1~3月GDP改定は年率が上方修正、2期ぶりマイナス成長変わらず
氏兼敬子- 年率1.8%減、速報2.0%減から引き上げ-民間在庫の寄与度拡大
- 追加利上げ巡り日銀は景況感に関し慎重にならざるを得ないとの見方
1-3月期の実質国内総生産(GDP)改定値は前期比年率が速報値から上方修正された。民間在庫の寄与度拡大が押し上げ要因となった。2四半期ぶりのマイナス成長は変わらず、日本銀行は追加利上げに慎重にならざるを得ないとの見方が市場で出ている。
内閣府が10日発表した実質GDP改定値は前期比年率で1.8%減(市場予想2.0%減)と、速報値の2.0%減から引き上げられた。前期比は0.5%減(同0.5%減)と速報値から横ばいだった。民間在庫の寄与度は0.3ポイントと速報値の0.2ポイントから拡大した。
3日発表の法人企業統計を反映し、設備投資は前期比0.4%減と速報値(0.8%減)から引き上げられたが、寄与度は変わらず。個人消費は速報値の0.7%減と同じだった。
1-3月のGDPを押し下げた自動車減産の影響は解消へ向かい、4-6月はプラス成長復帰が見込まれている。ただ、6月に発覚したトヨタ自動車などでの不正行為は新たな逆風となりかねない。実質賃金のマイナスが続く中で個人消費は停滞し、日本経済はけん引役不在の状況だ。物価上昇圧力や円安傾向の継続を背景に早期の追加利上げ観測が高まる中、日銀はタイミングを見極める状況が続く。
大和証券の末広徹チーフエコノミストは、消費者は円が一時1ドル=160円台を付けたりとすると「どうしても水準感で反応して消費に慎重になっている」と指摘。その上で、日銀としては景況感に関して慎重にならざるを得ず、追加利上げは4-6月の統計を確認した後、「早くてもタイミングは9月、10月」と予想している。円安で動くという観測が高まれば高まるほど、動きにくいとの見方も示した。
日銀の植田和男総裁は先月、1-3月のGDP速報値でマイナス成長となった日本経済について、持ち直していくとの見方に変化はないとの見解を示していた。
ブルームバーグの集計では、4-6月期に前期比年率2.5%のプラス成長が予想されている。ただ、足元の円安進行で物価高が再燃すれば、個人消費の下押し圧力が強まる可能性がある。
国土交通省は3日、トヨタ自動車やホンダなど5社から認証試験で不正があったとの報告を受けたことを明らかにした。トヨタでは7車種に不正が見つかり、「ヤリスクロス」など現行3車種の生産を一時停止している。
トヨタなど5社も認証試験で不正、トヨタにあす立ち入り-国交省
SMBC日興証券の丸山義正チーフマーケットエコノミストは、設備投資と在庫の上方修正でGDPは若干上振れたものの、「1-3月は認証不正の問題でGDPがかなり落ちたという判断で変わりはない」と指摘。設備投資の基調が弱いとはみていないが、新たな認証不正の影響もあり、4-6月の持ち直しの動きは「伸びが鈍くなる」との見方を示した。
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