アメリカによる日本の支配はなぜ続くのか?…日本が近代国家として「信じられない状況」にある理由

アメリカによる支配はなぜつづくのか?

第二次大戦のあと、日本と同じくアメリカとの軍事同盟のもとで主権を失っていた国々は、そのくびきから脱し、正常な主権国家への道を歩み始めている。それにもかかわらず、日本の「戦後」だけがいつまでも続く理由とは?

累計15万部を突破したベストセラー『知ってはいけない』の著者が、「戦後日本の“最後の謎”」に挑む!

※本記事は2018年に刊行された矢部宏治『知ってはいけない2 日本の主権はこうして失われた』から抜粋・編集したものです。

外務省がアメリカとギリギリの交渉をしてくれるはず…

私は1960年(昭和35年)という昭和中期の生まれなのですが、日本が高度経済成長の真っただ中にあった子どものころ、よくこんな言葉を耳にすることがありました。

「政治三流、経済一流、官僚超一流」

つまり、自民党の政治家は汚職ばっかりしてどうしようもないが、とにかく経済はうまく回っている。その証拠に日本は戦争で負けてから20年ちょっとで、アメリカに次ぐ世界第二位の経済大国になったじゃないか。

もちろんそれは町工場のオヤジから身を起こし、世界的な大企業をつくった松下(幸之助)や本田(宗一郎)といった経営者たちが偉かったからだが、もっと偉いのは官僚たちだ。霞が関で夜遅くまで煌々と電気をつけ、安い給料で国家のために働く頭のいい彼 らのおかげで、日本はここまでのぼりつめたのだ......。

いまの若い人たちには信じられないかもしれませんが、30年くらい前まで、多くの日本人はそう思っていたのです。

ですから時代が変わり、2009年に自民党政権が崩壊して、その政治的変動のなかで外務省の「密約問題」が大きく浮上したときも、私自身のなかにそうした日本の高級官僚への信頼感というものは、まだ漠然とした形で残っていたような気がします。

なにしろ外務省といえば、財務省(旧大蔵省)と双璧をなす日本最高のエリート官庁だ。いま大きな疑惑として報じられている日米間の「密約」も、おそらくは存在したのだろう。

けれども外務省の中枢には、そうした複雑な問題を全部わかっている本当のエリートたちがいて、国家の行方にまちがいがないよう、アメリカとそれなりにギリギリの交渉をしてくれているはずだ......。

その後、自分自身が密約問題を調べるようになってからも、まだかなり長いあいだ、
私はそう思っていたのです。