最近司法局にマークされている。
アイツら《真偽判定》の結果に納得していないな?俺は心を痛めた。俺は正当防衛だと主張していると言うのに。
そこで奴は俺の情報を洗い出してボロを出さないか監視をしていると言う訳だ。俺は奴が滑稽で、怪しい裏道に入っては顔を変える追跡者を揶揄っている。
当然司法局も暇な奴らばっかりではない。不透明な事案など幾らでもあるはずだ。おそらくまだ入ったばかりの青い新人。
尾行もヘタクソだ。真面目そうで後ろ暗い事をやった事がない・・・
そして真面目だからこそ無罪放免に感情は納得できず証拠を集めようとしていると言ったところか。
カルディナには珍しい不器用で正直な人格だ。金と権力が全ての商人の国では人は器用にそして強かに育つ。カルディナはトップもそれを許容している。
損得勘定をしくじる奴は邪魔だ。敵対者に身内判定されて付け込まれる可能性があるからだ。
そっちの身内がウチに迷惑かけたんだから責任取れ、と言ってな。程のいい争いの火種だという訳だ。
ならば無能なりに利用して最後まで有効活用するか、最後まで有効活用では手間に対し採算が取れないと見て密かに始末するの二択だろう。
だからこそ擦り切れていない純粋な人格者は珍しい。訳ありの余所者かもしれないが。
そしてカルディナで生き残っていると言う事は運良く立ち回ったか、有能だと周囲が利用価値を見たか。或いはこれから淘汰されるのかもしれない。
だからこそ今できた悪縁はチャンスだ。これを機会に司法局へのホットラインが作れるかもしれない。いざと言うときに使えるし、社会的信用ができる。
例えホットライン役の現追跡者が淘汰される程度の人物であれば、この縁を使って別の司法局へのホットラインを築けば良いだけだ。どちらにせよ俺に損はない。
これ以上無いボーナスタイムだ。不器用で真面目な追跡者を籠絡して司法局へのホットラインをゲットしよう。
くくっ。下手に真面目な方が絡みやすい時があるんだよ。そういう奴は感情をくすぐってやるんだ。錯覚で気持ちよくさせて、自尊心と納得を与えて心を開かせる。チョロい。
むしろ不真面目な曲者の方が絡みにくい。暗黙の了解を得やすいが、場合によっては厄介な敵になり得る。
俺は角を曲がって待ち構えた。追跡者が索敵系の手段を持っていないのは確認済みだ。見失うまいと急いで走り寄ってくる。
俺は偶然忘れていた事があったかのように、追跡者の予想位置に重なるように移動する。
追跡者と俺がぶつかった。俺は体勢を崩した追跡者の手を引いて転ばないようにしてやる。
「あ、ありがとうございます・・・急いでいた、も、の・・・」
追跡者が驚いた表情で固まった。
俺は落ち着き払って偶然である事を強調した。
「すまない。俺はさっき通った場所に用事があったのだが通り過ぎてね。戻ろうとしてぶつかったんだ。」
嘘では無い。追跡者と接触しようとしていた時点でシチュエーションを決めていた。
だからさっきから自然にお詫びに奢る約束ができるように喫茶店を探していた。そして意図的に通り過ぎて曲がった。
さっきの言葉だと、用事を忘れていて、慌てて戻ろうとして意図せず衝突したかのように聞こえるが、俺は一言も「忘れていた」とか「慌てて」、「意図せず」とは言っていない。
俺は嘘は言っていないから《真偽判定》に引っかからない。
嘘と本当しかわからない《真偽判定》に俺は裁けない。
俺は正直に言っているだけだからだ。偽証する意思なんて自分にこれっぽっちも存在しないという事を理解している。
ありのままの自分を見せつけようとする俺に《真偽判定》はカモでしかない。
だから勝手にこちらを悪者にして待ち伏せされたと勘違いしてしまったと考える追跡者は罪悪感を感じて、助けられた俺に抱く悪印象を勝手に帳消しにしようとする。
ここから畳み掛ける!帳消しの好印象を更に後押しして±0から俺のイメージをアップさせる!
「ぶつかってしまったお詫びに喫茶店で奢りますよ?丁度そこに用事があったんです。お時間大丈夫ですか?」
罪悪感を感じていた追跡者は提案された誘いに乗って帳消しにしてしまおうと考えた。
さっき咄嗟に急いでいたと言っていたことすら忘れて。
「え、ええ。良いんですか?でしたらお言葉に甘えて。」
俺は追跡者と俺に有利な好条件で接触する事に成功した。
・・・・・
「ここに来るのは初めてなんですが過去に見た時良さそうだなって思ってたんですよ。」
「俺はこう見えて甘党でして。甘いものには目がないんです。」
「あぁ。そうそう。自己紹介が遅れて申し訳ない。俺は【高位開拓家】のルン・バ・ンル。呼びやすいようにルンバと呼んでください。」
俺は相席してから積極的に話しかけていく。話しやすいように空気を調整しながら反応を観察する。
追跡者が自己紹介に礼を返した。
「こちらこそ名乗るのが遅れてしまいました。私は【高位書記】のクリストミア・レッセル。ファミリーネームのレッセルとお呼びください。ルンバさんは甘いものがお好きなんですか?」
乗ってきたか。この調子で・・・
「ええ。昔知り合いの菓子作りが上手い人の菓子を食べてから、好きになりまして・・・」
・・・・・
最終的にフレンド登録できたぞぉ!やったぜ。
ようやくネカマ【拳姫】とTSジーエン以外の女性フレンドがフレンドリストに・・・
ふふふ。やはり俺はああいった人間は好きなようだ。簡単に操れる自信があるからなぁ。
レッセルへの好感度がグングン上がる音が聞こえる。
大方あのチョロさでは騙されやすいと思うのだが・・・《真偽判定》が防波堤になっているのかね。
自分に危害を加えるつもりか、と質問してしまえば答えざるを得ないだろうしな。
答えようとしないのは黒、《真偽判定》に反応すれば黒、反応しなければ白だ。
俺は危害を加えるつもりも微塵もないので余裕で通過したが。騙す必要はあっても危害を加える必要はないからな。
司法局に遊びに来ても違和感を感じない程まで、レッセルと司法局をじっくりと攻略してやるぜ・・・!
