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男子優先の王位継承ルールとは何だったのか? 歴史的検証が微塵も見当たらないイギリス下院特別委員会議事録(令和6年5月29日)


イギリス下院の政治・憲法改革特別委員会は2011年、王位継承ルールの変更について検討し、同年暮れに報告書をまとめた。その内容は、①男子優先から絶対的長子継承へと変更し、②カトリック排除の規定を廃止することを歓迎するというものである。

興味深いのは、すでに書いたように、報告書本文を読むかぎり、男系主義で続いてきた王位継承の意義について検証した形跡がないことだ。王位、王権、王朝の意味や男系主義との関係性について、深い探究がなされた気配もない。

王室にとってもっとも重要なのが王位継承ルールであるはずなのに、そして各王室にはそれぞれ独自の継承ルールがあって、それぞれ固守されてきた歴史があるにもかかわらず、その歴史的検証もなく、「男女平等」「ジェンダー平等」の原則を単純に当てはめただけのように見える。

一般にイギリスは古き良きものに大きな価値を置く伝統主義の国のはずだが、その価値を顧みず、まるで弊履のごとく脱ぎ捨てたかのようだ。いや、はたしてそうなのか。結論を急がず、間違いのない答えを見出すべく、本文のあとに続く議事録をじっくりと読んでみることにする。

しかし、である。結論を先にいえば、少なくとも報告書の本文および議事録を読むかぎり、それはまさに事実なのである。男子優先主義による王の支配とは何だったのか、そして今後、継承ルールが変更されたあと、イギリス王室はどこへ行こうとするのか、その検討がまるで見当たらない。これはまさに驚き以外の何ものでもない。

◇1 パース協定が議論の出発点であり終着点

議事録によれば、2011年11月10日、委員会はふたりの学識経験者を参考人として招き、一問一答の質疑応答形式によるヒアリングをおこなった。

委員会側の出席者はグラハム・アレン議員(議長。労働党、ノッティンガム=筆者注、以下同じ)ほか6名の与野党議員。参考人はロバート・ブラックバーン教授(憲法学。キングス・カレッジ・ロンドン)と、ボブ・モリス博士(ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの憲法ユニット名誉研究員)のふたりである。

議事録は、40ページの報告書のうち10ページにおよぶ。二段組みで、質問は37項目。以下、とくに男系継承主義廃止に関係する、めぼしいところを読んでみることにする。

冒頭はブラックバーン教授の発言で、パース協定の説明から始まった。つまり、ヒアリングの議論の出発点は、イギリス王室の歴史と伝統の確認ではなく、王位継承ルール変更を合意した国際協定の追認と賛歌だった。

ブラックバーン教授「10月28日、英連邦会議で王位継承法の変更が発表されました。(同年春に結婚した)ウィリアム王子とケンブリッジ公爵夫人にも当てはまります。
キャメロン首相は2012-13年の国会に法案を提出する予定です。改革は歓迎すべきことで、長らく待ち望まれていました。20年前は王室に関する議論は非常にデリケートで困難でしたが、いまは賢明な方法で議論することができるようになりました。
今回のルール変更は、英連邦諸国内であまねく支持されています。イギリスの主要三大政党の党首が支持し、女王も皇太子も支持しています。したがって改革に関する熱気も論争もありません。
このテーマは、国家元首をどのように選ぶべきか、国家を象徴する人物としてどのような資質を持つべきかなど、より深い憲法上の問題を提起しています。
君主の配偶者の地位はどうなるのか? 公的立場は何か? 称号をどうするか?」

ブラックバーン教授の発言はパース協定を出発点とし、男子優先主義の廃止はすでに決まった所与のこととして議論が進められている。しかも女王も皇太子も支持しているというのだから、変更の議論はもうすでに終わっている。パース協定は終着点でもある。イギリスは男系主義という王室の歴史と伝統を捨てたのである。ついでに補足すると、ここでいう「男子優先主義の廃止」はあくまで「男女平等」と同義なのであって、「ジェンダー平等」を謳っているわけではない。

次はモリス博士である。博士のテーマは王位継承問題ですらなかった。

モリス博士「レルムとの最近の議論の成果のひとつは、これまで存在しなかった、これらの問題を議論するための何らかの装置を初めて導入したことです。
カトリック教徒だけでなく、国教会と交わることができないすべての人に対する差別について、多くの問題が生じています。問題は、これらの問題について、どのように議論を始めるかです」

