俺の給料が年間半額サービスになった(泣)
経理部のやつらめ・・・俺が研究室の予算を着服していたことに気づいていたのか・・・!
隠蔽工作はバッチリだった。俺の金の動きを見張られたか。
やはりアイツらは油断ならない。社長を信じる心が最初っから無ければ見張ろうなどと考えもしない筈だ。人を信じる心を失った怪物達・・・それがアイツらだ。
だがまぁ味方であるならば背中を気にする必要があるが、心強い。それだけ有能であり、油断も隙もないという事だからだ。
しかも味方も邪魔であれば平然と切り捨てる冷酷無比な判断を瞬時に取ることができる。現にスパイとして買収された裏切り者はこちらが用意した二重スパイと入れ替わって敵対者の情報を抜き取っている。
俺が未だにバリバリの禁制品の密造で捕まらないのは〈蜃気楼〉の伝手とアイツらの政治的手腕によるもの。アイツらが考案した販売末端の切り離し構造の構築は見事なものだ。
捜査の気配を末端の接触で察知すると途中で途切れるようにできている。監視と補佐を兼ねて潜伏させた仕事人が売人を消す事で辿られるのを防ぐ仕組みだ。
それに途中で末端と途切れてもまた別の枝を形成する手順も出来ている。
多少癖が強い面子が集まったが、皆総じて利に聡い。裏道こそが最もリターンが大きいことを理解している。
そして俺の不正を見破ったのもアイツらの手腕によるものだった。結果的に自分の首を絞める形になったとも言える。
ちょっと投資の軍資金が足りなかったから借りたが、まだペイ出来ていないだけだと言うのに。投資とは、ギャンブルのことだ。
最近はパチンコがアツい。あと少し、あと少しでジャックポットだったんだ・・・!!
まぁ仕方がない。社長でありながら給料半減というのは甘んじて受け入れよう。投資の見積もりが甘かった。ただそれだけの事実なのだから。次は俺が勝つぜ。
一頻り再戦を誓ってから俺は【設計王】にパイルバンカーの作製を依頼しに行った。信頼できる職人の伝手が皇国になかったので断念したが、【設計王】なら作れるはずだ。
パイルバンカー。その響きだけで心が震えるぜ。
俺は皇国の〈蜃気楼〉支部から貰った生産レシピを土産にアトリエに尋ねる。
【設計王】は霊体化した【猛毒王】を使って作業していたようでガスマスクをしていた。それカッコいいデザインだな。俺も作ってもらうか?
いや、アンデッドに有害なガスは意味がないな。呼吸しないで生きてられるし。
どちらかと言えば【ぷれいどっぐ】以外の日中活動用の装備を作ってもらった方がいいか。特典と合わせて使えるやつが良い。
何故なら俺は色々なデメリットを飲み込んで【大死霊】になると決めたのだから。
俺は集団アンデット化を通して【大死霊】になる必要性を実感した。怨念を処理する【高位霊術師】では怨念を操る技術を習熟するのに向いていない。
俺は【忌騎融鎧】が原因で教会で浄化された実体験があっただけに、アンデットのデメリットを無自覚に忌避していたんだ。だから【高位霊術師】で甘んじようとしていた。
得ようとするならば失う覚悟をしなければならない。人間であるメリットを捨ててでも【大死霊】でなければダメなのだ。
しかしノーラには才能はあっても【大死霊】に就職させず別のジョブに就いてもらうが。
理由として【大死霊】でアンデッド化した時、マイナスの種族特性以外にデメリットがあるからだ。
俺が危惧しているデメリットとは、精神汚染だ。【大死霊】に就いているティアンは例外なく正気を保ちづらくなる。【大死霊】を外せば精神汚染は停止することからこれはジョブに紐づけられたデメリットだと判明している。
精神汚染と寿命の消去による永い時間で狂人になるか、体だけではなく精神までアンデッドになるか、最悪、精神崩壊すらあり得る。
【尸解仙】はアンデッドだが例外中の例外だ。聖属性や精神汚染も克服した超級職だから。
精神汚染は【大死霊】の死因にかなりの頻度で関わっているとの噂だ。
【大死霊】の数が増える一方にならないのは、それだけ生存力に長けて寿命が無くなった【大死霊】が他のジョブと同様に死んでいるということ。
誰だって長く生きたいと思っても、モンスターになってでもという者は一握りの人間のみ。
そういった者は【大死霊】に就くまでもなく狂人と呼ぶに相応しい。過去にそういった狂人は大抵が人間性を喪った怪物として討伐された。
そんな危険極まりないジョブに、垂涎の才能があっても就けさせる訳がない。
狂人は大抵面倒臭・・・いや他ならぬ弟子のためだからな。
俺はマスターの精神保護で無効化されるから問題ないが。
てな訳でパイルバンカーを作ってくれねーか?
