これはとある夢のVRMMOの物語。   作:イナモチ

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果てなき狂奔

ふむ。この球体は何に使うものなのだ?

 

【四源竜素 ピリア=ネイコス】として特典化したのは肉肉しいボール。ミートボールだ。

 

だがこのミートボールの風上にも置けない邪悪なミートボールが尋常な食用に適するとは思えない。

 

カーソンか俺か【もかでぃあ】か。或いは【グデアメール】か。誰にアジャストしたかすら分からないとは。今までの特典とはまた違った感じだ。

 

【四源竜素 ピリア=ネイコス】

〈古代伝説級武具〉

生者と死者の怨念から生まれた未知の生命体の概念を具現化した至宝。全属性を司る虹彩の竜から簒奪した肉竜の力を特定の対象に与える。

 

※ 譲渡売却不可アイテム・消費アイテム

 

としか書いていないのである。保有スキルも無い。取り敢えず全員が触ってみたものの、反応を示すものは一人もいなかった。

 

あとは・・・生物かどうかすら怪しいが・・・

 

机の上の【禍遷忌匣】に餌の小動物代わりに与えてみる。

 

流石にこれは無いんじゃあ・・・?と思いきや【禍遷忌匣】がいつものように吸い込んだので全員が驚いた。

 

ぺっと吐き出すかもしれないと待ってみるが、表面的な変化は無く。

 

【禍遷忌匣】を拾ってアイテム画面を開くと姿形はそのままに、その全てにおいて変革が起きていた。

 

まず、名前が【竜禍喰匣 ピリア=ネイコス】に変化して特典武具と同じように自動修復機能が付与された。

 

【四源竜素】がまさかの既存アイテムの特典化だったとは思わなかった。こんなケースは俺の知る限り初めてだったしな。

 

そして保有スキルが怨念のMP変換スキルである《怨念動力基幹設計》が《邪竜魔導器官》に変化というか進化?し、変換したMPに属性が付与出来るようになった。

 

俺が怨念や聖属性エネルギーを《竜王気》と混ぜ合わせたように、他属性の混成も可能になったのだ。

 

とは言っても火属性のような俺が耐性を持っていない属性を纏うと自身にダメージを負う。だから聖属性か呪怨の混成がメインであることに変化は無い。

 

あとは地属性か風属性、海属性のような纏ってもダメージを受けない属性の混成だな。恐らく大半が防御寄りの混成結果になるだろう。

 

他にも属性を付与したMPで肉塊のやっていたブレスのような魔力放出が出来るようになった。何故か【死霊王】の肉体が魔力放出の発動のキーになっていたが。

 

指を突っ込んで【竜禍喰匣】に喰わせるか、俺が【竜禍喰匣】に血を垂らせば発動できるようだ。

 

そして肉塊が最期に使った全属性収束ブレスである《結離死源現象・エンペドクレス》の発動も膨大な怨念を消費する事で可能になる。

 

但し、一回使ったら使用者を反動に巻き込んで自壊する。

 

自壊と言ってもロストではないのだが、自動修復機能の修復期間が3倍に伸びる。また、この反動で使用者が死亡した場合もデスペナルティの期間が3倍化する。

 

死亡しなくても反動で発生したダメージの回復には普段の3倍のリソースが必要になるという呪い付きだ。

 

あと、以前よりあからさまに意志を主張するようになった。

 

アンデット特有の感覚だと匣からは生命の気配はないのだが、黒い匣は餌を選り好みするようになったのである。

 

鼠の死体をあげても喰わなくなり、亜竜のドロップ肉をあげたら勢いよく吸い込んだ。以前より明らかに美食嗜好になっているようだ。贅沢な奴め。

 

しかし普段使い出来る直接的な攻撃手段が増えたのは嬉しい。

 

俺は攻撃手段が怨念と物理寄りになっていたので、今回のような相性が悪い手合いに対する有効打が無いことを実感した。そして有効打が無い戦闘は酷く徒労感がある。

 

特に再生力が高いもの同士の戦闘ほど虚しいものは無い。戦闘がグダっていたら俺でもキツい。特に負けるか勝つかのラリーを繰り返す今回のようなケースは。

 

だから今回の結末で俺と同じ個人生存型の戦闘が若干トラウマになった。

 

そして俺は個人生存型は絶対に戦わずに一通りの拘束を試みてから、ダメだったら容赦なく【グデアメール】に押し付けることを決意した・・・

 

延々と経験値ノルマが増える悪循環じみた耐久狩りが染み付いている【グデアメール】なら延々と足止めを引き受けてくれるだろう。

 

【グデアメール】の《殺戮戦禍》というのはカラカラと回るハムスターの玩具のようなスキルだ。

 

全力で走って速度を上げても終わりが無い。しかし走る速度を上げるほど足場は後ろに流れていく。延々と走り続ける事を強要し、走り続ける事に保有者に適応させるスキル。

 

経験値狩りの度に【グデアメール】はどんどん人外染みていく。日常の動きが精密機械の様に最適化され、感情は冷たい鋼鉄の理性で統制された。

 

俺の戦力の理想像は【グデアメール】のような戦闘マシーンだ。感情を捨て理性のみで動き、指令には絶対服従。生前のように欲をかいて足元を掬われることはなく、蓄積した経験の対応力が高い。

 

削ぎ落とし、研磨し、【グデアメール】の眼である炎は、透明な透き通った炎に染まっていく。アンデットでありながら一抹の怨念はなく、人型でありながら人間味が消えた。

 

騎士の戦い方は遠くの彼方へ。今の【グデアメール】は四足走行での獣染みた戦闘ですら躊躇わない。

 

常に最適解を更新する怪物。俺のパーフェクトソルジャー。

 

いつか修羅の国に行こう。きっと今より俺好みに「染まっていく」予感がある。

 

そして俺と同じステージに至った【グデアメール】と戦ったらどうなるのか?俺の闘争心は遠い先を見据えている。

 

【グデアメール】は【アガナースタ】のような好敵手になり得る。それだけのポテンシャルがある。生前に一時は融合した事がある俺はそれを事実として知っていた。

 

何度でも甦る不死者に死の断絶は無い。マスターのように何度も死んで強くなり続ける。

 

その時が来るまで俺は【グデアメール】を無限の闘争に放り込むだろう。

 

いつか俺を殺し得る存在に成り果て、至らせる為に。

 

ーーー【グデアメール】を見る俺には、あの1匹の獣の「透き通った眼」が焼き付いていた。

 

これはとある夢のVRMMOの物語。

男は誇り高き獣の眼に魅入られた。使命を抱えたかつての亡霊騎士は怪物として壊れていく。

 

男は偽りの獣を打倒して【死霊王】へと至り、アンデットを超克した存在に成り果てた。

 

不死者の天使はそれを微笑ましい光景を見るような目で見守っていた。

 

【グデアメール】の試練は終わらない。

子供の教育方針はどれにする?

  • 蠱毒にぶち込む
  • 普通の子供のように育てる
  • 子供の為だけの揺籠()で育てる
  • 放任主義。子供は勝手に育つ
  • 帝王に愛など要らぬ!!

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