これはとある夢のVRMMOの物語。   作:イナモチ

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捨て猫を拾った死霊術師

真っ赤な鮮血が肉片に混じって皇国の地面に降り注ぐ。俺は爆心地の中心で黄昏ていた。

 

どうしてこうなったんだ・・・そんな思いだけが先行して直面した問題から目が逸れる。

 

まだ【アガナースタ】遭遇時の方が【気絶】耐性や再生で時間が稼ぐことが出来た。

 

しかし今回だけは緊急進化でもどんな特典でも解決する案は出てこない。

 

俺が何とかしなければならない。なぜならこのままだと皇国に指名手配されかねない。

 

俺が蒔いた種だ。でも、もう手遅れじゃねぇかなという印象が否めない。アカン、このままじゃ(社会的に)死ぬぅ・・・!

 

殺すのは不味い。最も簡単で確実だが、確実に後を引く。俺の心が。

 

普段から罪悪感を感じさせない奴の方が悪いと言っているだけに、罪悪感を感じる殺しはしたくない。

 

それは俺が悪いと認める行為だからだ。俺は悪くねぇ。

 

この世界でも【死霊術師】というのは(一応)認められている。その才能と適正もだ。

 

この世界は力を持つ者が特権を持つ事ができる。過去に力を奮った存在をアンデットとして蘇らせ、使役する【死霊術師】も例外ではない。

 

しかし、どう考えても

 

力を渡してはいけない者に力を渡してしまった感しかない。

 

皇国嫌いの孤児に都市を吹き飛ばす力なんてヤバいよね?

 

爆発物のある工場狙ってドンッってなる所が手に取る様に分かるもん。危険人物じゃん。ヤバいな。

 

Q俺よ。どうして育ててしまったの?

 

A路地裏で孤児が生物に有害な怨念を普通に纏わせているし、面白そうだった。

 

紛れもなく有罪判決だわ。

 

気づけよ。そして思いとどまれ。超面白そうだからって後先考えるの辞めんな。

 

確かに酔った勢いで開発した技ぁ教え込むのは楽しかったけどさぁ・・・!!

 

だって【死霊術師】からしたらどう見たってSR級の逸材だったけども・・・!!

 

孤児だから誰が何を言おうと関係ねぇなって打算はあったけどさ・・・!!

 

・・・・無茶苦茶!酒で判断ガバガバ!!

 

身辺調査ザルじゃん!弟子の夢とか展望聴いておけよ!?

 

このままだと近い将来、テロリストを唆したマスターとしてその罪を追及される・・・!

 

子供って理詰めじゃ無くて感情で動くから、説得は無駄だろう。洗脳も精神衛生上ヤバい。

 

【ツチノコ地竜開拓団】のサブマスターはしただろ、って?あいつは大人だからOKだよ。

 

子供の時点でやったら可能性閉ざしてるけど、もう可能性が無いんなら問題ないよね?

 

むしろ講義料貰うぐらいだかんね?簡単に短期間でスキルアップ出来たんだから。

 

ともかく、このまま放置だと不味いよなぁ。

 

・・・・・。

 

やるしかない。もうこのままゴールを通りすぎる勢いで突っ切って有耶無耶にするしかねぇ!

 

具体的には、過酷な修行漬けで復讐を考える余裕を無くさせる・・・!

 

何の為に鍛えてんの?と聞いたら、

 

「強くなる為!!(目的忘却済み)」

 

って叫ばせれば工事完了。

 

復讐とか宣ってたら「判断が遅い」って愛の鞭で思考の遅れを矯正してやんゼェ!!

 

【快癒万能霊薬】の貯蓄は十分か?これで幾らでも危険な鍛錬ができるな!(ヤケクソ)

 

鱗滝流反射教育は全てを解決する。

 

ムッ?オニのニオイ!?いざオニギリ!イヤーーッ!!

 

“これでクソどもを吹き飛ばせる!“と眼を輝かせて振り向く子供を見ながら、酒が覚めた俺は一大決心とキリッとした師匠面を決めた・・・。

 

俺がこの子の教育係(パパ)になってやんよ・・・!!

