【ロトン・コックローチの体液】か・・・
後でゴミと一緒に焼却処分しよう。
「ふんふん。成る程。【大死霊】の奥義にある怨念を別の存在に変換する技術の応用かー。」
起きた【設計王】がエナジードリンクを開けながら《グラッジ・アンデット・クリエイションver1.10》の紙媒体に書き写した設計図を見て分析している。
「まぁ、怨念動力ってことかな〜。要はガソリン扱いだね。これを応用すればMPとかSPの自動生成する機関が作れるねぇ。でもあんまし僕には縁がないかも〜。全自動卵割り器にも搭載できないし。」
全自動卵割り器はどうでも良いんだが。これでエンジン設計出来るだろ?
遺跡なんかだと《MPブースター》みたいなアイテムがあるらしいな。ティアンの寿命を減らすらしいが。
「出来るよぅ。マスターだから安全装置要らないよねぇ?アバターが多少摩耗するだけだしぃ。どうせデスペナで治るしね。」
出力バリバリで頼まぁ。でも即死するとか勘弁して。最近死にすぎてやばいし。
「良いけどぉ、これ何に使うの?怨念の宛は?怨念だまり限定って、あんまし普段使いには不便だよぉ?」
まぁ特典武具の怨念生成機能を使う予定だな。
「ンンー。まぁ良いよ。でも代わりに依頼しても良いかなぁ?君、掃除は得意だろう?」
どっちだ?内容によるぜ。
「両方ともかな。最近暗殺者が差し向けられていてね。多分皇国のティアンから。【設計王】は皇国で狙ってた人多いし。暗殺者は【毒術師】系統で知れている奴だよ。」
了解。でそいつはどうする?材料にするか?
「出来れば生捕ー。達磨さんでガチガチ拘束ー。最悪脳が生きてれば良いよー。出来なかったら最終奥義使われる前に処分でー。」
まぁ善処するわ。ところでその口調って何?
「気分!」
・・・・・
カルディナの夜。研究所から生活の光が漏れ出ており、住人はまだ起きて活動している。
暗殺者として鍛えられた手練れは気配を消して静かに入室した。
その首をへし折ったのはカーソンだ。紋章から物質化して奇襲を仕掛けた。
初めて暗殺者が音を立てて倒れ込んだ。流石カーソン。見事な手際だ。殺り慣れている。
紋章の内部では索敵に反応しない事を利用したテクニック。暗殺者の《気配察知》対策に俺が考案して【兇手】を正当防衛した。
しかしこれは本命では無かったらしい。捨て駒か。
ローブを被った不審者が建物の裏から出て来た。
「フシュ・・・フシュ・・・フシュ。」
呼吸音のような笑い声。正面から来たのは自信の現れか。
「こんばんは。ワタシは【猛毒王】アロ・ウルミル。フリーの暗殺者です。ここの主人に用がありましてね。通してもらえそうにないので、力尽くで行きますよ?」
「ああ。俺もあんたに用があってね。悪いがあんたはもう普通の生活は出来ねぇよ。」
「やれるものならやってみてくださいな・・・動けるならば。」
カーソンとルンバの体にはいつのまにか糸が巻きついていた。さらにSTR判定の【拘束】が発生している。糸の先は暗闇に溶けていて、どこから仕掛けられていたのかわからない。
「フシュシュ。ワタシが【毒術師】系統だから正面戦闘は出来ないと思いましたか?」
勝ち誇ったかのように笑みを浮かべるアロ・ウルミル。
「マスターは埒外の力を持つエンブリオがあろうと未熟も未熟・・・。手取るのは容易いことです。」
親切にも解説を入れてくれるらしい。俺のカンスト間際のステータスでも千切れない糸の正体を。
「それは純竜級のモンスターでさえ【拘束】する糸。人間を捉えることは容易いのですよ。さぁ、もうそろそろ死んでいただきますよ。皮膚から罹患する【猛毒王】謹製の毒。これもまた人間を容易く殺してしまう毒です。しかしじっくり時間をかけてね。」