さてと人物攻略パートから冒険パートへ移行するとしよう。
まずは【高位開拓家】をカンストさせてから【死霊術師】に就くとしようか。ステータスが上がっている状態でのレベル上げの方が効率が良い。
それにカルディナには十分なほどに負の想念が漂っているからな。怨念の扱いに関与出来るようになれば面白い事が出来るだろう・・・
というか俺が面白いと思った事って大抵UBMに繋がってない?
いや【塞翁の虹運賽子】のマイナスLUCの所為かもしれない。あれは中毒性と危険性が高すぎる。禁制品にもなるか。
あれはギャンブル中毒者に渡してはいけない逸品だ。
やらかした現所有者の感想には説得力があった。
因みに俺が怨念に関与できてたのは【グデアメール】=俺になったっていうのもあるがね。
ジョブシステムで【高位開拓家】が【死霊術師】のジョブスキルは使えないが・・・
俺には【グデアメール】が最後に俺に残した【忌騎融鎧 グデアメール】があるからな。
【忌騎融鎧 グデアメール】
〈古代伝説級武具〉
混濁の怨念に侵されて尚、使命に殉じた死霊騎士の概念を具現化した至宝。
所有者に融合し、生前に発揮した膨大な怨念を統制する力を貸し与える。
※譲渡売却不可アイテム・装備レベル制限なし
・装備補正
AGI+50%
・装備スキル
《禁忌融騎(グデアメール)》
奴の功績は高い。俺の才能を発掘してくれた怨人()だぜ。
まさか【死霊術師】の、更にいうと怨念の支配に才能があったとは思わなかったしな。俺はもっと表世界的な才能だと思ってたけど。
そして初のUBMの名前を冠した装備スキルだ。【ヘイロン】は未だに未解明スキルがあるが。
【ヘイロン】自身が言うに、未だに条件達成していないかららしい。そして認識操作系のスキルになるだろうと。
まぁ、【ヘイロン】が言わずとも特典武具の説明欄に「認識を惑わす」って思いっきり書いてあるがね。
話が脱線したが【グデアメール】の《禁忌融騎》は大まかに言ってしまうと怨念に関するスキルのストックだ。そして怨念を自動生成する機能も付いている。
【死霊術師】に就いて《アンデット・クリエイション》を【グデアメール】にストックしておく事で【高位開拓家】をメインジョブにしていてもストックした《アンデットクリエイション》を使う事ができる。
ストックは使用しても消費せず、複数のスキルをストック出来る。
しかし条件としてスキルの発動には人馬形態に融合する必要がある。その時種族が【キメラ】に変化する。
アンデットと生者が混ざっているからだろうな。融合素材の【メルティック・コアハートver1.23】の影響だろう。
製作者も特典になるとは思うまい。いや・・・或いはUBM級のモンスターを作りたいが為に・・・?UBMすら融合させたこれなら【竜王】だって・・・
何にせよ製作者についての手掛かりはゼロだ。もう死んでいてもおかしくない。
禁忌研究者の末路って傍迷惑な暴走ってオチが決まってるんだよなぁ・・・
その人のお陰で黒い卵の呪物を安全?に処理できたとも言えるが。黙祷。
そしてなのだが。ver1.23なのだ。つまり最悪の場合、他にも【メルティック・コアハート】の前身、或いは後身の制作物が現存するということでもある。
実験に使用済みであれば良いのだが。UBMが全部取り込んで【メルティック・コアハート】を能力として獲得したとかマジで勘弁してほしい。絶対相対したくないタイプだ。
見た目がきっとグロテスクなクリーチャーになっているに違いない。俺はすごくキモイのは精神的許容対象外だ。
この被害妄想が現実にならない事を祈る。・・・なんか研究職が危惧したけど実際に事故ったバイオハザードのレポートの一文みたいだ。
フラグか?
「フラグじゃの。主様は余計な事を考えて巻き込まれるタイプじゃて。」
お前は好奇心で知り過ぎたんだよ・・・って奴だな。
「それは所属組織に処理されるパターンではないのかのう。禁忌はアイデアロールからのSAN値チェックのほうじゃの。」
クトゥルフTRPGか。【ネクロマンサー】系特典武具の背景にピッタリだな。
ピッタリとか言ってる場合じゃねぇな。死ぬよりひどい目に遭うことが確約されているじゃん。
まぁ俺はそんなディープな場所に行く予定などないから誰かがやってくれるだろう。フラグがいつまでも実現するわけでも無いし。
俺だけが主人公なんじゃない。生きとし生けるもの全てがそれぞれの主人公なんだ。
だから・・・
SAN値チェックを強いられるであろう未来の犠牲者(主人公)に敬礼!
これはとある夢のVRMMOの物語。
100(×3)日後に死ぬルンバ。組織に呼び出され怪しげな研究所最奥にて神話級生物に遭遇、SAN値チェックに失敗して発狂。
ルンバとカーソンの子供は何人欲しいかアンケート
- 一人(抗菌と同じく特典化)
- 双子
- 五つ子(五等分の花嫁√(嘘))