてしまった。

 

俺の肉を切り分けずに小さな口で食べようとする姿に父性を抱いてしまった俺は業が深い。文字通り血肉を分け与える状況に倒錯的な感情を抱いたのだ。やはりストックホr

 

被害者が俺であった事は不幸中の幸いと云うべきだが、俺のモツを喰われたあたりなんかは【死霊王】じゃなきゃ以下略である。ついでと言わんばかりにハツ(心臓)も喰われた。

 

カーソン曰く「他の生物のハツよりも嚥下するまで非常にコリコリしていて噛み心地が良い」らしい。俺のは死んで止まっている筈なのだが。

 

カーソン特有の夜の営みは宿のツインベッドが惨殺殺人現場のようになったので後始末が大変だった。もしカーソンが俺をうっかりデスペナルティにしていたら宿の人が仰天する羽目になっていただろう。誰も片付ける人が居ないわけだからな。

 

そして徐々に生きたまま解体され喰われる惨状の精神的な耐性がついてきたあたり、俺もかなりヤバい。

 

俺を殺そうとする度に性的興奮を見せるカーソンがエロくて今まで自覚症状は無かったが、度し難い性癖を持つレジェンダリアンのようになっている気がする。

 

訂正。既になっていた。

 

俺はカーソンとどうなるのか決めるなければならない。

 

関係性の正常化を目指すか、異常性を認めて受け入れるか、共に深い場所まで沈むか。

 

どの道も一寸先が見えない無明であり、人間関係の沼の闇を感じた。

 

この感じは・・・懐かしいな。

 

このような体験をいつか経験した時があった。そんな気がした。

 

嗚呼、そうか。ジーエンだ。

 

俺はホモなのかと懊悩していた事があった。結局は答えを出せずに、目の前を通り過ぎたむさいおっさんによってホモなのかという思考を中止するなんて事もあった。

 

今でも思い返すと中性美人とゴツゴツのおっさんという激しい落差に吐き気すら催す。

 

しかしジーエンと別れた直後は世界がピンクでふわふわしているような感覚だった。これは・・・恋なのだろうか。

 

だったら初恋は男のジーエンという事になるが、これはカーソンには黙っておk

 

ジュワッと何かが焼ける音とメキャっと硬質な物が握り潰されたような音がした。

 

【頭部損壊】【意識途絶】【浄化弱体】【再生停止】

 

《ラスト・コマンド》

 

・・・・・。

 

【《ラスト・コマンド》効果時間終了】

【蘇生可能時間経過】

【デスペナルティ:ログイン制限24h】

 

これはとある夢のVRMMOの物語。

24時間同調者思考強制検閲機構【カーソン】

子供の教育方針はどれにする?

  • 蠱毒にぶち込む
  • 普通の子供のように育てる
  • 子供の為だけの揺籠()で育てる
  • 放任主義。子供は勝手に育つ
  • 帝王に愛など要らぬ!!

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