風花雪月場面切抜短編   作:飛天無縫

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 オリジナルキャラが登場しますので注意。

 イベント発生条件
・ベレトとジェラルトとの支援レベルC以上
・ベレトと自学級生徒全員との支援レベルC以上
・ジェラルト傭兵団レベル5


捏造支援会話、黒鷲と傭兵団

 それは、とある平日の授業の一つ。

 ベレトに連れられて修道院近くの平地にやってきた黒鷲の学級(アドラークラッセ)一行。

 普段はこうして外に出るとガルグ=マクの外周を走る他に、学級の生徒を二つに分けて演習を行うのが恒例である。指揮官役を切り換えながら何度もやっていると、自身より位の高い貴族を指揮下に置くことに初めは緊張していた生徒も、今では慣れて素早く指示を出せるようになっていた。

 

 だがこの日はいつもと違い、セテスに申請してセイロス騎士団の部隊を一つ貸し出してもらって生徒の相手をしてもらうことになっている。

 大陸最強と名高い騎士団の胸を借りられる機会に、生徒の多くは興奮し、士気は高まっていた。一部憂鬱そうな生徒もいるが。

 

 そして平地に到着した彼らを、相手をする騎士団の部隊が迎えたのだが……意外な一団と出会うことになった。

 

「お、来た来た」

「おせーぞレト坊!」

「鐘は鳴ってないから予定時刻前ですよ」

「レト坊、久しぶりー!」

 

 近付いてくる黒鷲の学級に気付いた彼らが、先頭のベレトを見て忙しなく騒ぎ出したのだ。

 

 ──れとぼう?

 

 耳慣れない呼び方をする彼らは瞬く間にベレトを取り囲み、肩を叩いたり、頭をワシワシ撫で回したりして親し気に絡んでくる。ベレトも特に抵抗することなくされるがままでいて、それが当たり前の様子に見えた。

 

 困惑が生徒達の間に広がり、次いで興味が湧いてくる。

 

「失礼します。貴方方が本日私達と演習してくださるセイロス騎士団の方々ですね? (せんせい)とはお知合いですか?」

 

 代表して尋ねるエーデルガルトに、ベレトの周りから一人離れた男が対応した。白髪交じりの頭を掻く男の顔には幾つもの皺が浮かんでおり、他の者よりかなり年嵩だと分かった。

 

「いきなりすまないね。その通り、俺達が今日君らの相手を任された一団だ。よろしく……って、なんだ、あんただったのかい」

「? どこかでお会いしましたか?」

「まあ直接話したわけじゃないし、俺が一方的に知ってるだけだ。ルミール村でジェラルトさんのとこに押し掛けてきたろ? あそこに俺もいたんだよ」

「では、ジェラルト傭兵団の?」

「そうそう。ジェラルトさんがセイロス騎士団の団長になった時に、傭兵団はガルグ=マクを拠点にすることにしてさ。あれから俺達は騎士団から依頼される形で仕事してるんだよ。で、今日の仕事が君ら生徒の演習相手ってわけ」

 

 鍛えられた大柄な体躯に愛嬌を感じさせる笑みを浮かべ、男は手を差し出す。

 

「レンバス=ディックだ。よろしくな」

「エーデルガルト=フォン=フレスベルグです。今日はよろしくお願いします」

 

 普段から傭兵団の中心になって動いているのか、こうやって代表して挨拶する姿に緊張は見えなかった。

 しかしエーデルガルトが握手に応じると、呆気に取られた顔を見せる。

 

「どうかなさいました?」

「いや、えらい丁寧な対応されて驚いてさ。君、帝国の皇女なんだろ? 俺みたいなしがない傭兵の手をすんなり握ってくれてびっくりしちまったぜ」

「ああ……貴族の中には、平民を見下して当然だと考える愚か者がいることは否定できません。私はそんな浅ましい視点を持たないだけ。何よりみなさんはジェラルト殿の部下、そして師の御仲間だった人でしょう。それだけで尊敬に値します」

「なるほどねえ……レト坊はいい生徒に恵まれたんだな」

 

 しみじみと呟くレンバスは目を細めてベレトの方を見やる。視線の先では未だに賑やかに騒いでおり、はしゃぐ傭兵達に混ざって一部の調子に乗った生徒が一緒になってベレトを振り回しているところだった。

 何故かベレトに肩車してもらっているカスパルから目を離し、エーデルガルトは疑問を口にしてみる。

 

「先ほどから言っているレト坊とは、師のことですか?」

「ああ。あいつの名前、ベレトだろ? そこから取って」

「師の年齢は知りませんが、流石に『坊』と呼ぶのは無理があるのでは……」

「んー、でもなあ、俺達はあいつがガキだった時からレト坊呼びが続いてて、もう呼び慣れてるから今さら変えるのもなあ。あいつも嫌がってないし、いいんじゃね?」

 