 

「さっきから思考の上下幅が激しいのぅ。最後は明らかに◯滅では無いじゃろ。おんし、実はまだ酔っているな・・・それでこの子のパパか?となるとワシがママじゃの。」

 

ああ。幸せな家庭を作っていこうぜ。(英才教育)パパとママ、二人で責任持ってこの子を育てていくんだ。(保身)

 

俺達は今日から家族なんだから。(共犯)

 

子供の面倒は二人で見よう。俺が鞭。カーソンが飴だ。鞭の心苦しさに酒を飲むかもしれない、がそれでも涙と一緒に飲みながら鍛える事だけは止めてくれるなよ?(アル中)

 

「お主の酒癖の悪さはもう諦めておるからのぅ。その代わり、死にそうだったらワシが止めるぞ?お主の頭が茹だって判断を間違えたら大変な事になるからの。」

 

ああ。問題ねぇ。それも飴の役割だからな。好感を抱いてる相手に嫌われる事を忌避する心理で、テロに走るアイツを精神的に縛れる。カーソンしか俺とアイツの二重のストッパーになれねぇ。

 

「うむ。了解したのじゃ。」

 

ほんと、俺の相棒はカーソンしかいねぇぜ。倫理的にも、相性的にも。

 

普通、止めるもんだがね。順当に価値観が狂ってやがる。気づいているか?お前が一番この中で狂ってるって。

 

今までなぁなぁで過ごしてきたが、普通は理由もなくマスターを殺そうとするのはおかしいんだよ。どうして俺を殺そうとするんだ?

 

俺を殺して何になる?死なせたいなら復活するだけで終わるから無駄なのに。

 

俺には分からない。俺とカーソンの間に深い価値観の差を感じる。

 

異星人と遭遇した気分だぜ。何故か《危機感知》は常時カーソンに対して反応しているしな?

 

それってどういう事なの?お前の材質は放射能物質なのか?それとも今のカーソンは偽物?

 

危険度MAXアラートが隣から日常的に鳴っている。もはやゲームのBGMだぜ。

 

デンドロがまたサイレントでアップデートしたのかな?他の人はそんな事ないらしいが。

 

《殺気感知》はエラーを起こしているのかカーソンが殺しに来ても全然反応しないし。

 

もう俺の感知スキルはぶっ壊れているのか。【斥候】外そうか最近考えてすらいる。今の所BGMと役に立たないセンサーにしかなっていない。

 

アラートに慣れすぎて狩場で他の危機に反応が遅れてしまう始末。掲示板で相談しても全員が

 

アッ・・・(察し)

 

って書き込んでから全然役に立たねェ。偶には働け。

 

全く、上手くいかないことばっかりだ。

 

だから俺は酒を飲む。どうしようもないのなら何やったって無駄。ならその瞬間を楽しむしかない。人間は単純なもんで、一瞬気分が良くなればまた復活する。

 

つまり、酒は百薬の長、エリクサーだったんだ。通りでやめられない訳だ。肉体に神秘が宿る感覚って言うのかな?まぁ、アルコールなのだが。

 

俺は【忌騎融鎧】をアイテムボックスから取り出した。

 

孤児が・・・ああ、まだ名前決まってなかったな。取り敢えず修行終わったらつけてやろう。ギョッとしていた。

 

そりゃまぁ、アンデット産の呪物だからな。怨念生成機能も付いている(最近絶好調)から他の呪物より怨念を感じるのだろう。

 

だが俺が目的なのは怨念じゃない。俺はいつものように【グデアメール】を抜き出すと普段の鎧に叩き込む。

 

俺は魂の扱いが雑なんだそうだ。でも特典で保護されてるんだから、こっちの方が速いのでそうしている。何の問題も無い。

 

【ハイ・リビング・アークナイツ】の【グデアメール】は一流の社畜戦士だ。どんな場所にも死んだ目で向かい、バックアップから復活してまた活動を再開する。

 

いい加減鎧の消耗回数が半端ないので【グデアメール】用の特典が欲しい。全くもって贅沢な話だが。いっそ一つの鎧に投資するべきか・・・?機械鎧に手を出してみようか?