◇2 「信仰の擁護者」への変身

ふたりの冒頭の発言のあと、メンバーとの質疑応答が始まった。最初の質問者はエレノア・ライング夫人(保守党、スコットランド)であった。保守党の議員ながら、これもまた王室の伝統を重視する立場ではなかった。夫人は今回の改革を「ミミズの缶を開ける(open a can of worms。パンドラの箱を開ける)」と表現している。もはや後戻りできない事態という認識らしい。

ライング夫人「今回の変更が広く支持されていると二人が述べたことに感謝します。ウィリアム王子が生まれた日、私は改革派の学生で、『なんて残念なことだ。20年間は男子優先相続について議論する必要はない』と思ったものですが、間違っていました。あれから30年が経ちました。たとえば、1707年合同法(イングランドとスコットランドとの合併による連合王国の成立)について、またそれがどのような影響を与えるかについて、お話しいただけますか?」

モリス博士「(1707年合同法によってスコットランドに拡大された1701年の)王位継承法は定着していません。議会によって変更できるし、多くの方法で効果的に侵されてきました。スコットランド人には嫌悪感を大いに抱かせています」

つまり、2人の対話はイギリス王室の王位継承問題というより、イングランドとスコットランドもしくはその他との、連合王国としての国際問題であり、その背景としては王室と議会との対立とせめぎ合いがあった。またスコットランド国教会はカルバン派の長老派教会であり、イングランドとは異なる。

このあと国王と英国国教会との関係について、ひとしきり質疑応答が続いた。そのなかで「国教会の解体」という穏やかならざる表現も聞かれた。また、とくにブラックバーン教授がエリザベス女王以後について、次のように「大きな変化」を語っていることは注目される。

ブラックバーン教授「チャールズ皇太子が王位に就いたら、ありとあらゆる形で大きな変化が起きるでしょう。皇太子がほかの宗教に関心を持ち、『信仰』ではなく『信仰の擁護者』と見なされることを望んでいることはよく知られています」

つまり、イギリス国王はいま、「国教会の首長」から「信仰の擁護者」への変わろうとしているというのである。日本では、皇室の天皇観は古来、祭祀を第一義とする、公正かつ無私なる祭り主であり、しかも古代においては仏教に帰依し、仏教の外護者となられ、近代以降はキリスト教の社会事業を物心ともに支援された。チャールズ3世以後のイギリス国王は日本の天皇に似た、多宗教的コスモスをひとつにまとめる統合者の立場に変身しようとするのだろうか。ここではイギリスが日本のお手本なのではなく、その逆なのである。

◇3 「君主制は非論理的」

次にシーラ・ギルモア議員(労働党、エディンバラ)が登場する。議員は「称号」にこだわり、それに答えるブラックバーン教授は「世襲制」について解説する。

ブラックバーン教授「世襲制そのものについては、1980年代初頭にサッチャー夫人が突然、世襲制を復活させたのは異常だと感じました。ウィリアム・ホワイトローが内務大臣を辞めて貴族院内総務になったときも、ジョージ・トーマスが下院議長を引退したときも、世襲子爵位が与えられました。約18年ぶりの世襲制復活という異例の出来事でした。とくに驚くべきことに、ジョージ・トーマスには子供がいませんでした。ウィリアム・ホワイトローには4人の娘がいましたが、いずれも相続できませんでした。サッチャー夫人が自分の将来を考えていたかどうかは分かりません」

教授にとっては王室を含め、「世襲制」そのものが過去の遺物ということになる。一方、モリス博士は「君主制」への懐疑を隠していない。そして次に登場したアンドリュー・ターナー議員(保守党、ワイト島)との抽象論的な議論が進んでいく。議員もまた「ミミズの缶」を持ち出している。

モリス博士「フィナンシャル・タイムズ紙のコラムニストは、長子相続ルールの変更がもたらす効果、あるいは明らかな意図のひとつは、論理的でないシステムに論理を吹き込むことだと論じていました。その意味で、君主制は論理的ではありません」