 ぴくり、とエーデルガルトが反応したのは自分の師をぞんざいに扱うレンバスの態度ではない。

 ガキだった時から──彼の子供時代を知っているとは、この男はジェラルト傭兵団の中でも相当な古株と見た。強者であることは予想できるし、何より……小さい頃のベレトを知っているとは興味深い。

 

「ほーら、お前らその辺にしろ。仕事で来てんだぞ俺らは。演習すっぞ演習」

 

 何やら行楽気分になりかけてる集団にレンバスが割って入った。

 気を取り直すために手を叩いて注目を集めるも、今度は傭兵達の興味が一緒にいたエーデルガルトに及んだ。

 

「どもども皇女様、俺はヨニック、よろしくね」

「僕はジードです、よろしくお願いします」

「はいはーい、俺ダンダ!」

「初めまして、ガロテと言います。いつもレト坊がお世話になってます」

「俺もジェラルトさんと一緒にあの時いたよ。ドナイってんだ」

「だー!! いいかげんにしやがれ、仕事だっつってんだろ!! 生徒とは言っても貴族を相手にしてんだ、シャキッとしろ! ジェラルトさんの顔を潰す気か!」

 

 若い者から年配の者まで、次々に名乗る陽気な傭兵達をレンバスが一喝する。彼らの態度は相手次第では馴れ馴れしいと評してもおかしくないもので、事実一人の少女に寄ってたかって詰め寄る様は、背後でヒューベルトが目付きを険しくするくらい無礼と判断されても仕方ないものだった。

 しかしその少女は他ならぬエーデルガルトである。大勢のむさ苦しい男達に詰め寄られた程度で臆するような大人しい性根は持ち合わせていない。自身の従者に抑えるよう小さく手振りで伝えてから、悠然と彼らに向かい合う。

 

「初めましてみなさん。黒鷲の学級の級長、エーデルガルトです。本日はよろしくお願いします」

 

 粗野な男に囲まれても怯まず、逆に優雅に微笑んで一礼する姿に感心の目が向けられた。

 彼らもベレトの元同僚。先ほどの様子を見れば傭兵だった時から家族のように親しい仲なのが見て取れた。ジェラルトやレンバス同様、彼らを見下すつもりはエーデルガルトにはない。多少の無礼さも傭兵という出自を思えばこれくらいは当然、むしろ可愛げがあるというもの。

 

 そして何より、こうして見渡せばはっきりと分かる。

 ──強い。

 幼き頃からの貴族との付き合いを始めとして、魑魅魍魎の闇を見続けてきたエーデルガルトは、その磨かれた観察眼で改めて目にしたジェラルト傭兵団の力を感じ取っていた。

 力ある者には相応の敬意を払うという彼女の信条からしても、目の前の傭兵達を侮るつもりはないのだ。

 

 挨拶を済ませた一行は予定している場所へ動く。この日は平地、荒れ地、森の中と三か所でそれぞれ演習を行うことになっている。

 

「そっちの指揮をするのはレト坊だろ?」

「ああ。そちらはレンバスか」

「おうよ、久しぶりの指揮勝負だな」

「手加減はしなくていい」

「当たり前だ。お前とやるのに手ぇ抜いてられっかよ」

「なら、いつも通りか」

「おう、いつも通りな」

 

 ベレトとレンバスが幾つか示し合わせると、まずは平地での演習を始めるために分かれて開始位置に向かった。

 

 いよいよ始まる演習。その第一戦に備えて、生徒達はベレトの指示を仰ぐために集結する。

 そこで出された彼の言葉に多くの者が驚いた。

 

「今日の演習、勝てると思えないから勝つことは考えなくていい」

 

 口調は端的でも、日頃から生徒相手に真摯に向き合い、放り出したことのないベレトの発言とは思えない物言いである。

 これまで戦いに臨むのならば必勝を志すものだと教えられた生徒達は困惑した──一部の者を除いて。

 

「なんだよ先生、俺達じゃあの傭兵団に勝てる見込みがないってか? 強そうだってのは分かるけど、今なら俺達だってけっこうやれるぜ?」

 

 不満に思ったカスパルの言葉に何人かの生徒も頷く。

 それに返されたベレトの言い分は実にさっぱりとしたもの。

 

「その通りだ。練度も場数も違い過ぎる」

 

 話にならないとさえ聞こえそうな彼の断言は、自信を深めてきた若者の癇に障るものだった。

 

「待ってくれ先生。我々もすでに何度か実戦を経験している。貴方の指導の下、日々鍛えられているのだ。いくら相手が精強とは言え、そう一方的に押されるようなことにはならないだろう」

「やれば分かる」

 

 侮られるのは堪らないとばかりにフェルディナントが口を挟むも、対するベレトの態度は冷めたものである。

 訝しむ生徒達の前でベレトは演習に臨む編成を発表した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時刻は飛んで昼。演習を終えた黒鷲の学級とジェラルト傭兵団は修道院に帰り、今は食堂に集まっていた。

 正午を告げる鐘は鳴らされておらず、他の学級はまだ授業中ということもあって、昼食を支度するために忙しなく動く厨房以外はそこまで人影が多くない。

 