「パイルバンカー?欲しいの?フツーにぃ槍とかで良いんじゃないかなー?」
だってあれ整備するの大変だよー?と最高峰の技術者は言った。事実、機械というのは武器よりメンテナンスが大変だ。機械には一度分解して点検する必要がある機構も存在する。
研ぎ直すのと全部分解して組み立てるのとでは全く違う。
この変人天才は常識が通じる相手ではない。到底男の浪漫など理解が出来ないか、理解した上で別の浪漫を重視しているのかもしれない。
俺が全自動卵割り器にネタとしての面白みを感じても、それに対する浪漫がわからないように。
だが俺はパイルバンカーが欲しいので強行する。最悪整備は【グデアメール】に頑張って覚えてもらう。奴も何かと器用だから大丈夫だろう。
カーソンに使わせようと思ったが、【グデアメール】の火力上昇に使わせるのもいいと思うのだ。最近死ななくなってきたからちょうどいい機会だしな。
動力源に【怨霊のクリスタル】と【禍遷忌匣】を組み込んでもいいかもしれない。別に【怨霊のクリスタル】はまた作れるわけだし。
デンドロの機械は出所を問わないMPで動くのであらかじめ電池のように組み込んだ外部コストで賄える。MPが高くない【グデアメール】でも使用できる筈だ。
それに【怨霊のクリスタル】作成は怨念生成機能が搭載された【忌騎融鎧】がある俺にとってそれほど難しい事ではない。
流石にこの前の最高品質の【怨霊のクリスタル】は作るのは難しいが。あれは新鮮で強烈な怨念が研究員達から取れたから出来たわけだし。
実際、あの後普通に作ったら黒くて目口が生えてくるだけでドス黒い血涙や黒輪結晶が出てこない【怨霊のクリスタル】になった。
十分禍々しいが、最高品質に比べれば威圧感が全く足りない。最高品質の【怨霊のクリスタル】はブローノ・ブチャラティ風に言えば殺ると言ったら殺りかねない『凄み』がある。
研究所達の怒りと殺意が直に伝わってくるかのようだ。
俺も俺に向かって思いっきりガンつけるアイテムは初めて見た。俺以外には無反応なので明らかに特定人物に対する執念が籠っている。これを《デッドリー・エクスプロード》したら広範囲を焼き滅ぼせるだろう。
それはそれとして、最高品質の【怨霊のクリスタル】作成には怨念の量と質の両方が必要なのだろう。
あれはもう一回研究員のメンタルを犠牲に作れるかもしれないが、今度こそ処刑に減給では済まされない。
別の質の供給を探すべきか。できればこれは【設計王】に頼らず自前で賄いたい。
メイドインアビス。恍惚と苦痛の肉の呪い避け、カートリッジか・・・
取り敢えず【設計王】に普通の【怨霊のクリスタル】と【グデアメール】を見せてパイルバンカーの作製をお願いしておいた。
【設計王】はあまり気乗りしなかったようだが、【グデアメール】を見た瞬間インスピレーションを得たらしく、かっ飛んで行ったので大丈夫だろう。
何やら【設計王】が入った後、アトリエから【猛毒王】のものらしき悲鳴が聞こえたが、元気そうで何よりだ。道具は長く使える方が良いからな。
もっとも、技術者である【設計王】が道具のメンテナンスを欠くとは思えないが。アイツは片付けが致命的に下手くそだが普段から使う道具に対しては丁寧に扱う。
そしてまたゴミを溜め込んで形成されたゴミ部屋にゴキブリを飼っているのだろう。ゴキブリは生命力が強く、過酷な環境で進化する。
できれば【設計王】のアトリエという小さな大魔境に適応したゴキブリを外界に放出しないでくれ。俺もリアルテラフォーマーズは嫌だ。
【猛毒王】といえば俺の所有する【極毒】はいつ日の目を見るんだろうな。折角最強の毒を貰ったのに【アガナースタ】にさえ。いや、寧ろ使いたくないと思ったのだ。
ズルすぎるっていうのも難儀な事だ。ズルすぎるっていう事は使ってて楽しくないという事だから。確定された事象に遊び心はない。
必ず当たる宝くじがあったら絶対に賭けるが、絶対に勝つ競馬なんてつまらないだろう?