ターナー議員「その通りです。では、なぜ私たちはこれを心配しているのでしょうか?」

ブラックバーン教授「心配する人もいれば、心配しない人もいます。本当に理論的な問題です。この国の憲法は、特定の出来事や問題に応じて、その場しのぎで変化しているように見えます。私たちは、政治や憲法のシステムを作るための根本的な指針を定めようとはしません。そうすべきだという議論はもっともです。世襲制の象徴的な側面は、明らかに一部の人々を憂慮させ、共和主義者をも確かに憂慮させています」

モリス博士「たとえば、カトリック教徒との結婚禁止を撤廃することに関する問題のひとつは、既存の禁止事項にもっと注意を向けさせることです。スコットランドの枢機卿は、この件に関してつねにもっと率直に発言してきましたが、イングランドの枢機卿は、状況に対する反応において、つねにかなり控えめでした」

ブラックバーン教授「別の難問が思い浮かびます。長子相続に関する法律は、封建的財産法から発せられる慣習法の原則です。1952年、史上初めて、2人の女子だけで、男子のいない君主が亡くなるという状況が起きました。古い封建法の下では、厳密にいえば、エリザベス王女とマーガレット王女は共同で王位に就くべきでした、なぜならそれが中世の財産法の仕組みだからですが、もちろん、それは無意味だったでしょう。枢密院が即位評議会として召集されたとき、枢密院は長女が唯一の君主になるという常識的な解決策を宣言しただけでした」

以前、市村眞一・京大名誉教授がレーヴェンシュタインを引用して、君主制の優位点について論じているのを紹介したことがあるが、この委員会の出席者にはその発想すらうかがえない。

◇4 レルムのなかには共和制への動きもある

イギリスとレルムとの対応の違いもテーマとなった。レルムにはイギリス本国とは違い、成文憲法がある。国教会制度があるわけでもない。カトリックが多数を占める地域もある。さらには王制からの離脱の動きもある。

ターナー議員「ジャマイカ人が選挙を行い、ケンブリッジ公爵が亡くなるまでの間にルールを変えたくない人が入ってくると想像してみましょう。レルムは変更できるかどうか、それは許されることですよね」

モリス博士「本質的なことは、他の国は好きなように憲法を変えることができますが、イギリスは彼らの同意なしにそうすることは許されないということです。王国全体では一人だけの君主が望まれます。継承ルールが異なるために、君主が異なるのは望ましくありません。たとえば、人口11,000人で、97%が会衆派教会信者であるツバルは、別の畝を行くことを決めるかも知れません。また、カナダやオーストラリアのように、カトリック教徒が大多数を占める州にも問題があるかも知れません」

ターナー議員「オディ博士は、このスキームの不具合は、教会法の下では、王室に嫁いだカトリック教徒の子供はカトリック教徒として育てられなければならないため、おそらく自動的に排除されることだといいます。それは正確ですか?」

モリス博士「これはカトリックの教会法の問題です。それも影響のひとつではないかと理解しています」

ターナー議員「それは取り上げなければならない問題なのか、それともあなたが生まれたときからカトリック教徒であることの自動性なのですか?」

モリス博士「これに関する唯一の権威は教皇であり、私ではありません。おそらく、これを取り上げるかどうかという意味で、選挙の問題です」

ブラックバーン教授「(自治領と国王との関係を定めた)1931年のウェストミンスター憲章がこれらすべてに適用されることと、すべての領域にわたってどの程度の同期が行われるかについて、明確にしておく価値があるかも知れません。1931年法は、当時既存の原則と見なされていたものを宣言するものであり、ここで関連する2つの特定の規則を定めました。第一に、慣例により、ウェストミンスター議会の法律が英国やその他の地域で王位継承を変更するために法的効力を発揮する前に、他の英連邦王国による事前の合意のための手続きが課せられます。その手続きの下で、王国のすべての議会は同意を与えなければなりません」

モリス博士「一般的な理解では、同じ原則が連邦王国にも及ぶと思われます。これは憲法上の会議であり、問題があります。英国は条約を無視して、自国や他の英連邦の領域を規制することができるのかどうか。多分、やっていけるんじゃないかと思います」