 戻ってきた彼らは二つのグループに分かれていた。

 片や傭兵達を中心に和気あいあい。

 片や落ち込む生徒達がどんよりぐったり。

 両極端な集団は食堂内に奇妙な空気を漂わせていた。

 

 それを一歩引いた位置から眺めるエーデルガルトは、相席するレンバスに話しかける。

 

「これが今日の狙いだったのですね」

「あんたはやる前から気付いてたみたいだけどな」

「上を目指す向上心は大切だけれど自身の立ち位置を見失ってはいけない……自信と慢心は別物だと心得ております」

「他にも分かってる生徒は何人かいたし、早い内に理解できてよかっただろ」

 

 鷹揚に頷く皇女を見て、歴戦の傭兵はニヤリと笑ってみせた。

 

 計三回行われた演習。黒鷲の学級は全敗を喫した。

 ベレトの不穏な言葉を聞いて逆に発奮した彼らは勇んで演習に臨んだのだが、結果は惨憺たるものに終わったのだ。

 

 前述したように、平地と荒れ地と森の中でそれぞれ演習が行われ、ベレトが指揮する黒鷲の学級とレンバス率いるジェラルト傭兵団がぶつかった。

 言いぶりはあれでもベレトの指揮はいつもと変わらず鋭く、果断で、的確だった。彼の指示で動く生徒達はいつも通り、自分の力を何倍にも高めてくれるような巧みな采配に従い、戦場を駆けた。

 そしてすぐに理解する。ジェラルト傭兵団が自分達より遥か高みにいることを。

 

『一体どういう体をしてるんだこの人達は!?』

 

 それが黒鷲の学級の総意だった。

 打ち合えば押し負けて、追えば逃げられて、逃げれば回り込まれて、行動の悉くを上回られてしまう。小手先の技術とかではない、同じ人間だとは思えないほど体の力が凄まじいのだ。

 演習の敗因がベレトの指揮が甘かったわけではないのはすぐに分かった。彼の指揮の巧みさでも覆せないくらい、自分達と傭兵団の面々とは根本的な実力に開きがあることが明らかになった。

 

 特に酷かったのが三戦目の森の中。

 ベレトの授業を通じて悪路を走ることには慣れていると自負を高めていた生徒達を嘲笑うように、傭兵達は木々の間を軽やかに駆け抜け、時には木に登って枝から枝へと飛び移るという獣染みた身のこなしで翻弄してきた。

 初めて体験した三次元戦闘(ジャングルファイト)に対応できる者は一人もおらず、黒鷲の学級は手も足も出せずに畳みかけられたのだ。

 

 その様、まさしくきりきり舞い。

 ノーマルモードでぶいぶい言わせていたところを、知識も準備も無くルナティックモードに放り込まれたかの如き大敗だったのである。

 ……ルナティックを知らない人には分かりにくい例えかもしれない。ごめんね。

 

 そんな有様だったので、生徒達の大半は自信を砕かれて落ち込んでいるのだ。

 フェルディナントやペトラのように、誇りを持っている者ほど実力差に衝撃を受けてしまった。

 逆にカスパルやドロテアみたいに拘りが薄い者は、サクッと気持ちを切り替えて傭兵達に積極的に絡んで話し込んでいる。

 生徒の間でも、今日の敗北の受け止め方に差が出ていた。

 

(師に導かれて、私達は確かに強くなってきているし、実戦でも勝利を重ねてきた。だからと言って生徒一人一人が急に変わったわけではない。私達は若く、まだまだ経験の浅い未熟者だわ。今日の演習を通じて師はそれを教えてくれたのね)

 

 どんなことでもそうだが、人は慣れてきた頃が一番危ないものだ。

 往々にして人は慣れる生き物だ。それは習熟してきた証であると同時に、どうしても警戒が薄れてくるということ。普通の仕事であれば多少の失敗はその後の働きで挽回できるが、戦場では些細な落ち度でも命取りになりかねない。

 

 黒鷲の学級は確かに幾つかの課題を経験した。騎士団の補佐があったとは言え、賊の討伐、反乱の鎮圧、修道院の警備など、まだ学生の身でありながら実戦を経験し、ベレトの指導もあって急速に成長しているのは間違いない。

 しかし、そんな彼らはまさに『慣れてきた頃』の真っ只中。それを敏感に感じ取ったベレトは現状を危惧したのだ。

 ジェラルトに相談し、学級にテコ入れするための方法としてセイロス騎士団と演習をすることになり、セテスを通じて正式に一つ部隊を貸し出してもらえることになった。それが親しんだジェラルト傭兵団だったのは父の親心なのかもしれないが。

 伸びた鼻をへし折られた経験を教訓にして今後も成長してほしい、というのがベレトの狙いだったのだろう。

 

 そこまで考えてエーデルガルトはそのベレトのことを思う。授業が終わって修道院に帰り、こうして食堂に来てから彼が厨房に向かうところを見た。ただ、今日の食事当番だとは聞いていない。