 

それはさておき。

 

「さっそくこいつと戦ってもらうぜ〜。【死霊術師】の力は使うな。使った瞬間ペナルティだ。」

 

孤児はまた信じられないと言う顔で抗議した。

 

「正気か!?メインジョブ無しで勝てる訳ないだろ!?そもそも戦う為の武器は!?」

 

どうやらコイツは致命的に勘違いしているらしい。そんな上等な奴じゃないだろう?

 

「誰が勝てって言ったかよ?俺だって無理だと思うさ。今から動けなくなるまで逃げ回れ。これも修行だぜ〜?お前はお師匠様より何か一つでも上のものがあるってのか?」

 

俺は《峰打ち》竹刀を【グデアメール】に持たせる。これで幾らでも叩けるな?

 

死んだ目で【グデアメール】は頷く。また哀れな犠牲者が出たか・・・。

 

自分にできる事。それは後輩に過酷な苦行への耐性をいち早く付けさせること。それだけが彼の為になる。

 

【グデアメール】はかつての騎士だった頃を思い出そうとして、止めた。

 

何故か上官の顔が純竜級ワームに変わっていて、同僚が上位ドラゴンの顔になっていた。

 

記憶が。嗚呼、・・・もう私は狂っているのか。経験値達の顔しか覚えていない。

 

何故か浮かばぬ悲しみに違和感を覚えつつ、竹刀を振りかぶる。もう騎士だった過去は遠く彼方の出来事。今の私はただの動く鎧なのだから。

 

感傷に浸っている【グデアメール】と違って孤児は必死だ。そりゃ自分より巨大な鎧騎士が痛そうな竹刀を持って迫ってくるのだから。

 

纏う怨念をエネルギーに変換してブースt

 

しようとした瞬間【グデアメール】の一閃が走る。ペナルティ。

 

引き攣った顔が反射的に怨念で防御s

 

ようとした瞬間【グデアメール】の一閃が音速を突破した。更にペナルティ。

 

孤児は吹き飛んでカーソンにキャッチされる。口に突っ込んだ【万能快癒霊薬】は状態異常も発生していない身のHPを回復させて使用者を地獄に叩き返す。

 

「ブースターとか防御はペナルティの対象だかんなー。」

 

意外とピンピンしている。こりゃあ時間が必要かな?それともいい方向に作用するのか。

 

「遅い!!もうペナルティの後なんだが!?」

 

「アホ!【高位霊術師】の俺が教えた技だぞ!【死霊術師】の力に決まってんだろうが!」

 

さぁ、逃げ回れ。俺は煮込んでいるシチューを肴に酒を飲む。今夜の夕食は熟成シチューだ。

 

孤児がシチューの香りに気を取られて宙を舞った。養うのは集中と根気だ。スパルタはまだ序盤だぞ?小僧。

 

・・・・・

 

【グデアメール】は思う。生きている人間なのに怨念を当然のように扱う二人の事を。

 

片や驚異的な力を持つ少女を従えるマスター。片や自分達と違う方法で怨念を纏う少年。前者は本当に驚いた。何故かアンデットより怨念の扱いが上手い人間など予想できるものか。

 

怨念を自分色に染めて扱う技術を私も体感して盗んだが、これは余りにもジョブスキルから離れすぎている。【死霊術師】に才能や適正はあってもセンススキルは無い。全てはジョブスキルを上手く扱えるかというのが普通だというのに。

 

後者もまた異端だ。何故か私達の様に怨念を支配もせずに《死霊術》をジョブなしで発動させるなど。今や怨念変換術式を習った事でブーストや防御が出来る様になっている。中々いい動きをする上、反射神経も良い。

 

逸材、とマスターは評した。そう。たしかに彼は逸材だ。これは【大死霊】の才能。魔法職の様な詠唱者ではなく、前衛で戦う半モンスター化の才能だ。アンデットになる素質とも言える。

 

生きながらにして死ぬ才能。彼は死んだ時が一番才能を発揮するのだろう。あのまま孤児のまま死んでアンデットとして進化した時、かつての私と同類に成り果てる。特異なる怪物、UBMに。

 

規格外の才能を考えれば、そうなってもおかしくは無い。UBMとはえてしてそういうものだ。

 