あれは予想外によって負けることもあるから楽しいんだ。ギャンブルってそういう事だからな。結果と過程を楽しむのが玄人。
宝くじはギャンブルじゃ無いんだよ。外れても楽しくねぇ。外れて当然、当たったら望外の幸運。だったらもっと楽しい事がしたいに決まってんだ。
ジャンジャンバリバリと硬質な物同士がぶつかり合う音がそこいら中から聞こえてくる。
パチンコの銀玉のぶつかる音。大当たりが出た客が歓喜の叫び声を上げ、全てをスった客の怨叉が響く。
これこそが俺の戦場だった。
周りにはパチってる同胞が派手な音を立てるそれぞれの台に釘付けになっている。暇を極めたゴミどもめ。羨ましい限りだ。
だが、俺はその光景を見て口元を緩ませた。隣で社会の縮図を見せてやろうと連れてきたノーラがその熱気に圧倒される。
カルディナの光は夜でも消える事はない。そこにゴミのようなギャンブル中毒者がいる限りそいつらを燃料にその光は街を明るく照らし出す。
俺は子供には多いお小遣いをノーラの手に握らせた。それだけでノーラは察した。
ビギナーズラックだ。
誰もが一度は経験するかもしれない、確かに「存在する」幸運。俺はそれに期待している。
俺には不思議な確信があった。ノーラなら。ノーラならやれると。
俺は見たい。人の可能性ってやつを。ノーラの可能性はどれほどのものなのかを。
これは弟子に対する試金石で、師匠からの贈り物だ。
俺は背中を押す。
「それはお前の晩飯代だ。好きに使え。勝てば増える。負ければ失う。ギャンブルってやつはルールや種類、ジャンルが違っても最終的にそこに行き着く。」
限界を超えるチキンレースへの入り口に。
人間の可能性を俺に見せてくれ。我が弟子よ。
そして俺にパワーを・・・!ビギナーズラックのパワーを分けてくれ・・・!!
俺達は共に戦場に進んでいく。たとえ過去に確執があろうとパチンコの台の前ではそれらは意味をなさない。
適当な座席に腰を据えてまずは一発。ノーラも拙いなりに真似してパチンコ台を操作する。
景気が良い音を立ててパチンコ台が稼働した・・・
これはとある夢のVRMMOの物語。
ドン底の師弟に一度限りの奇跡は起きなかった。現実は残酷で世界は過酷なまでに平等だ。
有り金全部を剥がされた敗北者達は揃って財布を握るメイデンのご機嫌取りに奔走する。
懲りない師弟の第二ラウンドが始まった。達成報酬は今夜の晩飯代。
互いに裏で足を引っ張り合うことで見るに耐えない泥試合が繰り広げられた・・・!!
子供の教育方針はどれにする?
- 蠱毒にぶち込む
- 普通の子供のように育てる
- 子供の為だけの揺籠()で育てる
- 放任主義。子供は勝手に育つ
- 帝王に愛など要らぬ!!