 修道院に住まう者が持ち回りで務める食事当番は夕飯の時である。朝と昼はそれ専用の雇われ人が担当しているので、ベレトがやるにしてももっと後になるはず。

 

「レンバス殿、師とは先ほど何を? 何やら目配せしていたのは見ましたが」

 

 向かう直前、ベレトがレンバスと意味ありげに目線でやり取りしていたのをエーデルガルトは見ていた。ベレトはいつも通りの無表情だったが、レンバスの方は殊の外嬉しそうな笑顔だったのが気にかかる。

 

「そうか、お嬢は知らなくて当然か。さっきのは俺らの間じゃいつものやり取りなんだよ。勝負して負けた方が勝った方に何か奢るっていうやつ」

「ああ、演習で負けたから……って、お、お嬢?」

 

 サラリと使われた呼び方に驚く。

 

「すまんすまん。あの後俺らが話してる時にあんたのことが話題に出て、貴族のお嬢様っぽいよなーだったらお嬢かーじゃあお嬢でーってな具合に呼んでたら、呼び方が定着しちまってさ」

「は、はあ……」

「嫌ならやめるぜ? 他の奴にも言い聞かせとく」

「……いえ、そうではありません。初めて聞く呼ばれ方だったので驚いただけです」

 

 頭の中で反芻してみると、意外と悪くないと感じた。

 ぞんざいでありながらどこか親しみを感じる呼び方がエーデルガルトには新鮮で、学級の仲間や貴族相手では得られない面白さがあった。

 

「私は構いませんよ、その程度で無礼だとか騒ぐつもりはありません」

「ならいいが……話を戻すと、俺がレト坊との勝負に勝った時はいつも同じことを頼むのさ」

「同じこと?」

「飯作ってもらうんだよ、あいつに」

 

 余程楽しみなのか、ニコニコと上機嫌でレンバスは語る。

 

「知っての通りレト坊は全然表情を変えなくて何考えてるか分かりにくいんだが、昔から妙に根気のある奴でさ。教えた当初は下手くそだったのに、黙々と練習していつの間にか料理上手になっててよ。何かあったらあいつに飯作ってもらうのがうちじゃ定番になってんのさ」

「賭けの報酬にするほどなのですか?」

「そうさ、傭兵のさみしい生活の中だと美味い飯ってのは貴重な楽しみでね。お嬢はあいつの飯を食ったことないのか、まあ教師をやってりゃ作ることもないかな」

「修道院に住まう者の奉仕活動の一環として師も夕食の当番に回されることもありますが、確かに一人で料理する姿は見たことがありません。そうだったのですか……」

 

 興味深い話を聞くことができた。やはり昔からベレトを知るレンバスは、昔のベレトを色々と知っているようだ。

 師は料理上手──大事な情報として胸の内に書き留めておく。

 

 そうやってふむふむと頷くエーデルガルトを、レンバスはまるで微笑ましいものを眺めるように見やって言う。

 

「それよりあんた、俺に聞きたいことがあるんじゃないか?」

「……そうですね。是非とも伺いたいことがあります」

 

 居住まいを正して向き直る。

 レンバスの言う通り、エーデルガルトには目的があった。だからわざわざ集団から離れて彼と向かい合う席に着いたのだ。

 

「レンバス殿はジェラルト傭兵団の中でもかなりの古株とお見受けします」

「まあ、いなくなっちまった奴もいるから俺だけってわけじゃないが、一応最古参と言ってもいいだろうな」

「なら、昔の師のことをご存知ではありませんか? それこそ傭兵団の活動に加わる前の、彼が子供だった時のことなどを」

「レト坊が小さかった時のことねえ」

 

 尋ねられた内容に胡乱な目付きになるレンバスだが、正面から話を持ち掛けてくるエーデルガルトを見て何かしら思うところがあったのか、すぐ笑顔になって応じた。

 

「どうせ聞くなら俺だけじゃない方がいいだろ」

「え」

「おーいお前ら! お嬢がレト坊の昔話をご所望だってよ!」

「あ、あの」

 

 大きな声を出したことで傭兵だけでなく生徒にまで反応されてしまい、エーデルガルトの焦りを余所に次々とテーブルの周りに人が集まってしまった。

 

 何々ー?レト坊?あいつの話?お嬢ってレト坊に興味あんの?あいつ気に入られてんのか。不愛想なのにな。まあ真面目だから仕事はしっかりしてるでしょ。お嬢も真面目そうだね。意外とレト坊と相性よかったりして。

 先生の話か?それは僕としてもとても興味ありますね。あらーエーデルちゃんったら先生のこと探ってるのねー。私も先生の昔興味津々なります。そういう話なら我々も聞かないわけにはいかないだろう。

 

 ああだこうだ話しながら集まってくる顔ぶれを見て、エーデルガルトは内心で歯噛みする。こうなってしまっては自分だけがベレトの情報を得られそうにない。これでは話が広がることは避けられないか。