マスターは少年がそうなりかけていたから拾ったのだろう。ああ見えて胸糞悪いと内心愚痴っている筈だ。天の邪鬼というらしいからな。能力主義なのに甘い所がある。

 

もう少し私にその不器用さをーー

 

オタマが飛んできた。

 

本当に能力だけは高いマスターだ・・・

 

・・・・・

 

【グデアメール】の目が光を灯し始めたのでオタマの投擲でシャットダウン。

 

今が(レベル上げに)良い状態だというのに。元通りになってもらっては困る。

 

心を殺して機械になるんだ。お前は戦闘マシーン。機械に余計な機能は容量の無駄でしか無い。精神力が強いアンデットのお前なら出来る。お前の死因は余計な欲が無い戦闘機械じゃなかった事だからな。

 

それはそれとして痛みへの耐性に受け身、衝撃の殺し方、直感が鍛えられるこの訓練は順調。

 

動かなくなったら具も溶けたシチューを流し込む。栄養と疲労回復に良い薬草が盛り沢山だから寝れば体調はバッチリになる筈だ。匂いは美味しそうだけど味がヤバいから抵抗されないようにする必要があるからな。一石二鳥なのだよ。

 

俺たち用のシチューは別にしてあるが。不健康な小僧の為の特別メディカルディッシュだ。

 

涙が出てくるだろう?分かるよ。味見したのは俺だ。色々肉や乳、バターでマイルドにしてこれだもんな。

 

これ薬膳料理って言うんだけどな。味度外視で健康を一番に考えると最終的にこれに行き着くんだ。俺だってこんな料理というには酷い味を食わせたく無いさ。酒で舌を洗っても後味最悪だしよ。

 

あ。気絶した。まあ良いや。このまま流し込んでしまおう。

 

ビクンビクンと痙攣している小僧を寝袋に詰めてテントの中に寝かせる。

 

全く。生き物を面倒見るというのは大変だ。【もかでぃあ】はそうでも無かったのだが。

 

「ふふ。なんだかんだ面倒を見ているでは無いか。さっきから飲んだくれている酒は調合で舌に染み付いた薬草を洗い流す為じゃろ?ジョブスキルもないから自分で検証しおって。」

 

ログアウトで落とせたのではないか?とはカーソンの言。

 

「そういう事は先に言おうぜ?俺結構味が濃いやつ選んでたんだが。まぁ良いや。さっさとシチューを食おう。冷めるからな。冷めた料理を食う事は俺が許せねぇ。」

 

飴と鞭。飴はどっちなんじゃろうな。このままだとワシが鞭になってしまうぞ?

 

「大丈夫に決まってんだろ。【もかでぃあ】なら兎も角、人間のガキンチョならこれからがキツくなるぞ。性別が逆だったら甘々になってたかもだが、コイツにとって残念なことに男だからな。俺は男なら容赦しなくても良いって思ってっから。◯治郎は頑張れただろ。」

 

◯治郎はともかく、この子は一人っ子ではないかのぅ。その理論だと無理ではないか?

 

「同じファンタジー世界の住人だからな。【万能快癒霊薬】って本当に練兵向きだよ。怪我しても治せるってのは訓練に使える。後は本人次第ってな。まぁ、小僧の場合は復讐心を忘れるまで訓練してもらうんだが。」

 

それについては余り懐疑的なのじゃが上手くいくのかの?

 

「健全に汗を流して体を動かしゃあ健全な精神ができんだろ。スポーツってのはそれ目当てなのに莫大な利益絡めるから出来ねぇだけでな。ガキンチョの方がスポーツの本懐をこなしてるんじゃねぇか?」

 

うーむ。痛みを伴う訓練をスポーツと言ってしまって良いのかどうか悩ましいのぅ。まぁ、要は寝て食って動ければいいかの。必要なのはストレスとリラックスの両極じゃし。

 

これはとある夢のVRMMOの物語。

食事中の和やかな会話中も隣の相棒から《危機察知》のアラートが鳴り響いている・・・

ルンバとカーソンの子供は何人欲しいかアンケート

  • 一人(抗菌と同じく特典化)
  • 双子
  • 五つ子(五等分の花嫁√(嘘))

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