ガラス瓶を手に持ってにじり寄ってくるアロ・ウルミル。そのタイミングでカーソルが糸を引きちぎった。
すかさず俺も《窮鼠精命》で【拘束】をアロ・ウルミルに共有する。
「な、なぜ糸が・・・!それにワタシにも【拘束】!?」
カーソンが手足を引き千切って無力化した。断面にポーションをかけて【出血】を止める。
「ググググッッ!!ガァ!?」
痛みにのたうち回ろうとしても【拘束】から動くことすら出来ない。【猛毒王】の貧弱なSTRでは【拘束】を破ることは不可能だ。
「いやぁ、本当に悪いと思っているよ。だって俺、アンタを全部メタっているもん。暗殺も毒も糸も。」
俺好みのシュチュエーションだ。超級職を嵌めるっていうのは。
たとえ【猛毒王】が絡め手で毒殺や刺殺を試みても無駄に終わっていた。状態異常メタの【瘴鼠衛衣】は状態異常で殺す【猛毒王】の天敵だ。
俺は状態異常の種類を問わず相殺出来るのだから。
「でも【猛毒王】なんだから今まで良い思いして来ただろ?これからは【設計王】の下で頑張ってくれや。」
メイド・イン・アビス・・・あれは良いものだ。俺もボンドルドは好きだった。
「ようこそ。【猛毒王】アロ・ウルミル。【設計王】のアトリエへ。」
カーソンはアイテムボックスや装備をあらかた剥ぎ取ってから気絶させた。
「くくくっ!イヒヒ!ヒーッヒッヒッヒ!!」
カルディナの夜に【高位霊術師】の狂笑が響き渡った・・・
・・・・・
【猛毒王】の最終奥義は《運命》という最強の毒による毒殺だ。
自身の生命力と魔力を混合変換し、対象と発射口である自身に病毒系最大の状態異常である【極毒】を付与する大禁呪。
その効力は耐性やスキルによるレジストも、魔法やアイテムによる回復も、一切不能。
死体すら【極毒】の汚染源になる為周囲ごと消滅させるしかない。
しかし弱点というものはある。
それは毒に物理干渉能力しかないという事だ。ゴーストやエレメンタルなどの肉体を持たない存在には毒すら触れることは無い。
つまり、溶けもしない非物理結界で隔離されるだけで無力化される。
そしてアイテムの開発は【設計王】の十八番だ。
「これが【猛毒王】か・・・」
俺の目前には【快癒万能霊薬】で満たされた培養槽があった。中には点滴に繋がれた脳と脊髄が浮かんでいる。培養槽の名札には「【猛毒王】アロ・ウルミル」と書いてある。
「うん。ジョブが離れない最低限にしてあるんだ!肉体は後で使うけど!」
どこから見てもマッドサイエンティストだな。で、これどうするんだ?スキルをこの状態で使わせるのは無理だろ?
「取り敢えず脳と脊髄は霊体化処理かな!【極毒】で死なないように!持ち運びも出来るし!あとは肉体に繋げて【極毒】精製機にする予定さ!」
おお。でも【極毒】って使いづらくないか?周囲は汚染されるんだろ?
「これから【極毒】の解析がしたくてね!毒も使いようだから!例えば消毒用に最終奥義を調整できればどんな細菌やウイルスの耐性も無視して細菌やウイルスを抹殺する毒が出来るかもしれない!」
すごいな。バイオハザードだけは起こすなよ?
「あと【極毒】精製機だけじゃなくて、繋いだ体で調合や毒の精製もしてもらう予定だよ!流石に【設計王】では【猛毒王】の領分は出来ないしね!」
取り敢えず依頼は完了って事で良いんだな?
「ああ!怨念動力については任せ給えよ!完璧な仕上がりにしてやる!」
俺は【猛毒王】の金で暖かくなった懐でカルディナの歓楽街に消えていった・・・
これはとある夢のVRMMOの物語。
アロ・ウルミル生存?√ 突入によりスプレンディダの【猛毒王】就職阻止・・・!
【result】
【設計王】は MAP兵器を 手に入れた!
ルンバは 久しぶりに 死なず カーソンと 歓楽街で 豪遊した!