 

「それとお嬢、話す前に、いいか」

「……何ですか?」

「あの柱の陰から俺に殺気を向けてくる奴、呼んでくれねえ? あいつ確かお嬢の従者だよな」

「……ヒューベルト、こっちに来なさい」

 

 レンバスが指差した方を見ると、ヒューベルトが険しい視線で睨んでいるのが見えた。恐らく自分が『お嬢』呼ばわりされているのを無礼ではないかと感じているのだろう。普段は他人の呼称にいちいち目くじらを立てる人間ではないのだが、主のことになると話が変わる。

 少しばかりの頭痛を感じるも、無視して呼びつけた。

 

「エーデルガルト様……」

「委細承知しているわ。私が許したの、貴方は控えなさい」

「……かしこまりました」

 

 不満はあるようだがひとまず飲み込んでくれたようだ。後で変なことをしなければいいのだが。

 

 そうしている内にレンバスは仲間に事情を伝えていた。

 

「レト坊の昔の話ですか」

「色々あるよなー。あいつ見てて飽きないし」

「あの無表情のまま素っ頓狂なこと言ったりやったりしやがるからな」

 

 傭兵達の言葉に、覚えのある生徒の何人かはうんうんと頷く。ベレトの天然さは昔からのもののようだ。

 

「そうだ、レト坊がやったことでこんなことがあるんですよ」

 

 ジードと名乗った青年の傭兵が口を開く。比較的若く、ベレトと同じくらいに見えた。

 

 あれはベレトと自分がまだ幼く、傭兵として受ける依頼についていくことが許されなかった頃。幼い彼らの仕事は傭兵団の雑用を片付けることだった。拠点として使う家屋の掃除だったり、馬の世話や、団員達の食事の用意などである。

 ある宿に留まって活動していて、ジェラルトらが依頼のために出かけた。いつもならその間ジードは雑用を済ませるのだが、宿に泊まる時は料理も掃除も従業員がするもので自分がやらなくてもいいと考え、傷薬など多少の買い物をし終えたら仕事もなく暇になったのだ。

 空いた時間に何をしようかと思ったところで気付くと、同行していたベレトがいない。当時から無表情で何を考えているか分からなかったベレトをジードは少し苦手に思っていた。それでも傭兵団の仲間を案じないわけにもいかず探したところ、程なくして同じ宿の中で見つけた。

 その時ベレトは宿の従業員について回り、掃除の手伝いをしながら部屋の片付けやベッドメイクのやり方を教わっていたのだ。

 傭兵団の一員のくせに宿の丁稚みたいなことをするベレトを最初は咎めたジードだが、彼を問い質す内に考えが変わる。

 何やってんのさ──仕事を教わってる。

 傭兵のすることじゃないだろ──するかもしれない。

 どうせしないって──しないならそれでいい。

 覚えてどうするんだよ──別の何かに使う。

 苛立ちをスルスルと受け流したように無表情を変えないベレトに毒気を抜かれてしまい、結局はジードも一緒になって手伝うことになった。

 傭兵なんていう荒くれ者と一緒に行動してるのに君達は真面目な子供だな、と宿の従業員一同にいたく気に入られて、その宿に滞在している間、ジェラルト傭兵団は何かと優遇を受けたのである。

 

 根本的に誰かの役に立つのが好きなんだよあいつは、と続けるジードの話しぶりは楽し気だった。

 

「君達は覚えがないかな。何か問題があった時、レト坊が突拍子もないやり方で解決したこととかさ。ジェラルトさんの教えを一番受けたこと以外でも、たぶん僕達の中でも一番経験豊富だよ」

 

 歳は若くてもベレトの姿勢から教わることは多いのだという形で話を締め括る。感心したように唸る生徒の隣で、傭兵達もそういやそんなこともあったなと懐かしそうに頷いていた。

 

 料理上手。ベッドメイク。

 それを聞いたエーデルガルトの脳裏に浮かぶのは、これまでの情報を元にしたある光景だった。

 

 ──アンヴァル宮城の自室か。またはどこか別の住まいか。

 ──私は家路を急ぐ。待っている人がいる。その人の下へ帰るために。

 ──早足で辿り着き、ほんの少し乱れた服を可能な限り整えてから扉を開ける。

 

『おかえり、エル』

 

 ──そこで私を迎えてくれる人がいる。

 ──(せんせい)

 ──柔らかく微笑んでくれる彼に、私も微笑んでただいまと返す。

 

『夕飯はできてるよ。すぐに出せる』

 

 ──テーブルには皿やグラスが並んであった。

 ──奥の厨房から鍋などを運べばすぐにでも食事を始められそう。

 

『それとも、少し休んでからにしようか』

 

 ──私の手から外套を受け取った彼がサッと袖を伸ばして壁にかける。

 ──そうすると私の顔を覗き込んで言うの。

 

『ベッドは用意してあるんだ。先にちょっとだけ寝るかい?』

 