モリス博士は同時に、ウエストミンスター憲章以後の動きに注目している。

モリス博士「たとえば、オーストラリアは元植民地であり、カナダの州とは王室との関係がかなり異なり、オーストラリアの個々の州の同意を連邦政府が確保する必要があるかどうかについて議論があります。これらはすべて、政治的な困難を生じさせる可能性のある地域的な複雑さですが、善意があれば克服できると確信します」

一方、ブラックバーン教授は混乱を引き起こすような議論が実際にはないと指摘するのだが、かといって、英連邦の存続にはおよそ楽観的ではない。

ブラックバーン教授「インターネットで英連邦のいくつかのローカル・メディアを調べましたが、このテーマについての議論がほとんどないように見えることに驚きました。
私が予見できる唯一の困難は、関係する国内の一部の人々、一部の個人またはグループがいくつかの困難を生み出すことです。現時点では、君主制の維持に賛成する少数派がいますが、エリザベス女王の後、彼らは独自の共和国と国家元首を創設するだろうという期待が広がっています。
オーストラリア憲法には、協力的連邦主義の一形態に関する手続きがあり、オーストラリア議会は各州議会の要請に応じて、または各州議会の同意を得て立法することができます。
カナダではケベックの分離主義者や反王制主義者が、議論したがるでしょう。ジャマイカとバルバドスでは、首相や元首相が共和制に移行したいと示唆しています」

◇5 王位は分裂する!?

イギリス本国はまだしも、英連邦内の君主制の維持に黄色信号が灯っているということになるのだが、そこへファビアン・ハミルトン議員(労働党、リーズ)が質問を続け、なんと「王位の分裂」に言及する。そして2人の識者はこれを否定しない。

ハミルトン議員「だとすると、1931年の法律にもかかわらず、英連邦諸国のいずれかが、いくつかの条項に同意しないために、『我々は君主制の継承者を認めない。その王位継承者を認めない。他の誰かを王位継承者として認める』と述べ、言い換えれば、50年後、70年後、100年後、ある国がまだ英連邦の一部であり続け、イギリスの君主を国家元首と見なしていた場合に、別の君主、王家の誰かをいただくことは理論的に可能ですか?」

ブラックバーン教授「王冠の分離は可能です」

モリス博士「ルールが分かれれば起こり得ることです。だからこそ、16の領域すべての間で合意を得ることがとても重要なのです」

パース協定の合意は王位継承ルールの変更というより、王制維持のための防波堤なのである。テーマはふたたび王配の宗教問題に移る。

ターナー議員「宣言では、継承権保持者の配偶者の宗教に関する規則には他の制限はないと述べており、首相は、このユニークな障壁、つまりカトリック教徒との結婚はもはや正当化できないと感じました。つまり、王位継承者がユダヤ教徒やイスラム教徒の配偶者と結婚した場合、英国国教会の礼拝に出席することに同意したり、配偶者を自分の信仰に改宗させたりしない限り、それは問題ないということですか?」

ブラックバーン教授「君主の配偶者の公職に関する特別な規定はありません。戴冠式に参加する必要はありません。宣誓する必要はありません」

ハミルトン議員「しかし、彼らの子供たちは英国国教会の聖体拝領の中で育てられなければならないのではないでしょうか?」

モリス博士「そのような規定はありません。君主が英国国教会と交わりを持たなければならないという要件はあります」

ブラックバーン教授「私の理解では、カトリック教徒は子供をカトリック教徒として育てる何らかの義務を負っているか、英国国教会の信者よりも重い義務があります」

ハミルトン議員「王位継承者が男性で、ユダヤ人女性と結婚した場合、ユダヤ人の家系は母親を経由するため、その結婚の子供が英国国教会の聖体拝領で育てられたとしても、理論的には、その子供はユダヤ法の下では厳密にはユダヤ人です。それは重要ですか?」

ブラックバーン教授「その人が君主であるという要件を満たすことができる限り、その子供は、要約すると、カトリック教徒になることはできず、現時点ではカトリック教徒と結婚することはできず、プロテスタントであることを公に宣言しなければならず、イングランド国教会との交わりに加わらなければならず、イングランドとスコットランドの確立された教会を維持することを誓わなければなりません。それができなければ、君主としての資格を失います」

◇6 なぜ「退位」に取り組まないのか?

