これはとある夢のVRMMOの物語。   作:イナモチ

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幻の巨大ツチノコを求めて

ツチノコである。

 

ツチノコは地球上で目撃例がいくつもあるUMAの名称だ。様々な蛇と見間違える事が多々あった為まだ正式に発見されてはいない。

 

そしてデンドロの秘境にて湧いて出たツチノコの目撃例が掲示板の住人達に激震を走らせる事になる・・・

 

我々は掲示板で有志を募り、ツチノコ捜索隊を結成し、発見現場へと急行した。 

 

これは数々の困難を乗り越えた捜索隊の物語である。

 

 

というわけで俺である。今俺は捜索隊輸送係として体内に捜索隊のメンバーを詰め込んでいた。

 

「い、痛い痛い痛い!無理に詰め込むなぁ!!」

 

「なんかネチョネチョしてる・・・」

 

「側から見たら鼠に喰われてるようにしか見えねーな」

 

「もっと他に方法は無かったのか・・・」

 

「それっぽいような気がしたが、やっぱ気の所為だったわ。」

 

俺の全身はエンブリオと融合している為体内を自由に操作できる。胃袋に生成される胃酸を止めたり、必要ない消化器官を一時的に消去して、人が沢山入れるように意図的に体内空間を膨張させたりな。

 

捜索隊の中に大規模な輸送に適したエンブリオが居なかったのが惜しまれる。いても精々何人か乗りのチャリオッツのエンブリオだった。

 

俺だって体内に男を入れたく無かったが、時間短縮が優先された為、俺はジブリの猫バスと化したのだ。鼠だけど。

 

体内に宿儺の口を生成してアナウンスする。

「この度は猫バス式輸送エンブリオのご利用、誠にありがとうございます。走行時にはログアウト出来ませんのでご注意ください。

到着予定時刻はデンドロ時間で正午前になると予想されております。

また、揺れが激しい事が予想されますがシートベルトもエアバックも吊革すら御座いませんので頑張って耐えてください。」

 

全員を格納した俺は四つん這いになってダッと走り出した。

 

ごちゃ混ぜになって悲鳴をあげる捜索隊の音を置き去りにして。

 

 

秘境に到着。ゲロロロロロと吐き出されたヘロヘロのヌチョヌチョになった鼠のゲロ達が一時休息を提言した為、俺とカーソンは口直しのフルーツを食べていた。

 

ログアウトとログインを繰り返して粘液を落とした捜索隊の面々が其々想いのままに休息を取っている。この時点で脱落したものはいない。心が折れかけていた者は幾人かいたが。

 

この黄河帝国の秘境にツチノコ特有の形状をしたモンスターを見たというマスターの発見談によると、それは長さ30メートル型の大型だったらしく、かなり強かったらしい。もしかしたらUBMかもしれないそうだ。

 

まぁ具体的な能力が話されていない上にデスペナでスクショを上げる事が出来なかった時点で信憑性はお察しなのだが。

 

デンドロは当然のように象を超えるモンスターが生息している。大きければ強いというわけでもないが、ある程度の指標にはなる。種族の中にはレベルが高い程巨体化する種族もいるからだ。人型よりも魔蟲、怪魚、エレメンタル、魔獣・・・など。

 

少なくとも今回なら亜竜級は悠に超えているだろう。純竜に届いていてもおかしくはない。

 

ツチノコ捜索隊と称しているがメンバーの中には【高位従魔師】や捕獲に特化したメンバーもいる為、遭遇して弱らせたら捕獲班が捕獲する作戦だ。

 

もしツチノコを捕獲してスクショを上げることに成功したのであれば、デンドロの掲示板にて伝説となるだろう・・・

 

ここ黄河帝国の秘境は高レベルのモンスターが生息する仙人の鍛錬場として知られている。

 

高レベルのモンスターとの戦闘によるレベル上げは常に命の危険と隣り合わせだから、滅多にティアンが入って行く事はない。

 

命知らずのマスター達で構成された探索隊はモンスターとの戦闘や険し過ぎる地形に一人一人を犠牲に出しながらも、着々と探査能力を持ったエンブリオの有効範囲を広げて行く。

 

ここで問題が発生した。探査能力の仕様がそのマスターに牙を剥いたのだ。

 

マスターが移動した道をマーキングしてサーチ範囲を広げて探査するタイプのスキルなので、凹凸が激し過ぎる地形を脆弱なマスター本人が踏破しなくてはならないのである。空中に浮かべたり、誰かが抱えて運ぶのはNGだったのだ。

 

これに対し探索隊は人力で土地を整地した。エンブリオで崖を埋め立て、針山の如し道をへし折って行く。時に探索隊のメンバーを捨て駒の踏み台にして、脆弱なマスターを全員でサポートしていく。

 

生命の危機と険しい困難に探索隊の心が一致団結する音がした。

 

もはや整地隊になって当初の目的を見失った探索隊は秘境を平坦な土地に開拓し始めた。

 

エンブリオとジョブとこの手ならどんな地形も真っ平らにできる自信が湧いた。探索隊は整地に美学と技術点をつけ始める始末だ。

 

今の整地はダメだとか、コレは整地のレベルが高いですねとか、もう此処を整地の聖地にしてしまおうとか宣う整地教という名の信仰がマスター達の間で芽生えた。

 

当初の探索隊は避けていた筈の高レベルモンスターとの戦闘を積極的に狩り尽くさんばかりに攻め込み、住処を死守せんとするモンスターと死闘を繰り広げる。

 

俺もステータスが馬鹿みたい高いモンスターと取っ組み合いをし、ステータスは低いが厄介なモンスターを速攻の剛拳で凹ませる十面六臂の活躍を繰り広げた。

 

その結果。

 

秘境は平地になるまで開拓された。雲に届くほどに高い山、光が見えない谷の険しい凹凸は消えて無くなり、究極まで平に削られた事で、太陽の光を反射してツルツル光る平地が黄河の地図に載った。

 

探査エンブリオのマスターはいつの間にか探索隊のリーダーとなっていた。数々の犠牲と献身が彼の責任感とリーダーの資質を育み、強いカリスマを以ってリーダーシップをとる開拓団の団長に成長させた。

 

顔つきも驚きのハンサム顔になっていたし、体付きもジョジョの奇妙な冒険に出ても違和感がなく紛れ込める。色濃い疲労と感無量の達成感を浮かべた精悍な顔をオレンジ色に染まった夕陽が色濃く照らしていた。

 

俺たち探索隊のメンバーは立派に成長した彼の姿を見て、ホロリと涙を静かに流した。

 

脆弱な要介護者が益荒男達の統率者になるまでの記録を撮影して編集し、動画に投稿した結果、多大な評価を得る事になった。ニュースにも取り上げられた。

 

動画投稿に携わったマスター達は感動で涙が止まらず、脱水症と過呼吸になった。

 

我々は人力で初めてデンドロの危険極まりない大自然を踏破したのだ。

 

きっとこの開拓団ならばどんな困難も整地して未来だって開拓できる。そんな明るい展望を胸に抱いた・・・

 

これはとある夢のVRMMOの物語。

秘境全てのモンスターを率いた総大将であるツチノコ体型のハイエンド地竜との総力戦は激しい接戦を繰り広げ、全員の記憶に深く刻まれる出来事となった・・・

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