 ──そんな、師、貴方が作ってくれた料理が冷めてしまうわ。

 ──そう言う私の髪をくすぐるように撫でて彼が続ける。

 

『後で温め直せばいい。君が元気になる方が大切だ』

 

 ──身を寄せて、抱き締めてくれる。

 ──毎日、いつでも、欠かさず、私を。

 

『エル、いつもお疲れ様』

 

 ──エル。

 ──それは私と近しい、家族にだけ許した呼び名。

 ──この名を彼が使って私を呼ぶ。

 ──師……

 

『そうじゃないよエル。俺は?』

 

 ──そうだったわ。もう(せんせい)じゃない。

 ──ベ

 ──ベ、ベベ、ベベベ

 ──ベベベレ、ベレレ、ッベベベベレレレ

 

「やけに盛り上がってるな」

 

 ──トぅぁぃえ!?

 

「せ、(せんせい)!?」

 

 後ろから聞こえた声にエーデルガルトは一気に我に返った。

 見回せば食堂の席に着き、周りには黒鷲の学級の生徒と、向かいにはテーブルを挟んで傭兵が屯している。特に注目されてないので思考に沈んでいたのはほんの一瞬だけだったようだ。

 一瞬だけ。いやそれにしても、

 

(長いわ!)

 

 自分にツッコミを入れざるを得なかった。あんな一瞬で妄想に浸るなど(それも人前で)皇女としてあるまじき失態である。

 あんな……あんな温かくて、穏やかで……幸せな光景なんて、妄想でしかない。現実で、未来であんなことになるわけがない。

 チラッと横目で確認するが、ヒューベルトが睨んでくる様子はない。彼に気付かれてないなら大丈夫だろう。

 ……向かいのレンバスがニヤニヤしているのは見なかったことにする。

 

「来たかレト坊。早かったな」

「下拵えは朝に済ませてあったから」

「さっすが、相変わらず先を見てるね」

 

 やってきたベレトは両手に持った二つの大皿をテーブルに置く。

 二つの皿には一口大にされた団子状の何かが山盛りにされており、それぞれの皿には別種の団子が大量に積まれていた。似ているが片方がもう片方に比べて黒ずんで色が濃い。どちらも空腹を刺激する香ばしい匂いが立ち上っている。

 

「レト坊! これ、いつもの?」

「ああ」

「やったー!」

「よっしゃこれこれ!」

「っあー、うめえ! やっぱレト坊が作らねえとな!」

 

 傭兵達は次々に手を伸ばし、摘まんだ団子を口に放り込むと一斉に顔を綻ばせる。本当に美味しいのだろう、はしゃがない者は一人もいない。

 

 当然、その様子を目の前にした生徒達も気になる。昼時なのもあって食欲をそそる光景だ。

 

「なあなあ先生、これ俺達も食べていいか?」

「いいぞ。後で追加を持ってくるし、厨房で協力してもらったから昼食は同じものが出る。個人で盛り付けてもらうこともできるから欲しければ注文するといい」

「やったぜ、もーらい!」

 

 許可を得たカスパルが手を出したのを皮切りに生徒も手を出す。

 尤も、そのカスパルや傭兵のように手で摘まんで食べるのではなく、皿によそってフォークで行儀よく食べるところはやはり貴族の多い黒鷲の学級と言ったところか。

 エーデルガルトも、横から手を伸ばして小皿によそってくれたヒューベルトから受け取ると、まず一つ食べて驚きに小さく声を上げた。

 

 これは……なかなかの美味しさだ。

 どちらも油で揚げて作ったと思われ、表面はカリカリとしていながら中は想像以上に柔らかな仕上がりになっている。恐らく魚のすり身を使っているのだろうが、驚くほどフワフワな口当たりだ。魚の淡泊さと控えめな香辛料のせいで味自体は薄いが、それが揚げ物の香ばしさを強調させて食欲を刺激する。

 もう片方も面白い。

 作り方は前者と同じなのだろうがこちらの方は味がやや濃い目。それは塩や胡椒を多く使ったとかではなく、仄かな苦みを感じるものが混ぜてあって濃厚な印象がある。それを長めに揚げたので表面のカリカリ部分が多く、中の身も食感がしっかりしているので食べ応えはこちらの方が上だ。

 

 傭兵達が絶賛するわけである。エーデルガルトの肥えた舌も唸らせる一品だ。

 

「これ食べると酒が欲しくなるんだよな……おーいレト坊」

「話は通してあるから欲しい奴は配膳所に行け」

「そうでなくちゃな! よく分かってるぜ!」

 

 ひゃっほーい、と飛び上がって喜ぶドナイに続いてヨニックやダンダ、ガロテら傭兵達が食堂の配膳所に向かっていく。

 なるほど、酒の肴にするのも悪くない……舌鼓を打つエーデルガルトの横で、同じく口に運んだヒューベルトがベレトに尋ねた。

 

「先生、これは魚を使っていると思われますが、何と言う料理ですか?」

「アミッドゴビーの揚げ団子」

「……アミッドゴビー、ですか?」

 