テーマは国王および王配の宗教、国教会との関係から国教会のあり方へと進む。

ハミルトン議員「私たちがこれらの改革を行っているいまこのときに、なぜ英国国教会を解体するときではないのでしょうか。君主が特定の信仰に固執しなければならないのはナンセンスに思えます」

モリス博士「思考実験として、もし私たちが仮想の共和国から明白な共和国に移行したとしたら、大統領に宗教的な試練を課すことを一瞬考えたでしょうか? 答えはノーです。一方、必ずしもイングランド国教会を解体することなく、これらの規則を変更することはできます。
決定的なことのひとつは、イングランド国教会自身の手に委ねられており、それはイングランド全土で教区域を維持することを望むかどうかです。これは、現在、スコットランド国教会で議論されている問題ですが、それは単に資源の逼迫によるものです」

このあとハミルトン議員は国教制へとテーマを展開していく。最後に登場したのがスティーブン・ウィリアムズ議員(自民党、ブリストル)で、国王とイギリスの宗教伝統との関わり、スコットランドやウェールズとの違い、さらに貴族制について質問している。

これに対する応答で、ブラックバーン教授が世襲制の終焉と国王の重責について説明しているのは興味深い。

ブラックバーン教授「世襲はまもなく一掃されます。ちなみに、これは今日の王と王妃の立場についても同様で、王や女王にならなければならない人に対する公平性や不公平さを見る人もいますが、状況は大きく変化しています。王や女王の地位は、控えめに言っても、以前ほど楽しいものではありません。国家元首の仕事は非常に骨の折れるものです」

このあとは補足的質疑応答が続くのだが、そのなかで、クリストファー・チョープ議員(保守党、サウサンプトン)の質問が注目される。「退位」について問いかけているのだ。

チョープ議員「君主が年齢や病気を理由に引退を望む場合や、後継者がカトリックの信仰を持とうとして王位を継承しないことを望む場合、または継承を受ける資格のある女子が『私の兄弟が引き継ぐことが正しい。私は男系継承を信じています』と主張した場合など、退位につながりそうな、さまざまなシナリオがあります。
退位は今後50年間でさらに大きな問題になる可能性があるのに、なぜ退位の問題に取り組まないのでしょうか? なぜ、長子相続に関する非常に厳格な規則を持つのではなく、誰が後を継ぐかを王室に選別できると言えないのでしょうか? もっと柔軟性を持たせることができないのでしょうか?」

◇7 テーマとなっていない「ジェンダー平等」

しかしブラックバーン教授の答えは、「考えたがる人はいない」という程度にとどまった。

ブラックバーン教授「政治的には、退位や引退を考えたがる人はいません。なぜなら、それは困難を生み、この改革をより物議を醸すような他の事柄を提起するからです」

これに対して、議長はいまだからこそ議論すべきだと訴える。

チョープ議員「いまなら中立的な立場で議論することができます。今のところ、退位や引退を望む人はいないので、中立的な立場で議論した方が良いのではないでしょうか?」

ブラックバーン教授「同感です。大規模な憲法改正は、気温が低く、理性的で感情的にならないときに行うのが最善です。その上で、おそらく党派を超えたサポートを受けることができます」

モリス博士「私はロバート(ブラックバーン教授)が言ったこと、そしてあなた(議長)がほのめかしていることを強く支持します。現在の議論から浮かび上がる良いことのひとつは、より継続的な組織を促進するだろうということです。今のところ、官僚たちは、首相が10月28日に提出した2つの提案に対処する以外に何の権限も持っていない」

しかし、結局、特別委員会は、王室がなぜ男子優先の継承ルールを採用してきたのか、女王即位後は王朝が変更され、新たな父系継承がスタートするという男系継承による王朝の支配が行われてきたことの意味は何かについて、1ミリほどの検証も検討もしていない。それでありながら、男子優先の王位継承ルール廃止を歓迎する報告書をまとめたのである。

それともうひとつ、委員会では「ジェンダー平等」はまったくテーマになっていない。あくまで男子優先主義の廃止を歓迎するというものに過ぎない。にもかかわらず、2013年王位継承法は「ジェンダーによらない」と明記している。いつの間にか「男女平等」が「ジェンダー平等」にすり替えられたということなのか。

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