家の隣にオーストラリア人夫婦が引っ越してきた。古民家を買い取り、風呂からトイレから全部自分たちで修理しながら暮らしている。まだ風呂が完成しておらず、近所の温泉浴場でたびたび会う。彼らは、手拭いと石鹸を持って銭湯に行く。見た目は洋式だが、様式は日本人だ。彼らに「あなたの仕事は何か」と聞かれて困った。私は仕事をしていない。蓄えがあるわけでもない。だが、生きている。生きているというか、生かされている。だから「I do nothing. God does everything.（私は何もしない。神がすべてを行う）」という、極めて怪しい返答をしたら「ワオ！禅マスター！」と讃えられた。

ありがとうありがとうと言いながら生きていると、なんだか知らないけれどいい感じになる。言霊はある。悪い言葉を使うと悪い出来事が起こり、良い言葉を使うと良い出来事が起こる。自分をオープンにしていれば人間は死なない。自分をクローズドなものにすると、多分、簡単に死ぬ。問題は自意識。自意識が爆発すると、誰にも助けを求められなくなり、孤独死や餓死に怯えて、実際に孤独死や餓死をしてしまう。そんな時は「世界は私を助けたくてウズウズしている」と思い込む。嘘でもいい。思い込む。すると、実際にその通りになるからワンダフルである。世界を敵視すると、世界はオーダーに応えて敵になってくれる。世界と相思相愛になると、世界はベストフレンドになってくれる。

好きなことをやるのではなく、嫌いなことをやらないのである。生活は楽に、人生は楽しく。予定がない時は、日光浴をしながら一日中ぼけっとしている。何も考えない。何も決めない。このまま何もしないでいたら本当に死ぬなあとか思いながら、命を賭けてのんびりとする。すると、面白いことに、余白に奇跡が舞い込む。交通費を出すから一緒にハワイに行かないかとか、君に会いたいからどこそこまで来てくれとか言われる。暇な私は、即座に行く。大概の人は優しい。いつも坂爪さんの言葉に力をもらっていますとか言われたりして、お金や食べ物をもらったりする。私に定期的な収入はないが、不定期な奇跡は多い方だなと思う。私は奇跡でメシを食う。奇跡と書いて「神の愛」と読む。

私は頻繁に自分を褒める。自分を褒める私を見て「この人は頭がおかしい」と苦虫を噛み潰したような顔をする人がいる。苦虫は神だ。神を噛み潰してはいけない。自分や他人を責めるのは自殺行為である。熱海駅前に女の子をたくさん侍らせている男性オーナーの喫茶店がある。そこまで大きなお店ではないのに、常時複数名の女の子をバイトで雇い、楽しそうに仕事をしている。女の子たちにやらされている感は皆無で、男性オーナーをお父さんのように慕い、和気藹々と働いている。私は「いいな」と思う。彼らを見て「けしからん！真面目に働け！」と怒る人もいる。だが、彼らはクレーマーよりも自分たちの居心地の良さを優先する。だから、心に余裕がある。心に余裕があるから、お互いを労い合える。みんな仲良くすれば、どんな仕事も楽しくなる。労い合う姿は美しく、尊い。

読者の方から「私は今まで平凡に生きてきて子どもが二人いる主婦です。圭吾さんみたいなしびれる男性は私とは世界が違うと、惚れられるどころか惚れることも諦めてるところがあります。圭吾さんにお会いする機会があればそのときにはいいオンナだなと思われるように、これからは自分を剥き出しで生きていこうと思います」と連絡をいただいた。私は「○○さんは絶対平凡な人ではないと思うので、プレシャスな部分を保ち続けてください」とお願いをした。自分を平凡だとか何も取り柄がないとか太っているとかダメだとか、そんなことを言ってはいけないのだ。自分の愛するこどもが言われたら絶対に傷つくような言葉を、自分自身に言ってはいけない。自分を、自分のこどものように大切に扱うのだ。あなたは絶対に平凡じゃない。プレシャスな部分を保ち続けてください。これは俺からのお願い。ステイビューティフルでお願いします。困った時は、呼んでくれ。今日も明日も明後日も、私は、命を賭けてのんびりとしている。この星と、相思相愛になっている。