 ベレトの返事を聞いて、珍しくヒューベルトは目を見開いた。

 

 このアミッドゴビーという魚、はっきり言って不味い。

 フォドラ全域に生息する小魚であり、漁をすれば他の獲物に混ざって勝手に獲れてしまうくらい手軽な魚だ。なので市場ではかなり安価で手に入る。

 もちろん安いには安いだけの理由がある。身はパサパサしており、泥臭さを感じる人も多いので好む者が少ないのだ。

 それでもこの魚が市場に出るのは、折角獲れたものを廃棄してしまうのはもったいないことと、こんな不味いものでも安く買えれば食い繋ぐことができて飢えずに済む者もいるからである。味に頓着しなければ腹を満たすには十分なのだ。

 

 だが、この揚げ団子を食べた後では印象が大きく変わる、あの不味い魚を使ってこうも美味しい料理が作れるのか。アミッドゴビーと言えば下々の平民しか口にしない下魚だと断じていたヒューベルトは信じられない思いだった。

 

「擦り潰した身に乾燥したパンを荒く砕いた粉を混ぜて、一口大に整えて揚げただけで、作るのは難しくない」

「二種類ありますが両者の違いを伺っても?」

「擦り潰す前に内臓を取り出すんだがそれは片方だけにして、取った内臓をもう片方に追加してある。それが味の差を生むんだ」

「魚の内臓を使っているのですか……」

「アミッドゴビーは食道が短いから糞を作っても二〇分もしない内に排出するぞ。生命力も強いから水揚げした後でも糞を出す。調理前に丸ごと水洗いすれば大丈夫だ」

「なるほど……意外な体質ですな」

 

 興味深く聞き入るヒューベルトのさらに隣では、珍しく自発的に動いたリンハルトが揚げ団子を食べていた。

 

「いいですねこれ。調理に難しい工程はないし、使う皿も何でもいい。その気になればカスパルみたいに手掴みで食べられる。パンは食べ残されて廃棄することになったカラカラに乾いたやつを使えばいいから安く買える。肝心のアミッドゴビーは魚だから鮮度が心配だけど、フォドラではどこでも手に入るから現地調達できるし、当然安い。流通をちゃんと整備できれば、安価な糧食として使えるんじゃないかな?」

「まったくだ、これは素晴らしいぞ先生!」

 

 リンハルトに同意したのは、それまで咀嚼を続けてじっくり味わっていたフェルディナント。

 

「アミッドゴビーなど串焼きにしたものが精々だと思って口にする気はなかったが、これは反省しなければいけないな……どんなものでも、使い方や作り方次第で活かせる道はあるということか」

「あら、貴族様の意見も変えちゃうなんてすごいわね」

 

 感心した風に言うフェルディナントの後ろでドロテアが意外そうな顔をした。大貴族の嫡子である彼の口からそんな言葉が出てくるのは驚きだったのだろうか。

 

「私は正直、この魚は好きではなかったんですけど……でもこのお料理を食べたら、なんだか気分が変われた気がします。ありがとうございますね先生」

「そうか。ドロテアが気に入ったなら、いいことだ」

 

 ドロテアの嬉しそうな声を聞いて、ベレトもそこはかとなく嬉しそうだった。無表情のまま小さく頷きを返す彼がどこか安心したように見える。

 そのベレトにペトラが近付いてきた。揚げ団子を盛った皿を一つ手に持っているが、自分で食べる様子はない。

 

「先生、このお料理、少し、もらう、いいですか?」

「構わないが、どこかに持っていくのか?」

「はい。ベルナデッタ、昼食、食べる、遅い、なります。今日の食堂、人混み、いつもより多い、彼女、辛いです。これ、ベルナデッタの部屋、寮に持っていく、許可、よろしいですか?」

「分かった。パンと飲み物も一緒に持っていくといい。配膳所でお盆ごともらいに行こう」

「はい、ありがとうございます!」

 

 そう言うとベレトはこちらに向けて小さく目礼をしてからペトラと連れ立って歩いていく。ゆっくり食べてくれ、という彼の無言の声が聞こえたような気がした。

 

 その背を見送ったエーデルガルトが正面に向き直ると、テーブルの向かいにニコニコ顔のレンバスがいた。

 

「どうだい、うちのレト坊は」

「そうですね。傭兵という出自からは想像もつかない、多方面に優秀な人です。彼の下で学べる幸運に感謝しなくてはと思います」

 

 実力だけでなく、生徒の精神的な成長も考えて指導してくれるべレトへ、エーデルガルトが向ける尊敬の念はますます大きなものになっていた。

 将来は帝国へ誘おうという考えも、配下に加えるより、今と同じように自分を導く師として頼れる存在になってくれればと期待している。無論、この学校にいる間も可能な限り彼から学ぶつもりだが。

 

 皇女であるエーデルガルトから望外の高評価を聞けたからか、レンバスは嬉しそうに笑顔を見せた。

 

