日本国内300万人、群馬県内6万5千人。外国人住民は増え続けている。中でも館林市を中心に暮らすロヒンギャは、アイデンティティーの立脚点から異彩を放つ。群馬県の最東端にコミュニティーを成した彼らは、何を願い、どう生きるのか。信仰とは、民族とは、国とは何か。「300の同胞」を通して迫る。
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群馬県館林市周辺に生きるミャンマーのイスラム教徒少数民族ロヒンギャを含め、世界で増え続ける難民とどう向き合うべきか。アパレル世界大手のファーストリテイリング(FR)が立ち上げたFR財団(東京都)副事務局長の城間千佳野さんに、これまでの経緯や支援の内容を聞いた。
―FRは2001年から幅広い分野で社会貢献活動を展開している。アパレル企業のため服をメインにした支援が多かった。
事業に直結しないものの社会に役立てる活動を模索するうち、奨学金支援や教育支援の助成は一般財団法人の方が長期的、安定的に取り組めるということで、18年12月にFR財団が設立された。根底には柳井正理事長(FR会長兼社長)の「事業と社会貢献活動は両輪」という意識がある。
―FR財団の3本柱の一つ「自立支援」に、難民支援を据えている。
柳井理事長の難民に対する強い思いが大きい。柳井理事長は難民を「一番の被害者」「好きで母国を離れたわけではない」と受け止め、世界的な課題だと捉えている。
―企業と財団でどう役割分担しているのか。
FRは国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)と連携して国外の難民を援助している。FR財団は主に日本に来た難民の、特に子どもを支援している。
日本で暮らす難民の子どもには、彼ら自身で明るい未来を切り開いてほしい。それにはしっかりした教育環境が必要だが、学校外にはないのが実情だ。父母は日本にルーツがなく、家庭内の学習環境は整わず、経済的理由から塾にも通えない。補うのは本来、国の役割だが十分機能していないと思う。
そうした状況を受け、FR財団は社会福祉法人「さぽうと21」(東京都)と連携し、学校外での学習支援をしている。
―具体的には。
年間3000万円ほどを「さぽうと21」に助成している。週末に東京・錦糸町で難民の子ども向けの学習教室を開いているほか、春夏の長期休みに明治学院大や千葉の教室で60~70人を集めて集中学習教室をしている。通年でオンラインでの学習教室も提供している。23年からはアフガニスタンから来た子どもたちに、集住する栃木県で新たな学習支援教室を始めた。
―ロヒンギャの子どもたちには。
オンライン教室を開講している。ロヒンギャは宗教的に「教育は女性の仕事」と捉える傾向にあるが、教育熱心で、新年度は参加者が70~80人くらいになりそうだ。子どもたちも積極的で参加者のうち3分の1は受講率が90%以上。オンラインということで、館林市内外に暮らす子どもたちが臨んでいる。