「3≦7」は正しい。では「3≦3」はどうか…?あなたは「整数」をきちんと理解していますか?
食塩水の濃度や往復の平均速度など、仕事などでちょっとした算数の知識が問われる場面に出くわして、ドキッとしたことはないだろうか。「昔は解けたのに……」、そう思うのに解けない。そんな大人たちは本連載で今一度、算数を基礎から学び直してみてはどうだろう。 【漫画】月500時間、時給340円…雇われ店長が明かす「過酷すぎるコンビニ勤務」 長年、算数・数学教育に携わってきた桜美林大学名誉教授・芳沢光雄氏の新刊『大人のための算数力講義』(講談社+α新書)より抜粋して、「算数の重要な考え方」をお届けする。 『大人のための算数力講義』連載第20回 『0.007÷0.003の「あまり」をすぐに答えられますか? 「小数」と「分数」を徹底復習! 』より続く
「整数」の歴史
伝える情報は誤解なく正確に表現することが大切で、人類は長い年月をかけて客観的な表現として「整数」を生みだした。 紀元前1万5000年~紀元前1万年頃の旧石器時代の近東(北アフリカの地中海沿岸部、東アラブ地域、小アジア、バルカン半島など)には、動物の骨に何本かの線を切り込んだ「タリー」と呼ばれるものがあった。 それらの切り込みは、特定の「具体的事物」に関係していると考えられていて、一日一日の太陰暦を一つ一つの切り込みにしていたとする説がある。 イラクのウルクで出土した紀元前3000年頃の粘土板には、5を意味する五つの楔形の押印記号と羊を表す絵文字の両方が記されたものが見つかっている。これは5匹の羊を意味して、数の概念が個々の物品の概念から独立したことを表しているのであり、「自然数(正の整数)」の萌芽を意味している。 5という自然数が確立すれば、あまり大きくない他の自然数が確立することは自然の流れだろう。しかし、負の数や「0」の誕生は後のことになる。紀元前2世紀頃に書かれた古代中国の『九章算術』には、負の数の概念が用いられている。
「0」の二つの意味
0に関しては二つの意味がある。一つは、709の十の位が空白であるように、ある位が空白であることを意味することで用いる0である。それとは別に、0そのものを数として扱うことの意味もある。 前者の意味だけの用法は、既に古代バビロニアやマヤ文明でも扱われていた。その一方で、後者の意味も含めて0を表す記号を使い始めたのはインドで、5世紀から9世紀の間に0を含む10進法の記数法を発明したのである。以後、原則として10進数を扱う。 ……-4、-3、-2、-1、0、1、2、3、4…… という数全部を整数という。したがって、整数は次の三つの型から成り立つ。