「ところで先ほどレンバス殿は『教えた当初は』と仰いましたが、ひょっとして師に料理を教えたのは貴方なのですか?」

「まあな。というか料理も含めて雑用の仕事全般は俺が教えたよ。昔は傭兵団の人員も数が少なくて、ジェラルトさんが付きっ切りで全部教えるわけにもいかなかったからよ。しばらくは俺がお目付け役みたいなものだったのさ。つってもレト坊はすぐに俺より上手くやるようになっちまったんだが」

 

 揚げ団子を一つ口に放り込むレンバスは配膳所に向かったベレトを見る。酒杯片手に行儀悪く絡む傭兵を慣れたようにあしらう彼は、ちょうどペトラを食堂から送り出したところだった。この後は追加の揚げ団子を作るためにまた厨房に入るのだろう。

 

「腕っ節はとっくに敵わなくなっちまったが、それでもあいつは俺らが面倒見てきた可愛い後輩でね。そっちでもしっかり仕事してるとこが見れて安心したし、あんたら生徒に慕われてるのが分かって嬉しいんだよ。これからもレト坊をよろしくな」

 

 周りにいる黒鷲の学級の生徒を見渡してレンバスは言う。

 エーデルガルトにはその姿が、以前自分に向けて頭を下げて頼み込んできたジェラルトと重なって見えた。見た目も同じくらいの老け方をしているし、同じくベレトを気にかけてる者として彼から目を放せないのだろう。

 

 そしてエーデルガルト達生徒にその言葉を拒む者は一人もいなかった。

 

「もちろんです。我ら生徒一同、師の下で学び、その教えを余さず受け止めていきます」

ひふか(いつか)へんへえい(先生に)かふあげ(勝つまで)おえあ(俺は)あひあめええね(諦めねえぜ)!」

「カスパル、飲み込んでから喋りなよ……まあ興味深い人だし、授業もいい勉強になるしね。大変な時もあるけど」

「先生のような人は貴族の中にもいまい。彼と出会えた幸運と、鍛えてもらえる境遇に感謝し、全力で応えてみせると約束しよう!」

「大丈夫ですよ。私達みんな、先生のことが好きですから。良い男で良い先生だなんてすごい人、他にいませんよ」

「……得難い人材であることは認めましょう。今後の采配に期待ですな」

 

 その場で話を聞いていた生徒達が反応する。それを聞くとレンバスは安心したように溜息を漏らした。

 

 今日の出来事(演習と食堂で聞いた話)を通じてエーデルガルトは思う。将来的にもしベレトを誘うなり何なりするなら、ジェラルトのみならず、彼らジェラルト傭兵団を無視するわけにはいかないだろう。

 血の繋がりがなかろうと彼らは一つの家族のように結び付き、活動の場が離れた今でもこうしてベレトに情を向けているのだ。

 そんな彼らとこうして顔を合わせて言葉を交わし、繋がりを得ることができた。この繋がりはいつかきっと役に立つに違いない。

 ベレトのことを抜きにしても、ジェラルトに鍛えられた精鋭揃いの傭兵団、それもセイロス教団と関係なく動ける強力な一団と縁ができたことも喜ばしい、という打算もある。エーデルガルトの目的からしても武力は幾らでも欲しいのだから。

 

 授業も含めて、今日は実のある一日だと思えた。

 

「それはそうと話を戻しますが」

「レト坊の昔のことか? お嬢も好きだねえ」

「これでも級長ですので、師のことはより知りたいと思います。お返しとして学校での彼のことをお話ししますと、以前休み時間に──」

「へえ、想像できちまうな。それと似てるかもしれんが、前にあいつ森の中で──」

 

 同一人物(ベレト)をネタにして、エーデルガルトとレンバスは話に花を咲かせる。共通の話題で盛り上がる二人は、立場は大きく離れていても仲の良い友人に見えた。

 

 その近くで、主の邪魔にならないよう黙って控えるヒューベルトを始め、面白そうな話に聞き耳を立てる生徒達は一瞬「それ級長関係ある?」と疑問を覚えたが、目の前で楽しそうに話すエーデルガルトの気持ちを遮らないように、この場は口を噤んだのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この日を境に、ジェラルト傭兵団は何かと黒鷲の学級と関わることになる。

 時には課題の補佐に派遣される騎士団の代わりを務め、陽気な傭兵達は貴族相手でも臆せず絡んできたこともあり、見る見るうちに仲良くなっていった。

 その采配に騎士団長である父の意思が及んでいるかは……不明、ということにしておこう。




 個人的に取り上げておきたい存在だったジェラルト傭兵団。黒鷲の学級と関わらせてあげたかった。やや長めになりましたが、この組み合わせの支援会話はこれ以上予定してないので今回に限りがっつり書かせてもらいました。
 それでも書き始めた当初の想像を遥かに超えてたくさん書いちゃいました……情報色々詰め込んじゃった……読みにくくなってないといいな。

作者の活動報告に載せた後書き

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